『世界』へ向けて意欲十分

レクリング

 16日からハンガリーのブダペストで始まる世界選手権に向けて、韓国遠征や長野県の菅平での練習など数次の合宿を行ってきた日本代表チーム。このうちグレコローマンスタイル(グレコローマン)代表は、11日から味の素ナショナルトレーニングセンターで最終合宿に入った。その初日は公開練習となり、初の大舞台へ挑むグレコローマン120キロ級の前川勝利(スポ3=茨城・霞ヶ浦)は実戦を意識したメニューをこなした。

グレコローマン選手団(前川は前列最右)

 「前川、もっと足を動かせ!足から攻めろ!」という激しい声がコーチ陣から飛ぶ。1時間半ほど練習の最後は、1分間のスパーリングを連続して10回行う厳しいもの。前川も、相手となっているグレコローマン96キロ級代表の斎川哲克(両毛ヤクルト販売)も、全身にびっしりと汗をかき、肩で息をしながら、組み合って技を狙う。斎川はロンドン五輪に出場し、今回の世界選手権代表の座も圧倒的な力で勝ち取った男。この実力者に胸を借りながら、前川は足を使っていく攻め方の習得に取り組んだ。グレコローマンでは腰から下に触れることは許されないが、相手を押し込む時に上体だけを使うのではなく、下半身主導で動いていくことは有効になる。しかしその技術はまだ前川の中で完成されておらず、斎川の組手のうまさとスタミナの前に翻弄(ほんろう)される場面も多かった。合宿中に足を使った攻撃をどれだけ自分のものとできるかが、目標とする1勝への鍵となるだろう。

 合宿直前の8日に2020年東京五輪の開催が、翌日にはその東京五輪でのレスリング実施が国際オリンピック委員会で決定。前川も7年後の五輪出場を意識するようになった。しかし開催国として出場枠が確保される東京五輪にだけ出場し、「運が良くて東京に決まったから出られたのだと思われるのは嫌」と、プライドものぞかせる。最高のプランと語る「リオデジャネイロに行ってからの東京」に向けて、まず狙うのは2016年のリオデジャネイロ五輪出場。その夢へのスタートとして、ことしの世界選手権がある。

組手の確認をする前川

グレコローマン120キロ級は世界とのレベルの差が大きく、近年、日本代表は世界選手権や五輪で目立った成績を残せていない。しかし前川は、ことし7月のユニバーシアードで欧州選手権3位のバシク・イェイアザリアン(アルメニア)から首投げでポイントを奪い、「組んでも(勝負)できるのかな」と手ごたえをつかんだ。初めて出場する「楽しみ」な世界選手権で、前川の力がどれだけ通用するかに注目が集まる。

(記事、写真 三尾和寛)

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コメント

前川勝利(スポ3=茨城・霞ヶ浦)

――いよいよ世界選手権が近づいてきましたが、いまどのような心境ですか

初めて出場するので、どんな大会なのかと楽しみにしている部分が大きいですね。

――緊張というよりは期待感の方が強いですか

そうですね。あとはやるだけです。どうしようどうしようと考えるより、今自分ができることをどれだけ出せるかということなので。

――今は調整の具合としてはどうでしょうか

悪くなくきています。試合が最終日(22日)で、計量も一番遅いので徐々に(体重を落としている)という感じです。

――準備期間を長めにとっているのでしょうか

あまり一気にやると足に(無理が)きたりだとか、体調が狂うので長めにしています。僕は食べない日をつくらないようにしていて、普段は人の倍以上食べているのを並ぐらいにしておけば体重は落ちます。

――今はどういった練習をしていますか

きのう日体大に練習に行かせてもらって、斎川先輩(斎川哲克、両毛ヤクルト販売)や松本先生(松本慎吾、日体大監督)にいろいろとアドバイスを頂いてきたので、その時に言われたことを意識しながらやっています。

――「足から攻めろ」という声がコーチ陣から飛んでいましたが、そういったあたりですか

そうですね。そういったことをやった時は、相手が嫌だなと感じていると分かりました。でも向こうの方が強いので、ばててしまって最後はボコボコにされたのですが(笑)。

――斎川選手とのスパーリングですね。斎川選手はかなり強いですか

強いですね。世界レベルの選手です。

――西口監督(西口茂樹、グレコローマン日本代表監督)は「先に攻めていく」ということを全体のテーマにしているとおっしゃっていましたが、その点はいかがでしょうか

待っていると外国人は力が強いのでやられてしまうのですが、相手が来る前に自分から出ていってどんどん攻撃していくと相手が疲れるので、有効な手です。攻めることが最大の防御なので。外国人選手はスタミナがあまり無くて、日本人の方があると言われているので、攻めて、そこでスタミナを奪っていこうというのはありますね。

――ユニバーシアードの際に外国人選手との試合での手応えをつかんだということですが

ユニバーシアードではヨーロッパ3位の選手(バシク・イェイアザリアン、アルメニア、2013年欧州選手権3位)を1回首投げで投げて、その時に組んでもできるのかなという手応えは感じました。良い収穫をユニバーシアードでつかめました。

――今大会の目標は

まずは1勝しなくてはいけないので、勝たなければ始まらないので、まずはそこですね。

――話は変わりますが、先日、東京五輪の開催決定とレスリングの五輪への競技復帰が決まりました。このことをどう受け止めていますか

今21歳で、7年後は28歳で、レスリングは28歳ごろが一番強い時と言われているので、ちょっときたなという感じですね(笑)。

――東京五輪も狙っていくと

そうですね。このまま全日本もずっと連覇して、若い選手が出てきてますけど、どんどん蹴散らして勝っていきたいです。でも東京五輪の時は開催国としての出場枠があるということはほぼ決まっているので、リオデジャネイロ五輪にいってからじゃないと意味が無いと思っています。リオデジャネイロに出場して、東京にも出場ということじゃないと負けというか、運が良くて東京に決まったから出られたのだと思われるのは嫌ですね。しっかりリオデジャネイロに行ってからの東京と、それが一番の、最高のプランですね。

――そこに向けて、今回の世界選手権ということですね

そうですね。大事なスタートだと思っています。