【連載】インカレ直前特集『The早魂』特別編 アルペン競技 村岡桃佳

スキー

 全日本学生選手権(インカレ)では多くの選手の活躍が見られたが、早大スキー部にはこのインカレには出場していない、1人のエースがいる。きょう、3月9日に開会式が行われた平昌パラリンピックに出場する村岡桃佳(スポ3=埼玉・正智深谷)だ。村岡は、幼少期に負った脊髄損傷により現在も車椅子での生活をしている。4年前、高校生の時に初出場したソチオリンピックでは、アルペン競技大回転で5位という好成績を収めた。それだけに今回のパラリンピックでは金メダルの筆頭候補としてあげられ、開会式の旗手も務めた。生粋のアスリートである村岡に、パラリンピックにかける思いと、その私生活を明かしてもらった。

※この取材は10月11日に行われたものです。

スキーと陸上、二刀流

スキーと陸上について真剣にお話ししていただきました

――スキーを始めたきっかけは何ですか

村岡スキー自体を始めたのは小学校3年生の時で、でもそれは全然遊びのような感じで。それまで陸上競技をやっていたのですが、その時にできた友達からスキー教室を誘われて、それに行ったのが初めてでした。

――ご家族がやられていたとか、というわけではないのですね

村岡父親がスキーやスノーボードをやっていたくらいですね。

――その時は陸上とスキーではどちらにウエイトを置いていましたか

村岡まだまだその時は全然陸上でした。比率でいうと1対9どころか、もうほぼ陸上でした。徐々にスキーが上がってきたって感じです。

――では、スキーが陸上を上回った時期というのはいつでしょうか

村岡明確に変わったのは中3から高1くらいですね。

――それは何がきっかけとなりましたか

村岡ソチオリンピックがあったのが、私が高校2年生の時なのですが、そのオリンピックに出るのならばちゃんと覚悟決めて本気で取り組まなければいけない、スキーを本気でやろうと思うようになりました。それが中3くらいですね。その前からその気持ちはあったのですが、明確にその気持ちになったのが高1かもしれないです。

――陸上はまだ続けていらっしゃるのですか

村岡続けてはいるのですがそれはトレーニングの一環、といった感じに過ぎないですね。

――陸上でもパラリンピック出場を目指されているということもお聞きしたのですが

村岡そうですね。せっかく東京で開催されるので出たいとは思いますが、今目の前にあるのは平昌なのでそれを考えるのは平昌が終わってからですね。それが終わってまださらに挑戦したいという気力が残っていれば、ですけど(笑)。メンタルに結構来るので。

――競技をやっていて一番キツいと感じるのはやはりメンタル面ですか

村岡体力的にも3月に行われるパラリンピックはシーズンラストの試合となってくるので、辛いところはあるにはあるのですが、でもやはり気持ち的なところが大きいですね。

――プレッシャーなどもやはり大きく感じられますか

村岡そうですね、プレッシャーなのか自分の中でも自分の納得いく滑りをしようとだけ考えているのですが、やはりプレッシャーを感じることはあります。競技自体は中学校のころからやってはいて、運よくタイミングが合い高校2年のときにソチに出場することができて。自分の中ではメダルなどの考えは無くて、パラリンピックに出ることができただけでも奇跡であると思っていました。前回はそうやって自分の中で思っているにも関わらず、周りからの期待などがあって、やはりそういうのがあると期待に応えなきゃ、と思ってしまうのでそういった面で気づかないところでプレッシャーになっていたのかなと思います。

――周りからも自分でもプレッシャーをかけてしまったという感じですか

村岡そうですね、周りからのプレッシャーを感じてしんどいと思うこともありました。それに加えて自分自身でもプレッシャーをかけてしまったかなというところはあります。

――そのプレッシャーはモチベ―ションにはなりにくかったですか

村岡やはり期待していただける、ということは本当にありがたい事なので、それに応えたいという気持ちももちろんあるのですが、私はメンタルあまり強くないところがあるので、それを強く感じすぎてしまって。そのプレッシャーに負けそうになることはあります。

――そういった時どのように持ち直しますか

村岡そういう時は、気持ちが落ちるところまで落ちて逆に開きなおるということはあります。なかなかポジティブに考えることができないことが多いのでどんどん落ちてしまうのですが、その時に何か良い点があると割とすぐに持ち直したりすることはあります。コーチや先輩に滑りを褒められるとか。やはり落ちる事ってスキーに関することで、何でスキーやっているんだろうと思うこともありますが、自分で滑っているときに自分でいい滑りができたと感じることができたり、褒められたりすればやっぱりスキーやっていて楽しい、良かった、と感じます。

