【連載】『結晶』最終回 佐藤友樹主将

スキー

 連載最終回に登場していただくのは佐藤友樹主将(スポ4=新潟・十日町)だ。これまでで最も多い人数となった早大スキー部。大所帯のチームを先頭に立って引っ張る主将として、そして創部史上初となる男女アベック総合優勝への思いとは。

※この取材は9月26日に行われたものです。

「昨シーズンは全部を通して調子があまりよくなかった」

一つ一つの質問に真摯に答える佐藤主将

――菅平の全体合宿ではどのようなトレーニングをなさいましたか

 菅平ではまず1日目はアルペン部門主体の練習をして、具体的にはサーキットトレーニングですね。ラダーでしたりミニハードルでしたり、あとは普通のハードル、ジャンプといったアルペンが普段しているような練習を全員で午前中はやって、午後は全員でまた球技をしてという感じでやりました。二日目は逆に僕らランナーを主体として、根子岳で登山を全員で行いました。午後はまた初日同様に球技をしまして、最終日の三日目は、全員で菅平の方にあるランニングコースでインターバルトレーニングをやって、終わりですね。

――ちなみに球技というのはどういった事を行いましたか

 1日目はサッカーをして、2日目はバレーボールをやりました。

――何かスキーに生かされる点があるのですか

 そうですね、サッカーとかは特にアルペンは切り替えしとかがあるので、そういったところは結構通ずるものがあるのではないかなと。僕アルペンではないのでわからないのですが。バレーボールに関しては特に関連性はそんなにないと思うのですが、ただ単純に、午前中やっぱり登山ということで、アルペンは特に慣れない練習をしてたぶん疲れがあったと思うので、そういった意味でリフレッシュを目的としていたのと、バスケットボールとかサッカーとかだとコンタクトというか接触があったりして、けがをするからですかね。バレーボールという一番安全な球技を選びました。

――8月からの白馬、フィンランド遠征を通して、成長できた部分はありますか

 この夏は特に練習時間をかなりとれたので、そういったところでは基本的な体力はついたかなと思います。もともとあまりランニング系のトレーニングを取り入れてはいないのですが、そこもだいぶ強化して、今までのシーズンよりは走れるようになっているかなと思います。また技術面に関しても今回のフィンランドでは、これまで以上に技術と向き合うことができて、自分のイメージした滑りを実際に体で表現するということが、少しずつですけどできるようになってきたのかなと思います。

――日本と海外の練習でそれぞれの良いところはありますか

 フィンランドはスキートンネルという夏場から雪の上で練習できる環境があるので、そこでこちらで普段やっている、ローラースキーと呼ばれる道路でのスキーのトレーニングとその雪上トレーニングを交互に行うことができるので、どうしてもやっぱりそこで(日本と)差ができてしまうのですが、どういうところが差があるのか、どういう意識で例えば夏のローラーはやればいいのかとかは、夏に行う事が冬にどういう差として生まれるのかということを確認しながらできるので、フィンランドは結構技術的な面で助かりますね。あとは気候がとても涼しくて、30度以下ほどで午前中は練習できたり、暑くなっても30度は絶対に超えない感じなので、日本だったら暑くて練習にならないみたいな時でも、向こうは何時間でも練習できる環境ですね。

――ちなみに海外遠征で必ず持っていく物とかありますか

 携帯とか言っても当たり前ですよね(笑)。飛行機用に一応携帯ゲームを持っていきます。あまり合宿期間中にはできないのですが、移動の際にやりたいなと思うので持っていますね。

――特技にテレビゲームと書いてありましたが、やはりゲームはお好きなのですか

 好きですね。よくゲームセンターとかにも一人でも友達とでも高校の時から行っていて、やっているのが面白いですね。特技というほどうまくはないですけど(笑)。プレステが好きなので、中学生の頃にやっていたプレステのゲームをPSVitaでやっています。安く買えるので。懐かしいですよね。あとはパワプロをやっています(笑)。

――海外遠征はお好きですか

 半々くらいで、良い面は今言ったところで練習しかないというか、他の雑念と言ったら大げさですが遊ぶようなものがないので、練習に集中できるというのはあります。しかしやっぱりご飯とかは日本が一番美味しいというのがあるので、そこがはっきり好きとか嫌いだとは言えないところですね。

