【連載】『Aim for the top!』第2回 山元豪×小林諭果

スキー

ことし4月に早大に入学し、スキー部の門をたたいた複合競技の山元豪(スポ1=富山・雄山)とジャンプ競技の小林諭果(スポ1=岩手・盛岡中央)。成長著しいルーキー2人に早大での生活、競技のことなどお話ししていただいた。

※この取材は10月8日に行ったものです。

「分からない部分が魅力」(小林)

――普段はどのような練習をされているのですか

山元 生活がずっと寮なので、寮にいるときはスキージャンプの練習はできないので、この周辺でクロスカントリーの練習をしたり走りにいったりしているのですが、毎週末に長野のほうに行って、そこでスキージャンプの練習をしています。

小林 私も複合競技の人たちと一緒に週末は長野県の白馬村に行ってジャンプのトレーニングをしています。平日は基本的には走って体幹を鍛えてというローテーションなのでできることをやっています。

――普段から複合競技とジャンプ競技は一緒に練習されているのですか

山元 スキージャンプの練習は一緒にやっています。平日は別々です。

――夏の合宿ではどのような練習をされましたか

山元 基本的にあまり練習内容は変わらないのですが、練習場所が変わります。普段はこの周辺でしか練習できないのですが、ことしの夏は長野県の菅平というところに行って、結構標高が高いので、そこで主に持久系のクロスカントリーの練習をやっていました。

小林 ことしの夏は、複合競技とのジャンプ合宿に試合参加のために参加できなかったので、個人での試合参加になってしまいました。全体合宿も初日のみしか参加できなくて、その前日にクロスカントリー競技の方々とインターバルのきつめの練習をさせてもらったのですが、先輩方の姿を見て自分も頑張らなくてはいけないなと思うところが多かったです。全体合宿もジャンプでも同期と先輩から学ぶことが多いので、身になる練習ができたと思います。個人では試合と全日本の合宿のために北海道にも行きました。

――スキーを始めたきっかけは

山元 家の近くにジャンプ台があったということですね。兄(山元駿、ゴールドウィンスキークラブ)がやっていてそれに影響されて自分も始めたというのもあります。小学校にジャンプ台があって、日本にジャンプ台のある小学校は僕の学校と長野県の白馬村の小学校だけなので、そういう環境に育ったっていうのもあって、いまこうやってジャンプをやっているのだと思います。普通に生活していて近くにジャンプ台があるっていうことはなかなかないことだと思うので、その環境がなかったらスキージャンプもやっていなかったと思います。

小林 兄(小林潤志郎、東海大)と弟(小林陵侑、岩手・盛岡中央高)が先にジャンプを始めて、それで私も誘われて始めました。地元にはジャンプ台はなかったのですが、車で1時間くらいの距離にはジャンプ台があってそこには女子ジャンパーの先輩も何人かいて、やってみないと声をかけられたのでそれも影響して、女子のジャンプはその時はとてもローカルだったし、人数も少ないので珍しいよ、と言われてちょっと調子に乗ったのもあります(笑)。

――ご兄弟からアドバイスを受けたりすることはありますか

山元 昔はなかったのですがレベルが上がるにつれて、お互いが目指すものが同じなので、すごく高いレベルで話せるようになったというか。お互いのためになるような話をよくするので、そういうところから自分が持っていない知識などももらえるし、逆に僕が知っているものも話したりして、お互いのレベルを上げるという認識があるので、そういった面ですごく良い存在だと思います。僕はジュニアの全日本チームなのですが、兄はシニアの全日本チームにいて、今オリンピックに一番近いところにいるので、目標にしている選手でもあります。

小林 兄も弟も私と違ってとてもジャンプが上手なので、今まで後姿を見て練習してきたり試合に臨んだり、いつも応援していた側だったのですが、最近は自分も少しずつステップアップしてきて、兄からは小さいときからアドバイスはもらっていたのですが、逆に最近はもらえなくなって、弟から教えてもらったりしています。ダメなお姉ちゃんなのですが、競技に対してはとても兄弟は向上心があるので、競技についても、兄からは私生活についても学ぶことは多いです。

