【連載】インカレ直前対談『NEXT』 第3回 戸田翼×瓶井一志

男子ホッケー

 全日本学選手権(インカレ)まで残りわずかとなった。ベスト4以上に出場権が与えられる全日本選手権の切符獲得を目指している今季の男子ホッケー部。男子部の初回を飾るのは、同じポジションとしてスタメン争いをしているGK戸田翼(社3=滋賀・伊吹)とGK瓶井一志(スポ2=大阪星光)のお二人。GKならではのお話や、春シーズンの振り返り、またインカレに対する思いなどを語っていただいた。

※この取材は10月8日に行われたものです。

春シーズンの振り返り

戸田

――春の試合を振り返ってみていかがですか

戸田 春リーグ(春季関東学生リーグ)は予選リーグでは負けなしで、順位決定戦では山梨学院大にぎりぎりではあったのですが勝って、いい感じのペースできていたのですが、最後の明大戦(●1-5)でボロボロに負けてしまって。そのままの流れで王座に入ってしまい、(王座で)ベスト4ながらあまりいい結果とは言えない内容できてしまったなというのが正直なところではあります。

瓶井 昨年の4年生に結構上手い選手がいたのですが抜けてしまって。その不安もあった中、(春リーグの)決勝でぼろ負けしてしまったことを除けば、意外と勝つことができて負けずにポンポンと行けました。王座もくじ運とかもあるのですが、ベスト4になれたし、成績だけ見れば充実したシーズンだったかなと思います。

――それぞれ印象に残っている試合は

戸田 僕はやっぱり(春リーグ)順位決定戦の山梨学院戦ですね。すごく苦しい試合だったし、試合の内容を見れば明らかにあっちの勝ちなんですけど、ぎりぎりのところでSO(シュートアウト)まで持ってきてくれて。みんなが何かしらの活躍をしたし、まさにみんなで勝ち取った勝利だったという印象があります。

――SOはすごく緊張されると思うのですが、その点いかがですか

戸田 正直その試合は精神的にしんどすぎて、緊張感も忘れるくらいの気持ちでした。あれだけ攻めてこられて大丈夫だったということは、「いや、いけるな」っていう気持ちは心の中でずっと思っていました。

――戸田選手はSOに強い印象ですが、ご自身としてはいかがですか

戸田 SO上手い(笑)?

瓶井 安定感があってあまり波がないですね。僕は、SOはすごく波があります。

戸田 僕はSOの練習が一番好きなので、それはありますね(笑)。得意かは分かりませんが、好きではあります。

――SOの魅力はどこにありますか

戸田 もう完全に1対1じゃないですか。邪魔もないし、パスもされないし、本当に1対1なので「取りにいったろう!」ってところが楽しいです。

――瓶井選手が春リーグで印象に残っている試合は

瓶井 王座の3位決定戦の山梨学院大戦ですね。立命大に0―7という大差で負け、このまま山梨学院大にも負けたらほんまに自分たちのくじ運が良かっただけと周りのみんなにも思われるし、「春は勝ちにいこう」とチーム全体で話していたところ0―5で負けちゃって…。前半を0―2で折り返して、まだチャンスはあるかなと思ったのですが、後半の中盤から自分たちの集中力が切れて強豪校に本当に歯が立たなくなる感じがすごく鮮明に残っていています。

――春リーグ2位、王座4位という結果についてはそれぞれどのように受け止めていますか

戸田 結果だけ見れば一応全国4位で、それを誇らないことも逆におかしいと思うんですよ。でも「俺たちは4位なんだ!」みたいに思うのはまた違って。誇ってもいいのですが、内容が内容だったのでもっと謙虚にいかないとインカレでは絶対に結果を残せないと思っています。

瓶井 結果はなかなか運だけじゃ残せませんが、周りから見たら春リーグのプールも良かったし、王座も「くじ運でワセダはベスト4にこれたんやろ」みたいに周りからは思われていると感じています。

――FB木村浩一郎主将(スポ4=栃木・今市)が率いることしのチームカラーは

戸田 今のキャプテンはすごく温かい人です。温かいだけじゃなくて練習中厳しさもあるのですが、全体的にみんなを受け入れるような温かいチームにはなっているかなと思います。

「GKは一つのミスの責任が重い」(戸田)

GKあるあるを話すお二人

――同じGKということで、一緒に練習することも多いと思いますが、お互いの印象を教えてください

戸田 瓶井はかなり変人なのですが、運動神経は抜群で、僕には取れないボールを止めたりするのでそこはかなり尊敬しています。一生懸命練習をしているので、一緒に練習していると自分もうまくなれるという感覚はあります。

瓶井 気分の浮き沈みが激しいですが、普段はすごく優しく接してくれます。たまに怒ると怖いです(笑)。(ホッケーの)経験歴が違うので、すごく詳しいです。GKは指示が大切なのですが、全く及びません。ホッケーの詳しさや経験の豊富さは抜群です。

