第4回には、アルペン競技の押切凌(スポ4=北海道・札幌第一)、中川慎(スポ3=北海道・札幌第一)、石島裕一郎(スポ1=北海道・札幌第一)の3人が登場する。学年は違えど、札幌第一高校出身でアルペン競技という共通点を持つ3人。インカレに向けての意気込みだけではなく、高校時代のお話も伺った。
※この取材は11月8日に行われたものです。
「シーズンの中で成長できた」(中川)
昨季のインカレでは全種目で入賞を果たした中川。今年は優勝を狙う
――まずは中川選手の他己紹介をお願いします
石島 慎さんについて…。
中川 結構難しい。
押切 僕は、(中川と)10年くらいの(付き合い)。小学校の時からチームも一緒で、高校も一緒、大学も一緒という感じなのですが、それくらい一緒にいるのにまだ掴めない部分が多くて。いい意味で言えば魅力的な人だと思うのですが…。魅力的な人っていうことにしておいてください(笑)
石島 自分も高校、(石島が)高1の時に(中川が)高3で。冬のシーズンも一緒にいることが多いので、面白い方だなといつも思います。
中川 そうですね。よく言われる褒め言葉です。
一同 (笑)
――続いて石島選手の紹介をお願いします
押切 いいところのおぼっちゃんっていう感じですね。
中川 おりこうさん。
押切 基本的にニヤニヤしています。
石島 ニヤけ顔って言われます(笑)
中川 モテるんですよ。『1年生の中で誰と付き合いたい?』みたいな質問すると全員が石島と言うくらい。
押切 消去法かもしれないけど。
一同 (笑)
――最後に押切選手の紹介をお願いします
中川 普段は全然優しいのですが、たまに怒ったりする、メリハリのある印象があります。僕の場合は些細なことでもそう(怒られるの)ですが、悪いことは悪いと(言う)。僕はそういう風に言えないので、ちゃんとダメなことはダメだよって誰にでもはっきり言えるっていうところは魅力だなって思います。
押切 愛情ですね。愛情。長年一緒にいるとなんていうか他の人よりも小さいことが気になってくるし、愛情があるじゃないですか。それと一緒です。普通の人だったら『どうでもいいや』って思うことでも、気になるところがあったら結構言っちゃうタイプです。裕ちゃん(石島)には優しいと思うんだよね。慎よりは。
石島 優しいです。
中川 ちょっと分からない(笑)
石島 (押切は)4年生っていう感じです。しっかりしています。自分にはまだないようなところを持っている先輩です。
押切 それだけ?
一同 (笑)
石島 出てこない…。
――3人とも札幌第一高校出身ということで、札幌第一あるあるなどはありますか
押切 球技がみんなうまいです。バレーとか。サッカーよりはバレーの方がうまいよね。週1回、木曜日は球技の日で。練習が。みんなガチでやっていたので。大学来ても一高(札幌第一高)の人はみんなうまいよね。
中川 あるあるっていうより、特殊な文化なんですけど。朝先生を起こしに行くやつ。
押切 冬?
中川 冬。先生を集合の20分前に1年生が起こしに行かなきゃいかないっていう。合宿中。
――先生はそれまで寝ているのですか
石島 大体起きてる。
押切 起きているのですが、「起こしに行こう」って(言って起こしに行く)。
中川 (先生を)起こしに行って、もう1回(自分が)寝るっていう。それでまた5分前くらいに起きる(笑)
押切 後は、冬になると雪上からおりて、その後ランニングとかをするのですが、結構各自でやる学校が多い中、一高はみんなでやるのでさぼれないですね。さぼる人も他の学校にはいるのですが、(札幌第一高は)さぼれないので。結構キツいよね。
中川 昼寝する時間がない。
石島 (笑)
押切 朝バスで携帯を没収されたりとかする。
中川・石島 あー。
押切 学校のバスで移動するのですが、乗って、出発の準備ができて、携帯を1年生が集めるっていう。昔は集めてはなかったのですが、厳しくなって。でも慣れたよね。
中川 みんな本とか読み始めていましたね(笑)
――ここからは競技についてお伺いします。昨シーズンの競技成績を振り返ってみていかがですか
中川 僕は、昨シーズンは後半の方に伸びてきて。今まで一番良かったという印象です。大きなけがが一つもなくて。ずっと練習してきたものがリセットされることなく、シーズンの中で成長していくことができました。その成果が1月の終わりごろのレースの時にいきなり現れ始めて。大回転と回転をいつも僕たちはやるのですが、僕は大回転の方が良くなかったのですが、大回転のレースでいきなり優勝して。そこで一気にポイントを更新できて。そのあたりから上がり調子になって、インカレとかでも(活躍できた)。
――昨季のインカレでは大活躍(スーパー大回転4位、大回転2位、回転4位)でしたが、振り返ってみていかがですか
