残り8秒から勝ち越し 大接戦の末、インカレ出場を決める!

男子バスケットボール

 ついに手に入れた全日本大学選手権(インカレ)への切符。試合後、コート上でたった一人チームを支えてきた4年生のF宮本一樹(スポ4=神奈川・桐光学園)の目には涙が浮かんでいた。インカレ出場を懸けて一発勝負が行われるインカレチャレンジマッチ。関東大学リーグ戦(リーグ戦)を1部リーグ9位で終えた早大は、2部リーグ4位の東洋大と対戦した。第1クオーター(Q)は出だしが悪かったが、すぐにインサイドを中心としたオフェンスで追いつくと、24−24の同点で終了。第2Qでは序盤から早大がディフェンスの強度を上げると、徐々に点差が離れ、8点リードで試合を折り返した。しかし第3Q、東洋大のディフェンスに攻撃の糸口を見出せず、早大の得点が停滞気味に。またターンオーバーも多く、前半で奪ったリードを取り返され、55−58で第3Qを終えた。第4Qも中盤までは流れに乗れず、追いつくことができない。しかし残り4分、F星川堅信(スポ2=京都・洛南)のスリーポイントで同点にすると、ここから試合終了まで拮抗(きっこう)した展開が続いた。残り8秒で70−70の場面、G土家大輝(スポ3=福岡大大濠)の放ったシュートは決まらなかったが、星川がリバウンドを拾い、そのままリングを狙う。冷静にゴール下のシュートを決め、早大に劇的勝利とインカレ出場権をもたらした。

 F津田誠人主将(スポ4=京都・洛南)が「ここの雰囲気はいつもの試合とは違って」と話すインカレチャレンジマッチ。第1Q序盤では選手たちに緊張もあり、いつも通りのディフェンスができていなかった。東洋大にフリーでアウトサイドシュートを決められ、先行される展開に。一方、高さで分のある早大は、F石坂悠月(スポ1=東京・国学院久我山)のインサイドですぐに追いつくが、中盤で東洋大に2本のスリーポイントを浴びて、再び点差が開いた。ここをF小野功稀(社1=新潟・開志国際)のスリーポイントやアリウープで食い下がり、第1Qを24−24で終えた。G神田誠仁(社3=静岡・浜松開誠館)が「ディフェンス重視で臨みました」と振り返る第2Qでは、早大がディフェンスの強度を上げ、東洋大にペイントタッチをさせず、オフェンスのリズムを崩すことに成功。また宮本と石坂がオフェンスリバウンドで奮闘して、ボールポゼッションを大幅に増やすと、5連続得点で一気に12点のリードを奪う。終盤に庄子立稀(東洋大)の猛攻で点差を詰められたが、43−35で8点差を保ったまま試合を折り返した。

ドライブで得点を狙う小野

 第3Qは序盤から東洋大にペースを握られるかたちとなった。宮本へのダブルチームやローテーションなど東洋大の変則的なディフェンスに対して、ターンオーバーが積み重なる。シュート回数が少なく、得点が停滞する早大に対して、東洋大は畳み掛ける。庄子立稀(東洋大)のスリーポイントで同点に追いつかれると、早大も土家と神田の得点で対抗するが、残り2分から東洋大に3連続得点を決められ、3点のビハインドを背負った。第4Q開始早々、神田が激しいボールマンプレッシャーでターンオーバーを誘うが、得点には結びつかない。そのまま中盤まで東洋大のインサイドを固めたディフェンスに得点することができないまま、点差は徐々に広がり7点に。しかし、ここで反撃の狼煙を上げたのは、コートに立つ唯一の4年生としてチームを牽引(けんいん)する宮本。ポストプレーで獲得した4本のフリースローを全て沈めると、スティールからレイアップを決め、ついに逆転。このまま一進一退の状況が続き、残り14秒で70−68。だが、東洋大にリバウンドから得点を許し、残り8秒で同点となる。タイムアウト明け、土家が打った1本目のシュートは外れたが、そのリバウンドはゴール下で構えていた星川の手元に。ほとんど時間のないシュートだったが、「入ってくれて良かった」(星川)と、冷静に2点を決めて早大が勝ち越した。そのまま最終スコア72−70で試合終了のブザーが鳴り響いた。東洋大との大接戦を制した早大がインカレ出場を決めた。

