チームのために、仲間のために、激闘の最終日!

スキー

 1週間にわたって行われてきた全日本学生選手権(インカレ)は最終日を迎えた。大会6日目終了時点で女子は総合5連覇を確定。一方男子は、最終日の結果に関わらず2位が決まっていた。最終種目は男女クロスカントリーリレー競技。女子3×5キロリレーは、トップでゴールをするもレース後に審議が行われ、まさかの失格に。男子4×10キロリレーでは最後までし烈な先頭争いを演じたが、日大にわずか及ばず2位で大会最終日を終えた。

 女子3×5キロリレーの優勝候補の本命だった早大にまさかの落とし穴が最後に待っていた。1走を任されたのは半藤成実(スポ4=長野・飯山)。クラシカルを得意とする半藤は、2位に30秒差を付けて2走の滝沢こずえ(スポ2=長野・飯山)につなげる。今大会2種目で表彰台に上っている滝沢は、この日もその実力を遺憾なく発揮した。後続をさらに引き離して、アンカーの有路杏子(スポ4=山形・新庄北)へ。「私は私の走りに集中して走ることができた」と言うように、前の二人が作ったリードに守られ、有路はトップでゴールを決めた。女子の総合5連覇に花を添える優勝になったかに思われたが、レース後に審議が。1走の半藤の走りに問題があったとされた。結果、失格の判定が下され、優勝は取り消しに。後味の悪いレースとなってしまった。

3走を任された有路は力走を見せた

 女子に引き続いて男子4×10キロリレーは、時折雪が強く舞う厳しいコンディションの中で行われた。先陣を切ったのは、湯本圭太(スポ2=長野・中野立志舘)。「100点満点とはいきませんが、1走の役目は果たせたのではないかなと思う」とチームに勢いをもたらす力走を見せた。2走の宇田彬人(スポ2=福井・勝山)が先頭集団から一歩後退するも、続く3走の田中聖土(スポ2=秋田・花輪)が巻き返し、4走の佐藤友樹主将(スポ4=新潟・十日町)につなぐ。この時点で1位との差は14秒。全ては佐藤友に託された。日大、東海大との激しいデットヒートが繰り広げられ、勝負は最後の直線に。ゴールの瞬間、東海大にわずか上回った佐藤友が2位を勝ち取った。

必死の形相で最後の一歩を出す佐藤友

 手が届きそうでまたしても手が届かなかった、『男女アベック総合優勝』。倉田秀道監督(昭59社卒=東京・早実)は、「(男子は)またしても優勝をつかみかけていた手を自ら放してしまった感じです。どこか脇の甘さがあったかもしれません」と振り返った。しかし、男女共に下級生が入賞、表彰台に立つ活躍が多くあったことは大きな財産だ。これで4年生がチームを去り、新体制が発足される。「らいねんからは上級生なので、下級生に笑われるような成績を出さないように、夏場からのトレーニングに一所懸命に励んでいきたい」(湯本)と意気込みは十分。悲願の頂に向けて――。早大スキー部は、再出発を切る。

(記事 井口裕太、写真 加藤佑紀乃)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません

結果

▽男子総合順位

1位 東海大 107.75点

2位 早大 87.75点

3位 日大 59点


▽クロスカントリー男子4×10キロリレー

2位 早大 1時間43分41秒5

1走(クラシカル) 湯本 27分12秒5

2走(クラシカル) 宇田 27分58秒5

3走(フリー) 田中 24分13秒

4走(フリー) 佐藤友 24分17秒6


▽女子総合順位

1位 早大 77.5点

2位 日大 70.5点

3位 日体大 50点


▽クロスカントリー女子3×5キロリレー

DQ(失格) 早大

1走(クラシカル)半藤 14分39秒9

2走(フリー)滝沢 13分43秒3

3走(フリー)有路 14分1秒6


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コメント

倉田秀道監督(昭59社卒=東京・早実)

