90年近く続く伝統の一戦――。第89回早慶定期戦が慶大日吉グラウンドで行われた。スタンドにはOBやOGも応援に駆けつけ、両校の意地がぶつかり合うこの戦いはリーグ戦とは異なる雰囲気に包まれる。試合は立ち上がりから早大ペースで試合が進み、前半のうちに2点を奪取。しかし後半に入りペナルティーコーナー(PC)から失点を許す。すると慶大は勢いを取り戻し、終了間際にさらに1点を追加。互いに度重なるチャンスを決めきれず、悔しい引き分けでの同率優勝となった。
「すごく良い感じだった」とMF中村拓郎(社4=富山・石動)が振り返るように、前半は早大が主導権を握っていた。前半4分、PCからFW宮崎俊哉(スポ3=福井・丹生)の痛烈なシュートで先制点を獲得する。ゴール後のチームをさらに勢いづけたのはFB鵜飼慎之介(スポ4=福井・丹生)。相手に一切ボールを譲らない鮮やかなドリブルで試合をより優位に進めた。さらにFW佐藤良(政経4=東京・早大学院)も持ち前の走力で前線へと駆け上がる。29分にはまたもPCを獲得。MF岸本昌樹(教3=鳥取・八頭)がうまく合わせ、貴重な2点目を追加した。終始早大ペースのまま、前半を終える。
先制点を決めた宮崎に駆け寄る選手たち
しかし迎えた後半、慶大が怒涛(どとう)の反撃に出る。後半9分、10分と立て続けに鋭いシュートを打たれ、必死にしのぐ状況が続いた。そんな中17分にFW渡邊崇仁(法3=東京・早大学院)、18分にFB木村浩一郎主将(スポ4=栃木・今市)が反則をとられ、2人を欠いた状態での試合を強いられる。その隙を突かれPCから1点を返されてしまった。1点を返し勢いに乗った慶大はロングボールで早大ゴールを脅かす。負けじと早大もPCでチャンスを得るが、追加点を奪うことはできない。終了間際の32分にまたもPCから押し込まれ同点に。最後まで慶大ゴールに迫ったものの、必死の猛攻は実らず2-2の引き分けで試合終了。互いのプライドをかけた戦いを終えた両校の選手の目には光るものがあった。
4年生の思いは後輩へと託された
今試合でワセダの一時代を築いてきた4年生は引退。部員を陰から支えてきた大木碧トレーナー(スポ4=東京・西)が「笑って引退したかった」と語る表情には悔しさがにじむ。「結果を残すことができなかった」と木村主将が振り返るように、春季・秋季関東学生リーグ戦ともに結果は2位。全日本選手権出場を目指し挑んだ全日本学生選手権(インカレ)では準々決勝敗退となった。それでもインカレ王者・山梨学院大や同大会2位の明大相手に勝利をつかみ取った今季のチーム。FW川原悠雅(社4=佐賀・伊万里商)は後輩へ向け「ワセダを背負っていることを自覚し、さらに上を目指して欲しい」と語る。「優勝を目指して一歩一歩頑張っていきたい」(宮崎)。来季のチームの柱は語気を強めた。上級生から下級生へとつながる思い。今シーズン成し遂げることのできなかった悲願の優勝は、後輩に託された。
(記事 榎本透子、写真 大森葵、田島光一郎)
早慶定期戦 | ||||
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早大 | 2 | 2-0 0-2 |
慶大 |
コメント
松本剛毅監督(平6卒)
――早慶定期戦への意気込みは
今シーズンは早慶戦が最後の締めくくりになったので良いかたちで勝ち切って終わりたかったのですが、相手も早慶戦に懸ける思いが非常に強かったので、最後勝ち切ることができなくて少し残念です。
――今回の試合を振り返っていかがですか
立ち上がりに点数を取りさらに追加点を取り、優位に進めようというシナリオ通りに進めていたので安心して見ていられました。ですが後半、相手の意地に対して守り切ることができなかったので残念に思います。
――引退する4年生へのメッセージをお願いします
今年の4年生は非常に粒ぞろいで、1年から主力として一時代を築いてくれた学年だと思っています。最後に良いかたちで勝ち切って一緒に喜びを爆発させたかったのですが、残念ながらゲームマネジメントの部分が私の力不足でした。4年間支えてくれた今年の4年生に感謝しています。
――来季はどのようなチームをつくっていきたいとお考えですか
主軸が抜けてしまうのでゼロからやり直さないといけないと思います。また最初からチームをつくり直すつもりで頑張りたいと思います
FB木村浩一郎主将(スポ4=栃木・今市)
――早慶定期戦ということでどのような意気込みで臨みましたか
ことし僕たちは本当にタイトルを獲ることができていないので、完全勝利を目指してやってきました。
