ついに対談も最終回、森裕紀(政経4=早稲田渋谷シンガポール)、矢野慶(教4=東京・早実)、茂木蔵人(社4=東京・早実)、田島崇行(教4=埼玉・浦和)、伊東天晴(人4=東京・世田谷学園)ら4年生にお話を伺った。昨年の悔しいベスト8での敗退から早1年。この大会を持って引退される4年生はどのような思いでこの大会を迎えるのか。4年間の思い出とともに意気込み、その胸中に迫った。
※この取材は10月26、29日に行われたものです。
4年間を振り返って
その背中でチームを牽引してきた森
――4年生の視点から見て今年のチームはどのようなチームだと思いますか
森早稲田らしいチームじゃないかなと
矢野 仲は良いんじゃない
森 大エースの先輩が引退されて戦力としてはダウンと言われていたのでたとえ自分たちが狭間の代と呼ばれることになっても頑張って行こうという話はしていました。逆に未経験者でも全国を目指すと言う点では不安もあったんですけど早稲田らしいんじゃないかと思っています。
――代替わりをされるにあたって頑張っていかなきゃいけないといった話し合いをされたのですか
矢野 それは3年生の時にやりました。練習のメニューを作るのは3年生なので1番話し合ったのは2年生のおしまいの頃ですかね
――日本拳法部では3年生が主に仕事をこなすことになっているのですか
矢野 そうですね。なので4年生は名ばかりというか、3年生の仕事ぶりを監督したり、部がうまく回るようにサポートする感じです(笑)。
――今チームとしてがすごく早稲田らしいと言う表現がありましたが、皆さん4年生の代はどのような代だと思いますか。
森 だいぶ変な代だなと思っています。
――変な代、と言いますと
森 多分推薦生がいない、と言う意味とメンバーのキャラが濃いと言うことだと思います。そうですね…例えばコイツ(茂木を指して)はペットボトルで武器を作り始めるし…
茂木 それは理由があったんだよ。
後はよくも悪くも凄く強い代と言うわけではなかったことが大きいと思います。そもそも運動神経が良い人が集まった訳ではない…という所よりもまず運動自体をしてこなかった人間も僕らの代にはいますし。後は日本拳法部は途中入部者も多いんですけど、同じ位退部する人もいるんです。そんな中で僕らの代では2人しかいないので、すごく珍しくて。ずっと一緒に頑張ってきたという意味では結びつきが強いと思います。
矢野 例えば公名士(毛利公名士、商2=東京・つばさ総合)達の代っていっぱい入ってくれたけど、その分やめてしまった人も多かったんで…
――お二人から見て森さんはどんな方ですか
茂木 能力の高い社会不適合者。
矢野 やー…説あるなぁ…
茂木 適合してないって言い切るわけじゃ無いんですけど、例えば3人で会話してるように周りから見えていても、実際は1人で話したいことを話してるんですよ。確固たる自分の世界を持ってるんですよね。僕達がこじ開けて入ることの出来ない世界を持っています。
森 そんな話したいことだけ話してたっけか。
茂木 格闘技か猟銃の話しかしないもん。
森 僕、銃が好きなんですよ。狩りとかする方の銃なんですけど。ちょうど資格も明後日講習会があって、そこから取るつもりです。まぁ純粋にイノシシの肉が美味しいことに気づいたってことと、何か趣味が欲しいなって思った時に銃撃つ機会なんてなかなか無いと思うんでかっこいいなって。
――茂木さんはどんな方ですか
矢野 さっきちょっと変人エピソードが先に出てしまったんですけど、9割以上が辛い、しんどいことを占めている部活生活において明るいキャラクターで空気を良くしてくれてます。
――矢野さんはどんな方でしょうか
森 矢野もまぁ…こいつも頭おかしいんですけど。1年生の時に大怪我してるんですよ、でもまだ部活を続けてて、その上誰よりも練習してるんで。
茂木 一時期本当に練習できてなくて、マネージャーと選手の間みたいな特殊な立場でした。
森 だから、そんなこともあって僕らの代は「とにかく怪我には気を付けよう」って方針だったんですけど、自分が一番怪我をしているっていう(笑)
茂木 医者さんが今バリバリ練習してる矢野見たら腰抜かすと思います。(笑)
矢野 でも今しかできないからね。今できなかったら一生後悔すると思う。