――男女を通じて女子が創部史上初の5連覇を達成しましたが、感想をお願いします

女子5連覇は狙っていたこともあり素直にうれしいです。私からは、オフシーズンからインカレ5連覇を明確に示していたこともあり、選手たちも5連覇を意識して練習に魂を入れて仕上げてきました。何よりも、オフシーズン期の練習においても選手たちのインカレに向けた気合が感じられました。そのような経緯があって、直前の冬季国体でも多くの選手が好調を維持していたので、ピーキングもそこそこ上手くいったように思います。迎えたインカレでは、プレッシャーに負けることなく、アルペン、ジャンプ、クロスカントリーの選手がそれぞれ粘り強いレースをしてくれました。全種目でコツコツと積み上げた結果ですね。ただ、最終種目で後味が少し悪かったです。

――女子のリレーは後味の悪い結果となってしまいましたが、下された判定について可能な範囲で教えていただけますか

レース内容としては早稲田の勝利だと確信しています。ただし、あのような裁定が下ったことは残念です。1走半藤が下りから第2関門の登りにさしかかる際、指定されたクラシカルレーンのすぐ右に入り、直後、指定レーンに戻ったことが原因となった事象です。通常、FIS(国際スキー連盟)ルールでは、重大な過失や明らかな故意があれば「失格」と記されていますが、今回の場合がそれに該当するのかということです。いずれにしても、競技の現場では、TD(一般的に言うところの審判)の判断権限に委ねられているので公式記録が変更されることはないため、その場では抗議しませんでした。ここで1つ説明が必要となります。競技終了後、非公式成績掲示から15分間は抗議可能な時間として確保されており、他チームからの抗議等ない場合は15分経過後に公式成績に切り替わるというルールになっています。今回の場合、非公式成績は1位早稲田となっており、公式成績に切り替わった際に失格となっていました。早稲田として15分の抗議時間を与えられていなかったということです。したがって、TDに説明を求めるしかありませんでした。この裁定にはあらゆる要因が包含されているので、スキー界としていい方向に向かってくれることを期待したいと思います。一方で、指揮官として選手への指導・教育も再度行う必要があると考えています。

――またも男子は準優勝に終わりましたが、勝ち切れない原因はどこにあるとお考えですか

そうですね、またしても優勝をつかみかけていた手を自ら放してしまった感じです。どこか脇の甘さがあったかもしれません。直前の国体で風邪やノロウィルスに感染しインカレ期間中に発熱した選手が複数いたことも痛手でした。

――男子のアルペン部門の取りこぼしが痛手だったと思いますが、その点についてはどのように捉えていますか

アルペン男子SL(回転)だけ見れば、その通りだと思います。いかんせん6選手全員DFで0点では話になりません。過度のプレッシャーからいつもの滑り、インカレで入賞する滑りができませんでした。早稲田がここ一番で自分の滑りができず、そこは東海大の選手が上だったということです。しかしながら、スーパーG(スーパー大回転)やGS(大回転)では複数入賞し、この2種目では早稲田がトップ得点を獲得し、健闘していたことも忘れてはいけません。そこは選手を評価してやりたいです。

――今大会の収穫と課題を教えてください

収穫は2点あります。1つは、男女ともに2年生の表彰台・入賞が一定数確保できたことが最も大きな収穫と言えます。とりわけ、コンバインドでは1年生が3位に入り、下級生の頑張りはらいねん以降のインカレにもつながります。2つめは、4年生の気概がみれたことです。得点した選手、得点できなかった選手いますが、チームのために1点でも、という気概をそれぞれのレースの中でみせてくれました。この気概が必ずや下級生に伝わっていると思います。課題は3つあると思っています。1つは、体調管理とピーキングです。インカレまでの期間、2月は主要大会が続いているため、いかにいい形でインカレを迎えられるか、試合期のコンディショニングを各自が再考する必要があります。2つめは、ここ一番での強さに欠けることです。とりわけ、男子選手はここ一番での脆弱性が払しょく仕切れていないと感じています。これはオフシーズンのトレーニングから始まっていることなので、しっかり仕切り直しする必要があると感じています。3つめは、総じて詰めの甘さを感じることです。体調管理も同様ですが、女子リレーの事例にもある通り、選手への再指導、脇を固める必要があると感じています。