――ジャンプを飛ぶときに怖さはないのですか

山元 怖いです(笑)。

小林 怖いです。

――飛ぶときはどこを見ているのですか

山元 基本的に下です。たぶん着地する場所から目を離すとどこを飛んでいるのか分からなくなってしまうので。

小林 最後まで気が抜けないです。

山元 下手をするとすぐに転んでしまうので。すごく一本一本集中します。一日にだいたい7本くらい飛ぶのですが、集中力は4本ぐらいで切れてしまうんです。

小林 本当にそれくらい精神的に削られます(笑)。何本飛んでも慣れないです。

――複合競技とジャンプ競技それぞれのどこに魅力を感じますか

山元 僕はジャンプとクロスカントリーだったらジャンプの方が得意なので、ジャンプの方では空を飛んで競う競技ってなかなかないじゃないですか。普通の人じゃできないことをやってそれを見る人もすごく感動することができるので、スキージャンプにはそういった魅力があると思います。クロスカントリーは正直嫌いなので、前半得意なジャンプでリードして後半その差で逃げ切るって感じなので。逃げ切った時の達成感ですね。

――なぜジャンプ競技ではなく複合競技を選んだのですか

山元 キングオブ中途半端なので(笑)。環境がそういう感じだったんですよね。ジャンプだけやるっていうのが今はあまりなくて。ジャンプ競技の人も最初は体力をつけないといけないので、小さいときに両方やらせるんですよね。ジャンプとランニングとかクロスカントリーとか。それで高校に上がって、どうしてもクロスカントリーが伸びないとかそういう人はジャンプだけに転向するのですが、結構僕は体力があったので。ジャンプだけよりは複合競技で勝負した方が、可能性はあると思ったので複合競技にしました。

――小林さんはジャンプ競技のどこに魅力を感じますか

小林 最初は本当に嫌でした。怖いし、楽しくないし、暑いし。

山元 最初は本当にジャンプ台の着地するところから滑り始めて、それを繰り返すだけなんですよ。飛ぶのには早くても1年はかかります。

小林 それでも飛べちゃうと楽しいってなってしまって。やっぱり空を飛ぶっていう競技はなかなかないので。スキーのできる環境だったし、兄も弟もやっていたので必然的にやっていたかたちになってしまうのですが、競技は本当に楽しかったです。たった2本で結果が決まってしまうのですが、それは練習の成果だけじゃなくて、その時の運とか自分のコンディションとかで決まってしまうので、難しいんですよね。でもそれが楽しいっていうのが魅力だと思います。

山元 スキーって決まってないんですよね。ワールドカップでも絶対この人が1位になるっていうのはなくて、コロコロ順位が変わるんです。その日の風とか雪の質とか板の滑りとか得意な台とか、飛び方も人によっていろいろとあるので、結構運の割合が大きいです。

小林 そういう分からない部分が魅力だと思います。

山元 逆に言えば、いつでもチャンスはあるっていうことなので。

談笑する山元

「チャンスがあれば狙っていきたい」(山元)

――大学を選ぶにあたって早大を選んだ理由は

山元 僕が第一に優先したかったのは練習環境なのですが、大学の先輩の話とかを聞くとやっぱり大学って街中というか都会にあるので、その中で練習をするのは厳しいという声が多くて。その中で、所沢は結構田舎なので、近くに狭山湖っていう湖もあるし、ローラースキーもキャンパス内でできるので、やっぱり一番に環境ですね。あと周りに誘惑もないので(笑)。

小林 ずっと兄のいる東海大に行きたいと思っていたのですが、入試方法がトップアスリート推薦ということで早大も考えはじめて、やっぱり環境は他の本州の大学に比べたら整っていると思うし、先輩方もとても素晴らしいので。1年しか被らないのですが善斗さん(渡部善斗、スポ4=長野・白馬)と一緒に練習したいなと思ったのも大きいです。あとは兄にばっかり頼りたくなかったのと、女子のジャンプ選手は早大では初めてなので、道を切り開いていこうと思って。もし私が良い結果を残したら後輩も入ってくれるかなと考えたので。

――早大初の女子ジャンプ選手として苦労などがあったりはしますか

小林 まだ入学して半年ちょっとしか経っていないのですが、試合参加などが複合競技の選手とは別行動になってしまうので、自分で試合に参加しに行かなきゃいけないという点は、まだ運転もできないので苦労することもあります。ですが、それも経験だなと思っているので。一人でもしっかりできたらあとあと困ることはないなと思って。練習は複合競技の方に混ぜてもらったり、アルペン競技の方に混ぜてもらったりして、自分で考えてできるようにしているので、そんなに大変なことはないです。

