チーム力でつかんだ!内閣杯初優勝で有終の美

レクリング

 念願の団体タイトルを手にした。内閣杯全日本大学選手権(内閣杯)の2日目で個人の優勝者は出なかったが、全員が3位以上に入って24点を獲得。得点の伸びなかった日体大、山梨学院大を抑えて見事に団体優勝となった。この優勝は早大にとって今季初タイトルでもあり、内閣杯制覇も初の快挙になる。また66キロ級優勝の保坂健(スポ3=埼玉栄)が最優秀選手賞を受賞した。

太田コーチを部員全員で胴上げ

 最後に笑ったのはワセダだった―――。全試合終了後、マット上には選手たちの歓喜の輪ができる。そして山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)や太田拓弥コーチといった
指導陣、さらに大坂昂主将(スポ4=秋田商)が何度も宙に舞った。個人の優勝者は1人のみだったが、7階級全てで5位以上に入賞。ことし最後の団体戦でチーム力を見せつけて大会初優勝を勝ち取った。チーム力は応援にも現れる。これまで内閣杯が大阪で開催される場合は選手と控えのみで試合に臨んでいたが、今大会は全部員が集結しての大声援で選手を後押し。大坂主将が掲げてきた「全員が同じ方向を向く」という目標がついに結実した。

 団体優勝に向けて太田コーチが「鍵だった」と挙げたのは大坂主将の初戦。初日終了時点で団体2位にいた山梨学院大の吉川裕介との勝負だった。しかしこの試合は大坂主将が堅実な試合運びを見せて勝利。さらに準々決勝では全日本大学グレコローマン選手権で敗れた横井健人(中京学院大)も撃破。準決勝で敗れたが、3位決定戦に進むとテクニカルフォールで快勝を挙げる。この時点で北村公平(教4=京都八幡)、前川勝利(スポ3=茨城・霞ヶ浦)の決勝進出が決まっており、団体優勝はほぼ確実となった。前川は決勝で全日本学生選手権王者のアレッグ・ボルチン(山梨学院大)と対戦。最後は必殺のタックルの前に沈んだが、フリースタイルで敵なしのボルチンに対して左差しからの攻めという対処法を示した。

大坂主将は初戦で山梨学院大の選手を破った

 ことしのワセダにとっても、4年生にとってもチームで戦うのは最終戦。有終の美を飾るタイトルとなった。その4年生に対して指導陣からは「感謝している」(山方監督)、「4年生のお陰で優勝できた」(太田コーチ)とねぎらう言葉が続く。また、部としては今回の初優勝で新たな歴史が切り開かれた。下級生にはこの栄光を受け継いで、より輝かしいものとしていくことが期待される。

(記事、写真 三尾和寛)

結果

大学対抗得点 早大 49点 優勝

※保坂が最優秀選手賞を受賞

84キロ級  北村 2位

96キロ級  大坂 3位

120キロ級 前川 2位

コメント

山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)

――団体優勝という目標を実現しました

きのうきょうと出た選手が全員点数を取って、個人個人では勝ちきれないところ、反省する点があったとしても、最低限の役割をみんな果たしてくれたかなと思います。その結果が優勝でした。これまで大阪で大学選手権(内閣杯全日本大学選手権)がある時は選手と控えの選手だけで試合に挑んでいたのですが、ことしは全部員で優勝の場にいようということで全員この場に来ています。応援についての点数は無いですがどこの大学よりも数段勝っていた部分かなと。それも含めて優勝できたと思っています。

――チーム力での優勝ということでしょうか

個人個人の頑張りが集まった結果のチーム力ということだと思います。

――その中で印象に残っている選手は

みんな気持ちが入っていたと思います。その中でも特に優勝した保坂(保坂健、スポ3=埼玉栄)が、減量がきつかったので計量失格ということも想定していたところをきっちり落として、インカレ(全日本学生選手権)の時と比べると動きは悪かったのですが気持ちでカバーしてくれました。保坂にとっても部にとっても今後のきっかけを与えてくれる試合だったのかなと感じています。

――最後の団体戦で優勝となりましたが、4年生へ一言お願いします

出場した4人と試合に出ていない4年生も含めて、私の見えないところで部を支えてくれた4年生だったと思うので感謝しています。この大会初優勝で記録として残って、4年生自身にも、らいねん以降の部にとっても大きな優勝なのかなと思います。