――ことしの4年生の姿はどのように映っていますか

一言でいうと、“インカレではやってやる感” 満載でした。それぞれプレッシャーがあったはずですが、それをおくびにも見せず、アルペンでもクロスカントリーでも、背中で見せてくれたと感じています。結果が伴ったか否かもありますが…。1年前は正直なところ、不安もありました。時間の経過とともに、オフシーズンでは和気あいあいとしつつもONとOFFの仕切りや自分のすべきことをわかっていて、今となっては憎めない連中です。

――男女アベック総合優勝に向けて、新チームをどのように作り上げていきたいですか

部内での強化体系の再構築、とりわけ、新2年生・新1年生のボトムアップが喫緊の課題と考えています。スキーは個人競技ですが、集団で切磋琢磨する強化体系は崩さず継続します。また、インカレを想定して、ミスで取りこぼすことのないよう日常トレーニングからもっともっと緊張感をもって行うよう意識づけしたいと考えています。

半藤成実(スポ4=長野・飯山)

――1走での走りについてはご自身でどのように評価されますか

スキーのグリップワックスが難しい状況でありましたが、その場の判断で走り方を変えられましたし、自分を信じて走っていたのでうまくカバーする事ができました。最後の走りということもあり熱い思いがありましたが冷静に判断し走りきれたのは良かったかなと思います。トップでつなぐことは出来ましたがミスしてしまったのは大変悔やまれますし、申し訳ない気持ちでいっぱいです。しかし、個人的なラストランに悔いは全くありません。全力で戦いました。

――最後のインカレを終えてみての感想をお願いします

アベック優勝には届きませんでしたが、全力を尽くし、本気で戦かったこのインカレは記録よりも記憶に鮮明に残りました。大好きな仲間と共に一つの目標に向かい努力を続けこの日を無事に迎えられたことがなによりうれしかった。女子は、総合5連覇を達成することができ、その一員であれたことを誇りに思い、とてもうれしいです。笑いましたし、涙もしました。色々なことがあったインカレですがとても充実し、楽しい日々でした。

――今大会のクロスカントリー部門の戦いぶりはどのように映っていますか

クロスカントリー陣の戦いは男女共、春からのトレーニングの成果が発揮された良い結果であったと思います。なにより男女共に雰囲気が良かったことがチームワークにつながり結果に結びついたのかなと思います。私含め、詰めの甘さがあったところもあるのでそこはらいねん以降気をつけていってほしいです。走りは全体的に良かったと思います。

――早大スキー部はどんな場所でしたか

早稲田スキー部は私にとって強くいられる場所でした。勇気をくれ、自信をくれました。安心できる場所でした。そしてなにより仲間に恵まれ、私にとって最高に愉快な最強の第二の家族でした。

有路杏子(スポ4=山形・新庄北)

――リレーの結果は悔しいものになりましたが、この結果をどのように感じていますか

公式となってしまったものは仕方ありませんが、間違いなく私たちは一人一人が全力で走り切りましたし、正々堂々と戦い切った結果なので、全く悔いはありません。優勝は早稲田であったと私は思っています。

――トップでゴールをした瞬間の気持ちはいかがでしたか

最高でした。ゴールで同期の成実が最高の笑顔で待っていてくれて、4年間といいますか、15年間続けてきたスキーでのつらかったことや苦しかったことが全部報われた様な気がしました。1年生の時からリレーも女子の総合優勝もずっと経験してきて、今度はそれを自分たちの手でつかみ取れた瞬間でした。なのでもうゴールした瞬間にうれし涙が止まらなかったです。

――後ろの日大にも迫られていた中、焦りなどはありましたか

スタートしてからゴールするまで、ずっと後ろの日大の子の応援が聞こえていて、でも焦ると体が動かなくなってしまうので、とにかく走っている間はレースに集中することだけを考えていました。もちろん焦りもありましたが、1、2走で二人が作ってくれた余裕があったから、私は私の走りに集中して走ることができました。

