男子5位、女子3位!納得と感謝のインカレ

ウエイトリフティング

 今年もいよいよこの季節がやってきた。全日本大学対抗選手権(インカレ)。スナッチ、クリーンアンドジャーク(ジャーク)、トータルの各8位まで点数が与えられ、大学ごとに合計得点を競う団体戦だ。一年の集大成の場であり、4年生にとっての最後の舞台でもある今大会は、男子が5位、女子が3位という結果に終わった。

 男子56キロ級の知念勇斗(スポ2=沖縄・豊見城)はスナッチを3本落ち着いて決め2位で折り返すと、「勢いに乗れた」とジャークでも2本連続成功。3本目こそ失敗したが、トータルで優勝。6月以来久々の出場となった知念がチームに勢いをつけた。続いて登場したのは男子62kg級の千葉健介(社3=岩手・水沢)。こちらも優勝が期待されたが、スナッチの1本目を落とすとそのまま苦しい展開に。順位こそトータル2位だが、千葉の顔に笑顔はなかった。ここで期待通りの活躍を見せたのが77キロ級生頼永人(スポ3=兵庫・明石北)だ。エントリー選手の中での最重量でスタートしたスナッチを3本淡々と成功させる。しかし、そう簡単には勝たせてくれないのがインカレ。生頼がジャークの1本目で大会新記録を上げた直後、金沢学院大の選手がその記録をさらに上回る170kgを成功。その後互いに重量増加を繰り返したが、相手のミスもあり2本目に171kgを決めた生頼に軍配が上がる。「今までお世話になった先輩方に結果で恩返しできてよかった」と先輩への感謝の思いを口にした。2日目を終えた時点で早大の順位は6位。そこで目標順位を1つさげ、5位を狙うことに。迎えた最終日、3日目。105キロ級に池田祐介(社2=滋賀・安曇川)、武田健主将(スポ4=宮城・石巻)が出場。池田は本来の調子とはほぼ遠く、成功率に欠けた。得点もジャークの1ポイントのみに終わってしまう。一方の武田は「出られない4年生の分まで」と必死にバーベルを上げた。その思いからだろうか、「予想では0点でした」というスナッチで6位に入り3ポイントを獲得。得意のジャークでは仲間の大きな声援を背負い、順調に2本取った。3本目は自己新に挑戦。失敗に終わったがトータル302kgの5位に。大学生活最後の試技はスナッチ、ジャーク両方自己ベストに挑戦できた。「取れなかったことはくやしいですけどこれがすべて」とすがすがしかった。

武田主将の現役最後の試技

 女子は6位に終わった昨年を上回る順位を目指し、この一年野本なつみ副将(スポ4=埼玉・草加)の下で練習に取り組んできた。その成果は初日の48kg級で表れた。まずは新川百音(スポ1=山梨・塩山)。これまで課題だった成功率が改善され、スナッチを全て成功させる。その後のジャークでも2本をきっちりと決めた。トータル148kgの2位になり、セコンドの野本とともに笑顔を見せた。その新川に「火を付けられた」というのが先輩の安嶋千晶(スポ2=茨城・大子清流)だ。後輩には負けたくないと本来予定していたよりも重い重量への変更もあったが6本パーフェクトの試技を見せ優勝。「ふたりでワンツーフィニッシュを目指していたのですごくうれしい」(安嶋)と笑顔で話した一方、表彰台では4年生への思いから感極まる場面も。安嶋のチームへの強い思いが感じられた。この二人の活躍もあり2日目終了時で1位。優勝も見えたが最終日に抜かれ結果は3位。「優勝が見えただけに悔しい」(野本)。しかし昨年からチームは大きく成長した。今回出場した選手は全員3年生以下のため、来年が楽しみだ。

