大学対抗得点で初日に1位と21点という大差をつけられた早大。最終日の2日目は首位を走る日体大を追って、重量級が意地を見せた。120キロ級世界選手権代表の前川勝利(スポ3=茨城・霞ヶ浦)が大会2連覇。84キロ級では北村公平(教4=京都八幡)がきょねんの74キロ級に続き、こちらも2連覇。さらに96キロ級で大坂昂主将(スポ4=秋田商)が3位に入った。これできょう30点を取って合計48点。日体大まで2点届かず団体2位に終わったが、大きく追い上げた2日目だった。
最後も得意技で決めてみせた――。84キロ級の決勝は北村と日体大の星翔也の対決。先制点こそ許したが、北村は「いずれ取れるだろう」と落ち着いていた。ハーフタイムに太田拓弥コーチと、距離をとってタックルを狙う戦術を確認。2ピリオド(P)1分50秒、相手の体を浮き上がらせるほどのタックルを決めた。この時に星がマットに叩きつけられて肘を脱臼し、負傷棄権による勝利となって後味の悪さも残ったが、見事な2連覇。この活躍で見事、優秀選手賞にも輝いた。
得意技のタックルで連覇を決めた北村
前川の勝負所はやはり園田新(拓大)との一戦。明治杯全日本選抜選手権決勝を争ったライバル対決だ。きょうは準決勝にこの一番がやってきた。試合展開は今回も前川が押していく。そして1Pの1分すぎ。園田の体勢を崩し、無理な投げを切り返してバックポイントで2点先取。「体はさえてるな」(前川)と手ごたえをつかみ、以降は園田の反撃を抑え込んで試合を決めた。続く決勝は先制されたが、テクニカルフォール勝ちで2連覇達成。66キロ級を制した中井堅太(スポ3=南京都)との3年生「ツインタワー」(前川)が力を見せた。
前川も連覇達成 3年生エースの力を見せた
一方で、ライバル対決を制しながら優勝を逃したのが大坂。2回戦で全日本学生選手権、国体と連敗している日体大・米平安寛と激突。投げ技の3ポイントを守り抜いて、ついに雪辱を果たす。しかし続く準決勝で得意のローリングを決めにいったところを返されフォール負け。気持ちを切り替えて3位となったが、試合後は反省の弁が並んだ。
一方で、ライバル対決を制しながら優勝を逃したのが大坂。2回戦で全日本学生選手権、国体と連敗している日体大・米平安寛と激突。投げ技の3ポイントを守り抜いて、ついに雪辱を果たす。しかし続く準決勝で得意のローリングを決めにいったところを返されフォール負け。気持ちを切り替えて3位となったが、試合後は反省の弁が並んだ。
(記事 三尾和寛、写真 井上義之)
結果
大学対抗得点 2位 48点
84キロ級 北村 優勝 12点
96キロ級 大坂 3位 6点
120キロ級 前川 優勝 12点
※北村は優秀選手賞受賞
山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)
――総合2位という結果でしたが、総括していかがですか
一言でいうとみんなよく頑張ってくれたと。それで優勝したかったのですが、なかなか優勝させてもらえないなというのが。勝つべき試合には勝っても、大事な所で勝てなかったりというのがあって、優勝できるチャンスは大きかったのかなと思います。
――あと1勝と言いますか、たらればの世界ですが
言ってしまえばたらればばかりになるけれども、たらればで優勝するのではなくて、勝つべくして優勝というのにはちょっと足りていなかったのかなというのが正直な印象ですかね。
――個人優勝した3選手、それぞれ振り返っていかがでしょうか
中井(中井堅太、社3=南京都)はよく自分のレスリングをしてくれて、優勝してくれてよかったなと。北村(北村公平、教4=京都八幡)については1階級上の専門ではないグレコローマンで、きょねんの74キロ級に続いて優勝というのは本当にすごいなという気がしますね。前川(前川勝利、スポ3=茨城・霞ヶ浦)については拓大の園田に負けていたのをリベンジして優勝というのは、彼なりに考えるところがあったと思うのですが、結果を残してくれて良かったなと思います。
――あとは大坂主将(大坂昂主将、スポ4=秋田商)でしょうか
大坂も日体大の米平(米平安寛)に負けていて、リベンジができて、大坂自身には油断というのは無かったと思うのですが、私なんかが米平に勝ってああ大坂優勝だというような、気の緩みがこちら側にあったかなという気がしています。ただ切り替えて3位はしっかり取ってくれたので、次につながる3位にしてほしいなと思います。
――次は内閣杯全日本大学選手権、最後の団体戦ですがどうでしょうか
