27日に開催される第79回早慶バスケットボール定期戦(早慶戦)。関東大学選手権が延期になり、男子部にとって今年初めての大会として迎えることになったこの早慶戦にかける思いは強い。早大男子部4年生のF津田誠人主将(スポ4=京都・洛南)、C宮本一樹(スポ4=神奈川・桐光学園)、G萩原圭(先理4=東京・早実)、マネジャー曽我部ありす(先理4=東京・早実)、学生コーチ森一史(スポ4=東京・西)、学生コーチ無着航平(商4=東京・早大学院)、学生トレーナー大島岳晃(教4=東京・早実)、学連松岡寛子(商4=埼玉・早大本庄)の8人にお話を伺った。
※この取材は6月16日にオンラインで行われたものです。
「今までよりも多くの人たちに見ていただける」(津田)
練習中に集合して話し合う選手たち
――4年間で最も印象に残っている試合を教えてください
宮本 僕が一番印象に残っている試合は、1年生の時のインカレでの、ベスト8を賭けた大東大との試合です。
――どのような試合でしたか
宮本 (この試合に負けて)ベスト8に入ることができなければ、その日でシーズンが終了してしまう試合でした。僕は1年生だったのですが、4年生の気合が入っていて、それに引っ張られるような感覚で、試合に入りました。最初から拮抗(きっこう)した試合で、最後の最後でキャプテンの濱田さん(濱田健太、平30社卒=現東京海上日動)がスリーポイントを決めて逆転勝利をした試合です。その試合はベンチもスタンドも一体となって勝てた試合だったので、僕の中ですごく印象に残っています。
津田 僕も同感です。それ以外だと、一昨年の桑田さん(桑田裕平氏、平31商卒)の代の国士舘大戦と、昨年の全日本大学選手権(インカレ)での日大戦はすごく印象的ですね。国士舘大戦は1部残留の瀬戸際だった試合で、日大戦は昨年度1試合も勝つことができなかったオータムカップのあとのインカレで、一番目標にしていた試合でした。僕らが3年間ずっとインカレで日大に負け続けてきたというのもあり、すごく印象的でした。リベンジを果たすことができた試合でした。
無着 僕の中で国士舘大戦が印象的だった理由としては、他の試合に比べて順位的には低いし、1部残留するか否かという試合で、みんなイケると思っていると思っていました。けれどみんな不安だったようで、4年生をはじめ、2個上の先輩や萩原も試合後に号泣していて、それがすごく印象的でした。僕自身も泣いてしまって。気持ちが入って、やっと勝てたというのはうれしかったな。
――その試合を通してチームに変化はありましたか
無着 その年はリーグ戦がうまくいかず、目標を変えるなどしていて、一つの目標に向かえていない感じはしていました。しかしこれに勝たないとインカレに出られないという試合だったので、それに向けて全員が一丸となったという点でいうなら、チームがまとまるようになったのかなと思います。
――他にも印象に残っている試合はありますか
森 昨年のインカレチャレンジマッチでの法大戦は一番印象に残っています。なぜなら自分が指揮を執った試合だからです(笑)。負けたら終わりなのは他の試合とも似ているのですが、他の大学だと教授や大人の人がヘッドコーチをしている中で、学部3年の僕が指揮をして勝てたというのは思い出に残っています。
無着 法大戦も、リーグ戦がなくなり代替のトーナメントになって1勝もできなかった中で、やっと勝てた試合だったので印象的でした。
――今年のチームの強みはどこですか
津田 例年に比べて身長という面でも、身体能力という面でも強みになっているかなと思っていて、特に機動力が今年の強みかなとは思います。
――具体的にどのような点で機動力があるのですか
津田 他大学の同じポジションと1対1をするとなった時に、全てのポジションにおいて秀でているというか、ミスマッチをとっていけるようなところです。
無着 1年生から試合に出ているメンバーが多いというのもあります。僕らが1年生の時の4年生は、人が多くてうまい人も多かったのですが、その中でも津田と宮本はスターティングメンバーとして出場し試合に絡んでいました。また今の3年生や2年生も昨年から試合に出ていて、大学のフィールドでの経験が他のチームよりも多いというのは、一つの強みなのかなと思います。
――他にも強みはありますか
無着 フィジカルですね。やっぱりトレーナー陣が毎日のようにトレーニングをやってくれているので、身長がそこまで高くない選手でも体で当たり負けしないのは今後の目標でもあり、チームの強みになっていくのかなと思います。
――4年生には選手だけでなく、スタッフの方も多い印象を受けるのですが、チームの強みに繋がっていると感じますか
