ことし最後の団体戦となる全日本大学選手権。各大学の代表1名が出場する個人トーナメントをフリースタイル(フリー)7階級で行い、その成績によって振り分けられる得点で団体優勝も競う。初日のきょう実施されたのは軽量4階級。このうち66キロ級では保坂健(スポ3=埼玉栄)が優勝し、全日本学生選手権(インカレ)に続く優勝で学生2冠を達成した。この他に3位1名、5位2名で、団体は25点となって3位。首位・日体大とは11点差がついた。
保坂は勝負強く勝ち進んだ
「しんどかった」(保坂)、「しぶとい試合」(太田拓弥コーチ)。コメントが示す通り、保坂の2冠は接戦の末に達成された。1回戦がいきなりインカレ決勝の再戦となる砂川航祐(日体大)とのカード。インカレでは大差をつけてたたき伏せたが、今回はリードされる展開となって2ピリオド(P)の中盤まで試合が進んだ。しかし最終盤でバックを取ってローリングを決めて逆転勝利。さらに準決勝も1点リードしながら2P2分30秒過ぎに背後に回り込まれる。これで逆転負けかと思われたが必死の防御で抜け出ると、試合を諦めてしまった相手を抑え込んでフォール勝ち。減量と他校からのマークという二重苦を背負っていても、「減量できつかった分、試合できついところをいけた」(保坂)という精神力で栄冠をつかんだ。
74キロ級では花山和寛(社4=愛媛・八幡浜工)が3位入賞。準決勝はテクニカルフォールで敗れたが、3位決定戦では「吹っ切れていた」(花山)と鮮やかな首投げからフォールへ。グレコローマンスタイル66キロ級が専門の花山だが、インカレに続いてフリー74キロ級3位となって、フリーへの対応力を再び見せた。また黒澤翔(スポ2=茨城・鹿島学園)は準決勝でインカレ王者の鴨居正和(山梨学院大)から先制し、一時は4点差をつける健闘。結果的に敗れはしたが太田コーチが「確実に成長している」と口にする戦いぶりで60キロ級5位に入った。
3位決定戦でフォール勝ちし、歓声を浴びる花山
きょうは保坂をはじめとして、出場した4選手全員が5位以上に入って早大の層の厚さを見せた。あすは残る重量3階級のトーナメントが行われる。太田コーチはミーティングで、団体での11点差は考えずに「1試合1試合、自分の試合だけ集中しよう」と選手たちに呼びかけた。目の前の相手を確実に倒すことで一歩ずつ栄光へ―――。勝負の2日目となる。
(記事、写真 三尾和寛)
結果
早大 25点 3位
55キロ級 西洸大(スポ3=京都・網野) 5位
60キロ級 黒澤 5位
66キロ級 保坂 優勝
74キロ級 花山 3位
コメント
太田拓弥コーチ
――初日を終えていかがですか。全日本大学グレコローマン選手権よりやや良い成績でした
そうですね。保坂(健、スポ3=埼玉栄)もすごくしぶとい試合をしてくれましたし。ただ黒澤(翔、スポ2=茨城・鹿島学園)が、準決勝は後一歩のところで勝てる試合だったので残念です。しかし試合の内容としては確実に成長している内容だったので。3位決定戦で課題としている点が出てしまったかなとは思いますが、そこを修正していけばこのレベルでも優勝できる力は間違いなくついているという自信になったと思います。
――その鴨居正和選手(山梨学院大)との準決勝について
いい流れでポイントも取って、自分の攻めている投げで(カウンターにあって)投げられていたのであの点数はしょうがないと思います。ただ、相手が1回戦から激戦で上がってきていて試合の中でひと呼吸おいて休んでいるところがあったのですが、そこを黒澤が逃してしまって、(鴨居が)ポイント取る時にババッと取りにきて。そこをもっと攻めていくようにしてもっていけばあのような展開にはならなかったとは思います。それでもリーグ戦(東日本学生リーグ戦)ではほぼ歯が立たなかった選手に対してあれだけの試合ができたということは確実にあのレベルにいるということで自信はついたかなと思います。
――3位決定戦で見えた課題というのは
