秋季リーグ戦開幕前特集『超越』渡部椋雅主将×須能浩太郎副将×関大輝副将

準硬式野球

 4位に終わった東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)からの巻き返しを図る早大。そんなチームの中核を担うのが、渡部椋雅主将(商4=神奈川・桐光学園)、須能浩太郎副将(商4=東京・早実)、関大輝副将(基理4=茨城・江戸川学園取手)だ。今回は、主力選手として、幹部として、チームにとって欠かせない存在である3人に最後のリーグ戦となる東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)への思いを伺った。

※この取材は8月26日に行われたものです。

春季リーグ戦を振り返って

春季リーグ戦を振り返る関副将

――改めて他己紹介という形でお互いのことを紹介してください

 須能は外から見ると適当にやっているように見えるのですが、中身はすごく真面目でちゃんとしていますし、自分で決めたことを最後まで絶対やるのは本当に尊敬していて、自分でやると決めたことを毎日続けているのはすごいと思います。自分は長続きしないので。野球に関しても、2年前に4番を打っていたり、若い時から活躍している選手のひとりでもあるので、頑張ってほしいと思います。

渡部 これ別に紹介じゃないでしょ(笑)。『須能への思い』みたい。(笑)

渡部 関は本当に熱い男で、副将としてチームを引っ張ってくれているなと思います。プレーもそうですし、チームを盛り上げる部分でも早稲田に欠かせない存在の一人だと思っています。

須能 渡部は主将としてチームを引っ張ってくれている存在でもありますし、誰よりも体力があって、一緒にやっていて『誰にも負けない』という気持ちや熱意が伝わってくるのですべてにおいて熱い男だと思います。

――ここからは春季リーグ戦についてお伺いします。チームとして春季リーグ戦を振り返っていただいていかがでしたか

 春季リーグ戦は思うように戦えなかったというのが一番思うところです。春季リーグ戦を振り返ってみても、フルメンバーで戦えた試合が1試合もなく、毎週誰かしらケガでいないといった状況で戦っていて、すごく悔しかったなという気持ちはあります。野球面を見ても、後半になるにつれて当たり前のことができていなかったり、守備も投手陣も崩れてしまったというのが今年の春季リーグ戦の総括だと思います。

須能 結果が出なくて、チームとしても苦しいリーグ戦だったと思います。打つのも投げるのも思うようにいかない中で戦うというのはすごく苦しかったですし、これから先どうなっていくのかなという、少し低迷している時期というか、チームとして悩んでいるリーグ戦だったかなと思っています。

渡部 自分の感情としてはやはり悔しいの一言で、春季リーグ戦に向けて本当にやるべきことを詰めて冬を乗り越えてきたのかというところも自分では感じましたし、結果を見てもそういった悔しさが残る結果となってしまったので、もちろんケガやメンバーの影響はあったかもしれませんが、結果は結果として素直に受け止めて悔しかったなという感じです。

――個人としてはどのようなリーグ戦でしたか

 個人としては良いところで打てなかったのというのが一つと、雰囲気というのもチームが勝てなかった原因ではあるので、雰囲気作りをもう少し頑張れたのではないかというようなやるせなさを感じていました。

須能 始めの法大戦と慶大戦は膝のけがで出られなかったので応援席で見ていて、試合に出たいという思いもありましたし、その一方で実際に試合に出てもあまり活躍できなかったというのがあるので、個人としても悔しさが残るリーグ戦でした。

渡部 自分は2年生の春から第一線でやらせてもらっていて、それを踏まえてみると総合的に見て今年は打撃が良かったのかなっていうふうには思っていますが、守備の面でミスが多く、大きいプレーがあったので、そこは反省しているところです。

――皆さん最上級生となられて幹部としてチーム内での立場も変わってきたと思いますが、これまでと意識の面で違いなどはありましたか

 これまでは下級生だった分、自分の野球に集中すればよかったというか、使ってもらっている以上チームのためにも結果を残すことだけを考えていたのですが、4年生になった今では組織全体を見渡さなければいけないことから考えると、自分が楽しく野球をやるというよりは『勝たなければいけない』、『勝つために何をしようか』というように、チームをまとめないといけないという思いの方が強くなっているので、それが秋季リーグ戦ではプラスに働いてくれればいいなと思います。

須能 下級生の時は自分の中で自由にやっていた部分が強かったのですが、今は幹部学生ということで後輩から試合はもちろん、練習の時から見られている意識といいますか、後輩も自分たちの姿を見て「先輩がこうなっているから」というふうになっていくと思っているので、責任感といいますか、普段から誰かに見られているという意識を持つようになりました。

