まさに「ワセダから世界へ」を体現した大会となった。OB・ОGを含め早大スキー部7名が出場を果たした冬季ユニバーシアード。スロバキアのストラプスケプレソで行われた試合で、ジャンプの小林諭果(スポ2=岩手・盛岡中央)が金メダルを含むメダル3個、ノルディック複合の山元豪(スポ2=富山・雄山)が団体で銀メダルを獲得する活躍を見せた。経験を力に、次のステップへ――。早大スキー部の歩みが止まることはない。
★小林が金メダルに輝く!
初出場で優勝を勝ち取った小林
ジャンプの小林は、金メダルと銀メダル2つを獲得するなど大車輪の活躍を見せた。大会7日目に行われた、兄の小林潤志郎(雪印メグミルク)と挑んだ最初で最後のジャンプ混成では、1本目で85.5メートルをマーク。小林潤志郎が最長不倒の94メートルを記録し、合計202.4点で首位につける。2本目のジャンプが悪天候によりキャンセルとなったため、そのまま二人の優勝が確定。今大会で最初の金メダルを日本にもたらした。4日目の個人戦では試合直前の練習まで調子が振るわなかったという小林だが、開き直ることで「逆に、緊張せず楽しく飛ぶことができました」と実力を発揮し2位に。女子団体では優勝も狙えただけに銀メダルに悔しさが残ったが、「出場3試合すべてでメダルを獲得し、チームジャパンのけん引役になった」と倉田秀道監督(昭59社卒=東京・早実)は小林の健闘をたたえる。昨年は惜しくも代表入りを逃した小林だったが、大舞台で悔しさを晴らす飛躍を披露した。
★ノルディック複合団体は銀メダルに
個人と団体で3種目に出場した山元
昨年の団体戦では銅メダルを獲得したノルディック複合の山元。今大会では前回大会と同様、3種目に出場した。個人戦ではグンダーセン方式が7位、マススタート方式が4位となり惜しくも表彰台には及ばなかったが、前回大会の10位と8位という結果から順位を上げ、成長を感じさせるレースとなった。大会8日目に行われた団体戦では前半のジャンプで2位に入り、後半のクロスカントリーへ。トップと9秒差で1走の山元がスタートした日本は、2走で一時トップに立つもドイツに抜かれ2位でゴール。金メダルとはならなかったが、「日本のお家芸」とも言われるノルディック複合で世界に存在感を示した。銅メダル、銀メダルを手にした山元が狙うはあと一つ。次こそ表彰台の頂点へと上り詰めたい。
★世界の舞台で手応えつかむ
奮闘を見せる佐藤友副将
クロスカントリー代表には今大会で早大最多の4人がメンバー入り。OBの宮沢大志(平26スポ卒=現JR東日本スポーツスキー部)、副将の佐藤友樹(スポ3=新潟・十日町)、女子からは大平麻生(スポ2=新潟・十日町)と滝沢こずえ(スポ1=長野・飯山)が大舞台に挑んだ。世界の強豪を前に厳しい戦いが続いたが、男子10キロクラシカルでは宮沢が23分44秒7で4位に。メダルが狙えるところまで迫り、手応えをつかんだ。倉田監督は「世界を見据えられる違いを見せてくれた」と国内外で活躍を見せる宮沢のレースを評した。現役選手では、強化指定選手として初のユニバーシアードに臨んだ佐藤友が宮沢らと4×7.5キロリレーに出場。3走を務め、前を走る2人を抜きチームを5位へと押し上げる善戦を見せた。大平と滝沢は満足のいくレースとはならなかったが、「伸びしろがあるので、今後のレースでユニバーシアードでの経験を生かしてほしい」と倉田監督は期待を寄せる。世界の舞台で輝くため、選手たちの鍛錬は続く。
★最後のユニバーシアードはメダルならず
スペインのグラナダで行われたアルペン競技。早大からはOGの向川桜子(平26教卒=現秋田ゼロックス)が出場した。昨年早大を卒業した向川にとって最後の冬季ユニバーシアードであったが、途中棄権が相次いだ。しかし、グラナダ大会2日目に実施されたスーパー大回転と回転を組み合わせたスーパー複合では1分50秒87をマークし7位に。高速系と技術系の両方の技術が問われる種目で44人の出場者のうち上位につけた。早大スキー部時代からW杯に挑戦してきた向川にとって不本意な結果となったが、勝利への思いが向川の新たな挑戦の原動力となるだろう。
(記事 副島美沙子、写真 スキー部提供)
結果
●ジャンプ競技
▽女子個人ノーマルヒル
2位 小林 198・2点
▽女子団体
日本 2位 小林、松橋亜希(東海大) 385.9点
▽混合団体
優勝 日本Ⅰ 小林諭・小林潤志郎(雪印メグミルク) 202.4点
●ノルディック複合競技
▽個人グンターセン10キロ/ノーマルヒル
山元 7位(前半飛躍6位)
▽個人マススタート10キロ/ノーマルヒル
山元 4位(前半距離 6位)
▽団体グンダーセン3×5キロ/ノーマルヒル
日本 2位(前半飛躍2位)
