課題と収穫見えた新人戦。成長の糧にできるか

準硬式野球
準決勝
慶大
早大
(早)●田中爽、渋谷、今井-浅野
♢(二塁打)鷲田(6裏)

 「これで負けたからといってどうなるわけでもないし、4年になった時に優勝できればいい。きょうはいい経験になったと思うから、この反省をこれからに生かしていこう」。試合後、福本恭介新人監督(教3=石川・小松)は下級生たちにこう語り掛けた。2年生以下のメンバーで行われた木村杯春季新人戦(春季新人戦)。5大会連続で決勝に進出していた早大だったが、この日は慶大に力負けを喫した。

 早大のバッテリーは田中爽稀(法2=神奈川・柏陽)と浅野崇太郎(スポ1=茨城・緑岡)。田中爽は東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)優勝に大きく貢献した好投手。一方の浅野は本来捕手を務める予定だった渡部椋雅(商2=神奈川・桐光学園)がけがで戦線を離脱したため、急きょ正捕手に抜てきされた。「渡部さんのためにも自分のできることをとにかく全力で」(浅野)。このバッテリーはまず1回を三者連続三振に切って取ると、2回も3人で抑えて流れを引き寄せる。するとその裏、打線が2死二塁から敵失で1点を先制。早大が試合の主導権を握ったかに思われた。

初の公式戦でスタメンマスクを被った浅野。渡部を尊敬しているそうだ

 しかし直後の3回表、歯車が狂い始める。二塁手・篠原大成(教2=大阪・早稲田摂陵)の失策で先頭打者の出塁を許すと、その後2死二塁に。ここで相手打者の当たりがセンター前にポトリと落ちる不運な安打となり、同点に追いつかれてしまった。その後田中爽は4回に3連打で勝ち越しを許すと、6回にも3本の安打で2失点。「法大2回戦の時のようなボールのキレがなかった」(田中爽)。春季リーグ戦の優勝決定戦で見せた快投を再現することはできなかった。

6回に適時打を許し、悔しい表情の田中爽

 反撃したい打線は6回、新人主将を務める2番・下久保尚哉(商2=大阪・早稲田摂陵)がこの日2本目の安打で出塁すると、4番・関大輝(基理2=茨城・江戸川学園取手)の安打と5番・篠原の犠打で2死二、三塁の好機を迎える。ここで代打・鷲田拓未(スポ1=神奈川・日大高)が4球目の内角直球を振り抜き、打球は左翼線への二塁打に。これで二者が生還し、再び点差を1点に戻した。7回からは2番手・渋谷隆太(商1=茨城・江戸川学園取手)がマウンドへ。初の公式戦ながら堂々としたプレートさばきを見せ、2イニング目まで1人の走者も許さなかった。

2点二塁打を放った鷲田

 好投に応えたい打線は8回、関の四球と暴投で2死二塁と同点の好機を迎える。ここで打席にはまたも鷲田。起死回生の一撃に期待が高まったが、ここは捕ゴロに倒れてしまった。すると9回、高校時代から痛めているという、渋谷のひじが限界を迎える。2つの四球と安打で1死満塁とされ、野選と暴投で2点を追加されてしまったのだ。さらに死球で再び満塁となったところで渋谷は降板。代わってけがから復帰した今井佑哉(社2=東京・早実)が昨年の秋季新人戦ぶりに公式戦のマウンドに上がった。しかし今井も2死後に暴投。ここまで吉田龍平主将(スポ4=東京・小山台)をほうふつとさせるようなボディーストップを見せていた浅野も、この回は止めきることができなかった。その裏打線は走者を出すことができず、7-3で試合終了。悔しい敗戦となってしまった。

 下久保は敗因の1つについて、「慶応はみんなで一つになって声を出していたのに対して、早稲田は雰囲気が良くなかった」と語った。春季リーグ戦を制したAチームのベンチでは全員で声出しをする姿が見られていたが、きょうのベンチはそうもいかず。途中下久保が全員を集めて「雰囲気を上げよう」という話をしていたが、それほど状況は改善されなかった。また、下久保は「早稲田は簡単にフライを上げていて、その淡白すぎる攻撃も敗因になってしまった」と振り返る。Aチームも簡単にフライを上げていた試合では勝てていない。低い打球を打つ意識の重要性が、改めて浮き彫りとなっただろう。冒頭の福本新人監督の言葉にもある通り、この反省をどう次に生かせるかが重要になってくるだろう。

