今季、創部初となる内閣杯全日本大学選手権(内閣杯)での団体優勝を果たすなど、目覚ましい成績を残したワセダ。その中で個人2冠を達成し、ワセダの躍進を支えた、北村公平(教4=京都八幡)と保坂健(スポ3=埼玉栄)。お2人に二冠への道のりと天皇杯全日本選手権(天皇杯)への意気込みをうかがった。
※この取材は12月3日に行われたものです。
充実感じた1年
今季悲願のインカレ制覇を果たした北村
――今季を振り返っていかがですか
北村 個人的に言うと、全日本学生選手権(インカレ)で優勝したり、全日本大学グレコローマン選手権(全グレ)で2連覇できたりというように、4年目にしてやっと優勝が板についてきたというのもありますし、団体においても、5月のリーグ戦(東日本学生リーグ戦)で2位、全グレも2位で最後に内閣杯で優勝できたのでトータルとしてはかなり充実して、よかった1年だと思っています。
保坂 僕自身は…充実していましたね、1年間。
北村 それ俺言った(笑)。
保坂 俺もそうっすもん(笑)。リーグ戦があと1つ勝っていたら優勝だったので、それはちょっと悔しかったですけど、全グレも俺はグレコ(グレコローマンスタイル)出てないですけどみんな頑張っていたのですごく感動したし、個人的にもインカレ取って、内閣取って。内閣では団体でも優勝できたのですごくよかったです。
北村 まじめか!(笑)
――ことしの戦いを通じてなにか成長したと思うところは
北村 強いて言うならここで勝たなければいけないというところで勝てているかなというのを思っています。それが特に顕著に出たのが5月のリーグ戦で、自分の中で印象に残っているのはグループ最終戦の拓大戦だったり、決勝の山梨学院大との試合ですね。保坂もそうですけど自分は1階級上の階級で出ていて、4年生で負けられない立場の中、負けられない場面で自分に回ってくるというシュチュエーションの中できっちり勝つということができました。今までの自分だったらああいうシーンにはメンタル的に弱かったので、勝てなかったかもしれないという状態でしたが、ことしはしっかり勝ち切ることができたのが、成長した部分ではないかなと思っています。
保坂 最後に取りにいけるようになったというところですかね。特に内閣杯はきつくて、最初負けていて後半取り返すという展開が多かったのですが、今までだったら諦めていたところでも最近はいけるかな、という感じです。
――北村選手はインカレでフリースタイル(フリー)初優勝を果たされましたが、感想は
北村 やっとか、という感想が一番です。ほっとしたとか、嬉しかったとかそういう感情よりも先にやっと取れたという安堵ですよね。3年間ずっと2位で決勝の舞台で負け続けてきたので、4年目にしてなんとか最後勝ちを取ることができて、自分の中でもよかったですし、自分を応援してくれている方たちにもやっとかたちとして恩返しというか、いい報告ができた大会でもありましたね。
――全グレではきょねんから2連覇を果たされましたがいかがですか
北村 あれはなんというか、勝たしてもらったというか。最後相手がケガをして勝ち名乗りをもらったようなものですけど、自分の中でグレコは専門外というのもあって、あまり勝ちにこだわっていなかったというか。言っちゃ悪いですけどラッキーだった試合という面もあって。結果として2連覇できたことはよかったですけど…やっぱり狙っていたのは団体優勝だったので、素直に喜びきれない部分が大きかったですね。
――北村選手はどういった点でグレコローマンよりもフリーのほうが得意なのですか
北村 ちっちゃい時からずっとやってきたから(笑)。
――グレコローマンはどういった時からやってみようというようになるのですか
北村 高校の時は、グレコローマンの試合が高校にもあるので、グレコだけの大会にも一応エントリーはしてやっていて、高校2年生の時にグレコは優勝したのですが、そんなに本気ではやっていなくて、なんとなく力でねじ伏せた大会でした。そのあと大学に来てフリーとグレコで本格的に分かれるというようになった時に、僕はフリーでやりたいというのがあったんですけど、だからってグレコを捨てたくなくて。出られる大会は全部出たかったので。なのでフリーもやりながら、グレコもちゃんとエントリーしたり、出られる機会をもらえたら頑張るという両方やるスタンスで4年間やってきました。
――保坂選手はグレコローマンは
保坂 いや、やらないですね!
