第1回に登場するのは、西村豪朗主務兼アナリスト(法4=東京・早実)、蒲原実希也アナリスト(スポ4=兵庫・神戸)、織田晴帆マネジャー(教4=神奈川・桐蔭学園)、山地広大トレーナー(スポ4=神奈川・大和)の4人。スタッフとしてそれぞれの役割を全うする4人にこれまでの戦いの日々と、全日本大学選手権(全日)への想いを中心に語っていただいた。
※この取材は8月11日に行われたものです。
最高学年のスタッフとして
仕事へのこだわりを語る4人
――最初にアイスブレイクも兼ねて他己紹介をお願いします
蒲原 山地広大、21歳。一応、今年からトレーナーのチーフということで役職がついていますが、下級生の頃から実質的なトレーナーグループのリーダーのような形で、先輩がいる頃からも、トレーナーチーフの役割をしていました。同期で一緒に入ったので、それまでの(山地が入部する前の)ウチのチームのトレーナーがトレーニングなどをどのように行っていたのか分かりませんが、山地が同期で入ってくれたことによって、山地のおかげで変わった(ウォーミング)アップとかトレーニング内容とかもすごく多くて、それも自分たちの選手としての成長に大きな貢献をしてくれているので、すごく助かっています。
山地 主務でアナリストの西村豪朗です。まず主務についてですが、「オフはあっても結局オフじゃない」みたいな感じで、ずっと働いてくれていて、事務作業のところもそうですが、彼が担当ではないところでも監督をしている、などいったところで、スタッフを365日まとめてくれているという存在の主務です。そしてアナリストとしても、彼は元々選手だったということもありますが、戦術面ですとか相手チームの分析ですとかも得意というところでやってくれているというところで、アナリストはみんな「30点」くらいの分析だったらできるので、みんなが文句を言いやすい役割ではありますが、それでも文句を出さないくらいの、質の高い分析をしてくれているので、スタッフとしても「頼もしいな」とすごく思います。
西村 織田晴帆さん、今年のチームでは4年生唯一のマネジャーとして、チーフマネジャーとしてマネジャーをまとめてくれています。主務である私とチーフマネジャーである織田はチームの運営に関して協力してやることが多いですが、私はどちらかというと一人で済ましてしまうタイプですが、織田は本当によく周りが見えていて、指導者の方ですとか学生の選手たちの意見、周りの人との関係を大事にしてくれるマネジャーなので、織田がいるおかげで、私の独壇場になりかねないところをまとめてくれたりですとか、チームの、見えないところで活動してくれている、貢献しているなという印象です。(織田は)会計ですとか広報を中心に見ていますが、会計や広報は周りから見えない部分があったり、努力がチームに伝わりづらい仕事だと思いますが、そういったところでも、日の目を見ることがなくてもこつこつと努力を続けられる人ですし、織田の貢献なしにはチームの運営が上手く回っていない部分が多々あるので、感謝していますし、これからも頼りにしている存在です。
織田 蒲原は、今年からチーフアナリストとして頑張ってくれているのが伝わってきます。いきなり選手とスタッフを兼任することになってからも、両方に力を注いでくれていて、それこそ西村と一緒に、アナリストとしてチームにとってなくてはならない存在として、存在感がすごく強くなったと私は感じています。なので、同じスタッフとしてこれからも頑張っていきたいと思っています。
――仕事をするなかで、どういったところに強いこだわりを持っていますか
山地 トレーナーはほとんど指導者みたいなものなので偉そうになりがちなところもありますが、「一番頑張っているのは選手」ということは絶対に忘れてはいけないところだと思うので、もちろんやってもらわなければいけない以上は強い口調で言いますが、トレーニングをやらせているというよりもやってもらっているという形で、選手の身体を大事にするということを考えています。
