この日迎えた全日本学生選手権(インカレ)。4年生最後の戦いとなるこの大会、初戦で早大は同大会最多優勝記録を持ち、女子大学ホッケー界に『4強』(天理大、山梨学院大、東海学院大、立命館大)として君臨する天理大に挑んだ。試合は後半20分時点で同点と下馬評を覆す大接戦を演じる。ジャイアントキリングの期待が現実へと近づいていったが、最後は押し切られ1-3で初戦敗退となった。
試合前。ベンチ前に整列した選手たちが順に、思いを込めて隣の背を叩く。端から連なるその流れがGK南有紗(スポ3=埼玉・飯能)の背に届く。ずっと繰り返してきたいつも通りの儀式を終えて、エンジの11人がインカレのピッチへ立った。天理大のセンターパスで始まったこの試合。天理大はことし王座ベスト4の実績にたがわぬ力を存分に発揮し、強烈なストロークと豊かな個人技で次々と早大ゴールへ襲いかかった。しかし南やDF村山侑季(スポ4=栃木・今市)DF石倉花恋(教4=静岡・沼津商)らが組織的な守備でその猛攻を抑え込む。ボールを持った敵選手に2人、あるいは3人で向かっていき、すんでのところで跳ね返した。前半6分にペナルティコーナーから先制点を許したものの、その他はすんでのところで防ぎ続け、得点の機を待つ。
守備で活躍した村山
しかし天理大は群雄割拠の関西学生リーグにあって今秋5戦零封で4連覇を果たした名門。突破口を見つけるのは生半可なことではない。だが、その鉄壁の城を切り崩したのがFW瀧澤育未(スポ4=滋賀・伊吹)だった。右サイド中盤でボールを持つとドリブルで敵を翻弄(ほんろう)。そのままサークルまで運び、PCを獲得した。この絶好機でDF藤本晴菜(スポ4=栃木・今市)がリバウンドを押し込み、同点に追い付く。開始早々の失点で漂う惨敗ムードを一気に払拭し、逆に勝機をつかんだ。
得点を決め笑みがこぼれた
その後は一進一退の攻防が続く。天理大がボールを持つ時間が長かったが、早大も小澤主将ら中盤でのカットも光り、好機を演出する。しかしサークルに入るまでは至らず、やはり天理大の攻勢にあった。それでも必死の守備で勝ち越しは許さない。ハーフタイムを挟んで後半20分を過ぎ、未だ1−1。シュートアウト戦もちらつき始めた頃、ついに均衡が破れる。後半24分、天理大にPCをダイレクトで叩き込まれ、とうとう勝ち越しを許した。反撃に出たい早大だが、後半29分にも加点を許し万事休す。名門校を存分に苦しめるも、あと一歩及ばなかった。
相手に鋭いまなざしを向けるDF陣
天理大の底力に屈した早大。しかし、試合後の選手らの表情は晴れやかだった。持てる力の全てを出しきり、実績では日本一の大学を相手に残り約10分という時点まで食らいついた。ワセダのホッケーは全国に通用する。確かな手応えを残して、4年生は引退を迎える。「最後に1番いい試合ができた」と瀧澤育は満足げに振り返った。ラストゲームをベストゲームで締めくくった2016年。果たされなかった目標は、伝統を受け継ぐ次代の戦士がきっと結実させる。
(記事 安本捷人、写真 榎本透子)
全日本学生選手権 | ||||
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早大 | 1 | 1-1 0-2 |
3 | 天理大 |
コメント
安岡裕美子監督(平16卒)
――きょうの試合を振り返っていかがでしたか
自分たちのやろうとしてたことを意図的にできたいいゲームだったと思います。
――天理大は強豪でしたが、十分に苦しめることができた試合でしたね
そうですね。しっかり守備をして、攻撃できるときに攻撃するというパターンで十分に発揮できたと思います。
――ことしの4年生はどのような学年でしたか
本当に個性的な6人がそろった代かなと思います。
――4年生に向けてメッセージをお願いします
4年間やってきてくれてお疲れ様、ということと、ワセダで頑張ってくれたことを今後も生かしてくれたらと思います。
MF小澤眞帆主将(教4=埼玉・飯能)
――今試合を振り返って
きのうのミーティングでしっかり粘り強く守備して、1回のチャンスをものにしようっていう目標を立てていて、前半はそれをしっかりできた試合だったと思います。
――前半の動きについて具体的にどのような点が良かったと思いますか
今までスロースターターみたいな感じで、前半に点を取られてそのまま終わってしまうことが多かったんですけど、点を取られたあとにしっかり取り返せたというところが良かったかなと思います。
――ワセダらしいホッケーはできましたか