攻守で存在感を示した新井

 一方で池田訓久監督(昭60教卒=静岡・浜松商)が「期待の持てる選手が1、2名いた」と語るように、収穫もあったのが今大会だ。遊撃を守った新井健太(商1=東京・早大学院)は攻守ともに高い能力を見せ、これには内野手リーダーの石田直惇(人4=広島城北)も「Aチームの試合でも活躍できるのではないか」と期待を寄せる。また、今井の復活もチームにとってうれしいニュースだ。今井はいわゆる『清宮世代』の早実高でベンチ入りを果たしていた好投手で、昨年の秋季リーグ戦から登板機会を得ていた。肩のけがによってこの春季リーグ戦では登板できなかったが、ここから調子を上げられれば、全国の舞台で今井のダイナミックな投球が見られるかもしれない。

 リーグ戦で主力を担う選手も多く、将来有望なこの世代。この春季新人戦での経験を生かし、さらなる成長を目指してほしい。

(記事、写真 池田有輝)

コメント

池田訓久監督(昭60教卒=静岡・浜松商)

――きょうの試合を全体的に振り返っていかがですか

練習不足というのが率直な感想ですね。当たり前のことですが、春季リーグ戦(東京六大学春季リーグ戦)で勝つために主力中心で練習しているので。私が就任して今年で5年目なのですが、過去4年間は春季リーグ戦で優勝できなかったので新人戦に対しての練習をリーグ戦終了直後からできていました。しかし今年はそれができない。やはり6月9日の東洋戦(全日本出場予選会1次予選)に勝たないと全日(全日本大学選手権)には出られないので。そこで勝つために今週もレギュラーチームを中心に練習していましたので、色々な意味で準備が足りなかったというのが率直な感想としてありますね。

――特に課題となったのはどういった部分でしょうか

ピッチャーはみんな持ち味をそれなりに出していて良かったと思います。最初に投げた田中(爽稀、法2=神奈川・柏陽)もそうですし、後に投げた渋谷(隆太、商1=茨城・江戸川学園取手)も今井(佑哉、社2=東京・早実)も。あとはやはり渡部(椋雅、商2=神奈川・桐光学園)がけがをしてしまったので出られなくて、代わって1年生の浅野(崇太郎、スポ1=茨城・緑岡)が入りました。彼はなかなか酷な立場できょうはやってもらったかなと思います。やはりキャッチャーは要なので、『チームとしてのキャッチャー』の役割があります。試合をコントロールするのもキャッチャーの大きな役割ですし、ピッチャーのリードもありますし。そういう意味では少し荷が重かったのかなと思います。今の吉田キャプテン(龍平、スポ4=東京・小山台)が1年生から正捕手をやっているので、そういう意味では次のキャッチャーを育成するというのが1つの課題かなと。ずっと心の中では思っていたのですが、それがこの新人戦で現実として表れたかなというところです。あとは『勝つための意識』っていうんですかね。例えばスコアリングポジションにランナーを進めるなど、いかにホームに近づける努力をしたかということです。要は、二塁にいるよりも三塁にいる方が得点のチャンスは増えるわけです。相手のエラーでも点が入りますし。でも二塁では入らないわけです。勝つための野球というのを一人一人が考えられていなかったというところがこれからの課題です。まだ1,2年生なので、先輩と一緒に練習したり先輩の試合を見たりしていく中でだんだん理解をしていくだろうという期待をしています。まだまだ先が長いので。