渡部  関と須能が言ったことと本当に一緒で、(下級生の時は)自分が結果を出すことがチームのためになると思ってやってきましたが、今はそうではなくチーム全体を見なくてはいけないというのが一つです。あとはやはりチーム全体が一つにまとまるためには幹部がしっかりと方向性を示さなければいけないというのは自分でも感じていたので、そういった後輩たちや同期が見ているということを踏まえた上で自分がどういう行動をとるのが良いのかというのを考えるようにはなりました。

――春季リーグ戦で一番記憶に残っている試合とその理由を教えてください

須能 個人の話になってしまうのですが、東大1回戦でケガから復帰して試合に出ることができたという意味ではそれが記憶に残っている試合です。

 自分は法大3回戦です。その試合は最後に清水(佑樹、スポ4=早稲田佐賀)を9回行かせるのか行かせないのかというところであったり、あのような競った、絶対落としたらいけないという場面での戦い方だったりで、最後守りに入ってしまったというように、最後の9回表に早稲田の悪いところが出てしまったという印象がすごく強いです。そういった起用の話や継投の話などは下級生時代は味わってこなくて、それを幹部学生になってみたときにすごく大変な思いをしたのでその試合が印象に残っています。

渡部 自分は立大2回戦ですね。その試合で優勝、全日本大学選手権出場の可能性がほとんど途切れてしまったのは自分にとってはショックでしたし、チームのムードにも隠し切れないものがあったのかなというのはすごく印象に残っています。

笑顔を見せる須能副将

――春季リーグ戦でお互いの活躍を紹介しあってください

 須能難しいぞ(笑)。

渡部 須能難しいな(笑)。

須能 関はチームの要や主軸を担ってくれましたし、関自身は結果に納得できていないのかもしれませんが、チームとしてはやはり関がクリーンアップにいるだけで相手に威圧感を与えると思うので、その意味でも目には見えない、ヒットを打つことが全てではないというような活躍の仕方をしてくれたかなと思います。

 渡部も冒頭で言っていましたが、渡部は春季リーグ戦では本当にバッティングが良くて、下級生の時は下位打線を打っていましたが今ではチームで一番良いバッターではないかと言われるくらい打っているなという印象がありました。まあ守備の面ではいろいろありましたけど。(笑)それにしても、主将として初めてのリーグ戦ということでいろいろ考えなければいけないなか自分のプレーを貫けたというのはすごかったなと思います。

渡部 須能は難しいと言ったのですがそれは嘘で、須能は今年初めてセカンドを守って、慣れないポジションだったのかもしれませんが本当によくやってくれたなと思っています。須能とは二遊間として一緒に守らせてもらったというのもありますし、幹部としてもそうですしプライベートでも仲がいいので、そういう意味では一番二遊間をやりやすい関係だったのかなと思います。ですので、個人的なやりやすさというのもそうですがセカンドをしっかりとそつなくこなしてくれたのは大きなファインプレーだったと思います。

――春季リーグ戦のMVPを選ぶとしたら誰を選びますか

須能 サードの新井(健太、商3=東京・早大学院)が今大会一番伸びたし活躍してくれたのと思います。新井はこれまでも試合に出たりしてはいたのですが、バッティングで常にチームを引っ張っていくというまでの存在ではないかなとチームとしても捉えていました。しかし今回の春季リーグ戦では主軸としてチームに欠かせない存在になってくれたので、やっぱり新井の存在は大きかったと思います。

 自分はMVPは清水だと思っています。あれだけたくさん投げてくれたのもそうですし、プレーだけではなく投手陣をまとめるというすごく大変な任務もあったりするなかで、本当は清水はあそこまで投げなくてもいい立場にあるというか、他の投手をもっと使いたいところだとは思うのですが、他の投手がいなかったために清水にはすごい負担をかけてしまったと思いますし、その中で最後まで試合を作ってくれたという意味で清水がMVPなのかもしれません。

渡部 あえて挙げますが金村(楓香マネジャー、教4=東京・早実)などはすごく頑張ってくれたのかなと思います。春季リーグ戦ではモチベーションビデオを作ってくれるなどしましたし、選手と同じレベルかそれ以上の気持ちでやってくれたのかなと思うので、金村には感謝しています。ですが感謝というかたちでは伝えられないので、こういった場で感謝の意味も込めてMVPにしたいと思います。

――個人として夏の間にどういったことに取り組んでいますか

 この夏は自分の打撃フォームを確立することに重きを置いてやっています。春季リーグ戦では打撃フォームを変えてリーグ戦に臨んだところ結果がついてこなかったので、秋季リーグ戦では爆発できるようにしようということをずっと考えて練習をしています。あとは守備などにおいても外野手の最上級生、このチームの最上級生として日々の声掛けや、外野手全体でのまとまりを持たせることなど、自分のプレー以外のことも考えながらやってきた夏だったと思います。

対談では笑いが起きる場面もあった

――須能さんはどういった夏を過ごしていましたか

渡部 言い方よくないよね(笑)?