逆転のプレーとなった宮本のレイアップ

 大一番のインカレチャレンジマッチを終え、「今までのリーグ戦とは違ってプレッシャーが強かったので、勝ててうれしいというよりホッとしています」(神田)と勝利を噛み締めた。しかし、インカレ出場までの道のりは決して簡単なものではなかった。宮本は「ここまでの1年間を振り返ると、苦しいことが本当に多かった」と打ち明けた。春に4年生のけがが重なってプレーできない時期が続き、チームづくりは大きな遅れを取った。「春からチームをつくっている他の大学と比べると、チームとして成熟していなくて、トーナメント(関東大学選手権)やリーグ戦の序盤は、自分たちが何をやっているのかもよく分からないくらいでした」(宮本)。一方、リーグ戦終盤にかけては、「チームとしてのまとまりが出てきて、自分たちの役割だとかチームとして何をしなければいけないのかだとか、そういうところがはっきりとしたことで、選手たちもやりやすかったです。かたちとして見えたのが、チームが成長するきっかけだったと思います」。リーグ戦でのチームの急激な成長をそう明かした宮本。今回の一戦で最後に勝ち切ることができたのも、成長の賜物であったはずだ。インカレまで約1カ月、『W奪還』に向け、さらなる飛躍を目指す。

喜びを分かち合う宮本(左)、学生コーチ無着航平(商4=東京・早大学院)(中央)、津田

(記事 落合俊、写真 大滝佐和)

インカレチャレンジマッチ 11月11日(vs東洋大)
   1Q 2Q 3Q 4Q 合計

早大

24 19 12 17 72
東洋大 24 11 23 12 70

◇早大スターティングメンバー◇
F#7 宮本一樹(スポ4=神奈川・桐光学園)

G#12 土家大輝(スポ3=福岡大大濠)

F#13 星川堅信(スポ2=京都・洛南)

F#14 小野功稀(社1=新潟・開志国際)

F#77 石坂悠月(スポ1=東京・国学院久我山)

コメント

津田誠人主将(スポ4=京都・洛南)

――試合を終えて、率直な感想をお願いします

まずは勝ち切れたことがチームとしてうれしいなと思います。

――ベンチから見ていて何を感じましたか

インカレチャレンジマッチは3年連続で出ていますが、ここの雰囲気はいつもの試合とは違って。その影響か選手の足も重くて、緊張が見られたので、そこに関しては心配していました。

――インカレまで約1カ月、どのようにチームを率いていきますか

僕は今プレーで引っ張ることができませんが、それ以外の面では引っ張れると思います。インカレで優勝するという目標にアプローチすることも大事ですが、後輩に伝えていくということ、スキルやマインドセットを引き継ぐことも、積極的にコミュニケーションをとりながらやっていきたいです。

宮本一樹(スポ4=神奈川・桐光学園)

――試合を終えて、率直な感想をお願いします

今日の試合も思うところはたくさんあったのですが、最後は勝てて本当にうれしかったです。

――試合の入りの部分で流れに乗り切れませんでした。チームや個人として機能していなかった部分はありましたか

立ち上がり何本かは良かったのですが、その後はスリーポイントラインの上でしかボールを回していなくて、ショットクロックが少なくなってからシュートを打ったり、仕掛けたりしていました。そこでミスが続いてしまって、相手に走られたり、立て続けにスリーポイントを決められたり、本当に少しの気の緩みでリードから逆転される流れをつくってしまいました。あそこで、いくつかポゼッションがあったと思うのですが、どこかで断ち切れたらこの試合の流れは変わったと思います。その点では、僕らが試合の流れを断ち切れなかったのは、ズルズルといってしまった要因だと思います。

――相手とマッチアップする中で、やりづらかった部分はありましたか

守り方がなかなか特殊で、仕掛けに行ったときに、見えないところから出てきたりしました。前半はそこでかなり苦労してしまって、バタバタして点が取れずにイーブンとなりました。あそこでもう少し機転を利かせて、ゴール下で面を張って工夫できた部分はあったと思います。

