ことしで76回を迎えた早慶定期戦(早慶戦)。これまでの会場だった国立代々木競技場第二体育館の改修に伴い、大田区総合体育館に場所を移して行われた伝統の早慶戦。通算成績は早大が38勝、慶大が37勝。負ければ再び通算成績をイーブンに戻してしまうこととなり、エンジのプライドに懸けて決して負けられない一戦となった。前半は慶大の勢いに圧倒され、両者互角の試合展開となる。しかし第3Qに爆発力を見せ大きく点差をつけ、慶大を突き放す。4年生が、ひたむきで華麗なプレーで観客を大いに盛り上げる見事な試合運びで、84-58でタイムアップ。2年連続の早慶戦勝利をつかみ取った。
「早慶戦は何が起こるか分からない」というF濱田健太主将(社4=福岡第一)、G長谷川暢副将(スポ4=秋田・能代工)の言葉を象徴するかのような第1Q(クオーター)だった。普段の試合とは全く異なる雰囲気の中、ティップオフ。最初の得点は早大が奪う。春シーズンから脅威の得点力でチームをけん引するスコアラー長谷川暢がきょうもチームの初得点を決めた。関東大学リーグでは1部に所属する早大、一方慶大の所属は2部。実力では勝っている相手だったが、早慶戦特有の空気にのまれたか、イージーシュートの取りこぼしなどが見受けられた。慶大はテクニカルなパスで会場の空気を盛り上げていくが、早大はリズムに乗れず4点ビハインドで第2Qを迎える。開始早々に、C富田頼(スポ4=京都・洛南)が強烈なブロックで4年生の意地を見せた。負けじと、この春はケガで出場時間の少なかったG森定隼吾(商4=岡山・倉敷青陵)が粘りのディフェンス、スリーポイントシュート、そして強気のカットインと、攻守で大健闘し、早慶戦という大舞台で輝きを放った。早大はじりじりと点数を積み重ね逆転に成功。第2Q終了間際には長谷川暢が4点プレーで会場を沸かせ、36-30で前半を終える。
攻守に磨きがかかった森定
第3Qは長谷川暢の独壇場だった。ドライブでカットインすれば華麗に敵を交わし、観客をどよめかせレイアップシュートを決める。また、ゴールまでたどり着かずとも確実にバスケットカウントを獲得し、フリースローでも得点を量産。「大勢の観客がいると自分の中でいい気持ちでプレーできる」(長谷川暢)と、観客の大歓声を力に変え、あふれる才能で観衆を魅了した。富田やC小室悠太郎(社2=石川・北陸学院)らインサイド陣も、ボックスアウトでゴール下において慶大に気持ちよくプレーさせず、第3Qは相手の得点をわずか7点に抑えた。28点の大量リードで挑んだ最終Q。早大の勢いは衰えることなく、残り2分30秒にはフルメンバーチェンジで出場機会の少なかった4年生が、コートに立つ。「4年生が出て、良いプレーがたくさんあったということは、試合に出られなくても普段の練習を頑張り続けてきた、ということだと思う」(濱田)と、4年生は人生最後の早慶戦で優秀の美を飾った。最終スコアは84-58で試合終了のブザーが鳴り、選手たちには笑顔が弾けた。
爆発的な得点力を見せた長谷川暢
早慶戦連覇を成し遂げ、よいかたちで春シーズンを終えることができた早大チーム。秋に控えているのは11週間の長丁場となる関東大学リーグ戦。万全の状態でリーグ戦に挑むために、課題を整理しチーム一丸となって鍛錬の夏を乗り越える。そして、「最後、笑って終えることができればいい」(長谷川暢)との言葉通りにシーズンを終えられることに期待したい。
優勝杯を囲む選手たち
(記事 小林理沙子、写真 吉田寛人、森田和磨)
第76回早慶定期戦 | |||||
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1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 | |
早大 |
14 | 22 | 29 | 19 | 84 |
慶大 | 18 | 12 | 7 | 21 | 58 | ◇早大スターティングメンバー◇ |
C#7 宮本一樹(スポ1=神奈川・桐光学園) F#8 津田誠人(スポ1=京都・洛南) G#13 長谷川暢(スポ4=青森・能代工) C#26 富田頼(スポ4=京都・洛南) F#27 濱田健太(社4=福岡第一) |
コメント
F濱田健太主将(社4=福岡第一)
――早慶戦の雰囲気はいかがでしたか
僕は4年目なので、練習中もこれを想定しながらやってきたんですけど、それに前半のまれてしまった部分もあるので、やっぱり想定していても早慶戦には怖いものがあるな、と感じました
――前半のまれてしまった、というのは相手の気迫にでしょうか
向こうの気迫もですし、やっぱり何がっていうのは分からないんですけど、簡単なシュート、普段落とさないようなシュートをポロポロと落としてしまうような場面がよく見受けられたのと、相手もタフなショットを次々と決めてきたというところが、早慶戦の怖いところだな、と感じました。
――後半は早大のペースでしたが、ハーフタイムで何かお話などありましたか
