個人が最高のパフォーマンスをできた結果として、チームの優勝が導かれる。個人スポーツのスキーがのチームの、大学同士の戦いとなるこの全日本学生選手権(インカレ)もいよいよ最終日を迎え、残すはクロスカントリー男女リレーのみ。女子は、すでにクロスカントリー女子5キロフリーで総合優勝を確かなものにし、チームの目標であるアベック優勝は、男子リレーの結果に委ねられた。結果は、男女ともにリレー優勝で、創部98年目にして初のアベック優勝となった。
一戸剛監督(平11人卒=青森・弘前工)が「リレーで勝って終わりたい」と語るように、すでに総合優勝が決定した女子チームは、リレー優勝を勝ち取り完璧な勝利を収めるべく奮闘した。その戦法は先行逃げ切りで、チームのエース滝沢こずえ(スポ4=長野・飯山)が圧巻の滑りで2位以下を大きく突き放し、続く2、3走もその差を失うことなく最後まで逃げ切ったのだ。1走目の滝沢が、「任られる」と思いバトンを託した小林千佳(スポ1=長野・飯山)と渡邉祐佳(スポ3=長野・飯山)はどちらも、インカレ開催地、長野の同郷の後輩であり、さらに同じ飯山高校出身とだけあってそのチームワークと信頼は抜群だ。滝沢と渡邉は区間1位、小林も区間2位で、個人の力をチームの力に変えリレー優勝を収めた。
3人で喜びを分かち合う女子リレーチーム
ここまで、首位東海大との差を徐々に巻き返してきた男子であったが、このリレー種目も同じような展開となった。1走を任された山口敦史(スポ3=石川・鶴来)は、途中足がもつれる場面も見られ、全15校中 10位の滑り出しとなった。2位東海大との9点差を守り抜きたい早大は、2走山下陽暉(スポ1=富山・南砺平)と3走田中聖土(スポ4=秋田・花輪)が揃って脅威の巻き返しをみせる。10位でバトンを受け取った山下は序盤からペースをあげ、みるみるうちに6人を抜き、堂々の4位で次へと繋いだ。そんな後輩の頑張りに応えるかのごとく田中は、1位と26秒9あった差をたった1週の2.5キロで詰め、トップへ躍り出た。アンカー宇田彬人(スポ4=福井・勝山)は「僕はそのもらったリードをただキープするだけでした」と言い、最後まで安定した滑りを見せ、総合優勝と初のアベック優勝を決めるゴールテープをきった。
山下(右)から田中(左)へとタスキをつなぐ
早大スキー部約100年の歴史の中で、一度も達成することのできなかったアベック優勝。男子のアンカー宇田がゴールし、総合優勝とアベック優勝が決まったその瞬間、チームの誰もが歓喜に沸いた。全員で喜びを分かち合い、お互いを称え合った。この快挙は、個人の頑張りだけで達成されたものではない。一戸監督が「MVPは早稲田大学スキー部」と讃えるように、主将の湯本啓太(スポ4=長野・中野立志館)をはじめとした全員で築き上げられたチームで叶えたものなのだ。アベック優勝の栄冠を手にしたいま、その次に見えてくるものは何なのか。王者早大として、これまでにない戦いが始まるだろう。
胴上げされる一戸監督
(記事 藤田さくら、写真 藤田さくら、斉藤俊幸)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
結果
▽男子総合順位
1位 早大 92点
2位 東海大 79点
3位 日大 57.5点
< p>
▽女子総合順位
1位 早大 102.5点
2位 日大 64点
3位 東海大 49.5点
▽クロスカントリー男子リレー7.5×4
優勝 早大 1時間20分10秒4
1走 山口(クラシカル) 21分58秒8
2走 山下(クラシカル) 20分59秒1
3走 田中(フリー) 18分10秒4
4走 宇田(フリー) 19分01秒9
▽クロスカントリー女子リレー5×3
優勝 早大 42分37秒5
1走 滝沢(クラシカル) 14分54秒9
2走 小林(フリー) 14分01秒6
3走 渡邉(フリー) 13分40秒9
コメント
一戸剛監督(平11人卒=青森・弘前工)
――創部初のアベック優勝ということですが、いかがですか
