【連載】準硬式野球部応援企画『結束』 第5回 田中優×大津杜都×福川千明×三上哲平

準硬式野球

田中優主務(教4=神奈川・桐光学園)

 早大準硬式野球部の、縁の下の力持ち。この言葉通り、田中優主務(教4=神奈川・桐光学園)はチームになくてはならない存在だ。多くの業務をただこなすのではなく、チームメイトとのコミュニケーションも徹底している田中優。さらに、主務としてチームを支える一方で、選手としても日々練習に励んでいる。その勤勉な姿勢から、チームメイトの信頼も厚い。早大準硬を陰から支える田中優の原動力は、一体どこにあるのか。その答えからは、チームの勝利に対する想いが伺えた。

主務として、捕手としてチームを支えている田中優

 1年時から副務として業務のサポートをしていた田中優。膨大な仕事のために練習時間が削られ、当時はいら立ちを覚えることもあったという。そんな彼を後押ししたのは、当時主務を務めていた斎藤隆平(平31スポ卒=新潟明訓)の言葉だった。「選手以外の立場でも部に貢献できる方法が主務だ」。自分がもし失敗をしてしまったら、チームに大きな影響を与えてしまいかねない。一方で、仕事と向かい合う日々は、必ずチームの勝利につながっている、と気付いた瞬間だった。主務に就任した現在は、スタッフ間の連携を強め、迅速な報連相を心がけているそうだ。全ては選手が集中して野球を取り組む環境を整えるため。仲間を想う堅実な仕事ぶりが、チームをより強くしている。

 多くの仕事をこなしている田中優だが、捕手として練習も欠かさない。「声をかけてもらった時のために、常に準備はしています」。練習や試合でミスをしたときは、その後に自主練習を行うことで、徹底的な補強を行った。その努力が実り、3年生になると悲願のメンバー入り。全日本選手権(全日)の準決勝では途中出場を果たし、チームの勝利にも貢献した。少ない出場機会の中で、「わずかでも全日の舞台に出られたこと」に感謝しているという田中優。選手として、チームの勝利に貢献したい。その気持ちを胸に、今年も出場が決定した全日に向けて着々と準備を重ねている。

 チームがより良くなるため、時には厳しく仲間と接してきたという田中優。だが、周りの人への感謝の気持ちを忘れない。辛い時には相談していた先輩方へ。常にチームを想い、共に練習に励んできた同期へ。そして、ここまで野球を続けさせてくれた両親への感謝。「恩返しのために、引退までしっかり大学野球をやり切ります」。みなぎる決意を胸に、仲間と共に全日連覇へ突き進む。

☆田中優って、どんな選手?

 主務としてチームを引っ張る田中優。そんな田中優はどんな選手なのか。大津、福川、三上の3選手が紹介してくれた。

大津 ツンデレです。いじられると喜びます。

福川 先輩がいなくなって寂しそうだったので、常にかわいがっています。主務を引き受けたりと、大変な仕事を進んでやってくれています。

三上 自分の着替え場所を取られると怒ります。

☆試合前のひそかな楽しみ

 準硬で楽しいことは何かを聞くと、田中優は「試合前日にキャッチャー陣でラーメン二郎に行くこと」と答えてくれた。始まりは昨年主将を務めていた吉田龍平(令2スポ卒)の誘い。中村康祐主将(教4=早稲田佐賀)が食べた後好調になったのもあり、今やこれが試合前のルーティンになったのだそうだ。通い続けている内にラーメン二郎へ熱い思いを抱くようになったという田中優。それはチーム内でも定評があり、「ラーメン二郎に対する熱い思いは誰にも負けない」(佐倉弘一、基理4=東京・早実)と言われるほどだ。その魅力は「圧倒的な量の多さと、食べ終わった後の達成感」。ラストイヤーでも、この『試合前のひそかな楽しみ』が田中優を支えてくれるだろう。

(記事 小山亜美、写真 準硬式野球部提供)

大津杜都選手(文構4=東京・宝仙学園)

 「またマウンドに立てる」――。大津杜都(文構4=東京・宝仙学園)は嬉しそうにそう語った。昨年はベンチ外を経験し苦汁をなめたものの、今春行われた関東地区大学選手権(関東大会)では見事ベンチ入りを果たした。最終学年で復活の兆しを見せる男のこれまでに迫る。

