【連載】準硬式野球部応援企画『結束』 第4回 後藤彩花×板倉里紗×高垣有希

準硬式野球

後藤彩花チーフマネージャー(文4=東京・三輪田学園)

 100人超の部員を抱える準硬式野球部。そこには、部員たちを支えるマネージャーの存在がある。中でも後藤彩花(文4=東京・三輪田学園)はその統括をするチーフマネージャーを務めている。自分の仕事だけではなく、他のマネージャーにも助言をすることで体制を強化しているそうだ。他にも東京六大学連盟や早大体育会など、非常に多くの仕事をこなしている後藤。その責任感の強さはもちろん、選手への細やかな気遣いも忘れない彼女への、仲間達の信頼は厚い。この3年間の経験を通して何を得て、この先何を見据えているのか。そこには早大準硬への熱い思いが映し出されていた。

チーフとしてスタッフをまとめる後藤

 中学・高校時代はバドミントン部に所属していた後藤。選手として活動をする中で、努力が報われずに苦しい思いをする時もあったという。スポーツの世界は努力の量だけではどうにもならないことがある。だが、その努力を見てくれている誰かの存在がとても大きいものなのではないか。そんな大きな気付きを得た6年間だった。この経験から、大学では「誰かにとって『過程を見てくれる人』になりたい」という思いでマネージャーという立場を選択した。その後は、「担当する仕事を全力でやっていたら、気づけば最上級生になっていました」と振り返る後藤。選手の努力の過程を見て、自分が何をすべきかを考える姿勢は今も変わらず持っている。

 常にチームのために考え、働いている後藤だが、入部以来悩む時期が続いたという。与えられた仕事をこなす毎日の中で、自分の存在意義に疑問を感じていたという後藤。時には退部を考えたこともあったそうだ。そんな後藤を救ってくれたのは、同期からの言葉だった。「自分の代が勝った時、絶対にやって良かったって思えるよ!と声をかけてもらいました」。チームが負けそうな状況でも、マネージャーという立場ではプレーで貢献することができない。その悔しさから自分の存在意義に疑問を感じ始めていた後藤だったが、この言葉をきっかけに前を向くことができたのだ。

 「チーム全体にとってより良い組織になるため、主体的に意見を言えるマネージャー」。目指しているマネージャー像を聞くと、後藤はこう答えた。常に自分にしかできない、より良いバックアップを求めて仕事をしているという後藤。そこには、「仕事を与えられるのを待ち、評価されるのを待つ」というかつての姿はもうない。日本一の名にふさわしいマネージャー体制を目指して。仲間の笑顔に支えられ、後藤はこれからも早稲田を支え続ける。

☆後藤彩花の素顔とは?

 チーフマネージャーとしてスタッフ陣をまとめている後藤。そんな後藤のエピソードを、板倉、高垣の2人に伺った。

板倉 同期マネージャーとしてたくさん助け合ってきました。楽しいことも辛いことも共有してきた戦友のような存在です。プライベートでは部活終わりに美味しいものを食べに行くのが楽しみです。

高垣 彩花は責任感が強くてしっかりしていて、最後まで物事をやり遂げるすごく頑張り屋さんです。そんな姿を近くで見てきて本当にすごいなと思います。一緒に遊んだ時とかもお店の予約からなにから全部やってくれる本当に頼りなる存在です。悩んだり辛いことがあった時は話を聞いてもらって常に支えられてきました。私の家でお泊まりをした時、背中にでっかくトマト魂って書かれたTシャツを着てたのは本当に面白かったです笑

(記事 小山亜美、写真 準硬式野球部提供)

板倉里紗マネージャー(教4=神奈川・鎌倉女学院)

 「ただのお手伝いさん」にはなりたくない。板倉里紗(教4=神奈川・鎌倉女学院)の決意には、「少しでもチームに良い影響を与えよう」とするひたむきさがにじんでいた。入部のきっかけは、同じ教育学部で入学当初から知り合いだった同期の福島英之(教4=埼玉・早大本庄)の紹介。マネージャーとして練習や試合のサポートはもちろん、最終学年となる今年は会計も担当している。

勝利を呼び込む『ラッキーガール』とも言われる板倉

 マネージャーの仕事は普段スポットライトが当たらない。そのため下級生時代は、自分がチームにいる意味を見出せずに悩んだこともあった。しかし、チームが勝利したときの喜びに加えて、共に頑張るマネージャーの姿がモチベーションになった。彼女たちの細やかな気遣いと、先を見通す力を尊敬していると語った板倉。この思いに、今も変わらず支えられているそうだ。終始、自分を決して誇ろうとしない謙虚さが垣間見えた。

 準硬式野球部は部活でもプライベートでも、「個性が強いのに仲が良い」。板倉は、一人一人の個性は豊かだが、それをつぶさずに連帯できるところが自慢だと話す。そして、チームメイトと関わる際に常に感じるこの長所こそが、唯一無二の魅力であろう。楽しいことも辛いことも共有してきた『戦友』のような仲間たち。彼らと部活終わりにおいしいものを食べに行くのが至福のひとときだ。