――4年間を一緒に過ごすと最初のイメージと今の人物像が変わってくることもあると思いますけど、変わりましたか
茂木 ここ(茂木、矢野)はもうずっと一緒にいるんでそんなに…あ、でも天晴(伊東天晴、人4=東京・世田谷)はだいぶ変わったかもしれない。
矢野 確かに、絶対辞めちゃうと思ってた。でもどれだけやられても折れない気持ちがあるのって凄いなと思ってます。
――皆さん初心者からのスタートかと思いますが、なぜこの競技を始められたのですか
森 僕は結構おぼえているんですけど、総合格闘技がしたかったんです。元々小学校の時は空手やってて、高校の時はムエタイやってて、大学には日本拳法部があって総合格闘技らしいって話を聞いたのでやってみようと思いました。実は大学入学前から調べていて、入学前から練習にも参加させてもらっていたんです。
茂木 僕らが体験しに来た時には、もうまるで部員のような顔をしてて。ずっと先輩だと思っていたら「1年生だよ」って言われてビックリしました。
茂木 僕は高校では柔道をやっていたんですけど、柔道にはパンチもキックもなかったので色んなことをやってみたいなと。でもサークルとかたくさんある中で、一番自由な格闘技ってここかなって思って。あとは…体育会っていうのが大きかったですね。就活強いんじゃない?みたいな(笑)
――矢野さんはなぜ始められたのですか
矢野 元々スポーツがすごく好きで、格闘技もやってみたかったんだと思います。詳しい動機は忘れてしまったんですけど、自分ならできるんじゃないかって。あと、サークルの雰囲気よりは目標に向かってしっかり取り組む部活の方が自分には合ってるんじゃないかなって思いました
――茂木さんと矢野さんはお互いが拳法部に入ることを知っていたんですか
茂木 いや本当に知らなくて、体験会に来て「おおー!」みたいな
矢野 「入るの?」「多分入る!」みたいなやり取りしてたと思います。
茂木 …というかこんなに人が辞めていくと思っていなくて。(笑)人を殴るのも殴られるのもこんなにキツいんだって。入って初めて知りましたね。
――4年生になって変わったなと思うことはありますか
森 一応今までに比べて周りを見るようになったとは思います。1、2年の時とか本当に先輩は倒す対象みたいな感じだったんで。メンバーに入るためには、倒さなければいけなかったので。でも学年が高くなるとメンバーになるのは実力から見て当たり前というふうに変わってきて、後輩が育たないとチームとしては勝てないっていう所に気づいたらやっぱり周りが見えないといけないなと感じました。
茂木 本当に1年生の頃とか、その日の支度をするために道着を手に取るだけで「ああ、きょうも殴られに行くのか」って思ってしまっていたんですけど、今でも殴られる時は殴られるけどその事に慣れてきた自分もいるので、つまり4年間で日本拳法に慣れたんじゃないなって思うようにしています。
矢野 僕は元々この立場なので、他の人よりは周りを見てきたんじゃないかな、と。だから4年生になって変わったという訳では無いと思います。
4年間を振り返って
明るいキャラクターで部の雰囲気を盛り上げ、試合では柔道の経験を生かし相手を負かす茂木
――4年間で印象に残っている試合はありますか
森 去年の名古屋での個人戦(全国学生拳法個人選手権大会)ですね。相手が関学大の甲斐さん(甲斐隆雅、関学卒)っていう方だったんですけど、内容的には同点での判定負け。かなり対策をしていって、相手の動きの癖とか把握した上で試合に臨んだはずなのにパンチを躱しても組み技で1本取られてしまって。まだまだ自分にもやらなければいけないことがあると気付かされた勝負でした。
茂木 僕はこれ、自分の試合じゃないし橋本さん(橋本周平、H30社卒)の受け売りなんですけど、去年の新人戦で後輩達が優勝した事ですね。ちょうど去年からルールが変わって「これは優勝できるぞ」と言ってた中で、僕らが仕切っている練習の中でそれぞれに細かい技術とかを教えたりしていたので、決勝戦でここで倒したら優勝だっていう時に「やってくれた。教え方間違ってなかったんだ良かった。」って感じでした。