蒲原 相手チームの分析をするときなどは、そのチームのデータや試合の動画などをみんなで見ながら、意見を出し合いながら分析をしていきます。さっき山地が言ってくれたこととつながりますが、薄いことを並べても分析資料としては完成する部分はありますが、ただ、時間をかければかけるほど質の高いものは出てくるし、時間と労力をかければ毎週毎週アップグレードできることは分析をしながら自分たちアナリストも感じているので、練習から質を落とさないこと、途中で妥協したりしないことを意識しています。もちろん、みんなで話し合う時間は時間を決めて設けていますが、それ以外でも(動画を)見れば見るほど気づくことがあるので、暇さえあれば試合動画を見られるような、そういったところでも妥協せずにやっています。
織田 私は、先ほど西村が言ったとおり広報や会計を主に担当していて、確認を徹底してミスをしないというのは基本だと言われると思うのですが、間違いがあってはいけないという気持ちを持つことは大切にしています。あとは、私はマネジャーなので何かを決めるときに選手ですとかマネジャー・他のスタッフの視点にも立って考えることは自分の中でも意識しています。完全に選手などの視点に立つことはできませんが、なるべく考えようとはしていて、逆に考えすぎてしまって私の中で決められないこともありますが、そういった場合には西村や他のマネジャーたちが意見を出してくれて、そこで決めることもあるので、その二つは自分の中で意識している部分です。
西村 主務としては、ただ仕事をこなす以上のプラスアルファを生み出したいと思っていて、常に「どこかに改善点がないかな」ですとか、「何か変えたい、変えてやりたい、もっと良くしたい」という思いをもって活動していて、代々引き継がれている仕事をそのままやるだけでも僕の準硬人生は何事もなく終わると思いますが、そうではなく「何か新しいことに挑戦してみたい」というような伸びしろを探しながら、能動的に、主体的に取り組むことがこだわりになると思います。アナリストとしては、先ほど蒲原が言っていたように「妥協しない」ということになると考えていて、弱い自分に負けてしまいそうになることもありますが、自分に勝って100点のものを目指していく、100点を取るために妥協しない、「80点でいいや」と思ってしまったら80点で終わってしまいますが、妥協せずに満点を目指して追求することをこだわってやっています。
スタッフから見る、これまでとこれから
全日予選を振り返る織田マネジャー(左)(右は蒲原アナリスト)
――ここまで、東京六大学春季リーグ戦、全日本出場校選出予選会とありましたが、そのなかで印象に残っている出来事はありますか
山地 僕が印象に残っているのは、合宿中に、主将の春名(春名真平主将、教4=東京・早大学院)がチームの中で怠惰があったことに対して、春名はこれまで他人に対して怒ったりはしなかったのですが、その際には最上級生を全員集めて、説教といえば仰々しいのですが「こうしていこう」というようなミーティングを開いたときに「春名がキャプテンらしくなったな」と、一気に頼もしくなったとは僕だけでなくみんなが思っていたので、そのミーティングはすごく印象に残っています。
蒲原 アナリスト的なところでいうと、あまり良い印象ではありませんが、リーグ戦で最後は本当に負けたら終わりの試合が続いていて、東大戦、慶大戦、明大戦と最後あって、「この試合に勝てばまだ優勝の可能性がある」という試合で、最後の明大2回戦、地道にやられて、まったく打てずに負けて、相手の投手もいい投手が出てくることはわかっていたので、自分たちも力を入れて分析した結果、それでもなす術なく負けてしまって、その試合に負けたことで優勝の可能性がなくなってしまったことに加えて、第3戦で負けると予選会(全日本出場予選会)にも出られない可能性が出てきて、本当に第3戦には勝たないといけないし、かつ(2回戦で)ウチを抑えた明治のピッチャーももう一回出てくるだろうなという予想をしていて、「彼をどう崩すか」という作戦を短時間のうちにチーム内で変えていかなければいけなくなったときに、やはり僕たちも「ある程度しっかりとした分析をチームに提出している」というプライドもありますし、選手側も「頑張ったけど打てなかったんだ」ということで、どちらも本気でやった上でぶつかってしまったことが最後の最後に一つあり、3回戦で勝てたので良かったものの、やはりスタッフも選手も気持ちを入れて「何とか予選会に出て全日(全日本大学選手権)を決めよう」という意識で、本気で野球に取り組めているチームかな、と。最後は意見がぶつかりましたが、目指すところは一緒かな、という気づきがあり、みんなイライラしていましたが、うれしい瞬間だったと思います。