3年春も救援として活躍した大津

 レベルの高い環境で野球がしたかったという思いから準硬式野球部に入部したという大津。相手の打撃のリズムを崩す変則投法が買われ、2年生の春季リーグ戦からは背番号『17』をつけ、中継ぎとして活躍した。中でも、甲子園を経験した選手たちを抑えられたことが何よりも嬉しかったという。さらに、全日本選手権を経験したことも大津の自信につながった。

 しかし3年生の夏以降は試合に出場するどころかベンチ入りすらも果たすことができなかった。福川千明(スポ4=兵庫・白陵)や竹本周平(人4=鳥取・米子東)ら同期の活躍に喜びを感じる一方で、ただ見守ることしかできない自分に、やるせなさを感じずにはいられなかった。入部してから初めて味わった挫折。だが、下を向き続けるわけにはいかない。必ずユニフォームを着てマウンドに立ちたい、という思いがより一層強くなった。

 最終学年を迎えて、最初の試合となった関東大会。大津は遂にベンチ入りを果たした。与えられた背番号は『17』。親しみのあるこの背番号をつけて、もう一度マウンドに立つことへ期待を膨らませた。しかし、2年生の頃のように試合に出場できる確証はない。チームを盛り上げるといった、試合に出場せずとも自分にできることを探したという。

 ベンチ外を経験した悔しさを味わい、マウンドに立つことの難しさと同時に誇らしさを感じた大津。「登板の機会があれば少ない球数で、かつ打たせて取るような投球をしたい」と話した。昨シーズンの挫折を乗り越え、迎えた最終学年で花を咲かせることはできるのか。これまでの思いを球に込める。復活した背番号『17』をマウンドでもう一度――。

☆大津杜都って、どんな選手?

 活動自粛期間はビタ止め(捕手が捕球時にミットを動かさずに捕ること)の動画集を見ることにハマっているという大津。そんな大津への思いを、田中優、福川、三上の3選手が教えてくれた。

田中優 大津はたまに何言ってるかわからない時ありますが根は真面目です。

福川 下級生の頃から試合に出ることが多かったのですが、2人揃って調子が良い時期がないので最後くらいは2人でフル回転できればなと思っています。

三上 部室でみんなと着替えながらしゃべるのが印象に残ってます。

(記事 西山綾乃、写真 池田有輝)

福川千明選手(スポ4=兵庫・白陵)

 昨年の全日本大学選手権(全日)決勝。5点をリードし迎えた終盤、3番手・福川千明(スポ4=兵庫・白陵)が3試合連続のマウンドに上がった。7回は相手クリーンアップに対し、連続三振を奪うなどして7球で完封。8回は先頭打者に安打を許したものの、次打者を併殺打に打ち取るなどしてこちらも7球で終わらせた。持ち味の伸びのある速球と落差の大きいフォークボールがさえ渡り、相手に反撃ムードをつくらせない。背番号『11』はその右腕で、35年ぶりの日本一を手繰り寄せた。

全日決勝で登板し好投を披露した福川

 1年時から池田訓久監督(昭60教卒=静岡・浜松商)に「今後の主力になり得る」と期待され、秋の東大1回戦で東京六大学リーグ戦(リーグ戦)デビュー。翌年の春季リーグ戦では6試合に登板するなど、順調に主力投手への道を歩んでいた。しかし、夏の清瀬杯全日本大学選抜大会ではまさかのメンバー落ち。秋季リーグ戦でも中々ベンチにすら入ることができず、苦しい日々が続いた。その後の木村杯秋季新人戦(秋季新人戦)では先発として2勝を挙げて復調の兆しを見せるが、冬を越えて迎えた関東地区大学選手権(関東大会)でまたもメンバー落ち。春季リーグ戦でも1試合のみの登板にとどまり、充実した投手陣の中に埋もれてしまっていた。

 それでも、モチベーションを落とすことなく全日に向けて準備を重ねた福川。その努力が実り、夏のオープン戦では好投を連発して見事にメンバー入りを果たす。迎えた大舞台でも持ち味を存分に発揮し、5試合中4試合に登板して2勝を挙げる大車輪の活躍を見せた。しかし直後の秋季リーグ戦、直球が思うように走らない。東大1回戦で救援に失敗すると、他の投手に持ち場を奪われてしまった。そんな中迎えた第3カード、慶大2回戦。それまで先発を務めていた投手の不調により、福川はリーグ戦初先発の舞台を得る。前週の立大戦を落とした早大にとって、負ければ優勝が遠のく大事な試合。しかもこの日は母・美幸さんの誕生日でもあった。「とにかく勝ちたい」――。しかし、思いは届かず。3回2失点で負け投手となり、その後の試合で福川が登板することは一度もなかった。