――今大会のクロスカントリー部門の戦いぶりについてはどのように感じていますか

男女ともに本当に素晴らしい結果であったと思います。私は今大会の結果はすごく満足しています。もちろん中には力を出し切れなかったと思っている選手がいるかも知れませんが、今年は前年度よりも男女ともに練習強度が高く、つらい練習が多かったので、その成果が結果として表れて、多くの表彰台、入賞者が出たことは本当にうれしかったです。ことしは特に、ディスタンス競技が実施される年であったので、試合期間中も疲労度はかなり大きかったとは思いますが、インカレで確実にポイントを獲得出来るのはクロカン競技なので、最終日まで集中力を切らさずベストな走りができたので皆本当によく頑張ったと思います。

――総合5連覇が懸かっていた今大会でしたが、重圧などはありましたか

重圧というよりも、絶対にやってやるぞという気持ちが大きかったです。これは私だけでなくて、4年生の同期全員が思っていたことだと思います。今までの先輩方は本当にそれぞれが強くて、良いチームを作ってきてくれましたが、私たちは私たちなりに春から今までずっと男女アベック優勝を掲げて練習をしてきました。男子があと一歩届かなかったことは本当に悔しいですが、女子はすべての競技で着実にポイントを重ねて、みんなの手で優勝をつかみ取れて本当に良かったです。私自身、1年生のインカレ以来、ポイントをとることができていなかったので、今回すべての種目で優勝に貢献できてすごく満足しています。

――早大スキー部はどんな場所でしたか

私を大きく成長させてくれた、最高の居場所でした。1年生の時は強い先輩方に圧倒されっぱなしで、練習でもついていけずに常に1番後ろで背中を追っていることが多かったのですが、つらいことがあっても笑わせてくれる同期がいて、支えてくれるチームメイトがいて、本気でぶつかったり、けんかもして、毎日がすごく充実していました。スキー部は男女が同じ場所で生活している珍しい部ですが、それがすごく良くて、練習も食事などの私生活も男女の壁や学年を超えてともに切磋琢磨(せっさたくま)できていました。特に同期にはすごく助けられたし、どこよりも絆の深い同期であると思っています。最高の仲間と最高の生活を共にできた4年間は一生の宝物です。

湯本啓太(スポ2=長野・中野立志舘)

――リレーでのご自身の走りについて振り返っていただけますか

1週目は先頭集団の中に入っていて、2週目の途中の上り坂で抜け出し、2位以下を離そうかなというプランをスタート前に考えていました。結果的に日大にそれをされてしまうという形になってかなり悔しいですが、レース中の駆け引きや1走独特の雰囲気を楽しめたのでよかったです。100点満点とはいきませんが、1走の役目は果たせたのではないかなと思います。

――初めてリレーに出場されましたが、ほかのレースとは違う重みはありましたか

リレーは1人ではなく4人で走るものなので、失敗できないという重みはあると思います。ですが逆にその重みを力に変えて、個人戦以上の力を発揮する選手は沢山いるので、リレーでは、チームの雰囲気が選手一人一人のパフォーマンスに大きく関わってくると改めて実感しました。

――30キロクラシカル、リレーで2位と今大会の結果についてはどのように感じていますか

昨年の11月から始まったシーズンの中でのコンディションをこのインカレに向けてしっかり上げてこれて良かったと思っています。30キロとリレーの結果については、自分のコンディションだけではなく、ワックスの選択や、スキーのチューンナップをしていただいたワックスマンのお陰だと思っています。最高のスキーでした。また、チームに貢献できて良かったです。

――また翌年のインカレに向けて、選手として目指していきたい姿はありますか

らいねんからは上級生なので、下級生に笑われるような成績を出さないように、夏場からのトレーニングに一所懸命に励んでいきたいと思います。 らいねんも応援よろしくお願いします!