ハーフタイムでっていうよりは、試合を通して調子が上がらない時間も我慢していけばいずれ自分たちの流れが来る、という風に4年生を中心にずっと声をかけ続けていたので、それが第3Q目に来た、という感じですね。
――ご自身のプレーを振り返っていかがでしょうか
僕自身は4回ファウルして、点も決めていないので、プレーのスタッツに残る部分では全く貢献できていないかな、という風に反省はしているんですけど、そうやって上手くいかなかった時に、じゃあ何もなしってなるんじゃなくて下級生やチームに向けて声を掛け続けられたことっていうのは、我慢し続けられたことにつながっていると思うので、その部分では一定のことはできたかな、という感じですね。
――春シーズンを振り返っていかがですか
春は、関東大学選手権に始まって、1回戦で負けてしまったっていうことで、課題だらけで何から解決していくか、というところから始まったんですけど、やっぱり4年生のバスケットへの取り組みっていうところが課題だという風にチームでも挙がったので、4年生のバスケットへの取り組みを見直して、より一層頑張ってきたこと、というのが結構ぼんやりしているかもしれないですけど、細部には表れていて、その姿勢を後輩に見せることができたのがチームとしても少し早慶戦に勝つ、という結果を出せたことにつながっているのではないか、と思います。
――秋の関東大学リーグ戦に向けて夏はどのようなところを強化していきたいですか
課題がかなりたくさんあって、まだ整理もできていないので、どこを解決というのはよく分からないのですが、早慶戦に向けての準備をどんな試合にもしていくことができれば、僕はどのチームとも接戦にはなるし、勝てると思っているので早慶戦に臨んだ過程っていうのを、もう1回大事にしながら夏を過ごしていけば、きっと秋リーグ、そして全日本選手権へと続いていくんじゃないかと思っています。
――4年生にとっては最後の早慶戦でした、いかがでしたか
僕個人というか、4年生としては、普段ベンチに入れない4年生たちをちゃんと点差をつけて試合に出せたっていうことは、僕自身も頑張りましたし、下級生もそういう思いで、試合に取り組んでくれたので、そこが4年生としては嬉しかったかなと思いますし、4年生が出て、良いプレーがたくさんあったということは、試合に出られなくても普段の練習を頑張り続けてきた、ということだと思うので、4年生としては満足な結果です。
G長谷川暢副将(スポ4=秋田・能代工)
――ナイスゲームでした、きょうの試合を振り返っていかがですか
4年目の早慶戦ということで、もちろん負けるわけにはいかないですし、下級生を精神的にも引っ張っていけるように自分が落ち着いてプレーした結果いいゲームをして勝つことができたので良かったです。最後は4年生みんながコートに立つことができてちょっと感動しましたね。
――伝統の早慶戦は普段の試合とは違いますか
早慶戦というのは何が起こるか分からない部分があって、1つのシュートで会場がとても沸いて流れが変わることもあるので、相手が2部のチームであっても関係ないということは練習からみんなで意識してやってきたので良かったかなと思います。
――Bリーグでも経験されていると思いますが、大勢の観客に囲まれてのプレーはいかがでしたか
大勢の観客がいると自分の中でいい気持ちでプレーできますし、決めれば決めるほどみなさんの見方も変わってきて観客を味方につけることもできるので、きょうはいいプレーができて良かったかなと思います。
――きょうはスリーポイントをはじめ、絶好調でしたね
あまり魅せようという気持ちはなくて、いつも通り声を出したりディフェンスを頑張ったりという自分の仕事ができたからこそ結果につながったと思いますし、インサイド陣も体を張ってくれましたし、森定(隼吾、商4=岡山・倉敷青陵)もドライブで勢いをつけてくれたので、思い切ってプレーできました。
――前半は競り合った展開となりました
前半から離せれば良かったんですけど、自分の中では落ち着いていて前半は我慢するしかないなと思っていました。相手は交代するメンバーも少なかったですし、体力的にもこちらに分があると思っていたので、これ以上離されないようにということだけ声をかけてプレーしていました。結果として前半の最後で逆転できたのでいい流れでしたね。
――リーグ戦に向けてはどのように調整していきますか
リーグ戦はチーム力が試されると思うので、ワセダの強みであるローテーションやディフェンスから走るという部分をこの夏で突き詰めていきたいです。春からいいゲームはできているので、実力では負けていないと思いますし、あとはそれをしっかり発揮できるように練習から自分たち4年生が引っ張っていきたいです。
――最後に残りのシーズンに向けて意気込みを聞かせて下さい
自分としても最後のシーズンですし、優勝に近い位置で試合をすることでよりいいプレーもできると思うので、チームを引っ張っていって後輩を育てていけるように、そして最後笑って終えることができればいいですね。