先輩への感謝を胸に大会に挑んだ安嶋

 これで今年度すべての大会が終了。4年生は引退する。男子は当初予定していた4位を取ることはできなかったが、納得の5位、女子は昨年の6位から大きく飛躍し3位と好成績を収めた。出場選手のうち4年生は武田だけと若いチーム。仲間を応援する声、試技後のあいさつなど随所に4年生への感謝が感じられる場面があった。「恵まれた同期、後輩に囲まれて幸せだった」と主将。先輩たちが残したものを糧に来年こそは優勝旗を早大に持ち帰りたい。

(記事 田原遼 写真 大久保美佳、田原遼)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません

集合写真。来年こそは頂点へ

結果

★男子

▽56キロ級

知念勇斗 スナッチ103Kg C&J131Kg トータル234Kg 1位

▽62キロ級

千葉健介(社2=岩手・水沢) スナッチ112Kg C&J138Kg トータル250Kg 2位

吉田旭(社1=岐阜・中津)スナッチ0Kg C&J0Kg トータル0Kg 記録なし

▽69キロ級

生頼永人 スナッチ129Kg C&J171Kg(大会新) トータル300Kg 1位

田中裕也(スポ1=宮崎・小林秀峰)スナッチ0Kg C&J125Kg トータル0Kg 記録なし

▽77キロ級

永迫竜矢(スポ2=宮崎・小林) スナッチ110Kg C&J141Kg トータル251Kg 9位

▽105キロ級

武田健 スナッチ126Kg C&J176Kg トータル302Kg 5位

池田祐介 スナッチ125Kg C&J155Kg トータル280Kg 9位

★女子

▽48キロ級

安嶋千晶 スナッチ68Kg C&J93Kg(大会タイ) トータル161Kg 1位

新川百音 スナッチ67Kg C&J81Kg トータル148Kg 2位

▽58キロ級

内門沙綾(スポ3=宮崎・小林秀峰) スナッチ70Kg C&J104Kg トータル174Kg 4位

▽75キロ級

柏木麻希(スポ2=京都・鳥羽) スナッチ87Kg C&J103Kg トータル190Kg 4位

▽+75キロ級

田中李恵(スポ2=香川中央) スナッチ75Kg C&J95Kg トータル170Kg 5位

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コメント

武田健主将(スポ4=宮城・石巻)

――今回、武田選手個人の記録についてはどう感じていますか

今回は記録よりも順位(が大事)だったので、予想ではスナッチ0点のところで点数取れたというのは貢献できたし、ジャークについてもラッキーではありましたが2位だったのでよかったかなと思います

――武田選手の前で結構シャフトの交換がありました。あれはいいことなのですか

いや176kgをやる前の交換はいらなかったかなと思います

――今回は試技に入る前に、応援席の仲間のほうを見たり、そちらにもお辞儀をしたりという場面もありました。やはり最後という思いが強かったですか

そうですね。あとインカレは団体戦なので、応援も普段より声が出ていたり、一本一本の重さも普段とは違うものでした。4年生で出たのが自分だけだったので、同期の分の思いも背負って「ありがとう」という気持ちを込めてやっていました

――最後は失敗に終わってしまいましたが、終わったときはどういった気持ちでしたか

上げられなかったことに関しては悔しかったです。前の日チームのみんなよりもはやく宿舎に帰って、池田、柏木、季恵と4人で24本取ろうとずっと話していたので、取れなかったことに関しては残念でした。

――達成感はありましたか

そうですね。終わったなという気持ちと、この結果が高校から始めて7年間のすべてだったと思っています。最後スナッチの131kg、ジャークの180kgは自己ベストなので、そこに挑戦できたというのはうれしかったですね

――次にチームのほうですが、団体は5位という結果となりました

今回男子は4位を目指していたのですが、初日2日目を終えて明大が予想よりもかなり点数を取っていたので、目標を切り替えて5位をしっかり取るということを考えていました。結果しっかり取れたのでよかったのかなと思います