――レースの時に緊張などはされますか

村岡全然緊張しますよ

――ルーティンなどはありますか

村岡たぶんレース前にやっていることはあるのですが、無意識にやっていることがほとんどですね。でもスタートの直前にゴーグルを直すのは毎回するかもしれないです。あと、スタートの直前に跳ねるとかですかね。全部、意識的に決めてやっていることでは無いですけど。直前まで、もの凄く緊張しているんですが、いざスタートの時のバーを見ると落ち着くっていうのはありますね。

――そこで落ち着かれるのですか

村岡そうですね、気持ちは高ぶるのですがスイッチが入って集中力が高まる感じです。

――他にやりたい競技はありますか

村岡もしできるのならば、陸上競技を本気でやってみたいですね。楽しかったので。夏のオフシーズンの時はスキーしたいなって思うのですが逆に冬のシーズンの時は走りたいなと思うんです。多分どっちも好きなんだろうなって。でもスキーしていて楽しいなってことはあるんですけど、走っててすごく楽しいなって思うことはあんまり無いかもしれません(笑)。アルペンスキーは陸上みたいに自己ベストとか無くて、タイムなど明確な基準がないのでそれはそれで自分の中でのベストを尽くす、という意味で楽しいのですが自分ですごくいい滑りができた時はやっぱりそれがタイムにあらわれたりするし、でもそれって上限がないんです。それは陸上のようにタイムをどんどん更新していく世界と同じようでなんとなく違っていて、スキーはその感覚が好きだし、でも陸上は陸上で自己ベストを超えるだとか明確な基準があってそれに向かって努力していくのもスキーとは違う魅力があって、それぞれが楽しいですね。

――そうするとやはり陸上でもパラリンピックを目指したくなるのではないでしょうか

村岡やはりこの4年間もすごくあっという間で、次までも4年しかない。なので夏季パラリンピックも目指すとなると2年しか準備期間が無くて、さらにその次の冬季パラリンピックまであと2年になるので、今は考えることができないっていう状況ですね 。

サンリオが大好き

サンリオへの話に笑みがこぼれる

――サンリオが好きとお聞きしました

村岡最近、パラリンピックサポートセンターの方とお話させていただく機会があったのですが、その時にサンリオグッズをたくさん持っていて…。多分それですね(笑)。

――実際お好きなのですか

村岡実際、好きですね(笑)。時間があればですけどサンリオピューロランドにも行きますね。

――ではパラリンピックにサンリオグッズも持っていかれるんですか

村岡持っていくっていうか、身の回りの物がそればっかりなんです。私の部屋とか、すごいです。結構引くレベルでサンリオグッズばっかり置いてます(笑)。集めているわけではなくて買ったものや貰うものがサンリオばっかりだった結果です。

――きょうも何か持たれていますか

村岡きょうは…ありました(笑)。色々出てきました(笑)。

――一番お気に入りのキャラクターは

村岡一番はポチャッコです。ちなみに今使っているペンケースもそうです(笑)。

――ちなみにいつからお好きなのですか

村岡小さい頃からですね。

――スキーを始められたのとサンリオが好きになり始めたのではどちらが先ですか

村岡全然、サンリオですね。生まれた時から囲まれているので(笑)。もともと母がすごく好きで、それに影響されて家族みんな好きです。

――今は実家で暮らしていらっしゃるのですか

村岡そうですね、今は忙しいので寮ではなく実家から大学に通っています。実家にもサンリオのぬいぐるみが棚に飾ってあります。

――パラリンピックにはその中から持っていかれますか

村岡小さめのぬいぐるみがいくつかあるので、それはパラリンピックにも連れていく予定です。今でも偶に遠征に連れて行くことはありますね。あ、連れていくとか言ったらやばいですね(笑)。持っていきます(笑)。

――選手村とはどんなところですか

村岡ひとつの街、みたいな感じですね。その中に宿舎や食事の建物や、ショップ、娯楽施設などがあります。すごく小さくて簡素な街、というかんじですね。その中にトレーニング施設もあると思います。