中川 そうですね。成績はすごいよかったですね。僕個人の。でも勝つチャンスは結構どのレースもあったのですが、一つも優勝できなかったので、その辺が甘かったなと思います。大回転も回転も1本目が2位だったのですが、1本目そんなに思いっきり滑ったわけではなかったので、2本目でもっとギアを上げていけば優勝のチャンスがあったのですが、そこでやっぱり総合(優勝のチャンス)も懸かっていたので、自分にプレッシャーをかけてあまりいい滑りができなかったなっていう感じですかね。
――石島選手はいかがですか
石島 今までは全国大会でゴールできなくて。なかなか入賞とかできなかったのですが、昨シーズン、高校最後のインターハイ(全国高等学校スキー大会)でしっかりゴールすることができて。2位になれて、全国のタイトルレースで初めて入賞できたっていうのが去年のシーズンで一番良かったことです。
――良かった理由を自分ではどのように解釈していますか
石島 遠征とかに行って、自分の滑りを見つめ直したり、滑りを変えたりして、その前のシーズンよりは自分の滑りが良くなってきてっていうのはありますね。
――押切選手はいかがですか
押切 大学生活を振り返ってから、一番良いというか。他(の年)があんまり良くなかったので一番良いですね。成績は出せたかと思うのですが、練習していても『調子いい』と感じる時が去年あんまりなくて。そのまま大会が進んでいってシーズンが終わってしまったという感じですね。インカレでも入賞できなくて。詰めの甘さというか、安定感というか。ゴールは毎年できるような滑りではあるのですが、その一発のなさ(が課題)。インカレの成績がすべてというか、去年の成績ではそれが一番印象に残っているので、いいシーズンかって言われたらいいシーズンではなかったと思いますね。
――それでも相対的に見たら結果はいい方ではあったということですか
押切 そうですね。これまでは結構悩んでいる時期というか。(これまでは)練習ではそこそこいい時はあったけど、大会では全然ダメっていうのが、去年は練習はあまり調子は良くなかったのですが、大会ではそれなりに、調子が悪いなりには頑張れたなっていうのはありました。
「楽しみながら強化できた」(石島)
マイペースに話す石島
――今年のチームの雰囲気はいかがですか
石島 大学に入って1年目で、よく分からないことも多かったのですが、練習は楽しい中で辛い練習とかもあって。強くなれる練習をいっぱいやれたのかなって思います。
――石島選手は早大を選んだのは何か理由はありますか
石島 姉(瑶子、スポ4=群馬・尾瀬)も早稲田に入っていますし、高校の先輩方もいっぱい早稲田に来てて。やっぱり憧れみたいなものもあったので、早稲田がいいなと思って選びました。
――上級生から見て今年のチームの雰囲気はいかがでしょうか
中川 良いですね。
押切 4年生になって、2、3年生の時に気付かなかった4年生の大変さっていうか、これまでは『こうしたほうがいいんじゃないか』って勝手に思っていたのですが、なかなか4年生になってそうはいかないってことが現実的に多いなっていうのを感じます。主将(山本涼太、スポ4=長野・飯山)もなかなか遠征とかでいないことが多くて。それも周りでカバーしかないといけないことが多かったのですが、4年生が忙しいときは全体で遠慮することがなくっていうか、2、3年生が1年生を引っ張っていったりとか、そういう面が今年は結構ありました。1、2年生からしても、居心地のいい環境であったかなと思います。
――押切選手はアルペン部門のチーフにも就かれましたが、チーフ業に関してはいかがですか
押切 思ったより大変でした。まずみんなでやる練習を考えなければならないっていうのがあって。自分でやりたい練習っていうのもあるのですが、それをみんながやりたいかとか、みんなのためになるかっていうのを考えるのが結構大変でした。あとは、他の部門のチーフとかと連携をとっていったりもしましたし、自分自身教育実習で1ヵ月この寮を離れていて、その間にどういう雰囲気でアルペンが動いていたのかとかは、僕がいない分他の学年にも迷惑をかけました。チーフの仕事としては冬よりも夏の方が忙しいと思うので、自分自身よく耐えたなと思います。
――後輩のお二人から見て、押切アルペンチーフはいかがですか
中川 去年おととしと僕はいたのですが、練習の内容とかもあんまり変わらなかったのですが、今年結構(押切が)考えて下さって、大きく変わったというか。それ(変わったこと)に関しては僕は結構やりやすくて。
――どのように変わったのでしょうか
中川 去年は(練習が)平日1回、土日両方という感じだったのですが、今年は平日に2回と第二土曜と第四土曜が休みっていうことになって。練習量的にはすごく増えたのですが、土曜日が休みになってすごくうれしいなっていう。スケジュール的にも余裕が増えて。男子だけでやる日かもできて、そういう日は練習の効率もよくて、やりやすいなって思います。