須能  就活みたいになってしまいますね(笑)。

 遊んでるみたい(笑)。

須能  この夏は海に行ったりしましたとは言いませんが(笑)、守備よりは打撃に重きを置いて練習したと思います。もちろん、守備で貢献するというのも一つのやり方だとは思うのですが、これまでもどちらかというと打撃で貢献したいと思っていましたので、今は打撃練習に重きを置いてやっています。また、それと並行してウエイトトレーニングも4月から始めていて、ウエイトトレーニングは野球につながらないというような考えがあるかもしれませんが、自分の実感としてはスイングも速くなっていますし、一種のモチベーションにもなっているので、ウエイトトレーニングも頑張っています。

渡部 自分はとにかく実戦をこなすといいますか、いろいろな試合経験だったり実戦経験を積むような練習をひとつひとつ意識しながらやるようにしています。ノック一つをとっても「本当の試合だったら」というように試合をしっかり想定したりするという意識を持ってやっていますね。自分の中では走塁面でもっと先の塁を狙っていこうというような意識を持っていきたいなというふうに思っているので、そういうところは考えながらやっています。

――野球以外の時間はどのように過ごしていますか

須能 筋トレ一本ですね。野球していない時は比較的時間があるので、ほぼ毎日ジムに行ってトレーニングをして食事から変えるなど、少しでも野球に生かせるように結構本気で取り組んでいます。

 部活以外の時間は部員とコミュニケーションをよくとるようにしています。同級生もそうですし、最後の夏なので後輩など今まで野球以外ではあまり関わりがなかった選手などと交流を深めることができているのかなと思います。それがチーム一丸となるうえでの一種の材料になってくれれば嬉しいです。

渡部 最後の秋季リーグ戦なので悔いは残したくないということで、野球に重きを置いて日々を過ごしています。具体的には野球の指導のアルバイトみたいなことも少しやらせてもらっていて、とにかく野球に携わるというか、言語化することでいい勉強になっているので、秋季リーグ戦のためにやらなくていけないことを考えながら生活しています。

――お互いに何か一つ注文をつけるとしたらどういったことを注文したいですか

須能 渡部には一歩踏み出してほしいなと思います。

渡部 変なこと言うなよ(笑)。

須能 渡部は野球でもプライベートでも高いレベルで何事にも取り組んでいると思うのですが、最後勇気がないというか。話を聞く限り自信をもっていいと思うのですが、立ち止まっている時間が長いというか、実力はあるのに一歩踏み出せないところを直してほしいですね。

渡部 関くんは最近物忘れがひどいので、それを直してほしいです。本当に。言ったことをほとんど覚えていないというので、それを直してほしいです。

 須能の意見をもっと聞きたいと思います。メンバー決めもそうですが、須能は決めたことに従ってくれるので、もっと自分の意見を言ってくれてもいいのかなと思います。つまらない話になりましたけど。須能はプライベートでは本当に完璧人間だから。欠如している部分がないというか、本当に何でもできてしまうので、強いて言うならそこですね。

秋季リーグ戦に向けて

秋季リーグ戦への意気込みを語る渡部主将

――秋季リーグ戦で自分のここを見てほしいという注目ポイントをひとつ皆さん挙げてください

須能  秋季リーグ戦では自分の打撃に注目してほしいなと思います。これまではバントをしたり守備で、という話をしていたのですが、自分達の野球人生の最後なので、これまでやってきた自分のバッティングに自信を持って、結果を残せるよう頑張りますのでこれに注目していただければと思います。

 自分は長打力に注目してほしいと思います。これまでは単打が多かったのですが、昨年の冬から打撃フォームを変えて、少しでも長打が増えるような練習をしてきているのでそこをまず見てほしいと思います。

渡部 春にも言ったと思いますが、自分はまず守備の面を見てもらいたいと思います。自分のなかではファインプレーをするよりも当たり前に捕れる球を当たり前に捕るというようにやっていきたいと思っているので、「あまり気にはならなかったけど結果を見たら何かミスないな」というようなところを見てほしいです。あとは、4年生は最後の秋季リーグなので、個人的にはキャプテンとして、チームを引っ張っていけているかはわかりませんがキャプテンシーといったところにも注目してほしいと思います。

――1、2年生の中から一押しの選手を挙げてください

須能 1年生の外野手なのですが松永(賢三、スポ1=東京・早実)という選手がいて、まだリーグ戦には出ていないと思うのですが、最近の練習などを見ている限り打撃の実力を持っていますし、リーグ戦でもここぞというときに出場して活躍してくれるのではないかと思っているので、一押しを挙げるとしたら松永です。