矢野 これは部活を続けようと思ったきっかけでもあるんですけど、2015年の秋の東日本トーナメント、準決勝国士舘大戦ですね。ここでワセダ負けるんですよ。国士舘に負けるっていうのがもう数年ぶりで。実はその前に僕が練習中に頭を怪我してしまって部活としても兢スポから防具練を禁止されてしまったんです。負けた瞬間、ああこれは自分が怪我をしたせいで先輩達が練習できなかったからだってすごく思ってしまって。この借りを返してからじゃないと退部できないって決めたら、いつの間にか4年経っていました。(笑)
――少し前に練習は3年生が仕切る、という内容がありましたが、当時はどのような事を意識していましたか
森 結局、あまり変えることは無かったと思います。とりあえず橋本さんに色々聞きながら…
矢野 今でも残っていてるものもあるけど、つづかなかったものがほとんどだよね
――今のチームとしての状態はいかがですか
森 僕ら前期では全国選抜(全国学生拳法選手権大会)で4位になっていたり、個人戦でも後輩たちが実績を残していたりと、全然悲観することはないと思うので、目標実現に向けて希望は持てると思っています。
茂木 去年は超えると思っています。このまま全員が実力を出し切れば。
――夏合宿はどのような練習をされたのですか
森 いつもとそこまで変わらないですね。負担の練習をみっちりやる、みたいな。
茂木 身体小さい人はご飯を食べるトレーニングをするんですけど。無味無臭のカロリーだけが馬鹿みたいに高い粉があるんですけど、水にドバドバ入れて飲んだり、量を食べたり…
矢野 4年の小川(友太朗、商4=広島・基町)が鬼軍曹で。細い人の隣に行ってものすごく食べさせるんですよ。それも一つの練習なんですけど。
――技術の練習で思い出に残っているものはありますか
森 ミット打ちですね、動き的に激しいものではないんですけど回数を蓄積するとしんどいものがあります。
茂木 グローブ外すと拳のところの皮膚が敗れてくる人もいるくらいです。僕はそれだけは気をつけて対策していました。
矢野 2時間以上かかるんです、こなし切るのに。だから、グローブが真っ赤になる人もいました。
――成長を実感する後輩はいますか
森 みんな全体的にレベルが上がってきていると思います。…照(田中照将、商2=東京・麻布学園)か?元々柔道やってたんですけど、組みがめちゃくちゃ強い訳ではなかったんです。ただパンチを磨いてから、組み技につなげるまでがスムーズになったと思うので。
なんとここでタイムアップ、第2回へ
チームを裏から支える一方、自身も練習を積み重ねてきた矢野
――おふたりは何故この競技を始められたのですか
田嶋この競技は元々知らなかったんですけど格闘技を色々見ている中で雰囲気がいいなって思ったので。
伊東 僕は6年間パソコン研究同好会で全く勉強してこなかったんで、社会に出る前に1度部活を研究してみたかったのと格闘技が好きだったことですね。
――今のワセダとてのチームは、どのような雰囲気ですか
伊東 結構後輩が雰囲気を盛り上げてくれていると思います。
――お二人から見て田島さんはどんな方ですか
矢野 色んな物事を決める時に、格闘技ってことで競技柄ギスギスすることってすごく多いんですけど、そういうのを中和してくれる存在です。
伊東 情に厚いいい奴ですかね。
――伊東さんはどんな方ですか
矢野 曲げない自分の世界を持っています。面白い考えを持っているので、意見を聞くと新しい発見があったりします。
田島 やっぱり運動をずっとやっていなかったのに、何でこいつこんなに頑張れるんだろうって思ってしまうくらい、本人の自覚があるかはわからないんですけどめげない強さがあるんじゃないかと思いました。
矢野 俺4年間で天さんが人の悪口言ってるの聞いたこと無いわ。裏表がないんですね。
伊東 最初慣れない所もあったんですけど先輩同期た限らず人に恵まれましたね。
矢野 (笑)。
矢野 こういうところですよね
――4年間で印象に残っている試合はありますか
田島 自分は2年の時の府立大会ですね。骨折しててて出られなかったんです。練習もできなかったのでおいていかれる気がしてしまって。
伊東 僕は初めての昇段試験で僕とたじ(田島)が不合格だったことですね。
田島 防具がだめだったんだよな。
――春と夏を比較してチームが変わった部分はありますかか
伊東 1年が結構伸びてきたと思います。
