【連載】『令和4年度卒業記念特集』第60回 杉井政樹/日本拳法

日本拳法

【連載】『令和4年度卒業記念特集』第60回 杉井政樹/日本拳法

 ここ2年の唯一の推薦生として日本拳法部の主将を務めあげた杉井政樹(スポ4=関大高)は日本拳法に対してそして早大日本拳法部に対してどのように感じていたのだろうか。

 彼が早稲田大学の日本拳法部を目指した原動力は「憧れ」であったと明かす。中学1年生の時に競技を初めてすぐ顧問の先生にYouTubeで見せてくれた「早稲田優勝P V」に一目惚れし、それ以来いつか自分もここで拳法をしたいと思うようになり、その夢を実現させた。

 一方で4年間ずっと辛かったと打ち明けてくれた。大学に入ってから家庭環境やプライベートの悩みによって部活のことを考える余裕がなかった時期が長く、一時期は「自分が主将をやってもいいのか」「そもそもこの部に残っていていいのか」と考えてしまうほど追い詰められていた。その中でも大きな転換点となったのは2年生ときだという。「沼沢コーチに相談に乗ってもらい、東京に来て初めて他人に自分の家庭環境や悩みを打ち明けました。その際に『まあ、コーチではあるけどシンプルに大学の先輩やからな。なんかあったらいつでも聞くし。』と言っていただいた時に『あ、この人味方や』と久々に人に心を開くことが出来ました。」と当時を振り返ってくれた。さらに「最後までやり続けられたのは紛れもなく同期や後輩、大阪で自分を応援してくれている人たちのおかげ。」と身近な人への感謝の気持ちも忘れない。高校までは周りからも「熱血バカ」と揶揄されるほど、一回思い込んだら納得するまでそれを突き通す性格だったが、部に入ったことでいろんなことを考え、柔軟に意見を変えられるように成長したと自らを省みてくれた。

 

 

 大会で見事な突きを決め、チームを勝利に導いた杉井

 

 そんな中で自分の存在価値を認識できた時の喜びはひとしおだ。試合での勝利はもちろん、チームメイトに「杉井さんじゃないと出来ないです」「さすが杉井だな」などと言ってもらえた時に自分の存在が部の力になれていると感じるそうだ。また早稲田で出来ない取り組みをしている時も例外ではない。「活動方針決めや練習メニュー考案、年間計画作成など、学生を主体に府立で優勝するために必要なことを質の高いレベルで突き詰めていけるのは早稲田しかないと感じています。」と回答してくれた。

 日本拳法と共に歩んできた杉井。それと共に部への愛も人一倍で、部の魅力を問うと「0から優勝を目指していけるところ。つまり良くも悪くも失うものがない状態で目標に向かっていけることは何よりの魅力だと感じている。」と答えてくれる。また、後輩を「俺の何よりの原動力。一生の宝です。」と素直に称えるなど、後輩思いの一面も垣間見せる。10年間という拳法人生で培ったものを今度は社会というステージで発揮してくれると意気込む杉井は、これからも様々な困難に立ち向かい乗り越えてくれるに違いない。

(記事、写真 大日結貴)