11月5日、東京・駒沢第一球技場。昨年90回という節目を迎えた早慶定期戦はことし、新たな1歩を踏み出した。2日前に行われた関東学生秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)対慶大戦はシュートアウト戦までもつれ込む激闘。観客、両校応援部の熱い声援が飛び交う中、「70分で勝ち切る」と気合十分で挑んだ。試合は開始早々に失点し、先制点をあげることができなかったものの、前半27分には同点に追いつく。後半、勝ち越し点を含む2得点で相手を突き放し、栄光の2連覇を獲得。勝利の女神はエンジの戦士たちに微笑んだ。
まずは先制点で勢いに乗りたい早大。しかし、そう簡単にはいかなかった。前半9分、ペナルティコーナー(PC)を献上するとボールは一直線にゴールへ。秋季リーグ戦に続き、またも先制点は慶大に奪われた。あっという間に追う展開となった早大はチャンスを狙うもかみ合わない。さらに前半だけで5回のPCを奪取され、防戦に必死だった。「悪い流れが続くのか」。そう思われた前半27分、MF山下翼(スポ1=滋賀・伊吹)が慶大の守備を破りネットを揺らした。ルーキーの躍動が暗雲立ち込めるチームを救い、試合を振り出しに戻す。
アグレッシブなプレーでチームを引っ張る宮口
勝負の後半、攻防はより一層激しさを増した。開始直後に失点のピンチを迎えるもDF是澤勇志(文4=東京・早大学院)やDF湯本脩嗣(政経2=東京・早大学院)の献身的な守備で事なきを得る。両校譲らない拮抗(きっこう)した状況を打破したのはMF宮口和樹主将(スポ4=滋賀・伊吹)だった。自らサークル内まで運び、ゴールに押し込む。関東学生春季リーグ戦、秋季リーグ戦と今シーズン2度の慶大戦で悔しい思いをした宮口主将。スティックから放たれた意地の一発は形勢逆転に十分だった。FW大野誠弥(政経2=東京・早大学院)やFW関修平(商3=東京・早大学院)が相手ゴールに肉薄し、プレッシャーをかける。度重なる慶大のPCもGK山本健悟(社2=滋賀・伊吹)の前に為すすべがない。試合時間が残り15分を切ったところでDF齊藤湧大(スポ2=栃木・今市)のアシストからFW清水拓登(スポ1=滋賀・伊吹)がだめ押しの1点を追加。32分には慶大がGKを下げ、フィールドプレーヤーを投入するパワープレーで再起をはかったが好機に恵まれず試合終了。ベンチからも選手が飛び出し喜びを爆発させる早大の選手たち。駒沢の地に響いたのは『紺碧の空』だった。
喜びを爆発させる選手たち
3日後に全日本学生選手権(インカレ)を控える中、今回の勝利は大きな弾みとなった。全日本大学王座決定戦への出場権を逃しているため、チームとして初めての全国大会へ挑む。宮口主将のもと、今シーズンを戦い抜いてきた早大男子ホッケー部。1年間の集大成に向けて、いざ行かん、決戦の地・天理へ。
(記事、榎本透子 写真、成瀬允、平川茜音)
早慶定期戦 | ||||
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早大 | 3 | 1-1 2-0 |
1 | 慶大 |
コメント
MF宮口和樹主将(スポ4=滋賀・伊吹)
――試合を終えて、率直な感想はいかがでしたか
この戦いだけは、絶対に落とせない試合だったので、しっかりと勝てたことは、非常に嬉しかったですし、感激して泣きそうになりました。
――最後の早慶戦でした
4年間早慶戦を経験してきて、1度も負けなかったことは、評価すべき点ですし、慶大に対して3勝1分で、自分たち4年生はホッケーを終えることになるので、非常に満足しています。
――大きな声援は選手を後押ししましたか
最初に失点してしまって、きょうも悪い流れでの試合展開かなと思っていたのですが、観客席から温かい声援を下さったお陰で、自分もしっかり点を決めることが出来て、それが自分のチームの新たな火種となって、勢いを取り戻すことが出来たので、きょう応援に来て下さった方に感謝の気持ちでいっぱいです。
――ご自身の得点シーンを振り返って、いかがですか