――改めて大学四年間振り返っていかがですか

面倒見の良い先輩、憧れの先輩がいて、同期がいて、いつも「武田さん」っていって慕ってくれる後輩がいて、本当に充実していましたし、その環境にいれて幸せでした。

――後輩に向けてメッセージをお願いします

ことし4年生で出たのが自分だけだったということもあり、チームの弱体化はないと思うので、現状突破していってほしいなと思います

高橋まどか主務(人4=神奈川・フェリス女学院)

――今回のチームの成績は高橋さんから見てどう感じますか

男子はある程度予定通りに終えられてよかったなと思いますけど、まだまだ上を狙えると思うので、来年以降頑張ってほしいです。女子に関しては本当に夢を見させてもらえました。最終的には残念でしたけど、そんな景色を見させてもらえると思っていなかったので、四年間やってきてよかったです。幸せなマネージャーでした!

――前回の対談では「チームとしての着地点が見えない」ということでしたが、改善されましたか

女子に関しては着地しましたね。新川がすべて取るってことは奇跡的なことだったのですごくうれしかったです。内門も最後は肩が抜けないか心配だったんですけど無事取ってくれてよかったです。男子は不完全燃焼の部分があったのかなと。ただ来年の4年生は勝ちたい人たちばかりなので、もっと良い景色をみて卒業してほしいなと思います

――後輩へメッセージをお願いします

女子はことしの分も来年は取り返して優勝してほしいなと思います。男子はもう少し本番に強くなって、三強(日大、法大、九州国際大)を倒せるようなチームになってほしいなと思います

野本なつみ副将(スポ4=埼玉・草加)

――女子は昨年の6位から3位になりました

嬉しいのですが、優勝が見えていただけに、残念です

――今回の大会での選手たちは野本さんにはどう映りましたか

本数勝負だったのでみんないつもより緊張感があってよかったです

――今回はセコンドで選手をサポートする立場でしたが、選手たちにはどういった言葉を掛けていましたか

不安になるとよくないので、「大丈夫、絶対いけるよ」といった感じの言葉を掛けました

――最後に後輩に向けて一言お願いします

今年優勝できなかった分、来年は頑張ってほしいです

生頼永人(スポ3=兵庫・明石北)

――今回もまた優勝ですね

いや今回は運がよかっただけです。相手が本来の調子なら負けていた試合だったので。

――ジャークの最後の場面ですが、先に相手が落としました。その時はどういった心境で見ていましたか

本当に177kgをやるのだなと。本来ならジャークだけの優勝を狙うなら、171kgのあとの172kgでよかったはずですし、もしトータルでも優勝を狙うなら175kgで十分だったので。一応177kgが日本記録ですし、相手の選手がこれで引退だったらしく、そういった点で助けられた試合でした

――普段の圧勝ではなく今回は接戦でした。そういったライバルの出場というのはやはり燃えるものがありますか

今回はある程度力のある選手たちが出場する大会だったので、接戦になりました。ただ普段の大会ではその付近に全日本レベルのもっと大事な大会があるということもあって、そちらに向け調整する選手が多いのでそういう(圧勝という)かたちになっています

――3年間一緒に過ごしてきた3年生にはどういった思い入れがありますか

一言でいえば、かなりわがままを聞いてくれた方たちでした。練習で自分のやりたいことをやらせてくれました。すごくわがまま言っていたので、助かった反面申し訳ないなと思っています。ただこうしてインカレで結果を出せたので少しは恩返しできたかなと思います

――来年は最上級生ですが、どういった一年にしていきたいですか

来年もケガなく安定して成績を残せるように頑張ります

千葉健介(社3=岩手・水沢)