太田拓弥コーチ

――チーム力で勝ち取った団体優勝という印象を受けました

そうですね。下の階級から120キロ級まで全員5位以内に入ったということが間違いなく原動力になったと思います。それぞれの役割を果たしてくれたかなと思いますね。

――きょう出場した選手では、北村選手(北村公平、教4=京都八幡)は決勝まで危なげない勝ち方でした

組み合わせから見ても決勝までは絶対に行くと思っていました。決勝の相手もリーグ戦では勝っている相手だったのでもっと接戦になるかなと思いましたけど、相手の方が気迫で上回っていたかなと思いますね。

――最後は微妙な判定でもめましたが

場外際の判定がちょっと微妙だったということがあるのですが、その後バック取られてグラウンドも返ったりしていたので、今回の負けは負けでしっかり認めて次の大会に、本人は次の五輪を目指して現役を続けるということなので、今回の反省を生かしてやってもらいたいと思います。

――120キロ級はアレッグ・ボルチン選手(山梨学院大)が強かったという印象でした

1ラウンド目はいい勝負ができたのですが、なかなか普段の練習であんなに大きな体で低く入ってくる選手とやりきれていないので。普段の練習で96キロ級全日本チャンピオンの山口(山口剛、平24スポ卒=現・ブシロード)とかともっとやっていけば勝てるチャンスは十分にありますね。ただ今のままだとグレコローマンスタイルでの五輪出場も厳しいと思うので、ボルチンが嫌がっていた差しを、差してからの攻撃力を増していきたいなと思います。

――左から差せという指示をかなり出していました

左差しからポイント取っていたので。相手が嫌がっているのは、前の試合を見ていてくっつくのを苦手としている感じの動作をしてわかっていました。前川が勝つとすればくっついて最初にポイント取ったような流れでいくのが見いだせるかたちだと思います。しかし相手の力が上だったので、あと1年間間違いなく彼とは勝負所で当たりますから、なんとか勝たすことができるようにもっともっと練習させていきたいです。

――最後に大坂昂主将(スポ4=秋田商)ですが

全グレ(全日本大学グレコローマン選手権)でも後一歩で団体優勝を逃していたというのがあったので、きょう総合優勝するのは1回戦の山梨学院大(吉川裕介)との試合が鍵だと僕は思っていました。そこで手堅く勝ってくれたのと、2回戦も全グレで負けている相手だったのですが、そこでしっかり勝ってくれたのでほぼ優勝が確実になって、よくやってくれたなと思いますね。

――最後の団体戦で優勝となりましたが、4年生へ向けて一言お願いします

4年間いろいろとしんどい思いもしたとは思いますが最後にこういったかたちで優勝して、4年生のお陰で優勝できたと思います。今後五輪を目指す者が何人かいるので、もっともっと厳しい練習をして五輪に出てもらいたいと思いますし、それ以外のメンバーには本当にお疲れ様でしたと言いたいです。

大坂昂主将(スポ4=秋田商)

――主将として団体優勝。どうでしょうか今のお気持ちは

もう最高ですよ(笑)。僕が負けてしまって申し訳ない気持ちはあるのですが、全員が5位以上に絡んでくれて。4年生が優勝していないにもかかわらず保坂(保坂健、スポ3=埼玉栄)が先陣切って優勝して、前川(前川勝利、スポ3=茨城・霞ヶ浦)も2番、黒澤(黒澤翔、スポ2=茨城・鹿島学園)も5番に。黒澤にはもう一つ上に行ってほしかっですけどね。ケガがあってしょうがないかなとも思いますが、あいつはもっと上に行けると思うので。下級生3人が本当に4年生を支えてくれて、みんなが大阪まで応援に来てくれて、本当に心の支えになりました。4年生同期はもちろん下級生にも感謝です。

――チーム力の勝利ということですね

そうですね。「全員が同じ方向を向くように」と幸太郎先輩(田中幸太郎前主将、平25スポ卒=現・阪神酒販)がよく言っていて、良い言葉だなと思って、それさえできれば三冠も夢じゃないと思っていたので1年前、主将になった時に同じ言葉を使わせてもらいました。三冠を取るために全員が同じ方向を向いて、というかたちで。ほんとに同じ方向を向けているのかなと思った時期もあったのですが、最終的にこういった最高の成績で終われて、みんなも応援してくれましたし同じ方向を向けたのかなというのがキャプテンにとって良かったです。大変でしたけど勉強になりましたし、下級生にも本当に感謝です。