石島 去年とかの練習は分からないですが、いろいろな練習メニューがあって、偏りの(ある)練習ではなくて。
押切・中川 偏りの練習(笑)
押切 まあ、結局同じような練習をしてしまうと飽きてきてしまうので。それは自分もしたくないし、みんなもしたくないと思うので。
――この夏に重点的に行ってきた練習はありますか
押切 夏休みまでは結構走るメニューが多かったと思いますし、今までキャンパスの外に出て練習することがなかったのですか、近くの練習場所、階段だったりとかを見つけて行ってみたりとかしました。夏休みが明けてからは基本的にアジリティー系っていうか、パワー系だったりっていうメニューを(やって)、走るのは各自でやってもらってというようにしました。みんなでやるメニューを「1人でできるじゃん」って言われたらそれまでなので、みんなでやる以上はキツくても楽しい部分でカバーできると思うので、それを考えながらゲーム性を入れ込んでみたりとか。
――合宿などはいかがですか
石島 高尾山は初めて登りました。普段と違う練習は夏の合宿ではできて。こういう練習もあるんだなと思いました。楽しみながら強化できた合宿だったと思います。
――高校の練習と大学の練習はどちらのほうがキツいですか
押切 高校の方がしんどいけど、大学の方が短時間で密度の濃い練習ができるなっていうのはありますね。
中川 みんなでやる練習だったら、高校の方が格段に多いですね。
石島 平日の練習は高校の方が多いし辛いしという感じですね。
――話をもとに戻します。今年の合宿はいかがでしたか
押切 夏休み前は寮を起点にして移動していたのですが、あまり寮の近くじゃなくて、普段できないようなことをやろうということで、高尾山に行ってみたりとか、2日目は海に行って練習してみたりとか、いろいろなトラブル、渋滞に巻き込まれたとかはあったのですが、辛いけど楽しい練習っていうのを意識していたので、その部分は良かったと思います。
中川 全然楽しさの方が残る合宿で。海に行くとか、山に行くとかってまず楽しいじゃないですか(笑)。天気も晴れていたし。BBQもしました。帰ってから。
石島 それすごい楽しかった。
押切 僕がそういう好きなんですよ。みんなでご飯だべたりとか。1人だと結構寂しいタイプなので。休みの日はみんなでサッカーやったりとか、残っている人でBBQをしたりとか。合宿以外でもいっぱいできたので、お金は掛かりましたけど(笑)、よかったと思います。
「しっかりとポイントを」(押切)
押切は大学生として最後のインカレに臨む
――ここまでの調子はいかがですか
中川 僕はそこまでよくもなく悪くもなくですね。例年通りっていう感じです。雪、条件があまり良くなくて。帰ってみて滑りとか見てみたら、去年よりはちょっといいかなっていう感じです。
石島 調子は…。途中、遠征中にけがをしてあんまり滑ることができなかったっていうのはあるのですが、去年見つけた課題とか、そういうのは徐々に改善されていい方向に向かっているなと思います。
――スキーの競技の中で、アルペンを選んだ理由などはありますか
押切 僕は親が、父親が(アルペンスキーを)やっていて。僕たちの高校の先生が僕の父親なのですが。
――札幌第一の先生って押切選手のお父さんだったのですか!?
押切 そうです。だからここ(中川と石島)は押切チルドレンなんですけどね。だからアルペン以外に関わる機会がなくて。自然とそうなっていました。
石島 僕は姉がやっていて、自然と自分もやっていました。それを楽しいって思って続けているっていう感じですね。
――出身が群馬県だと思うのですが、北海道の高校に通うことは自分で決めたのでしょうか
石島 はい。群馬はあんまりスキーが強い高校とかなくて。環境もいいし、北海道の方に行きたいなって思って探していたら、一高がいいなと。下宿していました。料理は朝夜はついていて、昼は先生の奥さん(押切の母)にお弁当をつくってもらっていました。
押切 裕一郎が入ってきた時は、そんなに下宿の人数もいなかったので、「いいよ」って感じで。だから食べているものは3分の1(お昼ご飯)一緒でしたね。その時(石島が入学した時)は僕は卒業していて、いなかったのですが、(石島は)僕の親父と同じ飯を食べていましたね(笑)
――インカレの開催地である鹿角の印象はいかがですか
中川 難しいですね。怖いですね。
一同 (笑)
中川 本当に。日本一難しいのではないかと思うくらい難しいコースです。上から下までずーっと急斜面で、大きいカーブが2回くらいあると。豪雪地帯で、滑りやすい雪でもないっていう感じ。コースも長い。
石島 ネガティブな要素しかない(笑)
押切 スラローム(回転)はそんなに難しくないよね。
中川 あ、スラローム。
押切 スラロームは最後の急斜面だけなので、ずっとスタートからゴールが見えてまっすぐなのですが、GS(大回転)になると林の間を抜けていくというか。
中川 そうそう!