織田 私は全日が決まった予選会での試合で、途中で逆転されたりしてハラハラはしましたが、その時のベンチの雰囲気だったりがやはり良かったといいますか、私がベンチでスコアを付けていて、その場をスコアラーとして見れたのがすごくうれしかったことと、やはり最終学年で全国大会に出られるというのは、マネジャーとしてそこに携われたことも含めてうれしかったので、今までで一番印象に残っています。
西村 私は、この春の関東選手権(関東地区大学選手権)の3回戦になりますかね、中大戦がすごく印象に残っていて、正直、中大は大会の優勝候補で、我々も試合前にいろいろと分析はしますが、手ごたえといいますか自信がなく、口には出しませんでしたが、十中八九負けるだろうな、と思っていました。ただ、私たちがそのことを口に出してしまったら終わりなので、自分たちは「勝てる」とは言いながらも本当に勝てるとは思っていなくて。で試合が始まったらあれよあれよといううちに点を取ってくれて、先発ピッチャーの大澤(龍登、文構3=埼玉・星野)が別人になったかのような、本当に魂の乗ったピッチングを見せてくれて、その時に私はこのチームに夢を見たといいますか、私が思っているよりもはるかに上の、計り知れないような力を持っているチームで、このチームを分析させてくれているということを誇らしく思えて、それが今のモチベーションにもつながっていますし、その試合があったからこそ「このチームなら全国に行っても勝ち上がれるんじゃないか」といいますか「このチームで優勝したい」という思いを強く持つことができたので、その試合は私にとってターニングポイントだったと思います。
――最後に、全日への意気込みと見どころをお願いします
西村 全日本での見どころは、早稲田大学が勝ち上がっている限り、全球場の全試合にウチの部員がいます(笑)。今年の全日本では、データ班、偵察部隊を全試合、全球場に派遣しますが、そんなことをしている大学はおそらくウチだけだと思いますし、偵察部隊がいるだけでも相手チームからしたらプレッシャーになると思うので、そういった面でも他を圧倒して、ウチにしかない部分で日本一を目指して頑張っていきたいと思っているので、注目していただきたいと思っていますし、必ずすべての弱点を暴いてみせたいと意気込んでいます。
山地 ウチのチームの強みは後半の粘りだと思っていて、(全日本出場校選出)予選会の決勝戦の神奈川大戦でもそうですし、リーグ戦でも後半に追い上げて、サヨナラで勝って、という試合や、追い上げられたけどしっかりと逃げ切って、後半勝ち切って、というような試合が結構あって、この代は特にそういった勝ち方をしてきたチームですが、はたから見れば「後半に強いな」で終わってしまいますが、自分たちはしっかりとした根拠があって後半にそういった戦い方をして、根拠がある守り方、根拠がある攻め方というのを、データを用いてやっているので、ただ勢いで勝ってきたわけではないんだということを見てもらいたいです。最後まであきらめない、というような感じですが「早稲田の粘り」に注目してもらいたいと思います。
蒲原 終盤の粘りもそうですが、初回、序盤の集中力もこのチームの強みだと思っていて、初回や序盤で点を入れたり、かなり精度の高い投球、守備が出来たりなど、序盤から相手にあきらめさせるような野球ができるチームだと思っているので、ぜひそこに注目していただけたらと思います。
織田 チーム目標として主将の春名がいつも言っているとおり『日本一』をずっと掲げてきたので、今回その舞台に立てるということで、新チームが始まってからずっと積み重ねてきたものを発揮して全員野球で戦っているところを見てほしいな、と思います。
――ありがとうございました!
(取材 横山勝興、編集 渡邊悠太)
全日での意気込みを一言ずつ書いていただきました!
◆西村豪朗(にしむら・ごお)(※写真中央左)
東京・早実高出身。法学部4年。主務、アナリスト。右投右打。
◆蒲原実希也(かんばら・みきや)(※写真左)
兵庫・神戸高出身。スポーツ科学部4年。捕手、アナリスト。右投左打。
◆織田晴帆(おだ・はるほ)(※写真中央右)
神奈川・桐蔭学園高出身。教育学部4年。マネジャー。
◆山地広大(やまじ・こうだい)
神奈川・大和高出身。スポーツ科学部4年。トレーナー。