横についてしまうのが課題ですね。逆に相手の横についていくのがレスリングなのですがどうしても半身になって受けてしまう。そのかたちで自滅するような感じで取られたポイントが5点6点あったのでそこをしっかり0に抑えて、攻撃力はあるのでそこからの攻撃というのを身につけていけばこのレベルで優勝できると思いますね。
――優勝した保坂選手はかなり接戦が多かったですが
減量がきつかったというのはあるのですが、そういった中でもラストの何秒かで逆転するという試合が何試合かありましたし、その勝負強さというのは他の選手にも見習ってほしいですね。チームを良い雰囲気に持ち上げていくような内容で手堅く勝ってもらいたかったのですが、減量とかのきつさを考えれば上出来かなと思います。
――4年生の花山(和寛、社4=愛媛・八幡浜工)選手、西(洸大、スポ4=京都・網野)選手はいかがでしょう
最低限のことはやってくれたかなと思います。もっといい試合をしてもらいたいという部分はあるのですが、最低限3位決定戦へ行って。花山は自分の得意とする技で勝ってくれたことで良し、かなと。西も3位決定戦ではポイントにはつながらなかったのですが攻める姿勢というのをみんなの前で見せてくれたので、あすの重量級につながっていくのじゃないかなと思います。
――団体では11点差を追って3位ですが、あしたへ一言お願いします
総合優勝のことを気にすると目の前の試合も勝てなくなるので、さっきのミーティングでも話したのですが、総合優勝というのは後からついてくるものなので1試合1試合、自分の試合だけ集中して自分でやってきたことをすべて出し切るということをやってくれれば間違いなく総合優勝にもつながっていくと思います。
花山和寛(社4=愛媛・八幡浜工)
――順位としてはインカレ(全日本学生選手権)と同じになりましたが気持ちとしてはいかがでしょう
自分の役割を果たせたのじゃないかなと思います。
――だいたい目標通りですか
目標は優勝でしたが階級もスタイルも違うところでやったわけで。優勝したかったですけどレベル的には下だと思っていたので妥当な順位かなと。
――左差しから攻めるパターンが多かったですが
毎日フリー練習している相手に、自分がフリーの構えでいっても勝てないので、自分がやっているグレコローマン的な攻めで戦っていこうということで左差しで攻めました。何回もタックルでくぐられちゃったのですが。
――3位決定戦の最後で投げ技が決まった瞬間はどうでしたか
準決勝で負けて吹っ切れていて、自分でできることをしようということでいつもやっている技をかけました。
保坂健(スポ3=埼玉栄)
――インカレ(全日本学生選手権)に続いて二冠目となりましたが
正直嬉しいというよりほっとした感じですね
――それはインカレ王者として守るものがあるということでしょうか
いや、守るというよりはチーム的に。取れるところということで、僕のところは(例年)優勝者が出ているので、そこでほっとした部分はあります。
――2試合目の砂川航祐選手(日体大)はインカレ決勝の再戦で、接戦となりました
しんどかったですね。
――その後の準決勝もそうですが、最後に点を取って逆転できた要因は
減量がきつかったからですかね。試合中に僕自身もあきらめたくて、もういいやと思っていたのですが、そういう時にちょっと冷静になって何のために減量したんだろうなと思って、ここであきらめるのはもったいないなと、それでもう一回いけたので。減量できつかった分、試合できついところをいけたのではないかなと思いますね。
――決勝はどうでしょうか
決勝は準決勝から時間が空いたので、体的にも気持ち的にも楽で、自分の片足タックルができたと思います。
――決勝前は早い時間からマットへ上がって準備されていましたね
普段あまりアップしないのですが、さすがにこぼしてはいけないなと思って普段よりは念入りにやりました。
――天皇杯(天皇杯全日本選手権)へ向けて
学生でタイトルをいくつ取っても天皇杯とか全日本で勝てなければレスリングやっている意味が無いので、しっかり勝てるように調整していきたいです。