――やろうと思ったこともないですか
保坂 まあ趣味って感じですね。きょうやろうかなーみたいな。
北村 箸休め?ちょっときょうはフリーじゃないなって時?
保坂 きょうフリーしんどいなーって時に「ちょっとグレコやろうかなー」みたいな(笑)
――保坂選手はインカレで大学で初めてのタイトルを取られましたがどのような気持ちでしたか
保坂 なんか取っちゃったーみたいな(笑)。優勝できると思っていなかったので。1つ上の砂川先輩(砂川航祐、日体大)に高校から負けていて、ことしもその先輩がいたので、「良くて2位かなあ。」と思っていたらまさかポンポンポーンと勝っちゃって。まあラッキーって感じですね。
北村 でもあの時は確実に実力でお前のほうが勝ってたよ。勢いもあったしな。
保坂 のってたっすね、俺が。「あ、優勝しちゃった」、みたいな(笑)。
北村 気づいたら1番やったってやつやろ。
保坂 「あ、終わったよ」みたいな(笑)。
――続く内閣杯では最優秀選手賞を獲得されて優勝しましたがその感想は
保坂 俺、最優秀もらえると思ってなかったんですよね。>
北村 でもあの時優勝したのお前だけだったしな。
保坂 あれって団体優勝したチームですっけ?
北村 そう。団体優勝したチームの中から選ぶっていうのが基本で、大体ああいうのは4年生が選ばれるもんやけど…。でも4年生の中で俺らじゃなくて優勝した保坂でしょっていう考えもあったし、多分監督、コーチも同意見。当り前よ、あれは。
保坂 なんか…俺か、みたいな(笑)。「最優秀俺か―」って感じですね。
――今季の戦いの中でなにかキーポイントとなった試合や大会はありましたか
北村 なんかある?
保坂 えーなんすかね。インカレかなあ?ことし試合なにあったっけ。リーグ戦と、インカレと、内閣杯だけか…。
北村 意識したことないなあ…。
――なにかこうすれば勝てるぞ、というようになった試合は
保坂 それは…インカレかなあ。インカレかもしれないですね。勝ちパターンというか。高校の時ずっと優勝していて、大学入って1、2年でジュニアオリンピック(JOC杯ジュニアオリンピック)だけ優勝してあと全部負けていたので、いつも勝ったり負けたりしていて…。でもインカレで勝って、「こうやれば勝てるんだ」って感じで内閣杯も取って。
北村 俺はリーグ戦かなあ。やっぱり4年生になって初めて挑む大会がリーグ戦だったので、なんか3年生以下までの時と気持ちが違って。3年生以下の時も僕は勝てるポイントゲッターだという風に扱われてきたので勝たなきゃというのはあったのですが、ことしは勝たなきゃというのことの後ろにはやっぱり「最後だから楽しまないと」という意識があったので。その楽しもうっていう意識が自分を緊張させない抑止力になっていたのかなあと思って…。全体的にのびのびと楽しくやっていたなあとは思いますね。
保坂 俺めっちゃ緊張したわ…。決勝やばかった。だって俺に(4勝先取の)0-3で回ってきたんですよ。俺負けたら終わりっすもん。
北村 それ。お前から3人負けたら即終わりやったからな。
保坂 そこから繋いだからなあ…。
北村 あれはね…緊張したね。楽しかったけどね、俺は。
保坂 燃えるっすよね。
――お2人は今季違った形で2冠を達成されましたが、お互いから見てこんなところが成長したなというところはありますか
保坂 俺が公平さんを成長したなあって…(笑)。
北村 ええんちゃう、そういうのも大事や(笑)。僕から見た保坂に関しては昔から自信に満ちあふれたレスリングをするなあとは思っていたんですけど、ことしはそれがかなり顕著に出ているなあっていう…。見ててこいつ負けるかもっていう不安がない。
保坂 いや、内閣杯やばかったじゃないっすか。