 「次は絶対にやり返したい」。強い思いを持って迎えるラストイヤーに、福川は選手間の投票で投手リーダーに就任した。その信頼の裏にあるのは高い人間性だろう。秋季新人戦で好投した時、全日で優勝を果たした時、そしてこの特集のためにアンケートへの回答をお願いした時も、語るのは常に周囲への感謝だった。「活躍できたのは、自分のことを気にしてくれる周りの人たちのおかげ」。「自分もこれから人間として成長していきたい」。心からそう感じているからこそ、すぐに言葉にして伝えることができるのだ。中でも特に強く持っているのは、練習中の事故で競技の継続が困難となってしまった片岡遼太朗投手コーチ(商4=東京・早実)への感謝だという。「コーチとしてすごく頑張ってくれている。支えてくれる人たちの分までしっかり試合で結果を出したい」。3月の関東大会ではメンバー落ちの憂き目にあったが、新型コロナウイルスの影響による活動休止前は復調の兆しを見せていた。「全日ではリリーフの第1線としてフル回転し、無失点に抑えながらイニング数を稼ぎたい」。来るべき大舞台で躍動する姿を思い描き、今できる最善の準備を重ねていく。

☆福川千明って、どんな選手?

 仲のいい同期と共に「日本一という結果を出して、ビールかけをして終わりたい」と話してくれた福川。同期である田中優、福川、三上の3選手が、福川のエピソードを紹介してくれた。

田中優 反応が面白いのでよく絡みにいきます。よく色んな相談にのってもらってます。

大津 福川君と一緒に竹本君をいじっています笑

三上 部室でみんなと着替えながらしゃべるのが印象に残ってます。

(記事、写真 池田有輝)

三上哲平選手(商4=埼玉・早大本庄)

 いつも優しく話しかけてくれると、後輩からも頼りにされる存在。それは三上哲平(商4=埼玉・早大本庄)だ。2軍の主将を任せれられた三上は、「2軍を盛り上げて、1軍にも良い影響を与えられるように」と、チーム全体のことを考え行動している。「技術力に関係なく、皆と平等に接すること」を心がけている三上。年齢関係なく、誰にでも優しくする彼に、信頼を置くチームメイトは多いことだろう。

第1回のかっこいい選手ランキングで1位に輝いた三上

 「サークルよりも高いレベルで野球を」と準硬式野球部に入部した三上は、普段の練習も常に全力プレーで臨む。三上の練習に対する姿勢は、チームメイトに刺激を与えている。現在コロナウイルスの影響で部活動停止となっているが、自宅でのトレー二ングに励んでいるそうだ。チームメイトからもかっこいいと評される三上は、自身のアピールポイントは「元気と笑顔」、と答えてくれた。また、目標とする選手に先輩の鈴木涼馬(令元商卒)を挙げている。「(鈴木さんのように)打席に立つだけで、皆をワクワクさせる選手になりたい」と、一振りでチームを盛り上げるバッティングをするべく、努力を続けている。

 準硬式野球部に入って良かったと感じる瞬間を伺うと、「同期のみんなと飲み会して盛り上がった時」と、答えてくれた。同期とはここまで長い時間を一緒に過ごし、苦楽を共にしてきた。そんな仲間とプライベートで過ごす時間も大好きだという三上。合宿では福本恭介(教4=石川・小松)副主将に起こったハプニングが印象に残っているという。また、ゲームが得意で、「1軍の同期にはプレーでは勝てないが、野球ゲームでは負けない」とのことだ。

 昨年優勝を果たした全日本選手権(全日)の出場権を獲得。再び全日の舞台に、早大準硬式野球部は挑む。今年は、三上にとってラストイヤーだ。「ベンチ入りして、どんな形であれ全日二連覇に貢献したい。」普段は2軍主将としてチームを支える三上だが、1軍の座は譲れない。「全日二連覇して、みんなで笑顔で引退したい!」。大好きな同期と共に、二連覇という偉業に向けて。今日も三上は努力を積み重ねる。

☆三上哲平って、どんな選手?

 第1回ではかっこいい選手ランキング1位に輝いた三上。そんな三上への思いを、田中優、大津、福川の3選手が教えてくれた。

田中優 三上は外も中も完璧です。本当に羨ましいです。

大津 とってもカッコいいです。そして、統率力があります。彼女にして下さい。

福川 声かけが本当に上手で見習いたいなと思います。

(記事 樋本岳、写真 準硬式野球部提供)