念願の第44回女子全日本学生ホッケー選手権大会(インカレ)一回戦を突破し、ベスト8に進出した早大。前日の快勝の勢いをそのままに、最強の呼び声高い天理大との一戦に臨んだ。戦いは序盤から激しさを帯びたが、ピッチのあらゆるエリアで圧倒される展開。2クオーター(Q)の12分には、MF山下天海(スポ2=京都・須知)のドリブルからペナルティコーナー(PC)のチャンス。惜しくも外れたが大いに得点の可能性を匂わせた。とはいえ終盤はスタミナ切れも手伝って防戦一方の展開に。4Qの終盤にも失点を食らい、10失点の大敗で早大のインカレは幕を閉じた。
守備に奮闘したDF鈴木悠(スポ2=愛知・向陽)
インカレベスト8にして、大学最強の相手が早大に立ちはだかった。この日の相手、天理大は今年7月に行われた全日本大学王座決定戦(王座)で優勝した、現状全国1の実力者。試合は開始直後から天理大の猛攻に耐え続ける苦しい展開に。7分には1対1の場面でGK山口永恋主将(国教4=神奈川・洗足)がセーブしたボールを押し込まれ0-1。10分と15分にもPCのピンチから失点し、0-3とされる。2Qに入ると早大も反撃に出る。5分にはエース山下がドリブルで単独突破。12分にも中盤でボールを奪った山下が、幾人ものマークを引き連れながらサークル前まで運んだ。これには相手のDFもたまらず反則。PCを獲得し、この日最大のチャンスが訪れた。しかし鈴木(悠)をおとりに使うフェイントはうまく決まったものの、相手の好守にはばまれ得点はならず。逆に早大DFのミスを突かれ失点を重ねてしまい、0-6で前半を折り返す。
天理大をも慌てさせた山下のドリブル。今季このドリブルが通用しなかった試合はない
後半に入っても展開は傾かず。2分には左サイドをきれいに攻略され7点目。11分のPCの場面ではDF吉野真啓(スポ3=富山・石動)が好守を見せるもこぼれ球を詰められる。この日目立ったリバウンドを拾われての失点に関しては、山口も「一瞬ボールを見てしまったりするシーンが多かった」と振り返り、安岡裕美子監督(平16人卒=山形・米沢商)や吉野も同じことを課題として述べた。早慶戦や次のシーズンに向けても大きな教訓になったに違いない。さらに1失点を重ね試合は最終盤へ。ベンチでは吉野が「最後のクオーターは失点しないよ」と檄を飛ばし、この言葉通り集中した守備を見せる。それでも11分、コート中央から失点を許し0-10。反撃の機会は許されず、そのまま試合終了のホーンが鳴らされた。
まさに主将の貫禄を見せた山口。セーブ連発でチームに喝を入れた
シーズンを通して13の公式戦を戦い抜いてきた。二つのリーグ戦は共に4位フィニッシュと決勝進出の夢はかなわなかった早大だが、インカレではベスト8と3つのシーズン目標のうちの一つを達成。副主将の吉野は、経験者以外も積極的に声を掛けられるようになったと、チーム全体の底上げや成長を振り返った。残す試合は早慶戦。どんな相手よりも絶対に負けの許されない相手だ。指揮官は今季の課題を「得点力の無さ」と繰り返し語り、早慶戦では「攻めて勝ちたい」と言い切った。3つ掲げた目標の残る一つは「早慶戦での勝利」。酸いも甘いも味わって来た早大の集大成を、今季最後のビッグマッチで見せてくれるに違いない。
ベスト8で現大学王者と会敵したイレブン。この日の敗北で公式戦は今季最後となった
(記事 大幡拓登、写真 髙田凜太郎、星野有哉)
結果
TEAM | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | TOTAL |
早大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
天理大 | 3 | 3 | 3 | 1 | 10 |
安岡裕美子監督(平16人卒=山形・米沢商)
――大敗という結果になりましたが大会を振り返っていかがでしたか
今日は強豪が相手だったので守備に回るのは分かっていたのですが、もう少し失点数を減らして攻撃に転じられたらよかったですね。
――相手は強豪中の強豪でしたが何かチームに刺激となったものや学べたものはありますか
スピード感やマークの外し方などは、今までやってきたチームとはレベルが違う相手だったので、そこを体感できてよかったかなと思います。
――守備を頑張ることと余裕があれば得点を狙いにいこうという目標だったと思いますが、選手たちの頑張りはいかがでしたか
守備に関してはみんなで走ってプレスに行こうという姿勢が見られたのは良かったと思います。ただリバウンドに対しての守備や逆サイドのマークに関しては今まで戦ってきたチームとは違ったので、その辺にもう少し対応できれば良かったですね。攻撃に関してはPCも一本取ることができて、あれが入ればまた盛り上がったのかなと思いますが、主軸である山下や吉野が前に行く姿勢を見せられたのは良かったと思います。後半はちょっとスタミナ的なところもあって、もう少しいければ、とも思いました。
――今季の公式戦はこれで最後となりましたが、チームとして学び得たものはありますか
守備については連携が取れてできるようになったのはよかったと思います。ただもう、得点ですね(笑)。課題は得点力なので、最後決め切るところ、リバウンドをとったり精度を上げたりと回数が少ない中でもゴールの確率を上げていかなければいけないと思います。
――残すは早慶戦です。意気込みをお願いします
