今大会は来月23~26日にカザフスタンで行われるアジア選手権の代表への選考会。階級変更の関係で新しく誕生したフリースタイル(フリー)70キロ級と、正代表が引退を表明したグレコローマンスタイル(グレコローマン)98キロ級の2階級で行われ、いずれも早大勢が代表権を得た。グレコローマン98キロ級を制した大坂昂(スポ4=秋田商)は2013年度の主将。フリー70キロ級のトーナメントを勝ち上がった保坂健主将(スポ3=埼玉栄)は2014年度の主将で、新旧の主将がその実力を発揮した。保坂は今月15・16日にアメリカ・ロサンゼルスで行われるフリーのワールドカップ代表にも内定した。
フリー70キロ級は2014年からの新設階級。昨年までフリー66キロ級で戦っていた8人が出場してのトーナメントで代表を決めた。保坂は2回戦で野田寛人(自衛隊)と対戦。野田には昨年末の天皇杯全日本選手権(天皇杯)フリー66キロ級で敗れているが、「特に意識はしていませんでした」と落ち着いていた。1ピリオド(P)終盤にタックルを決め、リードして後半へ。2Pはグラウンドで失点する危機を迎えたが、耐えて立ち上がると最後は逆に野田をコントロールして加点。そのまま逃げ切って決勝進出を決めた。続く決勝は日大の新川武弥を相手に「タックルで取ることしか考えていなかった」と得意技の連発を見せて、大差での勝利。フリー70キロ級『最初の王者』となった。
タックルから背中に回る保坂
大坂は日体大の米平安寛と1試合のみのプレーオフ。絶対王者だった斎川哲克の引退、天皇杯グレコローマン96キロ級2位の選手のケガが重なって、同3位の大坂と4位の米平にチャンスが巡ってきた。この2人はライバル同士で、昨年は米平が先に2連勝した後、大坂が2連勝し返した。試合はパワーに勝る米平に対して、大坂が技術で対応していく展開。先に相手の反則を誘った大坂が1P終盤にグラウンドでの攻撃権を得ると、必殺のローリングを決めて先制。2Pは米平の必死の攻撃に押されて2度反則を取られたが、最終盤に盛り返して勝利した。戦略がうまくはまったかたちで、太田拓弥コーチも「勝利するための試合内容としては良かった」と振り返る1戦だった。
大坂はライバル対決を制した
これで早大からはこの2選手と前川勝利(スポ3=茨城・霞ヶ浦)がアジア選手権に出場。日本を飛び出し、世界を肌で感じることになる。世界のトップを取るという最終目標に向けて、各自に必要な経験を積む絶好の機会になるはずだ。
(記事 三尾和寛、写真 高畑幸)
結果
▽グレコローマンスタイル
98キロ級 大坂 アジア選手権代表内定
▽フリースタイル
70キロ級 保坂 アジア選手権代表内定
ワールドカップ代表内定
コメント
山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)
——大坂選手(大坂昂、スポ4=秋田商)の試合について振り返って下さい
きのうも本人と話していたことですが、就職も決まったので何としてもアジア選手権の代表になりたいとは言っていました。きょうは1試合だけで気持ちを高めることや体の動かすことは難しかったと思います。彼なりに日頃やっていることが試合で出せて、結果につながったことはよかったと思います。
——保坂選手(保坂健主将、スポ3=埼玉栄)についてはどのように思われますか
1試合目は少し固かったですが、彼のスタイルである前に出てタックルする姿勢を3試合全てできたので来季に向けてチームとしても良いきっかけになったと思います。
——アジア選手権で大事なことは何でしょうか
強気な姿勢、気持ちだと思います。勝ち負けも大事だと思いますがそれで終わりではないので。攻めて、ポイントを取り、結果的に勝利することだと思います。
太田拓弥コーチ
――保坂選手の試合についてどのように思われますか
今までの試合ではポイントが取りきれない、相手の圧力に負けてしまうところに敗因がありました。きょうの試合ではまず前半にコーションを取り、そこからグラウンドで返していくという戦法をしました。勝利するための試合内容としては良かったと思います。
――大坂選手(昂、スポ4=秋田商)の試合についてはどのように思われますか
タックルが入ってからの処理もうまくできましたし、全日本学生選手権で負けた相手に勝つことができたので、そこはよかったと思います。
――保坂選手が12月の天皇杯全日本選手権(天皇杯)から改善できた部分はどこでしょうか