萩原 早大はスタッフの人数が多く、特にトレーナーに関しては週単位で選手個人のメニューの管理もしてくださっているので、他のチームに比べると、手厚いサポートをしてくれていると日々感じています。また学生コーチに関しても、1年生から4年生まで結構人数がいるのですが、4年生が1年生を引っ張ってくれることが多く、それに引っ張られて1年生も夜遅くまで残って勉強しているのを見受けられるので、その点に関してもすごくサポートしてくれているなと体感しています。
――コロナの影響で十分な活動ができない中で感じたことはありましたか
宮本 コロナが流行し始めた時、僕は大学全体のスプリングキャンプに呼ばれていました。第2週までその合宿に行っていたのですが、合宿が中断されて大学に戻ってプレーしていました。けれど早大自体も体育館が使用できなくなったので、みんな3、4カ月くらい帰省してその間もトレーニングやミーティングなどをしていました。自粛が明けたあとにリーグ戦の代替トーナメントとインカレチャレンジマッチをやったのですが、その代替トーナメント2戦目の試合開始2、3分くらいで自分がけがをしてしまいました。コロナと直接関係があるのかわからないですが、コンディションの調整は難しかったです。僕はここでけがをしてしまい、今年に入ってもまだプレーできていないです。そうですね、僕がけがをしたという印象しかないですね(笑)。
――4年生がけがの影響で思うようにプレーできない中で、下級生に感じることはありますか
宮本 最近、津田は少しずつ練習に復帰しつつあるのですが、僕と萩原は完全にまだリハビリとトレーニングをしている最中です。練習中に端でリハビリをしていると練習を見られなくて、コートの中に声をかけることも難しいなと感じています。津田が(練習に)入る前は3年生に任せっきりになってしまっていて、チームをまとめるのが難しい状況でした。けれど3年生はリーダーシップをとる子が多く、僕ら4年生がコート内で声をかけることができない分、3年生が引っ張ってくれているなというのは感じています。
――他にもコロナの影響で感じたことはありますか
曽我部 コロナに関してだと、運営としては早慶戦が普段通りに行えず、毎年行っていた早関定期戦もなくなってしまい、記念大会や定期戦のありがたみを改めて感じた年になりました。今年も早慶戦は無観客で開催する予定なので、有観客でできたのが4年間のうち2年しかなかったというのは、私としては心残りになるなと思っています。学連も試合に関してはいろいろ変わったと思うけれど、松岡さんどうでしょう。
松岡 レギュレーションを変えないといけない瞬間がたくさんあって、当たり前のことを当たり前にやるというのが非常に難しいなと感じました。
――各学年に対する印象を教えてください。1年生にはどのような印象がありますか
大島 1年生は努力家な子が多いイメージはありますね。例えば試合に出ている選手とか練習に参加している選手は、自主練とかもすごく真面目に取り組むし、先輩の言うことを聞くような素直な子が多くて、けがしている子もリハビリに対してすごく真面目に取り組んでいます。あとは学生コーチとマネジャーも1人ずついるのですが、その子たちも練習に対してすごく熱量を持って取り組むし、マネジャーの子もよく仕事をこなしてくれる子で、素直で努力家な子が多いイメージはありますね。
――2年生はどうでしょうか
森 一番潜在能力のある子たちが揃っているなという印象はあります。特に星川(堅信、スポ2=京都・洛南)と(兪)龍海(スポ2=神奈川・桐光学園)に関しては、このオフに特別指定選手としてB1に行っていたので、本物の世界という、大学とはまた一つ二つレベルが違う世界を見てきたというところは彼らの強みだと思います。ただ、もっとできるかなという風なことは周りから見ていて思うので、そういう世界を知っている分、そういう期待を持って彼らには接しています。まだまだできる子たちだと思っています。
――具体的にどのような面でできることがあると感じますか
森 今レベルが高い世界を見てきたということを言いましたけれど、それを自分の中で終わらせてしまっています。この練習では大学レベルで終わるとか大学レベルに達していないとか、これくらいやったらB1レベルの練習というような、そういう基準とかスタンダードを知っているのに、それを発信しないので、そこはすごくもったいないかなと思います。あとは、もっと自分を追い込めるところはあるかなと思っています。日々余力を残して体育館から出ていく印象があるので、もっと自分に厳しくできるんじゃないかなと思います。