同立優勝ではなく得点をとって勝たなければいけないというのは選手たちも分かっていると思いますし、連勝記録がプレッシャーになるということもありますが、しっかりと攻めて勝ちたいなと思います。
GK山口永恋主将(国教4=神奈川・洗足)
――今日は大敗という結果にはなりましたが、大会を振り返っていかがですか
まずは失点を一桁に抑えたかったので、それが達成できなかったのが悔しいところです。相手が上手かったからという失点だけではなく、こちらで防げるような失点もあったので、早慶戦に向けて課題が見えたという意味ではよかったと思います。
――具体的に防げた失点とはどういったところでしょうか
私が止めた後に、一瞬ボールを見てしまったりするシーンが多かったと思います。相手がリバウンドをしっかり狙っているのに対して、こちらのディフェンスは私と相手の間などにポジショニングできていなかったので、決められてしまったシーンが多かったです。私が止めた後にもっと集中して守備ができればかなり守備力は上がるかなと思いました。
――良いセービングも多かったと思いますが、自分に点数をつけるとしたら何点ですか
難しいですが、80点と言っておきます(笑)。まずセービングというところに関してはファーストシュートで決められることはほぼなかったですし、止めるべきところに関してはちゃんと止められたかなと。ただキーパーは止めるだけではなくて指示も大事で、今日はマークに行かせるのかアタックさせるのかというところをごちゃごちゃと指示してしまって守備の選手を混乱させてしまった部分がありました。そういうところまで完璧にして100点と言いたいです。
――今日の相手は実質全国で1番強いチームでした。そこから何か刺激を受けましたか
10点取られているということで、まず得点力がすごくあるチームでした。キーパーとしてゴール前で対峙していて、決め切ろうという気持ちがやはり全然違いましたね。技術に差があるのもそうですが、私が普段早稲田で練習やっている時には感じないような圧がありましたし、その雰囲気を天理大から選手たちが学んでくれたら早慶戦までにも得点力が上がっていくのかなと思いました。
――公式戦が全て終了しリーグ戦2つと大会を2つ、戦い抜いたことになります。後輩たちにどのようなことを伝えたいですか
試合後のミーティングでも言ったのですが、今季は「インカレベスト8」や「リーグ戦決勝進出」といった大きな目標の他に、試合毎に「〇点以上は取りたい」や「失点は●点に抑えたい」といった具体的な数字の目標を決めていたんです。ただ結果は良くてもそれを達成して勝つ、とかはあまりなくて。秋季リーグの慶大戦も3得点で勝つと言った中で1得点に終わってしまいしましたし、その目標にもっと執着して気持ちよく勝ちたいなと思いました。練習中も「〇球決めたら次のメニュー」という風に目標を設定したらそれをしっかり達成できるように、この一年間あまり達成できなかった目標に執着するということを早慶戦では大事にしたいと思います。
――早慶戦に向けて意気込みをお願いします
女子部の早慶戦の歴史的にも負けるわけにはいかないですし、しっかり対策を練って落ち着いていつも通り戦えば恐れるような相手ではないです。慶大に特化した対策をしつつも、今まで言ってきた得点力というところ、最後は複数得点で気持ちよく終わりたいと思います。
DF吉野真啓(スポ3=富山・石動)
――今大会振り返っていかがですか
全体的に中心選手の天海(山下)がボールを持った時に、今まではついていけていないことが多かったのですが、天海がボールを奪った瞬間にリードが増えて攻撃の枚数を増やせる大会になったかなと思います。
――強豪を相手に守備が課題になったと思いますがそこに関しての評価はいかがですか
一人目が当たりに行った後に二人目がすぐ出るようなフォーメーション作りを練習でやってきたのですが、やはり強豪が相手だと2枚目の出が間に合わずそこで取り切ることができなくて一辺に抜かれてしまうということが多かったです。あとは永恋(山口)さんが止めた時に、リバウンドボールを処理することができていなかったのが、今日の課題だと思います。
――攻撃に関しては回数は少なかったものの前に行く姿勢がよく見えたシーンもあったと思います
やっぱり天海が頑張って運んでいってくれて、周りにもリードが多く作れたことで2QのPCのシーンも生まれたと思います。ただPCになった時に決め切ることができなかったのも、課題の一つかなと感じました。
――全国屈指の強豪である天理大と戦い、刺激になったことや学んだことはありますか
早大のボールポゼッションは相手に晒したポゼッションなんですが、天理大は自分たちディフェンスがスティックを伸ばしても届かない距離にボールを置いていて、真似したい部分だと思いました。
――シーズンを振り返って、収穫や課題はありますか
全体的にチームでの声かけというのは大きく成長したかなと思います。今までは自分や山下、鈴木など経験者が中心となって声かけをするチームだったのですが、徐々にMFからFWへのプレスの声かけだったり、FWの中でもプレスの指示を出し合えるようになったりしたのが、大きな学びになったと思います。
――早慶戦に向けて意気込みをお願いします
早慶戦は昨年の秋から始まったシーズンの集大成ということで、4年生に最後花を持たせたいという試合です。今1年生も伸びてきているので、下級生から持ち上げて全員で勝ちに行く試合にしたいと思います。