うーん。ことしのチームとしてはパスを回そう、って言っていたんですけど、ミーティングで天理大はプレッシャーが速いので最初はどんどん縦に1本切っていこうっていう話はしていました。ワセダらしいっていうよりはミーティングでやろうと言っていたことができたっていう試合だったと思います。
――ホッケー部で過ごした4年間はどのようなものでしたか
私は教育学部で、1、2年のときはそれなりに勉強がきつかったんですけど、その息抜きってわけではないんですけど、全体的に楽しかったです。
――主将として過ごしたこの1年は苦労もありましたか
高校のときも主将はやっていたんですけど、メニューも作戦も全部考えてもらってて、受け身的な主将の立場でした。でも大学に入って、普段のメニュー考えたり他のチームの研究をしたりっていうのを全部自分たちでやらなきゃいけなかったので、悩みとかもありました。でも同期も下の学年もしっかり意見を出してくれたので、主将も結構楽しかったです。
――後輩たちにメッセージをお願いします
うまい子たちが残るんで、ことしインカレも王座(全日本大学王座決定戦)も1回戦で負けちゃったんで、もっともっと勝ち上がってほしいですね。
DF村山侑季副将(スポ4=栃木・今市)
――きょうの試合を振り返っていかがでしたか
正直強い相手だったし、苦しい試合になるのは分かっていたんですけど、後半25分まで1-1でいくというのは自分の中では想像できてなかったです。これいけるんじゃないかな、っていうのが正直な気持ちでした。あしたの試合どうしよう、って試合中も考えちゃってたんですけど、やっぱり天理大は強くて、私たちの甘い考えに突っ込まれて点を取られちゃいました。でも最初に点を取られても取り返せたり守り切れて、DFも頑張って、何回攻められてもしっかり守って相手の陣地にボールを出すことができたので、そこは良かったなと思います。
――この4年間、ワセダでホッケーをやってきていかがでしたか
先輩がいたときは先輩についていかなきゃっていうので精一杯で、先輩たちもうまかったからとりあえず貢献したいっていう気持ちが大きかったです。4年生になると全然気持ちが違って、どうやったら勝てるんだろう、とか試行錯誤してみんなでやってきた1年間だったので、最後きょうみたいな試合ができて本当に嬉しかったし、ワセダに入れてよかったなってきょう改めて思いました。
――副将として過ごしたこの1年間で何か苦労はありましたか
苦労はそんなになかったかなって思います。みんないい子だし、ホッケーを一生懸命やろうと思って入ってきてくれて、どんどんうまくなっていくし、そんなに大変なこともなかったし、すごいいいチームだなって思います。
――後輩に向けてメッセージをお願いします
これからいろいろ勝てなくて辛いことがあったりとかあると思うんですけど、辛い練習をしたあとに勝てたときの喜びは大きいと思うので、しっかりチームがまとまってないと勝つことは難しいから、チーム一丸となることを1番に考えて、勝利に向けて頑張ってほしいと思います。
DF石倉花恋(教4=静岡・沼津商)
――最後の試合を終えて、今どういったお気持ちですか
実は4年間で、スタメンでフル出場で全国大会に出たのは初めてだったので最初は緊張もしましたし、相手が強いことも分かっていたので怖い気持ちと不安な気持ちもあったんですけど、ずっと中学からホッケーしていて、大学でも報われない時期が長かったので、積み重ねてきたものがあったので、そこをやりきるしかないなと思って望んだので、きょうは負けてしまったんですけど、苦しかったんですけど、本当にしんどかったんですけど、同期みんなで試合に出れたし、楽しかったです。やりきった気持ちでいっぱいです。
――スタメンが発表されたときの心境はいかがでしたか
きのうの夜に発表されたのですが、ちょっと前から試合に出られるようになったので、もう1人の子とどっちかな、というのはあったんですけど、やっぱり信頼してくれたのかなと、その信頼に応えたいなと言う気持ちでした。
――満足行くプレーができましたか
神がかってましたね。気持ちが入るというか、よく分からないんですけど、今来るな、とか、今こっち抜いてきそうだなと言うのがなんとなく分かって、もちろんまだまだなところもあるんですけど、いいプレーもできたかなと思います
――振り返って、どんな4年間でしたか
どっちかというと苦しかったてすし、自分自身も悔しい思いをしたし、周りにも迷惑をかけてここまでやってきたので、みんなに感謝の気持ちでいっぱいです。後輩にもそうだし、自分が1年生だったときの4年生、3年生、2年生の先輩とか、みんなに感謝したいです。
――後輩の選手に一言お願いします