――瓶井選手は戸田選手からどのような指導を受けていますか

瓶井 練習中は様々なアドバイスをもらっています。スティックの使い方や、間合いの取り方を教えてくれます。

――瓶井選手のプレーを見てうまくなったなと思うプレーはありますか

戸田 僕は足があまり伸びないので、(足が)伸びいているプレーや、遠くのボールを飛びついて取るシーンが多いと思います。そういう感覚は見ていても伝わるので、それに刺激を受けています。

――足を伸ばすプレーというのは、柔軟性が大切なのでしょうか

戸田 そうですね。柔らかさも大切ですが、その動きを瞬時にするということが大事になってきます。ゆっくり長い時間をかけて(足を)伸ばすことは誰でもできるのですが、一瞬でやるということはなかなかできないので、瞬発力などは学んでいます。

――瓶井選手は戸田選手のプレーですごいと思う部分はありますか

瓶井 間合いというか、相手がドリブルしてきた時にどう対応するかということはすごく勉強になります。経験の差はかなりあると思います。

――戸田選手は瓶井選手のことを「変人」とおっしゃっていましたが、どのあたりのことを指していますか

戸田 寮が一緒なのですが、潔癖症の部分があります。綺麗好きというのを超えている時がありますし、洗濯はとても頻繁にやっています。そこはやっぱりただの綺麗好きではなく、変人なところなのかなと思います(笑)。あと、すごくマイペースです。いつも自分のペースで動いているので、自分の世界があるなと思っています。

――寮生活では潔癖性の方にとっては大変なこともあるかと思いますが

瓶井 ご飯を一緒に食べたりするのは全く問題ないです。ただ、練習着と私服を一緒に洗いたくないとか、机のプリントがバラバラだと少しイライラします。洗濯物も溜め込むと嫌なので。

――寮での部屋は別々ですか

瓶井 はい、別々です。でも、(戸田選手は)よく僕の部屋に遊びにきます。サッカーゲームがあるので。そればっかりやっています(笑)。

――野球など、他のスポーツゲームをやることはありますか

戸田 野球ゲームは全くやらないです。ホッケー部は野球好きがあまりいないですね。

――瓶井選手は高校3年の時にGKに転向されましたが、高校時代はどれくらいホッケーに打ち込んでいましたか

瓶井 遊びでホッケーをやっていたような学校でした。2、3回高校時代に(戸田選手のいた伊吹高校と)対戦したことがあると思いますが、0―10くらいで負けていました。小学校の時からサッカーのGKをやっていたので、ホッケーでもGKをやりたかったのですが、人数の問題でできませんでした。

――戸田選手はいつからGKをやっていますか

戸田 小学3年でホッケーを始めてからずっとGKをやっています。

――なぜGKを始めましたか

戸田 なぜなのかは分かりませんが、当時「GKをやりたい」と言ったみたいです(笑)。

――他のポジションをやってみたいと思う時期はありましたか

戸田 それは今でも思っています。前で点を取りたいというのはあります。でも、一番できるポジションがGKなのでずっとやっています。

――他のスポーツをやった経験はありますか

戸田 ないですね。ずっとホッケーをやっています。

――瓶井選手は他のスポーツ経験はありますか

瓶井 サッカーと、中学時代に野球をやっていましたがすぐに辞めました。

――GKをやっていて大変だなと思う部分はありますか

戸田 僕がいつも思っているのは、一つのミスの責任が重いということです。FWがミスをしても相手ボールになるだけですが、僕らがミスをすると点を取られてしまいます。そういう最悪な状況を考えると、精神的な部分を保たせるということがすごく大変だと思います。GKは常々プレーするわけではないので、体力的な部分よりは精神的な部分でモチベーションを保たせるのが大変ですね。

瓶井 プレーもそうなのですが、雨の日にプレーをすると防具がとてつもなく臭くなるというのが大変です(笑)。次の日の面の臭いはやばいです。とても大きいので頻繁に洗えるわけではないので、困っていますね。

――暑い時期は長時間防具をつけているだけでも大変だと思いますがいかがでしょうか

戸田 公式戦でも暑い時はぼーっとしてしまう時が何回かありました。攻めている時は指示をすることも、考えることもあまりないので、ぼーっとしてきて急に我に返る時があります。あと、汗の量が多いのでどうしても蒸れて大変です。

瓶井 他のポジションはタンクトップですから(笑)。GKは水をかぶっても余計に熱くなりますが、水をかぶってしまいますね。待っている時は、トレーナーさんに氷の袋をもらって冷やしてもらっています。でも、もう慣れてきましたね。

