昨年を上回れず、ベスト8に終わる

日本拳法

 ついにこの日がやってきた。日本拳法日本一の大学を決める全日本学生選手権。4年生にとっては最後の大きな大会でもあり、全国の大学がこの試合に照準を合わせ来る、まさに最高峰の舞台だ。昨年、早大は悔しさの残るベスト8。優勝という大きな目標に向けて、早大の戦いが始まった。

 7人による団体戦で4勝した大学が勝利となる今大会。1回戦はシードのため、早大は2回戦から登場した。注目の立ち上がり。先鋒・小枝信介(社4=埼玉・西武文理)が積極的な攻めを見せ圧勝を収めると、ここから早大の猛撃が始まる。初戦を難なく乗り切ると、3回戦もその勢いは止まらない。わずか5人で試合を決するも、その後の2人も自分の拳法を見せつけた。スタミナ不足が心配された田中健博主将(商4=東京・国分寺)も、試合最終盤に寝技で一本。相手に自分の形を作らせることなく、しっかりと勝利をもぎ取った。

果敢に攻めた小枝(右)

 そして迎えた準々決勝。勝てば昨年の成績を上回ることができる試合で対するは強豪・立命大。早大にとって、最初の山場となった。組み合わせが決まったのは約1カ月。その直後から早大は立命大戦での勝利を第一の目標とし、対策を講じてきた。しかし、思うような試合運びができない。先鋒・川向勇志(国教4=広島・Academy for the International Community in Japan高)が開始30秒を絶たずに相手の蹴りで敗れてしまう。次鋒・小枝が白星を取ったものの、後が続かない。強さを誇る相手の前に連敗に終わり、あっという間に瀬戸際に立たされた。しかし、ここで終わらないのが早大の意地。参将・橋本周平(社1=大阪・清風)が素早い動きから一本を立て続けに奪い、2-0で勝利。望みをつないだ早大であったが、反撃もここまで。副将・高橋世駿(社3=東京・早稲田)は粘りを見せたものの、最後は一本を奪われ勝負あり。「勝たなければいけないというプレッシャーに負けてしまいました」(高橋)。立命大の強さに歯が立たず、天を仰いだ。

足を取られる田中(右)

 2、3回戦を乗り切ったものの、準々決勝では強敵に敗れた早大。ことしもベスト4へのカベを越えることはできなかった。「全員が全力を出した結果だと思いますし、やることはやったと思います」(田中)。総力を傾けても優勝という目標は、いまの早大にとっては遠いものであった。しかし、それは伸びしろがあることの裏返し。再び自らの拳法を見つめ直し、一歩ずつ前へと進んでいくしかない。夢である頂へ――。早大の挑戦は続く。

 

(記事 杉田陵也、写真 田中智)

※掲載が遅れてしまい申し訳ありません。

結果

▽男子の部

ベスト8

1回戦 

シードのため試合なし

2回戦 対大阪学院大 5勝1敗1分

○先鋒 小枝信介(社4=千葉・西武文理)

△次鋒 中楯寛人(社3=神奈川・逗子開成)

○参鋒 小川友太朗(商1=広島・基町)

○中堅 橋本周平(社2=大阪・清風)

●参将 川向勇志(国教4=広島・Academy for the International Community in Japan高)

○副将 高橋世駿(社3=東京・早稲田)

○大将 田中健博主将(商4=東京・国分寺)

3回戦 対大阪経済大 6勝1敗

○先鋒 小枝

●次鋒 大栄卓磨(文構3=上智福岡)

○参鋒 小川

○中堅 橋本

○参将 三橋由吾(文2=北海道・札幌北)

○副将 高橋

○大将 田中

準々決勝 対立命大 2勝4敗

●先鋒 川向

○次鋒 小枝

●参鋒 田中

●中堅 小川

○参将 橋本

●副将 高橋

●大将 森裕紀(政経1=早稲田渋谷シンガポール)

コメント

田中健博主将(商4=東京・国分寺)