この場を借りて、本当に感謝しているということを伝えたいです。他の同期の子のほうがリーダーシップもあるし、引っ張っていく力もある中で、自分はそういう力があまりなくて、先輩らしいこともあまりできなかったのに、すごく支えてもらって助けてもらったので、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
FW滝澤育未(スポ4=滋賀・伊吹)
――最後の試合を終えて、今どういったお気持ちですか
早稲田に来て、4強を倒すという目標で来たんですけど、達成できなくて悔しかったです。でも最後に一番いい試合ができたかなと思います。
――試合前、どんな気持ちでしたか
きょうは挑戦者として、何も怖いものはありませんでした。
――天理から1点もぎ取りましたね
すごく嬉しいです。その1点も自分が取ったPCからの得点というのも嬉しくて、天理からPCとれたっていうのも嬉しくて、決めきってくれた晴菜にすごく感謝しています
――振り返って、どんな4年間でしたか
一瞬で終わったなと思うんですけど、ホッケーを続けたくなる4年間だったなと思います
――後輩の選手に一言お願いします
本当に後輩には感謝していて、自分結構メンタル弱いのでいつも後輩とかに助けてもらったし、1年生とか2年生3年生と一緒にいることが4年の中では一番多かったので、すごく後輩には感謝していて、絶対来年には4強を倒してほしいなと思います。
FW辻村友理(国教4=東京・学芸大付)
――今試合を振り返っていかがですか
最初先制点取られて、いつもの悪い流れになるのかなってそわそわしていたんですけど、でもそこからは良くて1点取り返して、みんな足も動いてるしDFもできているし、攻めるところは攻めれているし、ていう流れで。後半追加点を入れられちゃったんですけど、私としてはいい攻撃ができていたな、と思いました。なんかすっきりした試合でした。
――この4年間、学業と部活の両立は大変でしたか
私は特に留学に行かなきゃいけない学部だったんで、1年間チームを抜けるっていうのはちょっと怖かったです。でも私も向こうでホッケーをやっていたんで、大丈夫だったかなって(笑)。
――では留学から帰ってきてからもすんなりチームに戻れましたか
そうですね。
――4年生になってからはいかがでしたか
1番上っていうことで周りも見なきゃいけないし後輩も見なきゃいけないし、大変かなって思っていたんですけど、意外と後輩と同期のサポートがあったんで、結構スムーズに通せた1年だったかなと思います。
――ホッケー部で過ごした4年間はいかがでしたか
めっちゃ楽しかったです!
――後輩へメッセージをお願いします
楽しくホッケーするっていうことは難しいけど、その中でも自分たちのホッケーを見つけていけると思うので来年も再来年も見つけて、楽しくホッケーしてください。
DF藤本晴菜(スポ4=栃木・今市)
――最後の試合を終えて、今どういったお気持ちですか
前半は1-1で引き分けで後半に持ち込んだわけなので、もう少しだったなという残念な気持ちもあるんですけど、最後同期全員でコートに出られたので、それが良かったです。
――試合前、どんな気持ちでしたか
大学2年のときに天理と夏合宿させてもらって、とても強いなというイメージでした。でも、その時のイメージよりは、今のほうが自分の思うプレーができていたので良かったです。天理が強いというのが分かっていたからこそ、前に打ち出して少ないチャンスで攻めるというところで1点決められたのかなと思います。
――自身のプレーはいかがでしたか
いつもはもう少しオーバーラップして攻めに参加するポジションなんですけど、きょうは責められることを想定してあまり前にポジションを取らないで、攻めに参加するというよりは守備から攻撃を支えるという形で取っていたので、その辺については自分としてはいつもよりうまく対応できたかなと思います
――振り返って、どんな4年間でしたか
ホッケーは10年目で、ワセダで4年目、最後のシーズンで、結構個性的な同期とだったんですけど、中学高校よりも自分のやりたいことが明確にプレーであらわせたし、同期にも恵まれたし、後輩とも、高校からやってきている後輩とか、いろんなメンバーとできて、良かったな、と思います
――後輩の選手に一言お願いします
自分たちはあと少しというところで結局関東3位のままだったり、逆に負けて4位だったりということが多かったので、あと一歩何か強みを持って試合を進めることができれば、関東上位にもっと食い込めると思うし、きょうのような試合を続けてくれれば関西の強いチームとも対等に渡り合えると思うので、1人1人が当たり前に当たり前のことをやることが見違えると思うので、頑張ってほしいです。