――試合を振り返ってみていかがですか
先制点も取ることができましたし、チャンスもたくさんあったのでそこを決め切りたかったのですが、なかなか向こうも粘り強かったですね。そういう中で、自分のミスで反則を取られてしまって失点につながってしまったのは本当に申し訳なかったです。
――フィールドの外にいた時どのようなお気持ちで試合を見ていましたか
ああ、点数が入ってしまうなというか。追加点を取ることができればよかったんですけどね。
――ワセダのホッケー部で過ごした4年間というのはどのようなものでしたか
本当に濃い4年間だったなと思っています。同期ももちろんですけど先輩や後輩にすごく恵まれて、ホッケーもそうですが人としても成長することができた4年間だと思っています。
――特に最後の年は主将として過ごされたと思いますがどのような一年間でしたか
いろいろとまとめる難しさというのは感じたのですが、同期も含めみんなが色々と協力してくれて良い1年間だったなと思います。結果を残すことができなかったのは残念でしたね。
――特に印象に残っている試合はありますか
試合はなんだかんだ言って、1年生の時の立命大戦が一番印象に残っていますね。
――4年間仲間として一緒に戦ってきた同期へのメッセージはありますか
ちょっと恥ずかしいですけど(笑)、本当にありがとうという感じですね。
――これからワセダを背負っていく後輩たちにはどのようなチームをつくっていってほしいですか
やはり人数が少ないというのは仕方のないことでもあるので、一人一人個性を出してワセダらしくみんな仲良くチーム一丸となってやっていってほしいと思います。
FW佐藤良副将(政経4=東京・早大学院)
――きょうの試合をふりかえって
前半は流れが良くてこのまま勝てると思いましたが、最後流れを持っていかれてしまい後味が悪い試合だったと思います。
――ご自身のプレーをふりかえって
結果を残したくて点を取りたいと思っていましたが、最終的には点を取ることはできなかったので良くなかったです。
――最後の試合ということで、何か意識して試合に挑みましたか
今年は胴上げされていなかったので、早慶戦で勝って気持ちよく胴上げされたかったですが、引き分けということで残念でした。
――4年間を振り返って
王座(全日本大学王座決定戦)で準優勝、関東リーグで優勝と良い思いをさせてもらいましたが、それよりはつらいことが多くて1年生の頃は厳しかったです。ですが最終的にはワセダでホッケーできて良かったなと思います。
――同期にむけてメッセージをお願いします
厳しいときもありましたが、1度もホッケーをやめたいと思わなかったのは同期がいたからこそだと思うので、感謝したいです。
――後輩にむけてメッセージをお願いします
ついてきてくれてありがとう、の一言です。7人抜けて厳しいとは思いますが、チームで一致団結すれば強いチームをつくれると思うので、キャプテン中心に新しいチームをつくって頑張ってもらいたいです。
FB鵜飼慎之介副将(スポ4=福井・丹生)
――試合を振り返っていかがでしたか
勝ち切れなかったということしのチームの印象通りです。関東リーグの決勝であったり、ここで勝ったら全日本選手権に出られるぞというインカレ(全日本学生選手権)の準々決勝であったり、いいところまで行くのですが勝ち切れないというのが全体の感想ですね。
――どのような意気込みで臨まれましたか
ことしはタイトルを取ることができなかったので、早慶定期戦だけは絶対勝とうと思っていました。
――慶大の印象はいかがでしたか
早慶戦独特の雰囲気はあると思っていましたが、絶対に勝てると思っていました。
――悔しさが大きくなってしまっているということですか
そうですね。涙も出てこないぐらいです。笑ってしまいました。最後が相当悔しかったです。
――4年間を振り返って
いろいろなことがありました。プレー面では自分がすごく成長する部分や、組織面においては大学ホッケー独特のものを学ぶところがありました。高校の時は平日土日に常に監督がいるという状況でしたが、大学は土日しかいないという部分です。学生がどれだけ自分でやるかという自立心が一番身についたところですね。
――同期の方々に向けて
4年間ありがとう、これからもよろしく、くらいですね(笑)。
――後輩の方々に向けて
自分たちはコンスタントには記録を残してきたのですが、何か自分たちで成し遂げた記録を残すことができたらよかったなと思うので、関東リーグ優勝やインカレ優勝など、自分に誇れる成績を残してもらえたらと思います。
