早慶定期戦(早慶戦)が代々木の舞台に帰ってきた。今年は、3年ぶりに東京・代々木第二体育館で、有観客で行われた。4年生4人をスターティングメンバーにそろえた早大は、試合開始から熱のこもったプレーで慶大を圧倒する。第1クオーター(Q)で35−17のダブルスコアにすると、そのまま勢いを手放さず、119-77で試合終了。体育館を埋め尽くすほどの観客の中、早大は伝統の早慶戦で華々しい勝利を飾った。
試合開始早々、G土家大輝副将(スポ4=福岡大大濠)がスティールからレイアップを沈め、並々ならぬ気合を見せつける。Cホセイン剛(教4=東京・早実)のアシストからF宮川丈クレイトン(商4=愛知・千種)が得意のスリーポイント、G神田誠仁主将(社4=静岡・浜松開誠館)が速攻を決め切り、スコアは7-0。「早慶戦は4年生の大会」(神田)という言葉通り、まさに4年生が光り輝いていた。ルーキーG堀陽稀(スポ1=京都・東山)が交代でコートに入ると、4年生の思いに応えるように、スティールから速攻、さらにバスケットカウントを奪う好プレーが続く。相手の連続得点に焦らされる時間があったものの、その度に土家がチームを鼓舞するスリーポイントで流れを引き寄せる。F堀田尚秀(スポ1=京都・東山)がブザービーターでスリーポイントを沈めて59-33。これ以上ないほどのエネルギーをもって前半を折り返した。
スリーポイント11本を含む46得点を挙げた土家
後半に入っても、彼らの躍動は止まらない。土家のドライブで後半初得点を挙げると、F細溪宙大(教3=東京・早実)のスリーポイント、G岩屋頼(スポ1=京都・洛南)の1対1など、後輩たちも懸命なプレーでチームを盛り上げる。第3Q終了間際にはC松山雄亮(スポ2=京都・洛南)のスティールからG高田和幸(商1=京都・洛南)がブザービーターで速攻を決め切った。そして、チームはいよいよ最後の10分間へと臨んだ。残り3分というところ、神田、宮川、ホセインがベンチから送り出された。会場にいる全員が固唾(かたず)を飲んで見守る中、ホセインがフリースローを獲得。これを2本きっちり沈めると、早大ベンチのボルテージは最高潮に。残り10秒からのラストプレー、宮川の華麗なスリーポイントがネットを揺らし、試合終了。40分間で幾度となく観客を沸かせた4年生らは思わずコートの中心で抱き合った。
フリースローを決めたホセインと駆け寄る選手たち
「最高のアツい試合ができた」。今年で80回目の早慶戦開催の中心となった黒川美結マネジャー(スポ4=大阪・早稲田摂陵)は大熱戦をこう振り返る。この試合を見届けた多くの観客はその熱に包まれ、それぞれが名残惜しそうに体育館を去っていった。チームはこれから関東大学リーグ戦と全日本大学選手権という大舞台に挑むこととなる。『日本一』という目標を胸に、全員で走り出していく。
(記事 宮島真白、写真 落合俊 権藤彩乃)
第80回早慶定期戦 7月2日(vs慶大) | |||||
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1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 | |
早大 |
35 | 24 | 32 | 28 | 119 |
慶大 | 17 | 16 | 16 | 28 | 77 |
◇早大スターティングメンバー◇
G#1 神田誠仁(社4=静岡・浜松開誠館)
G#12 土家大輝(スポ4=福岡大大濠) F#13 星川堅信(スポ3=京都・洛南) F#25 宮川丈クレイトン(商4=愛知・千種) C#91 ホセイン剛(教4=東京・早実) |
コメント
神田誠仁主将(社4=静岡・浜松開誠館)
――今日の試合を振り返って率直な気持ちを聞かせてください
正直ホッとしているのが1番ですね。入りからランをつくることができて、いい時間帯を長く、119点取り切ることができたというのは本当に良かったなと、安心な気持ちが大きいです。
――今日の試合に向けての意気込みは
早慶戦は4年生の大会だと思っていたので、4年生がやるべきことをやったチームが勝つと思っていました。それは意識して4年生選手4人とスタッフ2人にも話しながら、4年生が引っ張るんだよということを強調してやってきたというところがポイントになっているかなと思います。
――4年生全員がコートに立つ時間もありましたが、その瞬間は何を思ってプレーしていましたか
この3年間半くらいでぶつかることもありましたが、こうして一つみなさんの前でパフォーマンスすることができたのはありがたいなと思っています。
――プレー面では速攻や同期へのパスなどで存在感を発揮していましたが、どのようなことを意識してプレーしていましたか
