【連載】『令和4年度卒業記念特集』第34回 亀田菜月/女子ホッケー

女子ホッケー

元気をくれる場所

 2022シーズンホッケー部女子主務兼マネジャー、亀田菜月(スポ=鹿児島中央)。早大入学前は「ホッケーという競技すら知らなかった」という亀田は最高学年となった昨季、主務として部の看板を背負い、尽くし続けた。もちろんこの4年間、簡単なことばかりではなかった。それでも亀田が口にするホッケー部での思い出は、たくさんの笑顔であふれている。

 早大入学当初は、選手としてのホッケー部入部を考えていたという亀田だが、熟慮の末マネジャーとしての入部を決意する。そんな亀田にとっての1年目は「ひたすら吸収する年」だった。「自分は『気配り上手だね』と言われるタイプでもないですし、どちらかというとぼーっとしているタイプなので、マネジャーに向いている方じゃないなと思ってましたね」。高校時代所属していたテニス部にはマネジャーはおらず、そもそもマネジャー自体未経験。理想のマネジャー像が定まらないという難しさがあった。

 

戦況を見つめる亀田(写真左)

 それでも亀田は、上級生たちの姿にヒントを見出した。周りが見えていてさっと動ける先輩。選手一人ひとりのケアが得意な先輩。「どんなマネジャーになったらいいのかわからなくなっていた時期が1、2年生の時は結構あって。でもそんな二人の先輩の良いところをどんどん取り入れれば、良いとこどりできるじゃん!と気づきました」。誰かひとりを参考にするだけでなく、良いと思ったものを取り入れる。こうして亀田は自分の理想のマネジャー像を確立していったのだ。

 3年生になると、マネジャーとしては最高学年に。学年を考えても立場を考えても、「成長しなきゃ、という気持ちが強かった」という。当時の4年生がチームの雰囲気づくりに気を砕いていたのもあり、先輩に頼りきりではなく、自分もその雰囲気づくりに貢献したいと心血を注いだ。そんなチームの姿勢が結果として表れた試合がある。関東学生秋季リーグ(リーグ戦)の最終戦。ホッケー経験者を多く擁する東農大との、SOにもつれ込む激闘を制しリーグ3位の結果を残した。「チームとして壁を一個越えた、という感覚があって。だからこそ来年(2022年)、(関東学生リーグで)決勝狙えるよねって思えましたし、最後の年にもっと上を目指そうと思うきっかけになりました」。

 迎えたラストイヤー。同期でのミーティングの機会も多く設け、「チームとして同じ方向を向いてやり続ける」ことを共有し続けた。亀田の学年にはホッケー経験者がいない。技術面において絶対的な選手がいない難しさはもちろんあったが、最高学年としてチームを引っ張る責任を常に持ち続けた。

 シーズンの締めくくりとなる早慶戦。「(準備期間は)寝る時間もどんどんなくなっていって、寝不足だけど部活に行かなきゃいけない。でも大事な試合の前だから周りに弱音は吐けない、という感じで」。応援部や観客も多く集まる年に一度の大舞台だが、主務としての早慶戦は激務の連続を意味する。だからこそ勝利は格別だった。まさかの先制を許したものの、チームは後半3得点と逆転。「自分たちがやってきたことに自信があったというか。みんなそれは思っていたと思います」。チームとして同じ方向を向いてやり続ける。亀田を含め、4年生がチームのために1年間やり続けてきたことが実を結んだ結果だった。

 

早慶戦にて、ベンチで得点を喜ぶ。写真左から2番目が亀田

 ホッケー部を引退し、冬には韓国へ短期の留学にも参加したという亀田。春からは番組制作会社への就職が決まっているそうだ。そんな亀田のマネジャーとしてのモットーは「なんでもやる」。自分の行動にできるだけ制限を作らず、やれることは何でも取り組む姿勢を大事にしたという。もちろん、「マネジャーに向いている方じゃなかった」初めの頃からできたことではない。悠久の時を経て川の流水が岩を削っていくように、ホッケー部で過ごした4年間が亀田を成長させていったのだ。最後に、亀田にとってホッケー部はどのような場所だったかと問うてみた。「(ホッケー部は)自分に元気をくれる場所」。4年間に思いを巡らし、そう答える亀田は笑顔だ。

(記事、写真 大幡拓登)