北村 いやいや、俺全然取れるって思ってたから。今までだったらやっぱり「こういうところが保坂は弱いからここでやられたら負けるかも」って思う不安材料がいくつかあったなかで、ことしはそれをうまく修正してきたというか、あまり出さないレスリングをしていたので…もう見ていて安心できる完全に勝気なレスリングになっていて。その点、僕はその境地までまだ入ってないですから、見習うべきというか僕が得るものにはなるんかなあ、と感じていますね。
保坂 僕ですか…?公平さんが成長したって思わないっすね(笑)。見ててグレコでも取っているのでそれはすごいなあって。僕はフリーしかできないのでやっぱ両方で勝つことの大変さとかは…。だってあんまりいないですよね、両方取る人って。
北村 あんまりいないな、物好きぐらいやろ。
保坂 俺が知ってる中だと長谷川恒平さん(福一漁業)ぐらいじゃないっすか、フリーとグレコ両方取ってるのって。
北村 昴(大坂昴主将、スポ4=秋田商)も2年前にインカレで両スタイル取ってるけどな。あいつが2年生の時。でも中量級とか軽量級で両スタイルはなかなか最近おらんな。
保坂 いないっすよね。
――今までと見ていて変わったな、というのはないですか
保坂 なんかいつも一緒じゃないっすか(笑)。
北村 いっつも一緒。勝つときも負ける時も多分一緒。
保坂 崩して、タックル取って、崩して、タックル取って…。
北村 安定的ななんか(笑)。
保坂 それで試合終わらせる、みたいな(笑)。
――北村選手はきょねんの対談で「フリーとグレコ両スタイルでプレーすることのいいところは、両方でチャンピオンになれること」とおっしゃっていましたが、実際自分でなられた感想は
北村 単純に俺すげーって(笑)。自画自賛じゃないけど。両スタイル取る両スタイル取るって思いながら、周りにも言いながらやってきたのですが、まさかほんとに取るとも思ってなかったですし…。実際きょねんグレコで先に優勝しちゃってフリー取れなかったですから、多分ことしはフリー取ってグレコは取れないんだろうなって。どっちかしか得られないもんだとは思っていたので、それで実際取っちゃったんで俺すげーなって単純に思いますね(笑)。
――両スタイルでプレーすることによってなにか得られるものはありますか
北村 僕自身太田コーチ(太田拓弥コーチ)からずっと教わってきていたのは、やっぱりフリーにはフリーの、グレコにはグレコの良さがあって、それを両方手に入れた時にはどっちのスタイルを専門にしても勝てるという風なことでした。フリースタイルだったらタックル中心のレスリングになると思うのですがその中でも崩しっていうのが必要で。グレコローマンではタックルができないので当然力もいりますけど上半身とか手さばきがすごく重視されて、それはグレコ専門の大坂だったり花山(和寛、社4=愛媛・八幡浜工)だったりのやることで、多少さばきがうまくなるとそれがフリーでも使うことができるようになるので。だから僕はフリーでやっている選手にグレコでもある程度力をつけて欲しいなあと思っていて、そのこともちょこちょこ言うんですけど…。実際僕自身がこの4年間やってきてグレコがかなりフリーに生きているので。(保坂選手を見て)やったほうがいいよ(笑)。お前もできるけどな、ある程度。来年出るで、絶対。
保坂 新人戦(東日本秋季新人戦)2位っすもん。
北村 しかも決勝棄権して2位やからな。絶対プラスになるよ。
保坂 グレコって投げ技ばっかりなんですよ。怖いじゃないですか、投げられるのって。だから嫌なんですよね。
北村 俺も投げられるの嫌やから投げられへんようにずっとやってたから。だって痛いやん、投げられたら(笑)。だから投げられたくないとかやられたくないがゆえにつける技術もあって、それが勝手に勝ちにつながったりするんで。結構いいとこあるんですよ。