――3年生はどのような印象ですか
宮本 4年生がいない分リーダーシップをとって、コート内で引っ張ってくれているのですが、責任感みたいなのが先行して、3年生が熱くなってしまうことで、コート内で周り(の選手)に影響するくらいのフラストレーションを爆発させてしまったり、ヒートアップしてしまったりすることがあります。そこは彼らのいいところであり、悪いところでもありますが、もう少し大人になって、自分がフラストレーションを爆発させてしまうことによって周りにどういう影響を及ぼすのかっていうのを考えて行動していけたら、コート内でもっといい存在になれるのかなって思います。
――下級生に対するコート外からの印象を教えてください
大島 3年生は宮本が言っていたようにリーダーシップをとても発揮するし、チームとしてすごく頼れる学年です。その一方で、コートの外に出たら、プライベートの勉強とか、自分の時間とかを大切にしていて、文武両道を表している早稲田らしい、いい子たちだなとは思います。
曽我部 3年生であれば、(大島)岳晃が言っていたみたいに、私生活の部分ではいろいろなことに一生懸命な子が多くて、そこは年下だけど尊敬できる部分がある学年だなと思います。2年生はスタッフが多い学年で、私は選手よりもスタッフと接する機会が多いので、頑張ってほしいなって思います。私たちが卒業したらそこがメインでスタッフを回していかないといけない学年なので、あと1年間でどれくらい伸びてくれるのか気になっている学年です。1年生はまだそんなにつかめていないかな(笑)。
松岡 私はチームにあまり同行していないので、チームメートとしてよりも学連として、他の大学の人からどういう風に思われているかという印象なのですが、3年生は他の大学の選手からも好印象で、バスケにすごくアツいよねって言われる子たちが多く、それは誇らしいことだなと思います。3年生はすごく頼りになる、チームが誇っていいような存在なのかなと思います。
――自分たちの学年への印象はどうですか
津田・宮本 萩原お願いします!
萩原 えー!
森 関節が弱いことだよな(笑)。
一同 (笑)
萩原 (自分たちの代の)印象に関しては、スタッフも選手も差がなくて、どちらも合わせての4年生という感じです。団結力という意味だったら、各学年の中でも一番強いと自負しています。
一同 おおー(笑)。
萩原 この4年生が戻った時に、チームがどう変わっていくのかはとても楽しみにしています。
――プライベートでも練習でも仲がいいのですか
萩原 そうですね。練習内もそうですし、プライベートでもさまざまな話をしているので、どちらでもですね。
無着 フラットな関係というのは、紆余曲折を経てやっと4年目にして生まれたのかなと思っています。ここまでの3年間、衝突することもあれば、喧嘩することもあったし、たくさんミーティングをしてきて、そういうのを乗り越えたからこそ、4年生としてチームをまとめていく上で一つになれているのかなと思います。最初から団結力があったわけではなくて、だんだん染み付いていったのかなと思います。
――早慶戦に向けての意気込みを教えてください
曽我部 2年前には早大側が運営で、早稲田アリーナのこけら落としとして開催した早慶戦で負けてしまい、すごく悔しい思いをしました。私が運営として携わる最後の1年の意気込みとしては、無観客ではあるけど、同じ早稲田アリーナでまた早大が運営で試合ができるので、何が何でも絶対に勝ってもらわないと困ります。
無着 普段の早慶戦はいろいろなところから人が来て、応援してくれる人とかOBOGの方々が日本各地から集まってくるのですが、その中でも見ることができない人はいます。無観客のメリットとしては配信があるということで、北は北海道、南は沖縄まで日本各地で見ることができます。だから今まで以上に、バスケットに興味のない人であったり、早大にあまり関係がなかったり、見たくても見られなかったりするような人たちにも早稲田らしさを伝えられるフィールドなのかなと思います。よりさまざまな人たちに見られていると思いながら試合に臨みたいなとは、チームとしても個人としても思っています。
――選手の方はどうでしょうか
津田 無着が言っていたことに付随する部分もあるのですが、移動や時間帯というところで、今までよりも多くの人たちに見ていただける可能性もあると思っているので、そういった意味で早慶戦の熱量というか、白熱した試合というものを例年以上に盛り上げていけたらいいなと思っています。
萩原 宮本さんお願いします!