天皇杯の時は自分のこれまでやってきた階級がオリンピックではなくなり、近いものは1つ下の65キロになりました。その時は本当はオリンピックを目指したいのに、体重も中途半端という気持ちがあったと思います。今回は70キロ級で日本代表になること、それで世界選手権もこの階級でなれるように、と気持ちを切り替えられたと思います。また新キャプテンになりチームを引っ張るという自覚もこの結果につながったのではないかと思います。
――保坂選手、大坂選手がアジア選手権で勝つためには何が必要だと思いますか
大坂の場合は最初のコンタクト、グラウンドのディフェンスですね。大坂は守りになると多少弱い点があります。常に6分間攻撃できるレスリングになればと思います。あとはタックルが入ってからのグラウンドで返す技を身につければ、アジア選手権などでも上位に食い込めると思います。保坂も同様に、タックルからグラウンドで返すことです。それと、ディフェンスで相手のタックルをしっかり切ることですね。
大坂昂(スポ4=秋田商)
――代表内定おめでとうございます。今のお気持ちを教えて下さい
学生ではないシニアの大会で日本代表になれました。嬉しく思います。本当は天皇杯で優勝された斎川さん(哲克、両毛ヤクルト販売)が出場する大会でした。斎川さんが出場を辞退したからこのプレーオフが行われました。だから本当の代表とは言えません。アジア選手権が終わったら、次こそは自分の力で代表内定を勝ち取りたいと思います。日本一になってから、国際大会に出場していきたいです。
――きょうの試合内容についてはいかがですか
自分は本当に体力がないとつくづく感じました。パワー、体力面が劣っていると改めて思いました。米平選手(安寛、日体大)はパワーも体力もある選手です。技術面などでカバーできる部分はあります。しかし日本で苦戦しているうちはまだまだなので、つめていかなければと思います。
――守りの面については どうですか
12月の天皇杯では米平選手に返されてしまいました。それで相手の攻撃のやり方を研究しておきました。こう攻めてくるだろうと分かっていました。また、ディフェンスのやり方を変えてみました。それがうまくいったと思います。
――アジア選手権での目標をお願いします
今の実力がどこまで通用するのか正直なところ、分かりません。アジア選手権は経験の場だと考えています。アジアのレベル、世界のレベルを見るために、経験することを重視していきたいです。それで最終的な目標であるオリンピックで金メダルにつなげていけたらと思います。そのためにまずは、1つでも多く勝つ、試合をすることを目標に行ってきます。
保坂健主将(スポ3=埼玉栄)
――70キロ級のトーナメントがあると聞いた時の感想は
チャンスだなと思いました。
――出場はすぐに決めましたか
はい。
――今後はどの階級でいくのでしょうか
今後は70キロ級でやってみて、どれだけ通用するか。体をつくっていって、階級アップして頑張りたいなと思います。
――最終的には74キロ級でという方向でしょうか
そうですね。
――野田寛人選手(自衛隊)との1戦がヤマ場だったと思いますが、振り返っていかがですか
幸太郎さん(田中幸太郎、平25スポ卒=現阪神酒販)が上がってくると思っていたので、まさか違う人が来るとは思わなかったですね。驚いたのですが、僕自身が幸太郎さんはやりにくいタイプなので、このチャンスを逃さないわけにはいかないなと。一生懸命やろうと思いました。
――天皇杯全日本選手権で負けている相手というのは意識しましたか
特に意識はしていませんでしたね。
――試合内容はいかがですか
全試合失点してしまったので、そこをもう少し意識していきたいです。攻撃面では要所要所でとれたので、練習やっていることでいけたのかなと思います。あとはグラウンドですね、アンクルホールドを練習しているので出せるようにしていきたいです。
――得意技のタックルがよくでていました
試合前に調子が悪くて、組手などをいろいろ考えていたのですが、最終的に僕がポイント取れる技はタックルなのでタックルやろうと考えて試合にきました。タックルで取ることしか考えていなかったので、そこが逆に良かったのかもしれません。
――この直後にワールドカップと、4月にアジア選手権がありますが今後に向けていかがでしょうか
チャンスなので、世界と肌を触れて、自分のレスリングの視野を広げていければいいなと思います。
――目の前に迫ったワールドカップでの目標は
団体戦なのですが、自分自身が全勝ということですね。