学生の目標である3冠というのはもう無くて、2冠も無くて、最後の1つなので優勝目指してよりチームをまとめて大阪に乗り込んでいきたいなと思います。
太田拓弥コーチ
――総合優勝まであと2点でしたが
前川(前川勝利、スポ3=茨城・霞ヶ浦)が国体で負けた園田(拓大・園田新)に勝ったり、大坂(大坂昂主将、スポ4=秋田商)に関してもここ2試合連続で負けている者にしっかり勝ってくれて。ただ(大坂には)あそこで勝ったら準決勝も勝ってほしかったですけど。そこがたらればですけど勝っていれば総合優勝の可能性もあったのですが。やっぱりあと1勝というのが挙げられなかった差が団体優勝取れなかったかなと思います。
――大坂選手はどうでしょうか
キャプテンとして良く引っ張っていってくれますし、インカレ(全日本学生選手権)で負けて国体(国民体育大会)でも負けた米平選手に勝つことができたのでそこは良かったです。ただ本人にも話したのですが、全日本とか五輪を目指していく選手なので、あそこで接戦しても次の試合でしっかり勝たないと、上では絶対勝てないので、あそこでしっかり勝ってもっと上を目指してほしいなと思います。
――優勝した北村選手(北村公平、教4=京都八幡)については
北村は本来より1階級上でやりましたけど、よく優勝してくれたと思います。決勝戦は危なかったですけど、最後ああいったかたちで何か一つ持っているのでそういう展開になって、階級上でよく頑張ってくれたと思います。
――胴タックルを有効だったように見えました
そうですね。北村はフリースタイルの選手で、相手はグレコローマンしかやっていないので、胸を合わしていくようなレスリングだと前半押され気味で、ちょっと距離を置いて。1ピリオドの最後の方にちょっと距離置いてタックルいくようなシチュエーションが何回かあったと思うのですが、あれが有効に見えたのでハーフタイムの時にそれでいこうという話をしました。それで最後決めてくれたので良かったとも思います。
――園田選手へのリベンジを果たした前川選手は
国体で(園田に)負けて。国体の負けも自分から技を仕掛けてのミスでの負けだったので、そこを無難にいけば勝てるチャンスはあると思っていました。あとは最初のアタックで足を揃えないこととか、腰を落としていくこととか、基本的なことをしっかりやれば勝てるとは思っていたので、それをしっかりやってくれてああいう結果がついてきたのじゃないかと思います。
――来月の内閣杯全日本大学選手権に向けていかがでしょうか
今回も、きょねんもそうだったのですが、誰かがあと1勝とか、誰かがあそこでポイント取っていればとか、そういう戦いに間違いなくなると思うので。今回は正直グレコローマンに関しては日体大の方が層も厚いですし、レベル的にも上なので、その上のチームを追い詰めたということはすごく自信にもなったと思います。なので、この大会の結果を次につなげて、最後まであきらめないレスリングをして、優勝につなげていきたいと思います。
大坂昂主将(スポ4=秋田商)
――やはり目標は優勝ということだったと思うのですが
コーチにも言われたのですが、この後全日本とか五輪を目指していく選手は接戦したからといって次の試合で負けていたら勝ち上がれないぞという話をいただいて。本当にその通りだなと、キャプテンとしてあそこでは絶対勝たなくてはいけなったのですが、反省しなくてはいけないなと感じました。
――敗因はどう分析されてますか
(自身が)2連敗している相手に勝って、相手が直前の試合が短くて、体力を戻せなかったというか、体力が足りなかったです。練習が足りなかったです。
――米平選手との一戦はいかがでしたか。連敗している相手に勝ちましたが
なんとしても勝ちたいと思っていたので。勝ったのですが、その後優勝しなければ同じことだと、優勝しなければ意味ないので、反省することが多かった大会でした。
――チームとして、1か月後に内閣杯全日本大学選手権があります
今回は2点差で負けて悔しい思いをして、リーグ戦(東日本学生リーグ戦)も決勝で負けたので、内閣こそは優勝するぞという気持ちで、残りの日にちを全力で練習します。
北村公平(教4=京都八幡)
――異なる階級での2連覇おめでとうございます
2連覇できたことは素直に嬉しいです。ただ決勝のあの勝ち方が、相手のケガというアクシデントではありましたが、盛り上がりに欠ける決まり方でした。それがちょっと後味が悪く、悔しいですね。色んな方に「あれはおまえの勝ちだよ」と言われましたが、やはりワセダみんなでワーッとなって勝ちたかったなというのが悔やまれますね(笑)。