田島 今年は大エースの橋本さんが引退されてしまって、きっとみんなも不安だったと思うんですけど、前期は手探りの状態で試合に臨んだり毎日の練習を積んだりしていたんです。でも全国選抜でベスト4に残ったことはすごく自信になって。自分たちは強いんだっていう気持ちで大会に挑めているのが大きいです。
――夏の成果として後輩の成長を挙げていただきましたが、特に誰が、とかはありますか
伊東 みんな満遍なく伸びているんですけど、太田(翔一朗、先理1=愛知・海陽学園)は投げの技とか自分の形ができてきたんじゃないかなと。
田島 僕は2年の田中照将(商2=東京・麻布学園)ですね、今までパンチで取れてなかったんですけど、夏合宿でパンチの練習を結構したのですごく良くなったと思います。彼の組みが生かせる形になってきました。
――今合宿の話が出てきましたが、なにか思い出はありますか
伊東 食トレですね。ずっと身体が大きくならなかったので毎年恒例なんですけどやってます。今までは先輩方が隣に座ってご飯を盛ってきていたんですけど、今年はついに小川が引き継ぎまして…合宿に胃薬持っていってました。
田島 僕は…夜にワード人狼をやったことくらいですかね…修学旅行かって感じですけど。
集大成に向けて
主務としての仕事を全うしながら選手としても活躍した田島
――ここまでの大会を振り返ってみていかがですか
田島 僕はあまり活躍をしてないんですけど思ったよりいい成績なんじゃないかなって。その橋本さんがいなくなってもこれだけ戦えるのは自信になりました。結果は出せているってことが証明だと思います。
伊東結構個人戦で結果残す後輩も多いので総合力的に強くなっていると思います。
――4年間を振り返ってみていかがですか
矢野 僕は早くて、辛くて、長い4年間でした。
伊東 1、2年の時は長かったんですけど3年生の辺りからはあっという間でしたね。
田島 僕は結構、辛い時期と辛くはない時期の差が大きかったので時期によりますね…
学連として仕事をこなし、練習を積んできた伊東
――まずは早慶戦があると思いますが、毎年はどのような戦いになるのでしょうか
田島 毎年は早稲田が勝ちます。あと新人戦では1年生が活躍してくれます。
矢野 次は新人戦もあるしね。レギュラーとメンバー外の境目にいる選手が活躍します。
――では、最後になりますが府立大会への目標をお願いします
矢野 ベスト8で関学と当たるのは、去年の悔しい思いをさせられた相手にリベンジできる機会なので、倒して、4年間の目標だった優勝に向けて明治とどこまで戦えるか。その先はわからないんですけど、1回戦から気を引き締めていきます。
田島 一回戦から気の抜けない戦いになるので気合入れていきたいです。1回戦から身体が固くて動けないとかだとそれこそ死活問題なので。しっかりと。
伊東 初戦から厳しい戦いになることが予想されますし、去年のリベンジ、今年の目標達成のためには負けるわけにはいきません。初戦に勝てば勢いをつけりると思うので頑張りたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 柴田侑佳)
府立大会への意気込みを書いていただきました
◆森裕紀(もり・ひろき)
早稲田渋谷シンガポール出身。政治経済学部4年。1年間、主将として部を引っ張ってきた森選手。どんな戦況においても勝ちに向かって相手を打ち倒す、選手としても、主将としても頼もしい方です。
◆茂木蔵人(もぎ・くらんど)
東京・早実出身。社会科学部4年。非常に明るいキャラクターであることが印象的だった茂木選手。一言一言に人柄がにじみ出ていた対談でした。
◆矢野慶(やの・ちかし)(※写真中央)
東京・早実出身。教育学部4年。怪我もあり、防具を付ける競技だけでなく形の部での活躍も光りました。9月に行われた形の部の大会では見事準優勝。早慶戦では防具をつけての実戦での戦いも披露していた。
◆田島崇行(たじま・たかゆき)(※写真右)
埼玉・浦和高校出身。教育学部4年。主務としてチームを支えた1年間。選手としても試合に臨むなど、幅広い場面での活躍を見せた。対談では常に質問に真摯に答えて下さいました。
◆伊東天晴(いとう・てんせい)(※写真左)
東京・世田谷学園高校出身。人間科学部4年。夏合宿では珍事件に遭遇した模様。非運動部出身ながら、4年間拳法部で努力を重ねてきた、不屈の精神を持つ(茂木選手談)男。