――選手村ではどのような生活をされますか

村岡競技自体は自分が出る種目以外にも他にも毎日行われているので、朝起きてからご飯を食べて、着替えて練習しにいったり、オフの時には他の選手の滑りを見に行ったりという感じです。基本的にはスキーと離れることのない生活をしています。

――他の選手を見に行くということですが、仲の良い選手などいらっしゃいますか

村岡最近では、日体大の本堂杏実さんと仲が良いです。遠征の部屋なども一緒の事が多く、同い年という事もあるので。

――どのようなことをお話しされるのですか

村岡基本的にずっと笑っていますね、隣の先輩の部屋から苦情をもらったことがあるくらいです(笑)。

――プライベートでも一緒に遊んだりされるのですか

村岡それはあまりないですね。お互い忙しいので
なかなかタイミングが合いません。タイミングが合えば遊びたいですけどね。

――大学ではやはりスキー部の方と仲が良いですか

村岡どうでしょうか。あまり授業が被ることがないので授業を一緒に受けるということもないですね。そもそも最近海外への遠征が多くて、大学に行けていないということもあります。基本的には誰とでも仲良くしています。

「今度は私があの場所に立つんだ」(村岡)

パラリンピックについて特別な思いを語る

――スキー部の寮についてはいかがですか

村岡 1番初めに私が来た時点だと、段差だったり階段だったり、色々な問題があり、このままじゃ生活できないという状況だったのが、ここまで自分が生活できるように改修などしてくださったのでありがたく思っています。大学もすぐ近くですし、実家から通っているときは朝、始発で大学に行くような状況で大変だったので、それが寮に住むようになってトレーニングに割くことができる時間も増えたし、勉強や趣味をすることができる時間もできたので、そういった面でもありがたく思っています。

――食生活に関して何か気を遣っていることはありますか

村岡気を遣っていないというわけでは無いのですが、もともと小食であまり量を食べることができなくてそもそも食べること自体が好きではないので割と好きな物を食べていることはあるかもしれません。でもやっぱり栄養面などは気にして食べていますね。

――好きな食べ物は何ですか

村岡カスタードプリンが好きですね(笑)。

――甘いものが好きなのですか

村岡そうですね、特にコンビニで売っている焼きプリンがやっぱり好きですね(笑)。

――以前、雨の音が好きということをお聞きしました

村岡雨の音や、雨のにおいも好きなのですが、雨の日は嫌いです。なぜかというと、傘がさせないから。キャンパス内で雨が降っていたらもう濡れたままです。

――読書もお好きなのですか

村岡東野圭吾の本をよく読みます。おすすめは波や雑貨店の軌跡です。たぶん映画化されたから人気出たと思うのですがその前から私は好きでしたよ(笑)。いっぱい読んでいるので内容は覚えていても、タイトルを覚えてないですね 。

――最近読んだのは何ですか

村岡今も東野圭吾の本を読んでいるのですが、なんだったか忘れてしまいました(笑)。あとは、恋のゴンドラとか、十字屋式のピエロとか、白馬山荘殺人事件も読みました。結構スキー関係が舞台の小説も多いので読んでいて、行ったことある場所だ、とか思うことがよくあります。

――本は結構読まれますか

村岡遠征には必ず本は持っていきますし、本を読むのは好きですね。

――他に遠征には必ず持っていくものはありますか

村岡それが本ですね。

――では平昌にも本、それとサンリオのキャラクターを持っていかれるんですね

村岡そうですね、多分そうなると思います。でも私だいたい移動中は寝ている人なので移動中に本読むことはあまり無いかもしれないですね。

――ではパラリンピックに向けての意気込みをお願いします

村岡4年前に初出場して最後の種目で表彰式を見ながら、今度は私があの場所に立つんだ、とすごく強く思って今もその時の思いがあったからがんばれる、次はメダルを取るんだというところがあるので、残り半年を切っていて体力的にもメンタル的にもすごくキツいといころはあると思うのですが、やはりパラリンピックではメダル獲得を目指して頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 藤田さくら、斉藤俊幸)

女子大生らしい部分もたくさん見せてくださいました

◆村岡桃佳(むらおか・ももか)

1997(平9)年3月3日生まれ。150センチ。埼玉・正智深谷出身。スポーツ科学部3年。自身をプレッシャーに弱く、ネガティブだという村岡選手。しかしその実力は折り紙付きで、今回のパラリンピックも大好きなサンリオキャラクターと一緒に挑み、自分に勝って欲しいものです。