五輪を見据えて
保坂は五輪連覇が目標と語る
――一時、五輪競技の中からレスリングが外されてしまうということがありました。あのときのお気持ちはいかがでしたか
北村 あー、まじかーって(笑)。
保坂 最初、あれを聞いたときは韓国遠征に行っていて、韓国人がオリンピックなくなるぞみたいなことを言ってきて、「こいつら嘘言ってんじゃねーの、バカじゃねーの(笑)」って思っていたんですけど、
北村 そんなわけないだろ(笑)。
保坂 それで日本帰ってきたら、「おい、ガチか(笑)」みたいになって、やばいなと思いました。でも、なくならないとは思っていましたけどね。
北村 うーん、なんだかんだ大丈夫やろって思っていたし、そんなに重大なこととして見ていなかったです。僕自身がこの先はどのようになるか分からないですけど、その時は続けても2016年で辞めようと思っていて、20年にレスリングが有っても無くても関係ないやと思っていたので、あんまり影響はなかったですけどね、そこは。保坂は狙える代なので、影響はあったでしょうけど。
保坂 まあ、でも無いなら無いで(笑)。
北村 馬術でもやろうかと?(笑)
保坂 俺、漁師になろうかなーと。オリンピックの代わりにカニを取りに半年くらい行って。
――カニが好きなのですか
保坂 いや、あれめっちゃもうかるんですよ。
北村 カニが好きなんやなくて、金が好きなんやな(笑)。
保坂 金が好きなんすよ(笑)。というのをちょっと考えました。
北村 あんまり影響力ないよな。
保坂 そうですね。実際あっても、無くても。
北村 無かったら無いなりに、他にもやりたいこともあったので。
――そして、20年は東京で五輪が開催されることになりましたが、今後の選手人生のプランは
北村 まあ、目標としての可能性は出てきましたけど、僕自身その時には29とか30歳ですから、やるかどうかっていうのは現実的なことを考えると、ちょっと難しいのかなという風には思っています。でも、せっかく東京でやるので、今のところ可能性としてはあって、狙う視野には入っていますね。
保坂 僕は、完璧狙いますね。
――7年後の自分はイメージできますか
保坂 とりあえずリオ(リオデジャネイロ五輪)取って、2連覇みたいな。俺は小学校3年生の時にレスリングを始めて、その時に20、24、28歳でオリンピックに行くと思ったんですよ。
北村 まあ、20歳は一個逃しちゃったけどな。
保坂 そうですね。逃してしまったので、あと2つは何とかしっかり取んなきゃなーという感じです。
――ことしは大幅なルール改正が行われましたが、当初は戸惑いがありましたか
北村 単純にやりづらさは、最初はやっぱりありましたね。ルールが変われば、何でもそうですけど、戦い方も挑み方も練習方法も全く変わってくるので。日本の場合は対応を早くということで、すぐ導入してきたので、そこに移行する期間が短くなって、かなり戸惑いとか不安とかありましたけど。
保坂 俺は初めてこのルールになったのがインカレだったので、いい印象しかないですね。好きかな、このルールの方が。
――どういう所が自分に合っていましたか
保坂 いやもう、7点取ったら試合が終わるので。もうパァーっと終わらせた方が良いじゃないですか(笑)。
北村 前のルールは6点とっても絶対第2ラウンドあったもんな
保坂 めんどくさいじゃないですか。1回勝ったのに、また2ピリ(ピリオド)は0-0からとか。なんか、モチベーションが上がらないというか…。もう1発勝負で、バーとやってバーっと終わり!の方がいいです。
――練習方法は変わりましたか
保坂 スパーリングの時間ぐらいじゃないですか?