――インカレ出場は1つの通過点だと思います。副将としてチームを引っ張ってきて、ここまでを振り返っていかがですか

ここまでの1年間を振り返ると、苦しいことが本当に多かったです。まずチームを作り始めるにあたって、4年生の僕と津田と萩原(圭、先理4=東京・早実)が4月までプレーできなくて、3年生以下の神田と土家にコート上での上級生のあり方などを全て任せてしまったことは、本当に申し訳なかったと思っています。その中でも、本当によくやってくれました。そこから僕と津田が復帰して、少しずつチームをつくっていきました。それでも春からチームをつくっている他の大学と比べると、チームとして成熟していなくて、トーナメント(関東大学選手権)やリーグ戦の序盤は、自分たちが何をやっているのかもよく分からないくらいでした。それでも倉石さん(倉石平ヘッドコーチ、昭54教卒)の言うことを信じて、ずっとそのスタイルを貫き通したことで、神奈川大で1勝できました。けれどそのあとは連敗してしまって、その後に倉石さんが少しやり方を変えました。それでリーグ戦の終わりの4試合では、負けた試合もあるのですが、自分たちのやるべきことを徹底したことで軌道修正ができました。さらにリーグ戦の後半にかけては尻上がりで調子を上げていきました。チームとしてのまとまりが出てきて、自分たちの役割だとかチームとして何をしなければいけないのかだとか、そういうところがはっきりとしたことで、選手たちもやりやすかったです。かたちとして見えたのが、チームが成長するきっかけだったと思います。来年以降は、年度の頭からチームづくりをする上で、大切なことだと思うので、後輩たちにはしっかりとやってもらいたいです。

――インカレまで約1カ月、チームや個人として、どのような期間にしていきたいですか

土曜日にインカレの組み合わせが決まります。その相手にアジャストすることはもちろんです。今日も自分たちのスタイルが出せない試合だったので、自分たちのバスケットをもう一度見直して、倉石さんも肉付けする部分はあると言っていたので、付け足していきたいと思います。インカレは、ここ何年か劇的な勝利をしていて、僕たち的にはインカレには強いと思っているので、そこを信じて自分たちのやることをするしかないと思います。やることは変わらないので、1カ月しっかりとやっていきたいと思います。

神田誠仁(社3=静岡・浜松開誠館)

――試合を終えて、率直な感想をお願いします

勝たなければいけない試合で、今までのリーグ戦とは違ってプレッシャーが強かったので、勝ててうれしいというよりホッとしています。

――1Qと2Qの間に何を話していましたか

1Qでは、相手に気持ちの良いシュートを何本も打たせてしまって、普段はとられない24点もの得点を与えてしまいました。そこで、まずはディフェンスを修正すること。そしてオフェンスは、自分たちも24点とれていたので、このままペースを継続すること。2Qはディフェンス重視で臨みました。

――ディフェンスが機能しない中で、神田選手がボールマンへのプレッシャーをかけている姿が印象的でした。そのときの心境は

リーグ戦も含めて、自分の役割はボールマンにプレッシャーをかけてスティールを狙ったり、相手のオフェンスのリズムを崩したりすることだと思っていました。それを今日の試合でも何度か発揮できたのは良かったです。

――試合に出ていない時間はベンチから声出しをしていましたが、何を伝えようとしていましたか

普段点数を取る選手が取れていなくて、思うようなプレーをできていなかったので、その選手たちが勢いに乗れるような声かけを心がけていました。

――インカレまで約1カ月、どのように練習に取り組んでいきますか

リーグ戦を含めて、チームとして成長できていると思います。今日は2点差ではありますが、勝ち切ったことに意味があると思っています。もう一度自分たちのディフェンスと速攻を強調して、練習に取り組んでいきたいです。

星川堅信(スポ2=京都・洛南)

――試合を終えて、率直な感想をお願いします

もっと4年生とプレーできる期間があるのはうれしいです。それを楽しめたらと思います。

――今日の試合を振り返って、いかがでしたか

今日は最後決められたのですが、それ以上に途中で入らなかったので、個人的に悪いところばかりでした。みんなからも勝ったんだからと言ってもらえたのですが、反省しなければいけないというか、改善しなければいけないところが多かったです。今日は帰って反省します。

――最後に決めた時は、どのような心境でしたか

その時のシュートで何を思っているのかは分からないのですが、入ってくれて良かったです。けれど今日は良くなかったので、インカレに向けてまた頑張ります。

――個人としての得点が伸びなかったと思うのですが、やりづらさはありましたか

受け身になったらダメだと言われていたのですが、なってしまいました。リーグ戦の間は、自分が点を取ってやるという気持ちがあったのですが、今日はそれを出せなかったです。まだまだメンタル弱いなという感じです。

――インカレまで約1カ月、個人として、どのような期間にしていきたいですか

ここからがラストスパートだと思います。生活の軸をいつもよりもバスケ寄りにするというか、チームのことを考えて、また自分に足りないことなどを考えて、インカレに臨みたいと思います。