――何か日本食を持っていったりしますか

 そんなにないのですが、一応日本のカップラーメンとか味噌汁とかインスタントの物は、いつも何か持っていきますね。あとドレッシングも持っていきます。

――それはなぜですか

 期間が1ヶ月ぐらいになるとどうしてもやっぱり食べたくなって、決して向こうのご飯がまずいとか言うわけではないのですが、飽きちゃう所があるので。そういうのを食べるともう一回頑張ろうというか、気持ちが改まるので、リフレッシュも兼ねて持っていきますね。

――部門ごとの合宿と全体の合宿での練習内容に違いはありますか

 今回はローラースキーなどの専門的なものはなくして、なるべく登山だとかランニング、サーキットというように全員ができることをやっているので、専門的な色は部門合宿に比べればたぶん薄くなっているのかなと思います。しかしその中で、他の部門の人たちとも練習する機会がなかなか無いので、そういったところでやっぱり全員の頑張りを確認するというか、普段見られないところも見られる合宿になると思うので、そういった意味では全体合宿はやっていてとても楽しいなと感じます。

――チームの団結につながりますか

 そうですね、つながると思います。個人種目ではあるのですが、大学でやっているうちはチームなので、そこの意識づけというかお互いに刺激しあえるのかなと思いますね。

――所沢キャンパスでのトレーニングはどういったことをなさいますか

 まず自分のランナー部門とかは、さきほど言ったローラースキーを校内でやらせてもらうのと、競技場でのランニングトレーニングを。あとアルペンに関してはソフトボール競技場で、全体合宿でも行ったアジリティだとかサーキットトレーニングだとかっていうものやらせてもらっているのと、トレーニングルームでのウェイトトレーニング。あとは週に1回全員で全体練習というかたちで軽く球技をやっていますね。

――球技の練習を定期的にされていますが、やはり得意な選手はいますか

 アルペンはみんな上手いです。アルペンは軒並みセンスがいいというか、どうしてもサッカーとかバスケットボールとなると瞬発系の動きが必要になってくるので、アルペンの人たちの方がやっぱり速いですね。あとは反射神経がよくて、すぐに反応してすぐに体を動かせるというのはすごいなと。

――先ほど別の対談でも野球が今ブームになっていると伺いまして、それは下級生の間だけですか

 僕らもやりに行きますね。

――ちなみに佐藤主将はお得意ですか

 僕は全然球技はダメですね(笑)。どうにもこうにも分からないですね。見るのも好きだしやるのも好きなのですが、体がついてこないです。

――それでは改めて前回のインカレの成績について振り返ってみていかがですか

 まず、全体から言うと少し情けなかったかなというのがあります。昨シーズン全部を通しても調子があまりよくなくて、苦しいシーズンになっている中でのインカレで、調子悪いというのもわかっている中でのレースだったので不安はありました。それでもなんとか初日の30キロで3位に入れてよかったなというのもあったのですが、次の個人のスプリントでは少し僕の方での体調管理が至らず体調が悪くて、そういう中でのレースになってしまい、A決勝という6位以内に残りたかったのですがそれも叶わず結局ゴールして8番か9番で、それは情けないのと悔しかったですね。6番以内に入っていなかったらダメなレースだったので、そこは少し悔しかったです。

――フリーのレースとクラシカルのレースでそれぞれ難しさというのはあるのでしょうか

 クラシカルはグリップワックスという板を止める、のぼりなどを登っていくためのワックスの選定がまず難しくて、雪に合わなかったり全く効かなくても引っ掛かりがないので上りが登っていけなくてダメですし、逆にグリップワックスが強すぎても今度は板が全然滑らなくて、雪の上でランニングしているような感じになってしまい、それもそれでタイムが出なくてきついので、それを選ぶ所が一番難しいですかね。うまいことはまってしまえばすいすい滑っていけるのですが、逆にスケーティングはそのグリップワックスが無い分自分の実力がすごく出るというか、自分が怠けた分タイムが遅くなるので、どれだけ頑張り続ける事ができるかという点で体力的にはきついかなという印象があります。