――大学と高校の違いを感じる時はありますか

山元 中高同じ部門の先輩がいなくて一人でやってきていて、メニューとかも全て先生や監督に教えてもらってきていたので、自分の思っていることが全然できなかったのですが、大学に入って初めて先輩ができて、一つ一つの練習を考えながらやっているというか。同じ部門の人と練習ができるというのがすごく新鮮で、大きな変化と言ったらやはりそれですね。その先輩っていうのがことしオリンピックに出るであろう渡部義斗さんでことししか被らないのですが、毎日毎日意識してやっています。

小林 私もずっと岩手で生活してきて、高校も私立だったので、前期に取った体育に授業もスポーツ科学部なのでみんながみんな何でもできて、自分は運動神経が良いと思っていたのですが、みんなが何でもできる中での実技はとても楽しいと思いました。他の授業でもトップレベルの選手たちと授業が被るだけですごいってなっちゃって(笑)。自分の競技はメジャーではないのですが、メジャーで有名な選手を見られたりすることが、すごく刺激になります。スキー部で渡部善斗さんを始めとして、部門は違っても色々な選手の夏の活躍や話を聞いて、自分もがんばろうと思えました。

――寮生活で大変なことは何かありますか

山元 やっぱりみんな同じ空間で一緒にいるので、周りへの気遣いが最初はすごく苦労しました。

小林 私もずっと実家暮らしだったので、寮っていうのが初めてで、どうしたらいいのかわからない状態で入ってきました。そして私は一番人数が多い先輩3人、同期3人の6人部屋なので、同期でいろいろ話し合って生活をしてきたのですが、先輩から怒られたりもして、人間としてはたぶん成長できていると思います。

山元 当たり前のことをできていないとやっぱり言われるので。最初は結構抵抗がありましたが、すごく勉強ができて人間的にも成長できるので。

小林 苦労は朝掃除と日直の仕事くらいです(笑)。

山元 1年生の仕事はたくさんあるのですが、他の大学に比べれば全然なので。その分気遣いの部分だったりを自分たちでよく考えて、それが間違っていれば先輩から言われるしって感じですね。

小林 大変は大変だけど楽しいことの方が多いです。

――上下関係とかもあるのですか

小林 先輩方はとっても優しいです。気軽に声を掛けてくれたり、練習に誘ってくれたりとか。上下関係が厳しい大学が多い中で早大はアットホームなので生活しやすいです。

山元 ただ、慣れてきてしまうと、緩くなってきてしまって馴れ馴れしくなってしまうというところがあるので、その一線は守るようにしています。そういうところも先輩は見ているので、緩んできたら注意が入るので。

――競技をやっている上で自分の強みはどこだと思いますか

山元 ジャンプが得意なので、そこだけは誰にも負けないようにと自分に言い聞かせながら日々練習しています。

小林 自分は強みがあんまりないのが強みなんですけど(笑)。たぶん身長が女子ジャンプの中では高い方なので、身長を生かしたジャンプができればと思っています。身長が高い分長い板が履けるので、それを生かしていけたらと考えている途中です。

――逆に自分の弱点はどこだと思いますか

山元 メンタルですね。すごく勝負弱いので。弱点がすごくはっきりしているので、そこを考えながら、日々の練習から試合を想定して自分にプレッシャーをかけるようにやっています。

小林 弱いところを挙げたらキリがないんですけど、メンタルは1つの課題だなと思っています。1本目成功しても、2本目に失敗してしまうといったことが結構あるので、それでも試合の経験を積んで、自分としても成長しているのかなと思ったりもするんですけど、メンタル面は意識していきたいところだと思います。あとは練習嫌いなので、すぐサボってしまうんですよね(笑)。あと脚力のなさも弱点です。スペシャルジャンプの選手なのに複合競技の選手よりもジャンプ力がなくて。大学に入って練習していく中で、複合競技の方々と練習して弱すぎると気づいて、練習方法を教えてもらいながらやっていたら少しずつ成果が出ていることが分かったので、それを続けていきたいと思います。