宮本 萩原で(笑)。
萩原 副キャプテン!
宮本 そうですね、(曽我部)ありすが言っていた早稲田アリーナでやった早慶戦は僕の中で悔しさが残っています。あの代の慶大は、山崎純さんと髙田淳貴さんという2人のエースがいました。東京六大学リーグ戦でやった時は、いい感じでチームが回って圧勝することができたのですが、早慶戦となるとやはり意気込みやチームの団結力が全然違います。最初から慶大キャプテンの山崎選手がフルスロットルで得点をとってきたのですが、こっちはなかなかリズムに乗れずに、津田が少しテンパってボードに直撃したり(笑)。それで2年時の早慶戦はとても悔しい思いをしました。僕は昨年12月の早慶戦には、けがをして出られなかったので、実質1勝1敗みたいなところがあります。今年は5分くらいしか出られないと思うのですが、それでも自分の中で今年の早慶戦に対しては、2年生の時に負けた悔しさと1勝1敗から勝ち越したいという気持ちがあるので、僕の中の早慶戦にかける意気込みというのはすごく大きいです。萩原さんお願いします(笑)。
萩原 僕は早慶戦の試合には出たことがないのですが、ベンチから見ていて思ったのは、早慶戦という試合が、他の大会と違って、技術力やチームの完成度という要素よりも、どれだけその試合にかける熱量があるかが大事だということです。勝った試合はどちらも4年生から1年生まで慶大に勝ちたいという気持ちがあふれているのをすごく感じたので、今年も昨年や一昨年、その前の年にも負けない熱量だけはしっかり持てるように準備していきたいと思っています。
無着 トーナメントが7月に延期にされたことによって、早慶戦に圧勝することがチームとしての短期的な目標なので、今は目の前の慶大に勝つという思いだけで練習をしています。だから今まで以上に(早慶戦に)かける思いは強いのかなと思っています!
――ありがとうございました!
(取材・編集 落合俊)
昨年の早慶戦でシュートを放つ津田選手
◆津田誠人(つだ・まさと)
1999(平11)年5月28日生まれ。193センチ。京都・洛南高出身。スポーツ科学部4年。今年の主将を務め、オフェンスでは中心的な役割を果たす津田選手のラストイヤーに期待です!
◆宮本一樹(みやもと・かずき)
1999(平11)年6月17日生まれ。196センチ。神奈川・桐光学園高出身。スポーツ科学部4年。強いフィジカルと、しなやかなアウトサイドシュートを活かしたオールラウンドなプレーが持ち味です。
◆萩原圭(はぎわら・けい)
1999(平11)年5月18日生まれ。180センチ。東京・早稲田実業高出身。先進理工学部4年。真面目で目の前のことに真摯に取り組む萩原選手の姿勢は、バスケットボール部員からも尊敬されているそうです!
◆曽我部ありす(そがべ・ありす)
2000(平12)年2月12日生まれ。東京・早稲田実業高出身。先進理工学部4年。マネジャーとしてチームを支え、大会の運営にも関わる曽我部選手。早稲田アリーナで行われる今年の早慶戦にかける思いは人一倍大きいです!
◆森一史(もり・かずし)
1997(平9)年6月5日生まれ。東京・都立西高出身。スポーツ科学部4年。学生コーチの森選手。練習や試合で選手を支えています。対談中は明るく楽しそうにチームのことを話してくれました!
◆無着航平(むちゃく・こうへい)
1999(平11)年6月16日生まれ。東京・早大学院高出身。商学部4年。学生コーチとして選手やチームのサポートをする無着選手。対談ではチームの雰囲気や特徴について詳しくお話していただきました!
◆大島岳晃(おおしま・たけあき)
1999(平11)年6月17日生まれ。東京・早稲田実業高出身。教育学部4年。学生トレーナー。選手のケアをして、万全の状態で試合に臨めるようにサポートします。
◆松岡寛子(まつおか・ひろこ)
1999(平11)年7月10日生まれ。埼玉・早大本庄高出身。商学部4年。松岡選手は学連として大会運営を支えています。対談では優しい雰囲気で質問に答えてくれました!