――先ほど雪の話がありましたが、やはりそれぞれレースの会場ごとにやりづらさや得意不得意というのはありますか

 好きなコース嫌いなコースというのはあると思います。上りが好きというか、上りが多い方が成績の良い選手もいれば、逆に平らが多い方が良いという選手もいるので。あとは時期とその地域特有の雪質とか温度、湿度にもよるのですが、そういったところで滑りにくいコース滑りやすいコースというのはかなり分かれるので、合わせていくのが結構大変ですね。

――昨年の野沢温泉の会場はいかがでしたか

 コース自体、僕はそれほど嫌いじゃないというか、あまり嫌だなこのコースという感じではなかったです。結構滑りやすかったですね。苦しいことは苦しいのですが苦手意識はなかったです。しかし、雪がその時あまり良くなくて、全然スキーが滑らないコンディションだったので少しきつかったです。特にリレーの日とかは。

――レース前に下見とか準備というのはどのようなことをなさいますか

 やっぱり一回はコースレイアウトをしっかり頭の中に入れて、自分がどうすれば一番早いタイムでそのコースを滑れるかというのを意識しながら、前日までにコースで練習をして作戦を立てます。後はレース当日、その日の雪の状況を見て、きっとこうゆう雪だからここは滑りやすくて、ここは滑りにくいだろうとかを考えながら、レース前のアップを行って、いろんなコーチの人とかと話をして、クラシカルだったらこういう状況だから、先ほど言ったグリップワックスがここは効きやすくてここは効きづらいけど我慢して走れというような作戦を最後に話すという形で、少しでもはやくゴールできるような作戦をレースが始まるまではずっと立て続ける感じですね。

――レース前には緊張されやすいですか

 初めて行くところはがちがちに緊張したり、同じ大会で前の年にいい成績が残っているレースだと緊張しますね。前を越さないといけないなって。

――どのように緊張と向き合いますか

 どちらかというと結果だけを追い求めすぎると全然ダメなので、さっきも言いました作戦、ここをこう滑るという小さい目標をコースの中に作ってその目標を一つずつクリアしていくほうに意識をシフトさせると緊張もあんまり感じなくなりますね。どうしても勝ちを意識しすぎるとダメなんですよね。勝とうと思ってなかなか勝てないので。そこが僕の課題でもあって。

――レース前に行うルーティンなどはありますか

 スタートする前にはウイダーインゼリーのようなものと、アミノバイタルですね。たぶんどんなレースでもずっと飲んでいると思います。あとは、レース前のアップで基礎練習や反復練習を行って確認をしてからレースに臨むようにしています。

――日頃の生活面で何か意識されていることなどはありますか

 炭水化物をなるべく多めに摂るようにはしています。練習の強度にもよりますが。お腹が減るというか枯渇するのがレース中でも練習中もエネルギーがなくなってしまうのはよくないのでそれには気を付けています。あとはもともと冬になると体調を崩しやすいというのが今までの経験上あるので、先輩にいいって薦められたサプリメントをとっています。

――ちなみに冬の寒さは得意でしょうか

 夏の暑いのよりはいいです(笑)。暑さよりは寒さのほうが我慢できます。

――悪天候の中でのレースもあるかと思いますがどういった対策をされていますか

 レース前にしっかり着てアップして、すごい寒いときは長めにアップして汗をかいてから、すぐに着替えてレースをするようにします。なるべく体が冷えないようにすることです。あとはインナーを2枚重ね着したり、手袋を2重にしたりなど重ねることですね。

「常に変化し続ける進化し続けるチームになってほしい思いを込めた」

男女アベック総合優勝に向けてこの男の活躍は欠かせない

――主将に選出された経緯を教えていただけますか

 僕らの中でも何となく、自分か清野(嵩悠、社4=山形中央)か、傳田(翁久、スポ4=長野・飯山北)かという感じで。まとめるのが上手いわけでもないですが、その3人の中から選ばれるだろうと話はしていました。どういう経緯かわからないですが…。

――主将の難しさ、重圧などはありますか

 人数が多いので、一人一人が上手いことやってくれればいいと思いますが、うまくいかないところもあるのでなるべくは答えるようにしています。全員の希望を答えていくというのは難しいと思うので、どこかで我慢してもらう部分も出てきてしまうので、うまく相手に説明するのが難しく大変だったりしますね。説明一つでも印象も変わってくると思いますし。一人で考えて行動するとあんまりいいことないので、同期のみんなに話を出して確認してから動くようにはしています。