北村 スパーリングの時間と、やっぱりグラウンドの重要性ですよね。意識の中で。1回テイクダウンとってグラウンドポジションになると、グラウンドポジションからの攻撃って無制限なので、よくあるパターンが1回タックルで倒してローリング3回で試合終了っていうのがあって。今まではそれをしたところで第2ピリオドがあったから、じゃあロースコアの1-0とか2-0でも、2分間とりあえず流して戦うという姿勢の選手もいましたが、逆に早く終わるなら終わった方がいいので。やっぱり、そういうグラウンドとかの意識付けは変わったかなと思いますね。
――2分から3分というのは、そんなに気にならなかったですか
保坂 はい。気になりませんでした。
北村 いや、俺は気になったわー、体力ないし。長い(笑)。
保坂 テクれば(テクニカルフォール取れば)終わりじゃないですか。
北村 せやけどさ、練習でスパーリングとかあったら無駄に3分流れるやん。めっちゃきついよ、あれ(笑)。いや、保坂なんかは走らせても速いですし、体力があるんですよ、かなり。自分なんかは省エネレスリングというか、体力ないので部分部分でパワーを出すレスリングなので、トータルで6分は変わらなくても3分に伸びたのはきついですね。2分くらいでやっぱりしんどくなってくるので。
「ワセダらしく、僕らしく」(保坂)
来季は主将としてチームを引っ張る保坂
――ここからはチームとしてのワセダについて伺っていきたいと思います。天皇杯を残していますがワセダは内閣杯で団体初優勝を果たされて、充実した1年になりましたね
北村 なりましたね!(笑)
保坂 なりました!(笑)この間祝勝会で焼き肉を食べにいったじゃないですか、あれで「あー優勝したー」みたいな。
北村 あそこで?遅くない?
保坂 優勝した時は試合疲れで「あー団体優勝したよーよかったよかった、しかも初かー。」みたいな感じだったんですよ(笑)。それでこの間焼き肉をOB会でやってくださって、食べながらみんなと話してたら、「あー優勝したんだなー」って実感が。
北村 確かに実感はなかったなあ、あの優勝は。
保坂 しれーっと優勝してましたよね。
北村 しれーっと「あー優勝なんやー」って。俺と勝利(前川勝利、スポ3=茨城・霞ヶ浦)の決勝の前に決まってたやん。だからなんかそんなに実感がなくて。4年生最後で「あー取っちゃったねー」みたいな。それで見たら「39回目にして初めてなんや、ワセダ」って。今んとこ実感っていうのは無いですけど、あれを終えてかなりOBの方々から「いやー本当におめでとう。よくやってくれたよ。」っていうような一言を頂くと、「あー優勝したんや、すげーことなんや」っていう実感はちょっずつ湧いてきているところぐらいですかね。
――北村選手は副将という立場でしたが、難しさや苦労はありましたか
北村 いや、全然なかったですよ。大坂にほとんどおんぶにだっこだったんで(笑)。副将っていう肩書はありましたけど、ほとんど主将の大坂がチームを引っ張って、僕はそれをサポートしてきたにすぎないので、そんなに…。まあ当然チームのこととかを悩むところで大坂と一緒に悩んではきましたけど、でもやっぱり最終的に決めるのも、実行に移すのも大坂が全部やってくれたので、僕は大坂ができなくて自分ができる部分っていうわずかな部分でフォローしたぐらいです。副将っていう肩書はもらいましたけど、そんなにたいしたことはしてないなっていう。主将、副将っていう肩書がある分団体では勝たないとなっていう自分へのモチベーションにはつながりましたけど。
――保坂選手から見た副将としての北村さんは
保坂 団体戦の時は頼れる副将です。副将として見てたのかな…?選手として「公平さんはとりあえず決勝いくっしょ、まあ勝つだろ」って。リーグ戦の時とかも、何キロ級勝って、公平さん勝って、俺勝って、まあ勝利いたら勝つっしょという計算で、「まあ勝つでしょ」みたいな。
――副将という感じではなかったですか
保坂 うちって副将ってそんな意識されなくないですか?