――普段はどのような練習をしていますか

戸田 フィールダーの数があまりいないにも関わらずGKが3人もいるので、強度としてはそこまで高いものではないです。一人一人の練習時間は短くなるので、集中をしていかないと自分の身にもならないです。個人的には3年生になってからより集中できるようになりました。

瓶井 気を抜いたらケガをするので、集中して練習をしています。練習以外でもヨーロッパでやっているホッケーの動画を見たり、社会人や他の大学のものも見たりしています。そこで練習方法などを考えたりしています。

――ことしに入って新しい練習などはありますか

戸田 打ち込みと言って、サークル内に遠くからボールを入れてからゴールを奪う練習をことしからよくやっています。GKにもボールが来ますし、かなり素早い指示が必要です。すごく頭を使うので、試合にも結構生かされていると思います。

瓶井 ルールが少し変わって、ボールを外に出すとよりゴールを決められる確率が上がりました。ピンチが増えるので、それに対応した練習が増えました。

――GKはボールに対する恐怖心はどうしてもあると思いますがいかがですか

戸田 潜在的にはすごく恐怖心があると思うのですが、集中している時は怖くないです。体の調子が悪い時はボールが当たりやすくなるので怖いです。

瓶井 大学はみんなうまいので、ボールは速いですがコースを狙ってきます。なので、あまり正面に飛んでくることはないです。

――GKの防具の中で一番危ない所はどこですか

瓶井 当たったことはないですが、首が一番危ないと思います。防具をしていても空いているので。

――この2人でどこかに行くことはありますか

瓶井 昨年GK会をやって焼肉に行きました。ごはんに行ったのはそれが最後ですね。嫌ではないけど、行こうとはならないです(笑)。

戸田 常日頃から一緒にいることが多いですし、住んでいるところも同じなので、わざわざ行くことはないですね(笑)。行こうってなれば行きます。

――ごはんに行った場合は先輩である戸田選手がおごることになりそうですか

戸田 年齢も一緒ですし、タメ口なのでそれはないです。ほぼ同期ですね(笑)。

「流れをつくるようなプレーをしたい」(瓶井)

瓶井

――ホッケーの魅力というのは何ですか

戸田 危ないスポーツに見られがちですが、スピード感が魅力だと思います。攻守が頻繁に入れ替わるので、見ていて面白いと思います。

瓶井 ルールは難しいですが、それを覚えてくれれば面白いと思います。サッカーだと停滞する時間があったりしますが、ホッケーは常に動いていますし、交代も自由なのでそういうところが面白いです。

――高校時代にサッカーからホッケーに転向した理由も、そこにあるのでしょうか

瓶井 実はホッケーを始めた理由はそこではなく、高校に入った当時はサッカー部に入るつもりで、買うスパイクも決めていました。ロナウジーニョと同じNIKEのスパイクです。その時に、ホッケー部に入ったらインターハイに行けると聞いて、しかも高校1年の時のインターハイが沖縄でした。なので、ホッケーは沖縄に行きたくて始めました(笑)。でも、ホッケーの魅力も大きかったと思います。始めた時はサッカーより激しいなと思いました。

――ワセダでもホッケーを続けようと思ったきっかけもやはりその魅力が大きいですか

瓶井 ワセダに入った理由はOBに誘われたことがきっかけです。あと、高校時代に慶応義塾高に負けて悔しくて、ホッケーを続けたいなと思いました。他の大学でやることも考えましたが、いろいろ考えてワセダにしました。また、ワセダはいまの4年生が1年生の時に立命大に勝っていて、天理大とも接戦をしていて、食らいつく姿がかっこいいなと思いました。

――関西の大学に行くことは考えましたか

戸田 高校の同期にすごくうまいGKがいて、僕はあまり試合に出ることができませんでした。その人はいま天理大にいるのですが、その人にはかなわないなと思っていて、ワセダを選びました。

瓶井 関西の大学はレベルが高すぎて、自分は埋もれてしまうなと思いました。関東の大学であればまだチャンスがあるかなと思いましたし、どの大学も実力が五分五分なので。

――昨年はインカレで天理大に敗戦しましたが、やはり関西の大学に勝ちたいという気持ちはありますか

瓶井 メンバーをそろえてきているので、関西の大学には勝ちにいきたいです。勝てたら本当にすごいです。でも、勝つチャンス絶対にあると思います。

戸田 勝てたら気持ちいいなというところが絶対にありますし、しかも高校の同期がプレーしているので勝ちたいです。同期に自分もできるということを見せたいです。

――インカレまで残りわずかですがどのように戦っていきたいですか

戸田 連戦なので体力の消耗が間違いなくあるし、しかも人数が少ないので、そんな中で戦うのは絶対に不利な状況だと思っていて。でもそんなことを言い訳できるような状況じゃないので、精神面での戦いが結構大きいかなというのはありますね。僕、どんなかたちであれ「勝ちたい」という気持ちが強い人が勝つかなと思っているんですよ。どれだけ泥臭くとも、試合の70分間勝つことを思い続けたやつが絶対に勝てると思っているので、それだけは揺るがないようにしたいです。ワセダもこれからモチベーションを上げていけば絶対にいけると僕は確信しています。