 自分は1年生の久保嶋(真也、社1=神奈川・桐光学園)に注目していて、自分に似ているものを感じるというか、うるさいですし体も大きいですし、同じ左打者というのもあります。リーグ戦の戦いの中では代打起用が大事になってくることはこの4年間見てきて思うので、そういったなかで代打の1人としてチームの雰囲気をよくするというか、チームにとっての追い風をもたらしてくれるのではないかなと思っています。

渡部 やはり渡邉(真之介、社2=早稲田佐賀)は見てほしいと思います。渡邉は春季リーグ戦でも途中から結構スタメンで出たりしていたと思うのですが、走攻守がしっかりとそろった良い選手だと思うので、出番などはまだ決まってはいないのですが、出場機会は絶対あると思うので、注目していただけたらと思います。

――秋季リーグ戦ではチームとしてどういった目標を掲げていますか

須能 やはり、もう優勝するしかないかなとは思っています。春季リーグ戦は4位という不甲斐ない結果に終わってしまったので、夏休みもここまでしっかり練習してきた方だと思いますし、練習した分結果を出さなければいけないと思うので、最後の秋季リーグ戦では優勝するしかないかなと思っています。

 本当に何としても優勝したいという気持ちが一番強いです。下級生時代にここにいる3人は優勝を何回も味わっていますし、それなのに自分たちの代で優勝できないというのはすごく悔しいですし、後輩たちにも優勝することでいいものを与えて、「先輩たちが残してくれたものは大きいな」と思ってもらえると思うので、もちろん自分たちのためでもありますが、後輩たちのためにも優勝経験をさせてあげたいなと思います。

渡部  今2人が言ってくれたように、秋季リーグ戦では優勝を目指して頑張りたいと思っています。加えて、チームが一つになればいいなと思っていて、そこは今の課題でもあります。みんな実力はあると思いますし、みんなが同じ方向を向いてやれば必然的に優勝というのが見えてくると思うので、そういったチームをまとめるマネジメント力といったところを目標に、最終的に「みんなが同じ方向を向けたよね」という話ができるように頑張っていきたいと思います。

――最後に秋季リーグ戦の意気込みをお願いします

須能  これまで4年間の集大成として、チームとして優勝することももちろんですし、個人としても今までで一番の結果を残したいとは思っています。やはり個人的にも最後に悔いがあって終わりたくないので、悔いがないように、結果を残すためにも残りの時間は少ないですが残された時間で必死に練習していきたいと思っています。

 先ほども言ったのですが、やはり先輩たちに残してもらった、先輩たちとの優勝経験を経て自分たちが成長したというのは毎日感じていることなので、まず一番は今までお世話になった先輩たちのためにも絶対優勝したいなと思いますし、須能も言っていましたが、最後の年なので今までの中で一番良い結果で終われるように頑張りたいと思います。

渡部  やはり優勝を目指して全員で頑張っていきたいというのはあるのですが、やはり優勝するということでこの幹部もそうですしこのチームでやってきたことは正しかったということになると思うので、特にチームワークといった早稲田のいいところを見せられるように頑張りたいと思います。自分ができることはプレーとしてもキャプテンとしても限られるかもしれないのですが、できることをすこしずつやって、優勝に向かって頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 渡邊悠太、写真 小山亜美)

◆渡部椋雅(わたべ・りょうが)(※写真中央)

1999(平11)年5月12日生まれ。171センチ、68キロ。神奈川。桐光学園出身。商学部4年。色紙に書いてくださった『頂』は2019(令和元)年、早大を全日本大学選手権(全日)優勝に導いた当時の主将・吉田龍平氏(令2スポ卒)が全日開幕を前にした対談で色紙に書いてくださった言葉でもあります。この縁起の良い言葉を胸に、渡部主将が早大を秋季リーグ戦の『頂』へと導きます!

◆須能浩太郎(すのう・こうたろう) (※写真左)

1999(平11)年4月12日生まれ。174センチ、68キロ。東京・早実出身。商学部4年。最後のリーグ戦ということで、『終わりよければすべてよし』との思いを込めて『有終の美』と書いてくださった須能選手。そんな須能選手ですが、ウエイトトレーニングをしすぎた結果、アルバイトの制服が破けてしまったそう。秋季リーグ戦では須能選手のパワーにも注目です!

◆関大輝(せき・だいき)

1999(平11)年12月27日生まれ。175センチ、76キロ。茨城・江戸川学園取手出身。基幹理工学部4年。「いろいろな人との交流が増えて楽しい夏になった」という関選手。そんな関選手が色紙に書いてくださった『背水の陣』には、チーム状況や春季リーグ戦の結果を踏まえるともう後ろを振り返ることはできない」という思いが込められています。秋季リーグ戦では前を見据えて突き進みます!