 昨年は板倉にとって、印象深い一年だった。春リーグ最後の法大戦で、初めて優勝の瞬間をベンチから観ることができた経験を皮切りに、様々な経験をすることになる。最たる例は、全日本大学選手権(全日)だ。特筆すべきは、応援席にいる仲間と選手一人一人へ毎試合届けた応援歌。この時の一体感が功を奏したのか、数々のピンチを乗り越えて決勝に駒を進め、見事優勝。振り返って、「圧巻でした!一生忘れません」と言わしめる最高の思い出となった。

 好きな言葉には「感謝」を挙げた板倉。この3年間を「優しい先輩や助け合うことができる同期、頼れる後輩に恵まれた」と振り返る。現在、コロナウイルスの影響で部活動自粛を余儀なくされているが、運営や会計の仕事でチームに貢献。全日連覇を目標に据えて準備を怠らない。さあ、「感謝」を形に。板倉をはじめとするスタッフに支えられたチームの、集大成となる快進撃が待たれる。

☆板倉里紗の素顔とは?

 感謝の気持ちを忘れず、常に謙虚な姿勢で仕事に向かう板倉。そんな板倉のエピソードを後藤、高垣の2人に伺った。

後藤 一緒にいる時間が長いので、選びきれないのですが…。 2人で部活終わりに美味しいものをたくさん食べに行っています笑。お互いグルメに目がないので、部活で今日がんばったね!という時や、何か気分が落ち込むことがあった時、「もう今日は美味しいもの食べちゃおう!」と笑。真面目な話もたくさんしますが、美味しいものを食べながら他愛もない話で笑っていると本当に元気になれます!

高垣 雰囲気はふわっとしているのですが、しっかりした芯のある子です。本当に優しくて気配りが上手で仕事も淡々とこなしていてすごく感謝してます。一昨年清瀬杯で北海道に行きました。その時、2人して押しに負けて、人力車に乗って大金を使っちゃったのが懐かしいです笑。めっちゃいい写真も撮れて、楽しかったのでいい思い出です。

(記事 手代木慶、写真 準硬式野球部提供)

高垣有希学生トレーナー(スポ4=大阪・早稲田摂陵)

 出場している選手だけではなく、頼れるスタッフ陣の存在もチームの強さを決定づける。その中でも、選手のトレーニング作成や怪我の応急処置をするだけではなく、部員に対して親身になって寄り添うトレーナーはチームに欠かせない。高校時代、野球部のマネージャーをしていた高垣有希(スポ4=大阪・早稲田摂陵)は、そんなトレーナーの姿に憧れをもっていた。「選手により近い立場で選手をサポートしたい、力になりたい」。この想いから、コンディショニングを学ぶためにスポーツ科学部に進学を決めた高垣。トレーナーとして早大準硬に入部することを決意した。

高垣(左)と、その憧れのトレーナー像として挙げる板崎

 入部して出会ったのは、個性豊かだが頼りになる部員たち。中でも、先輩の板崎悠馬(令元スポ卒=愛知・海陽中教高)は、高垣にとってトレーナーの鏡だった。自身の選手経験を生かし、部員に技術や戦術のアドバイスをする姿。チームの雰囲気を見て、叱咤(しった)激励を飛ばす姿。そして、誰よりもチームのことを考えて仕事をする姿。「板崎さんのように選手に信頼されてチームの力になれるトレーナーになりたい」。この気持ちこそが、高垣のトレーナーとしての原点となったのである。

 そんな高垣が選手をサポートする上で心がけているのは、「シーズンや選手の状態に合わせて適切なトレーニングを実施すること」だ。これまで積み重ねてきた練習はもちろん、試合までの調整の仕方は選手によって異なる。全ての選手がベストコンディションで試合に臨めるよう、それぞれに合ったトレーニングを組み立てていく。そして、選手に寄り添う気持ちも忘れてはいない。時にきついトレーニングを課すこともあるが、メニューの意図をしっかりと伝えて理解してもらう。信頼関係の重要性をわかっている高垣だからこそ、選手への些細な気遣いも怠らない。皆が納得の上で、いかに前向きに取り組んでもらうかを大切にしているのだ。

 「ただ、準硬が好きなだけです」。仕事を頑張るモチベーションを聞くと、高垣はこう答えた。いつもチームを支えている高垣だが、楽しそうに野球をする選手達に支えられることも多いそうだ。自分を頼ってくれる仲間達、練習後の他愛もないが楽しい時間、選手からかけられる感謝の言葉。それら全てが高垣の準硬に対する熱い思いを形作っていた。「みんな一丸となって悔いなく笑顔でやりきりたい」。今日も明るく、元気に、自分らしく。高垣のラストイヤーはまだ、始まったばかりだ。

☆高垣有希の素顔とは?

 どんな時もチームのために仕事をしてくれている同期マネージャーの2人には感謝と尊敬の念があると話す高垣。その同期マネージャーである、板倉と後藤の2人が、高垣のエピソードを教えてくれた。

板倉 清瀬杯のときの北海道遠征が思い出深いです。予備日があったので2人で小樽観光しました。人力車に乗った事をよく覚えてます。

後藤 去年の私の誕生日に、同期スタッフ3人の写真をもとに似顔絵師さんが描いてくれた似顔絵をくれたのが、本当に嬉しかったです。 選手の写真を撮る事は多いのですが、スタッフ3人の写真は滅多にないので、とても嬉しく、ずっと自分の部屋に飾っています!

(記事 小山亜美、写真 準硬式野球部提供)