FW川原悠雅(社4=佐賀・伊万里商)
――きょうの試合を振り返っていかがですか
最後に引き分けてしまいましたが、楽しくやれたので良かったと思います。
――きょうは現役最後の試合でしたが、どのような意気込みで臨みましたか
全力で楽しみたいということを考えて試合に臨みました。
――終盤に2点を取られて引き分けとなりました
勝てると思ったのですが、さすが慶大だなと思いました。慶大の追い込みはすごかったです。
――改めてきょうの試合はご自身のプレーを出し切れましたか
頑張ったのですが、出し切れたかといえばもう少し結果を残すようなことができたのかなと思います。それでも、このチームでしっかりできて良かったと思います。
――ホッケー部での4年間を振り返っていかがですか
楽しかったですね。楽しくみんなで頑張ることができたので、早稲田大学に入ることができて良かったなと思います。
――川原選手から見て同期の方々はどのような方たちですか
いろいろな人がいて、(同期が)このメンバーで良かったです。
――最後にホッケー部の後輩へメッセージをお願いします
早慶戦など、ワセダを背負っているということをしっかりと自覚して、さらに上を目指して頑張ってほしいなと思います。
MF中村拓郎(社4=富山・石動)
――早慶定期戦ということでどのような意気込みで試合に臨みましたか
最後なので勝ちたいなという思いでした。どうにかして勝つ、という気持ちでやっていましたね。
――きょうの試合を振り返って
前半はすごく良い感じでいったのですが、後半は向こうがガツガツきて結構押し込まれてしまって同点になってしまいました。結局同率優勝なので良いんですけどね。楽しかったので良かったです。
――課題としていたペナルティーコーナー(PC)からの得点となりましたね
そうですね。最初すごく良い感じで決まって、そこではすごく良い流れでしたね。ですが後半がやはりダメで、いまさらですがそこが課題ですかね。
――この試合で引退となりますがワセダでの4年間を振り返って
すごく楽しくホッケーをやらせてもらいました。本当に1年生の頃から何でもかんでもやっていましたね。本当に自由にやらせてもらえて、本当に良かったと思います。
――ワセダに来てよかったなと思うことはありますか
やはりその自由な感じがいいですね。OBやOGとのつながりがとても深いので、すごく楽しいですね。本当に楽しいです。
――最後の年はどのような1年間でしたか
結局タイトルを残すことはできなかったのですが、コンスタントに勝てたということは良かったと思います。
――同期の皆さんに何かメッセージはありますか
ありがとうございました。
――これからワセダを背負っていく後輩に向けて
楽しんでホッケーしてください、以上です(笑)。
FB西山健史(政経4=東京・早大学院)
――きょうの試合を振り返って
前半はリズムに乗れたのですが、後半はちょっと疲れてきて走り負けたりすることもあったので、すごく後半はきつかったなという感じです。
――4年生として臨む最後の試合でしたが、特別な思い入れなどはありましたか
特別な感じではなくていつも通り自分たちがやりたい感じでやった方が僕たちは勝てるので、本当に自分たちがやりたいようにみんな自由にという感じでやりました。
――慶大のシュートを阻むなどの活躍をされていましたが、プレー面を振り返っていかがでしたか
僕が得意なプレーは体を張ったり泥臭いプレーをしたりするところなので、きょうは絶対にそういう場面がでると思いましたし、序盤にあのような感じで止められて、良い感じでリズムがつくれたので良かったかなと思います。
――ホッケー部での4年間を振り返っていかがですか
最初はついていけないこともあり、途中から同期とも仲良くなっていって、同期からいろいろと教えてもらいました。自分たちのチームになってからはお互いに支え合って、僕から何を与えられたのかは分かりませんが、いろいろ恩恵を受けて成長できたと思うので、本当にホッケーができた環境に感謝したいと思います。
――ホッケー部で得たものは
それぞれみんなできることやバックグラウンドなど違うのですが、みんなそれぞれいいところがあってお互いの個性で支え合うというのが4年間通して学べたことだと思います。
――同期へのメッセージはありますか
最初のころはレギュラーにもなれず下手で全然試合で貢献できませんでしたが、本当にいろいろなことを教えて見守ってくれて、同期として一緒にホッケーができたことに感謝したいと思います。これからも付き合いを続けていけばいいなと思います。