もちろん、嬉しいの一言ですね。きょうのリレーで勝って終わりたいというのをきのう選手とも話したので、そこを獲れたというのは、これ以上ない完璧な試合ができたと思います。
――MVPはどなただと思いますか
全員ですね。1ポイントでも、10位でもいいので、1点1点の積み重ねが総合優勝につながるので、誰ってことはないですね。昔はアルペンが0ポイントっていう年もあったんですが、今回は少ないけれども何ポイントか取ってるというのが勝因の1つだと思います。そこで0ポイント取ってしまうと、その積み重ねで負けてしまう。他校の方がアルペン上なんですけど、そこで粘ってくれたっていうのは大きいですね。クロスカントリーの方は、ワックスの勝負が大きいので、その辺りを朝早くから遅くまでワックスマンの方がやってくれたので、そのサポートも非常に上手くいったし、MVPは早稲田大学スキー部です。
――アベック優勝を確信されたのはいつですか
夏のうちから、うまく行けば絶対アベック優勝できると思ってやってきました。ことしはけが人もなく入れたので、総合優勝への可能性は高まっていましたね。男子の方は、初戦、あまりポイントが取れなくて苦戦しましたけど、複合で1位3位取れたことで追いついたのが大きいです。アルペンの試合が終わってノルディックの試合になれば、巻き返せるだろうと思っていました。もちろん、100パーセントではないので、我々の方もワックスなりコンディション整えるなりしてきちんとやってきたつもりです。アルペンが終わった時点で、優勝の可能性が高いなと思いました。
――引退される選手とは何かお話しされましたか
個人個人では話していないです。ただ、夏のうちから、厳しい練習をして強化するっていうよりは、私はチームの輪を大切にしたいし、面白おかしくしたい方なので、4年を連れてどこかへ行ったり、何でも言い合えたり、そんな仲にはなってると思います。
――その方針は監督ご自身が決められたのですか
そうですね、昔から、上手くいかなかったからってあれが原因だこれが原因だとは言いたくなくて、負けようと思って負けてるわけではないので、一生懸命やった結果がそれであって、ちゃんと自分の力を思いっきり出せるような雰囲気作りを大切にしました。
――ことしはどのようなチームでしたか
主将がいて、その次に主務、大変なポジションなんですけど、主将は湯本が上手くまとめられてたんじゃないかなと思います。なるべく私も、何か言う時は湯本に言ってからみんなに落とすようにしてたので、選手に直接あまり言わなかったですし、そういう良いチームだったと思います。湯本自体は成績が落ちてしまったけど、チームをまとめるという意味では頑張ってくれたんじゃないかなと思います。もうちょっと厳しくしてもいいんじゃないかなというところはありましたけど、感じつつもぐっとこらえて、結果終わってみれば総合優勝が出来たというのは、言わなくてもまとめてくれていたのが証明されていると思います。主将をはじめとして、きちんと組織ができたんだと思います。
滝沢こずえ(スポ4=長野・飯山)
――優勝されたお気持ちをお願いします
嬉しいです、とにかく嬉しい、その一言に尽きます。
――リレーが始まる前のチームの雰囲気はいかがでしたか
優勝しなきゃという雰囲気がすごく強くて、今までリレーやってきて、1年の時も2年の時も割と優勝できるだろうという安心感があるのに対して、ここ最近はすごく接戦なので、勝てないかもしれないという部分がある、でも優勝しなくてはいけないというプレッシャーもありました。
――初めから攻める姿勢で挑まれましたか
そうですね。他の出走順を見て、特にライバルにしてた日大の出走順を見て、私の1走のうちになるべく開いて、それを貯金というか、使っていけるようなレース展開をみんなで予測して、臨んだので、私はいくしかないという感じでした。私の得意は上りの部分で、2.5キロのコースだと上りは少なくて、なだらかなコースなので、不安でした。初めの坂を登って、その時についてこられたらもう終わりなので、最初の登りで頑張ったら、意外に離れたので、必死に攻めました。