――同期の方の存在はいかがですか

 大変助かっていると言っておいたほうがいいですよね(笑)。みんな面白いやつらばかりで、いい意味でも悪い意味でも何でも言い合えるというか。いい意味で何も考えずに言い合えるのはとても助かります。

――きょねんの尾形峻主将(平27スポ卒)から何か伝えられたことはありましたか

 いや、何か言われたと思いますが忘れましたね(笑)。難しいことばかりだから気楽にやれよという感じだったと思います。その年ごとに色も違うので、そこは無理に今までのように目指すわけではなく、今までは今まででということで。

――監督から伝えられていることはありますか

 監督が僕らの生活に関わってくるというのが基本的にミーティングや全体練習の時くらいなので、普段の寮生活は(自分たちに)任せてもらっています。ポイントポイントで監督から指示があるようなかたちになっています。どちらかというと自分たちで考えて動いてという感じです。

――今季のチームの印象はいかがですか

 選手が多い分、問題などもありましたがそれをうまいこと乗り越えてやっとここまで来れている感じはあります。いいチームになってきていると思いますね。練習に関していえばアルペンの部分はあまり見られていませんが、僕らのランナーの部門は男女ともに練習の量が増えているので、自信になっていますね。

――ことしのスローガンに込められた意味を教えていただけますか

 色々と案は出ていましたが、やはり僕らの中にあるのは今までと同じようなことをやりたくないというか。そうなってくるとチーム以前に僕自身もこのままではいけないというのもあったので、『変革』を推しました。一人一人変わっていかないことには何も生まれないと思うので、常に変化し続ける進化し続けるチームになってほしい思いも込めて、決めました。

――今、変化を感じる部分はありますか

 単純に練習量が増えたのもあって、昨年のこの時期よりも体の状態もいいと思います。昨年に比べるとことしから集団での練習も増やしたりして、チーム内での競い合いも意識しあえるようになってきています。あとはアルペンの安藤が練習メニューを考えてくれていますが、夏場から全員に有酸素系のトレーニングを課して、動ける集団になってきていると感じますね。

――これから強化してきたい部分はありますか

 どれだけレースに近い環境で練習できるかが重要になってくるのと、あとはまだまだ雪上での技術練習が足りなくまだまだ改善点ばかりなので、一つひとつ修正していけるように技術練習をやっていきたいです。

――男子が4年連続の準優勝ということで、どのあたりに優勝の難しさを感じますか

 そうですね…。ランナー部門は実力がそのまま出る競技なので、いかに自分を強くできるか、インカレまでにどれだけ自分の実力を挙げられるかが重要になってくると思いますね。インカレまでのレースにいいレースができればそれが自信になってインカレの場でも堂々と滑ることができて自分の力を発揮することができると思うので。うまくいかないことには自信をもって滑れないと思います。あとアルペンに関しては、ランナーとは別にどれだけ実力があっても途中で転んだり、関門を通過できなければそれで終わってしまうので、運と言えばあれですが、実力だけではない部分が勝敗に関わってくると思います。そこはかなり難しいですね。その点自分たちがどれだけ準備をしていてもその場になってみないことにはというのもありますからね。

――最後のインカレとなりますが、チームとしてまた個人としての意気込みをお願いします

 チームとしては男子が4年連続準優勝なので、ことしこそは総合優勝をするということです。ことしはチャンスがあると思うので、4年生がこれだけ人数がいてインカレに出られるので。女子は例年通りやれば勝てるチームだと思いますし。男子はずっと悔しい思いをしてきています。きょねんまではどうしてもアルペンの点数で稼いでいてもらっていた部分もあったのでことしはなんとかランナーが点数をとろうと今までやってきているので、その成果を発揮できればいい点数がとれると思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 井口裕太、松富リサ)

前の自分より成長したいという思いを込めて記した言葉は「少しでも前へ」

◆佐藤 友樹(さとう・ともき)

1993年(平)9月30日生まれ。身長171センチ。新潟・十日町高出身。スポーツ科学部4年。クロスカントリー競技。全日本ナショナルチームメンバー。佐藤主将から発せられた言葉の一つ一つに重みを感じました。創部史上初の男女総合アベック優勝へ、そのチームの中心としての活躍に期待です!