――準決勝、決勝どちらも逆転勝ちという形になりました。前半相手にリードされていたときはどういった心境でしたか
グレコローマンが専門ではないので、最初にポイントを奪われてもそんなに慌てることはありませんでした。「いずれ取れるだろう」とそんなに焦らずにのほほんとやっていた気がします。後半に温めていた技を出そうとずっと狙っていたので、それが後半にかかったことで逆転できました。
――決勝戦に太田コーチから試合中アドバイスをもらっていましたが
相手がぐいぐい差してくるタイプで、僕がそういう技術がない分、第1ピリオドは押され気味でした。僕の武器である胴タックルを活かせるように、第2ピリオドでは相手と距離を取ってから、バチーンとタックルに入る風にしようと動き方を変えました。狙ってたことをできたと思います。
――専門外のグレコローマン、さらに階級を一つ上げての出場でしたか
特に普段フリースタイルでやっていることをグレコローマンで出すだけですし、階級の面もちょっと大きい相手を対戦するだけだという感覚だけです。普段やっていることそのまま出せば結果に繋がるだろうという風に考えていたので、とくに階級やスタイルが違うことには気負いや準備はしていなかったです。変に考えてしまうと、グレコローマン専門の選手に対して、グレコローマンで勝負しても勝てません。だったらフリースタイルがやるグレコローマンという形のほうが勝てるかなと思い、僕はいつもそうやっています。
――次は内閣杯全日本大学選手権、フリースタイルです
そうですね。本職ですし、最後の団体戦になります。今回も僅差で負けてしまったので、リベンジというか取り返す気持ちで臨みます。僕も優勝し、チームも優勝させるように頑張っていきたいと思います。
前川勝利(スポ3=茨城・霞ヶ浦)
――2連覇おめでとうございます
今大会は2連覇がかかっていて、インカレ(全日本学生選手権)は出場せず、拓大の園田選手が優勝していて「王者不在」などとも言われていましたが、その分しっかりと勝たなくてはならないという気持ちでした。正直優勝できたことにはホッとしていますが、心境としては団体優勝できなかったことが大きく、個人優勝できても嬉しくないなというのが本音です。悔しいです。
――やはり団体優勝は目標としてきましたか
そうですね、昨年も優勝を期待されていましたが出来なくて、今回も決勝前までは優勝できるのではという期待があったので。チームで目指していた団体優勝というものが大きかったですね。
――準決勝でその園田選手に勝利しました
序盤から自分のペースに持ち込むことができました。しっかりと自分の動きに持ち込んで、相手を動かして、しっかりとテイクダウンを取ることができました。その後も、0ポイントにはなりましたが、ローリングから持ち上げてと場外に放り込めたので、体はさえてるなという印象でした。最終的にフルピリオドまで持ち込まれて、バテたなというのがあったので、そこがこれからの課題になります。
――決勝は先制される展開となりましたが
審判にポイントを無効にされてしまったりもしましたが、誰が見ても僕が勝っているという試合をするのが使命だと思うので、これに関しては僕の技術的なミスがあったのだと思います。2点取られたことがなければ、無失点で試合を終わらせて優勝できましたが、やはりぬかりなくやるという課題ができました。全日本もありますので、学生でポイントを取られてはいけないなという部分はあります。
――今大会への調整はうまくいきましたか
そうですね、国体のときは世界選手権からのスパンが2週間と短く、10キロぐらい減量しました。しかし今回はそんなにすぐに増えず、体重調整も計量日の朝、2キロぐらい落としただけで終わりました。体重調整が非常にうまくいきました。国体の時に動けなくて、体重には特に気を払っていたというのもあります。
――きのう優勝した中井選手と二人でツインタワーと呼ばれているそうですね
ツインタワーでダブル優勝できたので、嬉しいです。来年はグレコローマンはごっそり抜けてしまって、この二人しかいないので、来年は引っ張っていきたいと思います。
――次の内閣杯全日本大学選手権に向けて一言お願いします
次はフリースタイルということで専門外ですが、昨年優勝しているので、プレッシャーもあるとは思います。しかしそういった中で、しっかりと2連覇を目指し、全日本王者の岡選手、山梨学院大のアレッグ選手などを倒して、個人優勝とあとやはり団体優勝をもぎ取れるように頑張っていきたいと思います。