――個人では1回戦が団体優勝を争う山梨学院大の選手との試合でした

1年生だと思いますが前川の高校の霞ヶ浦の出身で、僕もグレコローマン専門なのでフリーの選手とは相性が悪いと思います。その中でどう勝つかというので、山梨とは団体優勝も絡んでいますし、無難に6分間戦って勝てたので良かったかなと。でもやっぱり山本(山本康稀、日大)との準決勝ですね。さっきビデオを見たのですが反省するところがたくさんありました。あそこでちゃんと勝って優勝したかったです。今回は僕が負けても下級生が頑張ってくれて団体優勝できたのですが、この間の全グレ(全日本大学グレコローマン選手権)みたいに僕が優勝していたら団体優勝していたという場面もあるので、やはりキャプテンが勝たなければチームというのは。その中で下級生に助けられたと、僕もまだまだこれからだというのが勉強になりました。

――ことしは天皇杯全日本選手権が残っています

卒業しても競技を続けていくので、いままでは自分の事よりもチームの事を最優先に考えていたのですが、今度からは自分の事だけ考えてやればいいので本当に楽しみです。斎川選手(斎川哲克、両毛ヤクルト販売)がぶっちぎりでいるので、勝ちたいですけどそんなに現実は甘くないというのはわかっているので少しずつ詰めていって、最終的にはリオデジャネイロ五輪の代表になれるように。リオの代表になってメダル取るというのが今の一番近い目標なので、そこにつなげられるような試合にできたらなと思います。

北村公平(教4=京都八幡)

――2位という結果はどうでしょうか

結果は結果で何位でも良かったのですが、最後に納得いかない判定をされて。今回は4年最後の試合ですし、決勝行く前に団体優勝がほぼ決まっていたので楽しく試合が終われれば良いと思っていたのですが、納得いかない判定で終わってしまって。すっきりしないと言えばしないです。まあ団体優勝したのでプラマイゼロかなと。

――団体優勝という面ではどうでしょうか。最後の大会で優勝となりました

最後の最後にチームが一つになったなという感じはしますね。4年生が誰も優勝していない中で3年生の保坂(保坂健、スポ3=埼玉栄)が優勝したり、前川(前川勝利、スポ4=茨城・霞ヶ浦)が2番に入ったり、黒澤(黒澤翔、スポ2=茨城・鹿島学園)も厳しい60キロ級で5番までに入ったというのは、後輩たちの支えがあって不甲斐ない4年生が支えられたという感じなので。そういう意味でチームが一つになったので良かったなと思います。

――今のお気持ちとしては

いつまでも納得いかないとぐちぐち言ってもしょうがないと思うので、次の天皇杯(天皇杯全日本選手権)で、もう決めたのですが天皇杯は74キロで出るつもりだったところどうしても納得いかないので84キロ級でやり返します。周りがどう言おうと84キロ級で。

――赤熊猶弥選手(拓大)にリベンジということですね

そうですね。そういうかたちで、もう決めました。

――太田拓弥コーチから卒業後も五輪を目指すということを聞きましたがその点はどうでしょう

社会人になると大会数も減ってきますし、一戦一戦が大事になってくるので今よりも一つ一つ目の前の大会を精いっぱいやろうという気持ちですね。

前川勝利(スポ3=茨城・霞ヶ浦)

――2位という結果はどうでしょうか

最後勝って終わらせたかったですけど力が足りなかったですね。リーグ戦(東日本学生リーグ戦)の時より差が縮まったという手ごたえはあったので次ですね。

――左差しからという攻略法が見えてきた印象でしたが

僕はグレコローマン(グレコローマンスタイル)専門で差ししかないので、2回戦目から左差しで攻める展開でしたし。相手も差しが苦手だというのはわかっていたので差していったら一つとれてこれはいけるかなというのは思ったのですが。やはりタックルが、決勝戦で初めて片足タックルを取られて、やってくるのでびっくりしました。

――力が強いのでしょうか

タックルが早いので、そういうところの処理をもうちょっとしっかりしなければというのはあります。見切れていたのですが、最後持ち上げられた時は隙をつかれて綺麗に入られたのでその時はもうやばいなという感じでした。

――団体としては優勝でした

そうですね。やっぱり最後勝って終わりたかったので後味悪いなというのはあるのですが、団体優勝を目標にしてきていて。全グレ(全日本大学グレコローマン選手権)の時は後一歩で優勝できなかったのが、今回は一人一人が本当に頑張ってチーム力だなという優勝ですよね。結果として団体優勝できて、初タイトルなので良かったなと思いますね。

――個人としては天皇杯(全日本学生選手権)があります

天皇杯はグレコローマンで本業なのでしっかり。一番しか、勝つことしかないのでとりあえず国内では天皇杯しっかり勝って、また来年世界へという。来年へ向けて弾みをつける重要なポイントなので。