――後輩へのメッセージは
キャプテンがリーダーシップを発揮するというのはすごく大切なことだと思っていて、やはり後輩が先輩を尊敬するのも大切なことだと思います。ですが先輩が後輩を尊重してみんなで一丸となって戦わないとワセダのホッケーは勝てないと思うので、先輩が後輩やチーム全体のことを考えて進めていくようなチーム運営をしていってほしいなと思います。
大木碧トレーナー(スポ4=東京・西)
――最後の試合が終わって今の率直なお気持ちを教えてください
最後だったので勝って良いかたちで終わりたかったのですが、それができなくて本当に悔しいですね。笑って引退したかったので悔しいです。
――きょうの試合を振り返っていかがですか
前半はワセダのペースで試合が進んでいたので勝てるのかなと思っていました。ですが後半は慶大に勢いがあって、それでこちらがケガや退場でバタバタしているときに点を決められてしまいました。そういう面では不運な部分もあるのかなとは思うのですが、大事なところで決め切ることができなかった部分があったので、そこの差なのかなと思っています。
――ホッケー部で過ごした4年間というのはどのようなものでしたか
圧倒的にしんどいことの方が多かったですね。私自身は大した取り柄もなくて何もできないのにみんなに偉そうなことをたくさん言ってきたのですが、自分自身は全国とかを目指すことができるような才能がある人間ではなくて。ですがホッケー部に入ってホッケー部の一員になることができたから、インカレ(全日本学生選手権)や全日本選手権を目指すことができるような立場に自分もなることができました。このチームだったからこそその目標が達成できると思いましたし、この同期7人で本当に目標を達成したかったですね。
――ホッケーの魅力と何でしょうか
無難な感じになってしまうのですがスピード感や迫力がすごいと思います。生で見たらわかると思うのでぜひ見に来てほしいです。
――一緒に過ごしてきた同期はどのような存在ですか
私はスタッフとしての枠を超えた言動が多かったので本当に迷惑をたくさんかけたと思うのですが、それを快く受け入れてくれて、意見も一部員として受け入れてくれたので、本当に感謝しています。大変な部分が多かったので、やはりこの7人で勝ちたかったです。それに関しては悔しいですが、本当に感謝しています。ありがとうございましたと伝えたいです。
――これからワセダを背負っていく後輩に向けて
私たちはコンスタントにうまく引っ張っていけたわけではなくて、ことしの1年間でも何回も揉めたりとかもあったのですが、その時にいつも後輩たちが「4年生はどうしたいのですか」と4年生の意見を尊重してくれていました。だからこそチームがよい方向に進めたと思います。なので、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ことしのチームに後輩たちも結構懸けてくれていたにも関わらずタイトルを獲ることができなかったので、本当に頑張ってほしいです。私たちのダメだったところを反省して、らいねんこそ目標を達成できるように頑張ってほしいです。
FW宮崎俊哉(スポ3=福井・丹生)
――早慶定期戦への意気込みは
僕自身も1年生の時に負け、2年生の時に勝ち、3年で引き分けなので1勝1敗1分になりました。リーグ戦で勝てる相手でも早慶定期戦となると雰囲気も全く違うものになりますし、どっちがより強い気持ちで戦うかになるということが今回しっかり学べたのでらいねんこそは勝てるように頑張りたいです。
――今回の試合を振り返ってみていかがですか
4年生とのラストゲームで、今シーズンの最終戦だったので4年生にはなんとしても勝って終わらせてあげたかったです。
――前半、ペナルティコーナーが好調でした
完全に勢いと気持ちで2点先取できたのでそこまではよかったのですが、3点目が取れなかったのが今回勝てなかった原因です。僕自身、FWとして申し訳なく思います。
――マレーシアでのU-21の大会であるジュニアアジアカップでの経験は今回の試合に生きましたか
僕自身が経験を生かすというよりも、僕がマレーシアに日本代表として行ったことがチームの自信になってくれたら僕のプラスにもなりますし、相手がプレッシャーに感じてくれたらそれだけで僕のいる意味になると思います。もしそうなっているのであれば、代表になってマレーシアに行ってよかったです。
――来季に向けての意気込みは
今シーズンは優勝を1度もできずに終わってしまったので、らいねんの春は優勝を目指して1歩1歩頑張っていきたいと思います。