ことしに入って、慶大さんとの対戦が3回目ということで、1回目の王座を懸けて戦った試合は、自分のペナルティーストロークで、外してしまったから負けてしまい、おとといの5位決定戦の時も、シュートアウトを決められず、悔しい思いをしたので、下級生に頼りっぱなしではなく、上級生として自分で何とかしようと思い、強い気持ちを持ったことが得点につながったので、非常によかったと思います。
――きょうは下級生が2得点を決められました
4年生が3人しかいなくて、下級生の方が多いですので、上級生だけでなくそれを支える下級生の力が大事なのだと、改めて実感させられる早慶戦だったと思います。
――チームの調子が尻上がりによくなりました
立ち上がりに早大はなかなか足が動かないということで、すこしずつギアを上げて、走れるようになっていくスタイルですので、先制をされても諦めるのではなく、チーム全員に声を掛け合って、点を取りにいく意識が持てていて、それが勝因になったのかなと思います。
――開幕が目前に控えるインカレへ向けて、意気込みをお願いします
4年生としては、きょうの早慶戦で勝てたことは満足しているんですけど、インカレが引退試合になると思うので、2回戦に強豪の天理大さんとも戦えるので、勝てるか分からないですけど、悔いが残らないように精一杯、ホッケーを楽しんでいきたいなと思います。
DF齊藤湧大(スポ2=栃木・今市)
――試合を終えての率直な感想は
PCもたくさん取られて、相手の攻める場面が多かったと思うんですけど、我慢して守り切って、自分たちの攻撃につなげてなんとか勝ち切れたって感じです。
――早慶定期戦への思いは
なんていうか、「早慶戦は勝たなきゃいけない」っていう使命感があるので、「なんとしても勝ってやる」っていう気持ちはみんなにあったと思います。そういう気持ちの面が今回の勝利につながったと思います。
――慶大とは秋季リーグ最終戦で戦ったばかりでしたが、調整は難しかったですか
そうですね。おとといを踏まえた練習とかやり方はミーティングでもだいぶ詰めて話をしていたんで、そういうのが生きたかなっていうのもあります。2回早慶戦がありましたが、どっちも勝ててよかったです。
――3点目の得点シーンを振り返っていかがですか
正直言うと、僕が打ってから拓登(FW清水、スポ1=滋賀・伊吹)がワンタッチしてるので拓登が決めてるんで僕の得点ではないんですけど(笑)。ああいう形でシュートに持っていけたのは今後の自信につながっていくと思います。
――3日後に控えたインカレへの意気込みをお願いします
今回勝ったことがチーム全体の自信にもなると思うので、その自信を持って臨みたいと思います。1回戦を勝ち上がれば天理大との試合があるので、そこで思う存分自分たちの力を発揮できるように頑張ります。
MF山下翼(スポ1=滋賀・伊吹)
きょうの試合の勝利について、お気持ちを教えてください
素直に嬉しいです。やはり、おとといの試合では引き分けてしまって、白黒はっきりつけられなかったので、きょうはしっかり勝つことができて、本当に良かったと思います。
はじめての早慶戦でしたが、どのような意気込みで臨まれましたか
リーグでは引き分けていたので、やはり今回は勝ちきること。また、4回生の宮口さん(和樹、スポ4=滋賀・伊吹)、倉田さん(登志矢、スポ4=静岡・伊豆中央)、是澤さん(勇志、文4=東京・早大学院)が最後の試合ということでしっかり勝利したいという気持ちで臨みました。
短い時間の中での調整となりましたが、難しかったことはありましたか
2日前の試合で課題が出て、それを1日で調整するのは難しかったのですが、そこはみんなでミーティングで話したことをしっかり集中して試合で発揮することができたことで、結果がこのような勝利という形になったと思います。
得点シーンを振り返っていかがですか
率直にとても嬉しかったです。負けている時に自分の1点でチームの雰囲気を立て直すことができて本当に嬉しかったです。
インカレへの意気込みをお願いします
インカレは全国から強豪が集まる試合なので、そこでしっかり勝ち切ることが大事ですし、今回の早慶戦でチームも勢い付いたと思うので、この勢いに乗ってインカレでも結果を残したと思います。