――ベスト8という結果についていまのお気持ちをお願いします

何も浮かんでこないというのがいまの正直な気持ちですね。何をやり残したのだろうという思いはもちろんあるのですが、真っ白というか本当に何も思い浮かばない状態です。

――前回取材に伺った際に田中さん個人の課題として体力面の補強というお話をお聞きしましたがその点については克服して臨まれましたか

そうですね、体力面は自分のウィークポイントだと思っていたので限界まで対策はしました。

――チームとしての仕上がりも上手くいっていたと思いますか

ベスト8という結果ですから、十分だったとはいえないと結果から見ると思いますね。ただ全員が全力を出した結果だと思いますし、やることはやったと思います。

――3回戦の立命館大戦では大将戦ではなく参鋒戦での出場でしたが

監督がどのような読みをされたのかは確実には分からないのですが、立命館大は大将戦にいつも3年生の赤井選手(太風)を起用しているので僕をその選手と当てないように、僕が真ん中の試合で(勝って)ポイントを取れるようにという作戦だったのではないかなと思います。

――ことし一年はどのような一年でしたか

大ケガをして半年間治療に専念するという時期がありました。その時は本当にもう引退しようかなという思いがあったのですが、最後まで諦めずに一選手としてプレーすることができたのは良かったです。

――主将としてチームを率いてこられましたが

やはりケガをした時期が一番難しかったですね。強いキャプテンこそ、部員がついてくるという思いが自分の中にはあったのですが、それを全く示せず、プレーもできないという状況の中で主将としてチームを引っ張るというのは難しかったです。うちのチームは個人々が考えて部活に取り組んでいるというのが強みだと思うのですが、ただ僕が徹底できなかったのはそのバラバラな考えの中に、全員共通の、全国優勝するという1つの大きい柱というか理念を作ることだったのではないかなと思います。

――ワセダはどのようなチームでしたが

後輩も真剣にチームのことを考えてくれましたし練習外でも一緒に練習したりしました。それをまたマネージャーが支えてくれたりと感謝しても仕切れないですね。また感謝の念と同時に、その行為に結果で返すことが出来なかったという悔しさがありますね。

――今後日本拳法を続けられるご予定はありますか

いや、他の競技に移ろうかなと思っています。

――後輩に対するメッセージをお願いします

部活というのは決して義務ではない活動です。それを敢えてやっているのだから楽しんでそして全力で取り組んでやってほしいと思います。

高橋世駿(社3=東京・早稲田)

――この試合の結果について率直な感想を教えてください

僕が負けられない状況で焦ってしまって、(一本を)取りに行ったところをカウンターで取られて負けてしまいました。4年生と少しでも長く試合をしたかったです。

――この大会に向けてどのような準備をしてきましたか

1カ月ほど前から勝ち上がれば立命大と当たることは分かっていたので、相手を一人一人研究しました。そこで、どのような選手が出てくるのか、どのようなキャラクターなのかをメンバーだけではなく、多くの選手と共有して練習の中から声を掛けてアドバイスをしたりしました。

――副将というポジションについてはどのようにお考えですか

僕はいままで先鋒寄りでの出場が多かったのですが、後ろの方になると勝負を決める場面が多いのでより重要だと思います。1、2年生の時にあまり試合に出ていなかった経験不足が響いたと思います。

――2、3回戦は連勝しましたが、どのような感触でしたか

1回戦の時は自分の持ち味である足が動いていないなと感じていて、自分としては全く良くなかったです。もっと足を動かして相手を翻弄(ほんろう)するような動きができれば良かったなと思います。2回戦は足は動いていましたが、突きを決め切れなかったので自分の撃力不足を感じました。

――3回戦はこまごました動きをする選手との対戦でしたが、そのような選手に対してはどのような練習をしていきたいですか

僕は大きな相手と試合をすることが多くていつもは追い詰められる側だったのですが、これからは自分の力量が上がってきて追い詰める側になると思います。追い詰められる側で普段は練習するのですが、下級生と練習をする時はしっかり自分が追い詰めて一本を取り切るという練習をしたいです。

――準々決勝の立命大戦にはどのような心境で臨みましたか

3敗していて後がない状況で、勝たなければいけないというプレッシャーに負けてしまいました。自分の心の弱さが出てしまったと思います。

――副将というポジションに慣れていなかったというところもあると思います

言い訳してはいけないのですが、いままで重要な場面が回ってくるということがあまりなかったので、認識を改めたいです。これからは自分が中心になるという思いで練習していきたいです。

――最上級生になる上で目標とする選手像を教えてください

自分の一番いいところは足を使うところだと思うので、足をしっかり使いながらも手数を多くして、流れの中でカウンターや自分から攻めて一本が取れる選手になりたいです。