北村 うん。重要視されへん(笑)。別に露出もないし。副将というよりも普通に選手としてやってたぐらいかなあ…。後輩から見てもそう映るだけじゃないですか、仕事も別にしてきたわけじゃないんで。ただ勝つだけが仕事だった。
保坂 うちくらいじゃないですか?副将があるのって。だって日体大とか…。
北村 そうそうそう。総キャプテンが主将で、フリーキャプテン、グレコキャプテンが副将みたいな形になってるから。うちはグレコが少ないから。それで昴が主将になったからフリーもグレコも昴がって感じですかね。
――保坂選手はらいねん新主将になられますが、どのようなチームを作っていきたいですか
北村 お!聞かれるって言ったろ!(笑)ちゃんと考えてきたか?
保坂 考えてないんですよね(笑)。でもまあ、なんだろ…明るいチームですね。はっちゃけてる感出していきたいですね(笑)。
――意気込みをお願いします
保坂 え…恥ずかしいなあ、なんか。
北村 なんでや。これからめっちゃ言わされるぞ!
保坂 別にそんな力むようなタイプでもないので、そんなに無いですけど…まあ主将なので、団体戦とか大事なところでしっかり勝って、自分でも個人タイトルをしっかり取っていきたいなって感じですね。
――北村選手は保坂選手にどのような主将になってもらいたいですか
北村 どのチームどの競技でも主将によってチームカラーはガラッと変わったりするので、たぶん大坂が主将だったことしと、保坂が主将をやるらいねんとは全然変わるとは思うんですよ。
保坂 358度ぐらい変わりますね。
北村 いやいや、2度だけ…ちょっと寄せにきたやん(笑)。もっと変われや!(笑)しかも360度変わったら1周やからな!(笑)色々めんどくさいツッコミさせんといて。
保坂 いや、変わりすぎて戻ってきちゃった、みたいな(笑)。
北村 らいねんまたこういうこと使われるよ、「こんなこと言ってましたでー」って(笑)。でもまあこいつ自身がこの明るい性格なので、チーム全体がこういう雰囲気を維持できると、なにごともそうですけど厳しいチームよりも楽しいチームのほうが選手って伸びると僕も思ってるので、保坂が主将をやったらチーム全体が明るくなって楽しい雰囲気で練習とか試合に臨めるんじゃないかと。保坂自身がことし2冠を取ったので、らいねんもきっちり2冠で2連覇してくれるでしょうし、団体とかでも…。
保坂 ちゃっかりプレッシャーかけますね(笑)。
北村 え?(笑)負けない男だとは思うので。やっぱり主将が負けないと、下の子たちも「あの先輩すげー」って憧れの存在だったり信頼の存在になれて、やっぱりそういうチームって大黒柱がしっかりしているとあとはそんなに崩れないと思います。楽しみですよね。こいつが負けた時が終わるんじゃないかなあとは思いますけどね。
保坂 やめましょうよ…どうしよう、負けたら(笑)。
――前副将から新主将に何かアドバイスはありますか
北村 もう本当に楽しくやってくれ、というぐらいで。僕自身もそうですけど、レスリングを嫌々やるぐらいならやめたほうがいいと思うので。なのでまあ主将は色々コーチたちと選手たちの板ばさみになって大変なところがあって苦労も多いと思うけど…。
保坂 それは多分大丈夫ですよ。俺下から来ても「うるさい」、コーチが来ても「いや、俺は…」って(笑)。
北村 まあ、楽しくやってくれればそれでいいと思います。チームがちゃんと「早稲田大学レスリング部」という伝統から逸れることのないようにだけしてくれれば。
保坂 ワセダの保坂健のチームにしますよ。ワセダバージョン。
北村 今まで何バージョンやったんや!(笑)