押切 結構あちこち曲がっていったりとか、斜度が変わっていったりとか。僕はまだ1回しか滑ったことがないのですが。僕の高2の時のインターハイが鹿角だったので、GSのコースが長すぎて。1本目滑った後に『ちょっともう2本目滑りたくないな』って思うような。
一同 (笑)
石島 GSに関しては難しいですね。回転は好きなコースだなと。去年のインターハイが鹿角だったので(そう感じた)。
押切 期待してるよ~。
――最後に、インカレの目標を教えて下さい
押切 僕は1年生の時からインカレで男子3連覇とかしているのですが、一応3年間スキー部に在籍していながらポイントとしては貢献していないので、最低限しっかりポイントを取るということを目標にしています。それが達成できる上ではどんどん上を目指していきたいですし、特にスラロームに関しては自分の得意種目だと思っているので、最低でも入賞、欲を言えば表彰台くらいの気持ちで行きたいと思っています。チームとしては、他の部門が結構世界大会とかで、インカレにいない選手が多い中で、アルペンはいいのか悪いのか分からないのですが、今のところは全員いる予定ではあるので、個人個人得意種目があって、そこに賭ける思いっていうのは他の種目に比べても大きいと思うので、自分が得意じゃないというところはあまり邪魔しないように、チーフとしてはしていきたいと思っています。特にスラロームに関しては全員が入賞できるチャンスがあると思っているので、戦略ではないですけど、チームとして戦うって言うのはインカレくらいなので。先に滑った人の意見とかも共有しながらとか。あとは1年生とかは緊張したりとか、インカレのムードとかに飲まれてしまうことがあると思うのですが、それは4年目で僕は慣れているので、できるだけやりやすい環境にしてあげることができたらと思います。
中川 今年はもちろん3冠を狙っていきたいと思います。スーパー大回転が出れるか分からないのですが(※ファーイーストカップに出場するため、インカレのスーパー大回転には出場しませんでした)。
石島 いろいろな人から聞くと、インカレって普通の大会と違う雰囲気と聞くので、その雰囲気を楽しみながらしっかり入賞してポイントを取って、大学に貢献したいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 山田流之介、齊藤里和)
『一高魂』をインカレでも見せつけます!
◆押切 凌(おしきり・りょう)(※写真右)
1998(平10)年3月16日生まれ。北海道・札幌第一高出身。スポーツ科学部4年。1年間、チーフとしてアルペン部門を引っ張ってきた押切選手。今回の対談でもトークで後輩2人をリードしていました。色紙は1番難しい『魂』の部分を担当。石島選手に「字が小さい」とツッコミを入れられ、何度か直しながらカッコよく仕上げていただきました。インカレでは4年間の集大成を見せてくれるでしょう!
◆中川 慎(なかがわ・しん)(※写真左)
1998(平10)年9月1日生まれ。北海道・札幌第一高出身。スポーツ科学部3年。「スキー部の中で最も頭の良い人は?」という質問に対して、同期で高校のクラスメートでもあった松本なのは(スポ3=北海道・札幌第一)の名前を挙げた中川選手。中川選手は数学が得意で、高校時代には模試でクラス2位を取ったこともあるそうですが、それでも1位の松本選手との差はダブルスコアだったそうです。『文武両道』とはまさにこのことですね。
◆石島 裕一郎(いしじま・ゆういちろう)(※写真中央)
2000(平12)年5月2日生まれ。北海道・札幌第一高出身。スポーツ科学部1年。先輩2人との対談にも関わらず、マイペースに質問に答えていた石島選手。以前、筆者と絶対に授業に間に合わない時間帯にキャンパスのトイレで鉢合わせしたことがあったのですが、このことについて「教室が分からなかったからとりあえずトイレに行った」とコメント。大物の予感です。