山元、清水亜久里(田口ク)、渡部剛弘(明大)
●クロスカントリー競技
▽男子スプリント・フリー
宮沢 準々決勝敗退 3分30秒59
佐藤友 準々決勝敗退 3分40秒74
▽男子10キロクラシカル
宮沢 4位 23分44秒7
佐藤友 29位 25分29秒6
▽男子30キロフリー
佐藤友 11位 1時間17分18秒7
宮沢 DNS
▽男子4×7.5キロリレー
日本 5位 1時間26分16秒6
石川謙太郎(専大)、宮沢、佐藤友、宇田崇二(東海大)
▽女子スプリント・フリー
滝沢 準々決勝敗退 3分45秒44
大平 予選敗退
▽女子5キロクラシカル
滝沢 26位 14分32秒1
大平 35位 14分48秒2
▽女子15キロフリー
大平 22位 48分26秒9
滝沢 30位 49分46秒3
▽女子3×5キロリレー
日本 8位 滝沢、田中ゆかり(東海大)、大平 52分5秒6
▽混合団体スプリント
宮沢、滝沢 10位 21分30秒70
佐藤友、田中 予選敗退
●アルペン競技
▽女子スーパー大回転
向川 DNF
▽女子スーパー複合
向川 7位(スーパー大回転 26位) 1分50秒87 ▽女子大回転
向川 DNF
▽女子回転
向川 DNF
コメント
倉田秀道監督(昭59社卒=東京・早実)
――今大会ではジャンプ競技とノルディック複合競技でメダルを4つ獲得する結果となりましたが、選手たちのレースを見ていていかがでしたか
チームジャパンでのメダル4つということを素直に喜んでしますし、おめでとうと伝えたいです。コンバインドの山元は、個人戦でメダルを取らせたかったですね。結果、4位と7位でしたが、団体でメダルを獲得したのでよしとしなければというところでしょうか。個人戦でメダルの実力はあるので、今シーズン、残りの国内大会で圧倒的な存在を示してほしいと思います。女子ジャンプの小林は、出場3試合すべてでメダルを獲得し、チームジャパンのけん引役になった感がありますね。日本チームにあって、個人で出場全種目でメダルを獲得したのは過去にも稀有な結果ではないでしょうか。自信を持って試合に臨めていたので、伸びしろが開花し始め、ワセダに入学して成長したと思います。もっとストイックに練習を積めば、W杯でも一桁に入れるのではと思っています。クロスカントリーに関しては、個人戦では世界の中では力不足と言わざるを得ません。どこか空回りしていたようにも見えました。リレー、個人ロングではいい走りをしていたので、後半になってようやく意識が変わり、その空気感も影響したのではと感じます。個人別では、宮沢は特別な想いでレースに臨んだと思いますが、メダルに届かず残念でした。スプリント予選タイム6位、個人10キロクラシカル4位(トップとの差15.5秒)など世界を見据えられる違いを見せてくれたと思います。佐藤は、リレーと30キロフリーで本来の粘りの走りができたように思います。とりわけ、30キロでは結果は11位でしたが、途中7位に上がったこと、FISポイントで35点台であったことを考えれば上出来です。大平、滝沢は、持っている引き出しを出し切れなかったと思いますが、伸びしろがあるので、今後のレースでユニバーシアードでの経験を生かしてほしいと思います。
小林諭果(スポ2=岩手・盛岡中央)
――今大会で3つのメダル獲得となりましたが、結果を受けていかがですか
とてもうれしく光栄に思います。
――個人戦を振り返って、レースの感想をお願いします
試合直前の練習までなかなかいいジャンプができていなかったので開き直って飛びました。逆に、緊張せず楽しく飛ぶことができました。条件も、アドバイスをくださったりワックスをしてくださったコーチの方々のおかげです。感謝の気持ちでいっぱいです。
――団体での銀メダルはどのように受け止めていらっしゃいますか
悔しいです。(松橋)亜希さんがいいかたちで私につないでくださったのに、生かすことができず申し訳ない気持ちでいっぱいです。
――混合団体のレース前にはお二人でどのようなお話をされましたか
特にこれといった会話はありませんでした。ただ、緊張している私を見てか、楽しんでこいと言ってくれて、グータッチをしました。
――金メダルが決まった瞬間、どのようなお気持ちでしたか
ただただうれしかったです。信じられませんでした。
――今後の試合に向けて意気込みをお願いします
シーズンも終盤になり残す試合も数試合となりました。運営してくださる方々やサポートしてくださる方々に感謝の気持ちを忘れず一試合一試合全力で取り組んでいきたいと思います。まずは目前となったインカレで早稲田大学アベック優勝に向け貢献できるよう頑張ります。今後も早稲田大学スキー部の応援よろしくお願い致します。