保坂 わかんない(笑)。
――保坂選手、北村選手の言葉を聞いて改めて意気込みをお願いします
保坂 めっちゃ意気込み聞く!(笑)まあ、ワセダらしく、僕らしく。2014ニューワセダでいきます。
北村 いいんじゃない!まとまった(笑)。
「最後だから楽しみたい」(北村)
北村の弾丸タックルはついに宿敵を捉えるか
――内閣杯を終えてから天皇杯に向けて重点的にやってきたことはありますか
北村 内閣杯で自分の中で納得できない敗戦があって、そのときにも自分の感情がそのまま言葉として出て、天皇杯も84キロ級でやり返しますと言いました。でも、よくよく考えた時に俺は将来何の階級で何を狙っているのかと。やっぱりオリンピックに出るだけじゃなくて金メダルを獲りたいと思ったので、だったら自分の今の階級がベストです。あの負けは納得できないにしても負けは負けですし、またあの時負けた拓大の赤熊(赤熊猶弥、拓大)にはいずれ戦うチャンスはあるとは思うので。やっぱりワセダを背負って戦うのは次が最後ですから、僕がワセダでやってきたことを全部出せる大会にしたくて、74キロ級にエントリーするように決めました。前の大会からどう変わってきましたかといったら、やっぱり練習意識はそんなに変わっていないですけど、気持ちとして自分が何を狙って大会に出るのかということの明確化は自分の中でしました。
保坂 意識してきたことは特にないです。今まで通り、プラスαの何かって感じですね。
――お二人の階級にはそれぞれ高谷惣亮選手(ALSOK)、米満達弘選手(自衛隊)という五輪代表選手がいますが、やはり意識はしますか
北村 お前、絶対せえへんやろ(笑)。
保坂 いや、でも米満さんに勝ったら、世界1位ってことですよね。だから、勝ったらごっつぁんみたいな感じじゃないですか。やるならやりたいなとは思います。別にどうしよう、どうしようみたいな意識じゃなくて。絶対相手の方が嫌じゃないですか。プレッシャー的にも、負けられないから。俺は勝ったらおいしいので、逆に当んないかなーという意識ですね。恋愛感情的な感じです(笑)。
北村 上手くまとめたと思うなよ(笑)。自分は意識せざるをえないというか、彼を目標にずっとやってきて、正直僕のレスリング人生の大半は彼が目標だったようなものなので、やっぱりそろそろっていうのは毎度思うことですから、意識せざるをえないですね。
――では、やはり最大のライバルはそのお二方になるのですか
保坂 みんなライバルですよ。
北村 そうだね、俺も高谷さん以外にも負けてるし、実際。
――この選手だけには負けたくないとかありますか
北村 僕だったら、国士舘大の嶋田大育にはリベンジしたいというのはありますね。たぶん倒さないと上には上がれないので、それはちょっと目標というか視野には入れていますね。
保坂 因縁ですか…、いないな。特別視はしないですね、誰も。みんなに勝ちたい。
――嶋田選手に対する対策などは
北村 いや、特にないです。この人に対してこうやろうとかあんまり好きじゃなくて、この人に対してという練習をしたって、次の人に活きるのかって言ったらそうではないので。だったら自分の持っているものを最大限に引き伸ばして、それで勝てないのだったら何しても勝てないので。研究する暇があったら自分の長所を伸ばしたいなという考えですね。
――北村選手は今大会が大学最後の大会になります。特別な想いはありますか