早慶戦に限らず自分の強みはトランジションでのアタックであったり、ハーフコートでもドライブでファウルをもらったり点数稼いだりという部分です。自分のところに寄せてアシストするというところは常に意識していました。最後クレイトン(宮川丈クレイトン、商4=愛知・千種)や剛(ホセイン剛、教4=東京・早実)に打たせることも意識していたので、そこはうまくパスを供給できて良かったなと思います。
――3年ぶりの有観客でしたが、応援の力は感じましたか
普段と違って、入りは結構緊張しましたが、独特の雰囲気の中勝ち切ることができて安心の気持ちが大きいですね。本当にみなさんに足を運んでいただいてありがたい気持ちでいっぱいです。
――引退までの期間をどのように過ごしていきたいと考えていますか
早慶戦を一ついいかたちで締めくくることができたので、このまま日本一に向かって 全力で走り抜けていきたいと思っています。
土家大輝副将(スポ4=福岡大大濠)
――今の率直な気持ちは
自分がイメージしていた通りの早慶戦になりました。多くの人が見に来てくださって、ここまでけがなく頑張ってきたチームメートにもそうですし、本当にたくさんの方に感謝したいです。
――どのような意気込みで臨みましたか
自分たちのやることはシンプルで、春からやってきたことを徹底して追求していくだけでした。そこに対して慶大がどういった対策をやってくるのかというところで毎年ちょっとつまずいていた部分はあります。今年は入りの部分から4年生が4人出てるというところで気持ちで絶対負けないようにというのと、最初から40分間自分たちのバスケをしようという話をしていました。そこがしっかり体現できたのが良かったかなと思います。
――4年生が4人でコートに立ったことについては
みんなの努力も知っていますし、悩んでいたことも知っています。何回もぶつかって話し合って、その度に4年生でまとまって頑張ろうと話してきました。4年生が一緒に出るということで特別な感情というか、同期が決めることが本当にうれしかったですし楽しかったです!
――今日はスリーポイントがよく当たっていました
僕らは3年間やってきて、早慶戦は4年生の気持ち次第で左右されるというのはよく分かっていました。なので、気持ちで絶対負けないようにというのを4年生で話し合いました。そこに観客の応援もあって、自分の気持ちも高まって、しっかり集中力を切らさずにやった結果があのように得点につながりました。
――後輩にパスを出す場面も多く見られましたが、それについては
早慶戦は来年以降もずっと続いていく伝統戦です。下級生に早慶戦の難しさを伝えるというか・・・この独特な雰囲気の中で、1個点を取るだとか1個リバウンド取るだとか、そういう経験をするとしないとでは全然違うと思いました。もちろん自分も(スリーポイントが)当たっていましたが、そこに(相手が)寄ってくるというのは分かっていたので、来年以降のことも考えて、後輩たちにもパスを散らしたり気持ちよくプレーができるようにしたりというのは心がけていました。
――最後に、残りのシーズンへの意気込みをお願いします
ここからのシーズンというのはチームとしてより団結していかないといけません。オフェンスの部分でもディフェンスの部分でもリバウンドの部分でも、もっともっと追求していかないと勝てない相手になっていくというのは分かっているので、そこに対してけが をしない準備と、「チームのために」という意識をもっとチームに植えつけて、よりいいチームができるように練習に励んでいきたいと思っています。
ホセイン剛(教4=東京・早実)
――今の率直な気持ちを教えてください
4年間で一番最高な早慶戦でした。いろんな人に支えられながら4年間やってきて、最後の早慶戦でスタメンとして出してもらって、倉石さん(倉石平ヘッドコーチ、昭54卒)らコーチ陣に粋な計らいをしてもらったし、そこでしっかり結果で示すことができたので、バスケ部を4年間やっててよかったなと思います。
――3年ぶりの有観客でした
歓声めちゃめちゃすごかったし、人も多かったけれど意外と緊張はせずに4年生で喋りながら集中できたのでよかったです。
――4年生全員でコートに立ったときのお気持ちは
めっちゃ嬉しかったです。最高でした。最後のハグよくないですか。
――引退までの意気込みは
引退まであと半年です。大変なこともいっぱいありますけど、4年生4人で走り抜こうと思ってます。
宮川丈クレイトン(商4=愛知・千種)
――早慶戦を終えて
めちゃくちゃ楽しい試合でした。倉石さんが、4年生を中心に試合に出してくれると言ってくださって。それがあって、より4年生としての覚悟ができた上で、試合の入りも終わり方も良かったです。楽しい試合でした。