――今回はスナッチの1本目から失敗するなど、「あれっ」と感じることが多かったのですが調子は悪かったですか

そうですね。少し足がつりかける感じになってしまって。ただそういうことは過去にもあったので、団体戦でこうなってしまったことは申し訳ないですね

――試技の途中で会場内にマイクの音声が入ってしまうアクシデントもありましたが、その時集中力に欠けてしまったということはありますか

後から言われて気づいたぐらいなので、そこは影響なかったです

――ジャークの3本目も失敗でしたが、記録的にもあそこを決めていればというのもありますか

調子が悪くてもある程度の重量は取らなければいけないので、まだまだその段階に達していないなと思いました

――来年は最上級生になりますが、そのあたりの自覚や意気込みなどありましたら教えてください

先輩として、競技面でも生活面でも、もう一段階上の姿を見せていきたいと思います

知念勇斗(スポ2=沖縄・豊見城)

――今回は久しぶりの大会出場でしたね

色々な大会にエントリーはしていたのですが、腰のケガもあって出場できていませんでした。ジュニア世界選手権(6月)以来ですね

――スナッチは2位でしたが、そのあたりは予想通りでしたか

いや、予想では4位~6位ぐらいでそんなに高くなかったのですが、3本全部取ったことで順位が上がった感じですね

――その勢いでジャークもうまくいったということですね

そうですね

――今回は優勝されましたが、お気持ちとしてはどうですか

今回は6本全部成功させての優勝が目標だったのですが、最後ジャークの3本目を落としてしまったのでうれしい反面悔しいですね

――トップバッターでの出場でしたがどういう気持ちで臨みましたか

今回はワセダで最初に出場する選手でもあったので、4年生のためにもワセダに良い流れをもってこようと思っていました

安嶋千晶(スポ2=茨城・大子清流)

――優勝おめでとうございます。今の率直な気持ちをお聞かせください

ありがとうございます。(優勝できたのは)本当に4年生のおかげですし、チームメートの声援に感謝の気持ちでいっぱいです。

――応援は試技の際も聞こえているのですか

そうですね。あとは試技直前で待機しているときもみんなが見える場所に座っていて、その姿だけでもパワーをもらえました

――ジャークの3本目を決めた後、セコンドと抱擁する場面もありましたね

昨年ケガで出られなくて、今年こそはという思いが強かったので本当にうれしかったです

――後輩の新川選手とワンツーフィニッシュとなりました

二人で絶対しようと決めていたので、有言実行できてよかったです。実は私自身もこんなに重量を上げるつもりはなくて。百音の調子が良かったおかげで私も負けないようにと火がついたので(笑)。いいライバルをもったなと思います

――今年度はこれで終了ですがいいかたちで締めくくれましたね

そうですね。そう思います

――4年生にはどういった思いがありますか

2年間一緒にやってきて、とてもお世話になりました。いい先輩ばかりで、いなくなってしまうのがさみしいです。表彰式のときもそのことを考えてウルっときてしましました

――最後に来年への意気込みをお願いします

来年は私もいよいよ上級生になりますし、後輩もたくさん入ってきてくれるので、チームを引っ張っていけるような選手になってワセダをインカレ優勝に導きたいと思います

新川百音(スポ1=山梨・塩山)

――2位になった今の気持ちをお聞かせください

2位になれたのは嬉しかったですけど、ジャークの最後は自己新記録を狙っていたのでそこが取れなかったのが残念でした。ただ大学に入学してから一番思い切って楽しくできた試合でした!

――スナッチは全て成功でした。要因は何だと思いますか

最近練習で良いイメージができていて、それを今回出せたのが大きかったです

――先輩の安嶋選手とワンツーフィニッシュを果たしました

今回ワセダでワンツーフィニッシュが最大の目標だったので実現できて本当にうれしかったです

――セコンドの野本さんにはなんと声を掛けられましたか

最初緊張していたのですが「インカレはパワーがみなぎってくるからいつもより思い切っていこう」と言われてアップの時から楽しめました。いつもセコンドについてもらっているのですごく安心しました

――4年生にはどういった思いがありましたか

私たち1年生にとっては一番上の先輩であり、いろいろ面倒を見てきてくれたので今回のインカレで恩返しができたのではないかなと思います