――お互いのすごいところを教えて下さい

小林 豪は練習にストイックだと思います。私がジャンプで悩んでいる時もバカだな、とは言いながらもアドバイスをくれる優しさとか。あと人一倍研究をしていると思います。いろいろな選手のジャンプを見たりして、ジャンプが強みって言っているんですけど、それなりの努力をしてるからジャンプが上手なんだと思います。練習に対する姿勢がとても尊敬できます。

山元 競技面ではまだまだ改善しないといけない点がたくさんあると思うんですけど(笑)、私生活から見ていつも元気なのでチームの雰囲気がすごく良くなりますね。複合競技だけの合宿とかもあるんですけど、その時は男だらけなんですよね。そうするとすごく花がないというか。こんなやつですけど、一人いるだけでチームの雰囲気もすごく明るくなるし、意外といろいろ考えているので、そういうところも含めて大きい存在だと思います。いますごく変わろうと努力しているというのが分かるので、そういう姿勢とかも見習わないとと思います。

――今シーズンの目標は

山元 一番の目標はユニバーシアードですね。僕もソチオリンピックに出るっていう目標を立てて練習してきたのですが、現状では出ることはできないし、出られたとしても日本チームに貢献することはできないと思うので、まずはユニバーシアードでしっかり力を試すと同時に、自分をもっとアピールしていきたいです。そこでアピールできればオリンピックの可能性もゼロではないので。まず第一にはユニバーシアードでメダルを取りたいです。

小林 やっとコンチネンタルカップのポイントを取ることができて、W杯に出場する権利を得たので、オリンピックのメンバーは今からだと厳しいので、4年後のオリンピックを見据えて、今は国内で表彰台に上がることと、W杯のメンバーに選んでもらってW杯でポイントを取ることが大きな目標です。世界ジュニア選手権も今年までは出られるので、そこできょねんのリベンジをしたいと思います。

山元 ことしはオリンピックに強化のお金がいってしまって、僕たちは国際試合にも全然出られないのでどちらかと言えば我慢の年かなと思います。だからこそ、高梨沙羅(クラレ)さんや渡部暁斗(平23スポ卒=現北野建設)さんにメダルを取ってもらってスキー界を盛り上げてほしいです。それでもチャンスがあれば狙っていきたいです。

質問に答える小林

目標は男女アベック総合優勝!

――インカレに対するイメージは何かありますか

小林 女子のインカレ競技がつい2、3年前にできたばかりで、毎年地元で開かれているので、大会を結構見に行くのですが、大学ごとに競い合うっていうのは、1年に1回のこの試合だけで、なかなかみんなで集まることもできないというのを見ていて感じました。競技自体はただの試合なんですけど、普段出せない力を発揮するような選手がいたりして、インカレってほかと違うんだなって感じたことがあります。そんなに大きな大会ではないんですけど、自分の力を試す場所だと思います。

山元 先輩から聞いた情報しかないんですけど、やっぱりチームとして戦うっていうことがあるんですよね。高校の時は個人で戦うって感じで、自分の成績を出すのに必死だったんですけど、先輩とかに聞いたら早大スキー部っていうチームでほかの大学に戦いに行くので、個人競技から一気にチーム戦に変わるというか。それに、普段他の人の競技は見られないので、それを見るのが楽しみだし、良い刺激になると思います。ただその分めちゃくちゃ緊張すると思います。

――インカレへの意気込みを

山元 もちろん複合競技での優勝です。そして男女総合優勝です。

小林 女子ジャンプで優勝して、女子の総合優勝と男女アベック優勝に貢献できるように、一年生ですががんばりたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 近藤万里奈、辻玲乃)

※記事中に誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。

ワセダマークを作る二人

◆山元豪(やまもと・ごう)(※写真左)

1995(平7)年1月27日生まれ。ノルディック複合競技。富山・雄山高出身。スポーツ科学部1年。斬新な書き方を探して斜めに色紙を書いてくださった山元選手。競技でも斬新な活躍を期待しています!

◆小林諭果(こばやし・ゆか)(※写真右)

1994(平6)年5月16日生まれ。ジャンプ競技。岩手・盛岡中央高出身。スポーツ科学部1年。山元選手との掛け合いで場を和ませて下さった小林選手。持ち前の明るさでこれからもチームを盛り上げて下さい!