瓶井 僕らのチームカラーは、守って守って少ないチャンスの中で失点してでも点を取りにいくというのがあるので、集中しなければいけないと思います。

――個人的な目標は

戸田 試合に出られるのなら、これから無失点は間違いなく目指したいです。あと技術的なものもそうですが、どれだけチームを後ろで鼓舞できるかが重要だと思っています。精神的にでかい存在になれたらな、と。「この人がいるから安心して攻められるわ」って思われるくらいのプレーヤーになりたいし、プレーをしていきたいなと思います。

瓶井 間違いなく相手のレベルが上がってくるので(自分たちの)体力は落ちるかもしれませんが、集中力はしっかり一晩あれば回復できると思っています。もちろん無失点で勝ちたいです。インカレは間違いなくベスト4に残って全日本選手権に出たいと思っています。

――警戒しているチームは

戸田 やっぱり明大ですね。ちょっとまだ、明大と戦ったら負けるんじゃないかと思っている雰囲気を感じますね。

瓶井 しばらく勝てていないし、選手層も厚いしペナルティーコーナーも上手いので苦手意識は結構あります。

――インカレでのキーマンを挙げるとしたら

戸田 やっぱりFWの宮崎俊哉(スポ3=福井・丹生)ですね。あいつに頼るのも申し訳ないのですが、あいつが決めるとチームの雰囲気が上がるんですよ。やっぱりあいつにかかっているかなというのはありますね。

瓶井 僕は逆に俊哉以外のFWにかかっていると思います。今の僕らのチームは俊哉がボールを持って、一人で決めるような攻め方しかなくて。他のFWも本当に一生懸命攻めているのですが、それが点に結び付いたら自分らはすごく強いチームになると思っています。

――では、お二人はどのようなプレーでチームに貢献したいですか

戸田 力強いプレーをしたいです。弱気なプレーはしたくないので、攻めるプレーですね。

瓶井 僕は指示が苦手なのでプレーでカバーしたいです。普通のボールを取るのは当たり前で、ファインセーブをして逆に流れをつくれるようなプレーをしたいと思います。

――インカレに向けてチームとしてさらに強化していきたいことはありますか

戸田 1つ1つの技術や、どうやってチームを守るか攻めるかというのは確立されています。あとは試合中に全員がしゃべってチーム全体の動きをしっかり統制させていくということがちょっと足りないので、そこはチーム全体に言っていければいいなと思っています。

瓶井 攻撃のレパートリーを増やせればいいなと思います。秋になってから失点が多いわけでもないし、守りに関してはそんなには悪くないと思うので、あとは攻撃面でしっかりチャンスを決められるようなチームにしたいと思います。

――インカレへの意気込みをお願いします

戸田 リーク戦と違って1発負けてしまったらもう終わりでどうなるか分からないので、連戦でも調子の浮き沈みがあまりないようにしたいです。あといつも思っていることなのですが、ホッケーってやっぱり自分たちが楽しまないといけないなと思っていて。勝って楽しむのも当たり前なのですが、攻めにしても守りにしてもみんなで考えたことがプレーで上手くいったときってすごく楽しいことなので、やっぱり楽しみたいと思っています。薄い意味で楽しみたいというのではなくて、色んなことをやってきた上で楽しんでいきたいなと思っています。

瓶井 ベスト4に入れば全日本に行けるので、そこは本気で目指していきたいです。ワセダとしても過去に大昔に行ったきりで行ったことないので絶対に行きたい。頑張って無失点でいきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 杉田陵也、中村ちひろ)

ワセダの守護神たちの活躍に期待です!

◆戸田翼(とだ・つばさ)(※写真右)

1994年(平6)7月21日生まれ。身長171センチ、体重67キロ。滋賀・伊吹高出身。社会科学部3年。小学3年時から積み上げてきた経験をフルに使い、ワセダを後ろから盛り立てている戸田選手。よく瓶井選手の部屋に遊びに行って一緒にサッカーゲームをするなど、後輩思いの一面もうかがえました!

◆瓶井一志(かめい・かずし)(※写真左)

1994年(平6)12月18日生まれ。身長180センチ、体重66キロ。大阪・大阪星光学院高出身。スポーツ科学部2年。日頃から早スポの記事を楽しみにしてくださっているという瓶井選手。対談後、「インカレでの目標、良いプレーをして早スポにインタビューされることに変えておいてください!」とおっしゃってくれました。インカレでのビッグセーブに期待しています!