北村 最後だから勝ちたいというのも当然ありますけど、それとほぼ同じぐらいの分量として、最後だから楽しみたいというのがあります。今後ワセダのユニフォームに袖を通して試合をすることはないですから。ワセダを背負った試合で勝つことも大事だとは思うのですが、ワセダを背負った試合を最後どう満足して終えられるかっていうのは、僕の中では大事なプロセスだと思うので。やっぱり僕の今後のために良い終わり方ができるように、結果として優勝すればいいですけど、良い終わり方ができればなと思っています。
――天皇杯まであと3週間です。どんな準備をしていきたいですか
保坂 怪我をしないで、体重を落とすって感じですかね。
北村 安全に体重を落とす(笑)。
保坂 お互い減量きついですもんね。
北村 きついね。
――どれくらい落とされるのですか
北村 自分はピーク時からだと10キロなので。内閣杯終わってから少しずつ減らしていたのですが、きょうの朝ちょっと増えていて…。やばいなという感じです。あと20日しかないのに(笑)。
保坂 僕は8キロですね。
――減量で苦労することは
保坂 まあ、全て。歩くのも嫌じゃないですか。
北村 でも、動かな落ちへんし。食べる量は普段100%食べているとしたら、減量中は80%、70%と近づくにつれて落としていく食事にはしますけど、でも慣れてくると食べないことへの苦痛はそんなにないですね。
保坂 のどの渇きが。寝れないし。内閣杯は大変でした。
北村 慣れてくると食べないことへの苦痛はなくて、飲みたいってだけで、あとは動かないと体重は落ちないので、動きたくないとかそんなわがままは通らないのでやるしかないです。苦痛って言ったら日常生活の全てがストレスになってくるので、そこぐらいですかね。
――試合後に絶対食べたいものはありますか
北村 お前、欲求すごいもんな(笑)。
保坂 はい。俺は減量中はとりあえずビール飲みたくてしょうがないですね。
北村 減量中にテレビを見ていて、すっげーうまいハンバーグの紹介だとかあると絶対ハンバーグ食おうと思うのですが、いざ終わってみるとそんなものを食べるよりは、もっと栄養価の高いもので身体を戻そうとかいう、意味わからんプロ志向が出てくるんですよ(笑)。飲み物ぐらいですかね。減量終わったら試合前ですけど、1杯だけビール飲もうとかです。やっぱり自分の欲求を少しでも満たしてから試合に行く方が、気持ちがいいですからね。
――最後になるのですが、天皇杯はどのような大会にしたいですか、意気込みをお願いします
北村 楽しむことですかね。終わり良ければ全て良しではないですけど、良い終わり方ができればなと思います。
保坂 僕は、誰かの印象に残る試合がしたいです。ちょっと目立って、らいねん保坂やべーなってみんなに言われるようにしたいです。一目置かれるの大事じゃないですか?そうしたら、あいつタックルあるからみたいになって、有名になればなるほどフェイントが効くじゃないですか。
北村 それ、おれもずっとそうやもん。ネームバリューは大事やね。
保坂 大事ですね。
――ありがとうございました!
(取材・編集 田島光一郎、谷田部友香)
二冠王同士、笑顔あふれる対談となりました
◆北村公平(きたむらこうへい)(※写真右)
フリースタイル74キロ級。京都八幡高出身。教育学部4年。学生最後の大会である天皇杯に向けて「早稲田を楽しむ!!」と書いてくださった北村選手。名前と大学名が逆になってしまった保坂選手に合わせて、自分も逆に書いてあげるという優しい先輩の1面を見せていました。
◆保坂健(ほさかけん)(※写真左)
フリースタイル66キロ級。埼玉栄高出身。スポーツ科学部3年。インカレ前はニンニクでスタミナを、馬刺しで馬力をつけて優勝したと語る保坂選手。次期主将として天皇杯にも期待が懸かるため、今回もニンニクと馬刺しは欠かせないようです。