――出走順はみなさんで話し合われたのですか
今まで、あからさまにどこの誰がいつ走るかわかっていたものが、今回は本当に悩んで。私が1走にいくべきなのか、アンカーなのか。私がアンカーにいけば1走は誰かわからないし、逆も同じで、いろんなパターンがあって。でも今は、これでよかったなと思います。2、3走も良い走りしてて、安心して見れました。クラシカルでますスタートなので、意外とついていけてしまって、実力差がそのままタイム差につながらないことが多いので、だからこそ、私が1走にいくべきなのか悩みました。でも、クラシカル得意だし、クラシカル走りたいという気持ちがあったので、突き放せるか不安でしたけど、思いっきり走りました。、一番上として、アンカーでゴールテープを切る責任があるのかなと1年間考えたんですけど、昨日の後輩の走りで任られると思ってこういう出走順にしました。
――アベック優勝についてどう思いますか
アベック優勝はスキー部がしたことなかったので、ずっとしたいと思っていたし、なかなか両方揃うって難しいなときょねん思いました。だからこそ、いけると言われていたことしは、アベック優勝にこだわっていました。それができたのは本当に嬉しくて、みんな嬉しいと思います。最後の年で獲れたのも、地元長野県で行われた大会なのも、こういう形で終われたことが嬉しいです。
――男子の応援をしている時はいかがでしたか
4年間やってきてるので、このチームは信頼してて、できるだろうと何となく思っていました。勢いも違いましたし、みんなが一つのところを目指していたように感じます。
――後輩にメッセージをお願いします
1、2年の時は唯先輩についていくだけだったり、自分のことだけになってたり、チームで勝つっていうことをあんまり意識していなかったのが、上級生になって、トレーニングチーフになって、自分1人で勝てないのがこういうインカレだと思いました。自分が強くなるには自分がトレーニングをすれば良いけれど、チームで勝つにはチームを引っ張らなくてはいけないので、そういうのをチームで作り上げて欲しいと思います。
宇田彬人(スポ4=福井・勝山)
――今の気持ちを聞かせてください
最後女子も優勝して男子も優勝したら全部獲るねっていう話をしていたので、全部獲ることができてよかったです。
――アンカーでしたが前の3人はいかがでしたか
前の山下陽暉(スポ1=富山・南砺平)と田中聖土(スポ4=秋田・花輪)が本当にいい走りをしてくれたので、僕はそのもらったリードをただキープするだけでした。僕自身はあまりいい走りはできなかったので、山口(敦史、スポ3=石川・鶴来)を含めて他の3人がいい走りをしてくれて優勝することができたと思っています。
――ご自身の出来については連戦が続いているということも影響しているのでしょうか
今シーズンはずっと調子が上がってこなくて、きょうも調子は悪かったのですが抜かれなくて良かったです。
――ゴールした時の気持ちはいかがでしたか
もうただ逃げ切って優勝したっていう安心が1番でした。
――ことしのチームはどんなチームでしたか
僕と田中がある程度の力を持っていて、そこに山下がずっとついてきてくれて入賞とかしてくれたので結構いいチームだったと思います。
――リレーも総合でも男女アベック優勝を果たしました
僕は普段そういうことを気にしないというか、自分自身が良い滑りができればいいやという考えのタイプの人間なのですが、今回は自分の成績もあまり良くなくて色々な人に支えられてできたアベック優勝なので、リレーもそれで優勝できて本当にチームっていいなって思いました。
――ワセダの学生として出場される試合も残り少なくなりました。今後の目標をお願いします
段々オリンピックを意識するようになってきて、ことし平昌オリンピックを見ていてそこに出たいという気持ちがより強くなったので次の4年後の北京を目指してやっていきたいと思います。