――有観客開催は、いかがでしたか
当然ながら圧倒的に雰囲気が違う中で、それが楽しい理由の1つだと思います。僕は1年生の時に試合に出られなかったので、いつかこの雰囲気の中でやってみたいと思っていました。2、3年生は有観客ではなかったので、4年生になってできて幸せでした。
――スリーポイントについて
初め2本は外してしまいました。それでも(土家)大輝がシュートを打たしてくれて、待っとけみたいな感じだったので、打つ覚悟でいました。最後は決めることができて、気持ちよかったです。大輝かっこよかったです。
――途中、ホセイン剛選手と話していました
1発目で決めろよって大輝が言ってたので、便乗してました(笑)。
――4年生全員がコートに立つ時間もありました
これまでに同期で出られるチャンスはあっても、それがあと何回なのかなと思っていて。今回はその1回だと思います。俺ら死ぬほど仲良いんです。個性がはっきりしていて、 オフで遊ぶわけではなくても、お互いのことをめちゃくちゃ分かってるし、それくらい仲良いので、幸せでした。
――ラストイヤーに向けて
今年は、僕個人としては苦しいことが続いていて、試合に出られない時もあります。今年はリーグ戦(関東大学リーグ戦)が26試合と多いです。そこで4年生としてチームの底上げをして、絶対に日本一という目標を達成できるように頑張りたいと思います。
川村謙介トレーナー(教4=千葉・幕張総合)
――早慶戦を終えて
4年生ということで、まずは勝ててよかったです。感無量です。
――試合を見ていて、いかがでしたか
スピード感や強度に差が出たと思います。早慶戦は普通の試合と違って、本来の実力以上のことがあります。慶大は、僕らからすれば早慶戦のために1年間頑張ってきている印象があるので、すごく厄介ですね。何があるか分からない中でも、今年は勝ててよかったです。
――勝てた要因は
最初から自分たちの流れをつかめたことは大きかったです。最初、9点くらい離れたと思うのですが、それが流れを持ってきて調子づいたかなと思います。
――有観客の雰囲気はいかがでしたか
盛り上がりが桁違いでした。有観客最高です。
――これから復帰されるご予定かと思います。ラストイヤーに向けて
長い期間チームを離れていたので、これから短い時間ですけど全力でチームのために貢献したいと思います!
黒川美結マネジャー(スポ4=大阪・早稲田摂陵)
――早慶戦を終えて
すごく大きなイベントだったので、何が起こるか分かりませんでしたが、無事に終わってよかったなというのが一番です。勝ててよかったです。4年生がたくさん出て、最後もクレイ(宮川丈クレイトン)が決めて、すごくいい終わり方でした。
――試合については、いかがでしたか
新人選(関東大学新人戦)は残念な終わり方でした。トーナメント(関東大トーナメント)も勝ち続けることができませんでした。その中で、(早慶戦は)すごくいい試合でした。チームがこれから先まとまって、インカレ(全日本大学選手権)に向けて勝っていけると思 いました。コートの中もベンチもいい雰囲気でした。
――有観客開催はいかがでしたか
お客さんが入るまでは、昨年よりも全然大変で、どうなるんだろう、事故が起きるんじゃないかという不安ばかりでした。けれど、実際にお客さんが入って楽しんでいる顔を見たり、下からだとお客さんが入っている様子がすごく見えたり。そういうところで、やっぱり有観客が一番だなと思いました。お客さんの声援があって、盛り上げてくれて、その中で私たちが最高のアツい試合ができたのかなと思います。
――ラストイヤーの残りに向けて
毎年、日本一という目標を掲げていても、叶わないまま3年間が過ぎました。今年こそは、本当に日本一になりたいと思いますし、なれるメンバーがそろっていると思います。主将も副将も2人ともチームを引っ張っていく先導力があって、そして4年生の団結力もあります。それに負けじとマネジャーやスタッフも団結力を高めて、選手と一緒に日本一に向かっていけたらと思います。
堀陽稀(スポ1=京都・東山)
――初めての早慶戦を終えての感想は
ひさびさの有観客でちょっと緊張したんですが、4年生が楽しんでやっていたのでよかったです。
――たくさんの観客の前でのプレーはどうでしたか
シュートを決めた時にはとても盛り上がってくれたので気持ちよかったです。
――4年生とプレーして感じたことは
やっぱり4年生が早慶戦にかけている思いがとても伝わってきて、自分も負けたらいけないなというふうに思いました。
――今後に向けて
次はリーグ戦と冬のインカレがあるので、そこでチームに貢献できるように頑張ります。