――チームとしては次週に東洋大戦が控えていますが、それに向けても一言お願いします

我々は我々の野球をする、ピッチャーがしっかり投げてゲームをつくるということですね。バッティングはやはりその時になってみないとわからないので、そんなに点数が取れなくても勝ち切る野球が大事です。足を絡めたり、小技を確実に決めて得点につなげるといったことができれば結果はついてくると思いますので、その辺は残り1週間で確認をしてほしいなと思います。あとはきょうの新人戦で割と期待の持てる選手が1、2名いたので、そういう選手も入れながら、次の東洋戦、そして全日でなんとしても勝てるようにチーム作りをしていきたいなと思っています。

福本恭介新人監督(教3=石川・小松)

――きょうの試合を全体的に振り返っていかがでしたか

(春季)リーグ戦で好投していた田中爽稀がきょう先発ということで、ある程度ちゃんと放ってくれるという計算でした。結果放ってくれたはくれたのですが…。ビハインドも想定はしていましたが、あれだけ押される展開になることまでは考え切れていませんでした。

――打線になかなか当たりが出ませんでしたが、振り返っていかがですか

相手のピッチャーのデータはありませんでしたが、試合の中で持ち球がストレート、スライダー、チェンジアップだというのはわかっていました。その中で狙い球を絞り切れなくて、逆に相手は(田中)爽稀の真っすぐを狙い打ちしてきたというところで差が出てしまったかなと思います。

――救援登板した渋谷投手、今井投手に関してはいかがですか

今井は本来であれば明日先発の予定で、渋谷はきょうあすどちらとも救援待機の予定でした。渋谷がひじを痛めているという情報を僕らの中で共有できていなくて、それで無理していかせた結果ああいうかたちになってしまったので、情報の管理不足を感じました。

――今後に向けて、試合後のミーティングでは下級生たちにどういったお話をされましたか

「これで負けたからといってどうなるわけでもないし、4年になった時に優勝できればいい。きょうはいい経験になったと思うから、この反省をこれからに生かしていこう」という話をしました。

下久保尚哉新人主将(商2=大阪・早稲田摂陵)

――きょうの試合を全体的に振り返っていかがですか

きょうの敗因は雰囲気だったと思います。ベンチに下がってから感じたのですが、慶応はみんなで一つになって声を出していたのに対して、早稲田は雰囲気が良くなかったのでそこが敗因の1つかなと思います。また攻撃に関しても、慶応はゴロを打つ意識が強い中で早稲田は簡単にフライを上げていて、その淡白すぎる攻撃も敗因になってしまったと思います。

――今後2年生以下で課題になってくるのはどういった部分でしょうか

先ほども言ったように雰囲気だと思います。やはり雰囲気が良くないとおのずと結果にも影響してくると思うので。まずは雰囲気をしっかりつくって、半年後の新人戦で雰囲気を上げて結果を残し、優勝できるようにしていきたいと思います。

――ご自身はきょう2安打でしたが、ご自身の成績についてはいかがですか

自分の結果としては満足しています。あそこ(2本目の安打の後)で鷲田がタイムリーを打ってくれて、点に絡めるような活躍ができたのでそこに関しては良かったと思います。

――ご自身のアピールポイントは何でしょうか

自分はこの春季リーグ戦でもベンチに入っていたのですが、そこでは守備走塁要員として入っていました。しかし自分の本来の持ち味としては、高校時代からバッティングが得意だったのでバッティングかなと思います。いまバッティングの調子が上昇気流に乗っているので、これからもバッティングでチームに貢献していけたらなと思います。

――今後に向けて一言お願いします

次は東洋大戦で、勝ったら全日に出場することができます。自分は肩にインピンジメントを抱えていて、それで春季リーグ戦もベンチを外れていました。なのでベンチに入ることはないのですが、来週の東洋戦まで1週間の期間があるので練習とかで先輩とかのサポートをしっかりして、全員野球で全日に行けたらいいかなと思います。

浅野崇太郎(スポ1=茨城・緑岡)

――正捕手としての出場でしたが、どのような意識で臨みましたか

尊敬している渡部さんがけがをしてしまっているので、渡部さんのためにも自分のできることをとにかく全力でやろうという気持ちでした。

――試合でのプレーはいかがでしたか

きょうは試合を通してピッチャーが頑張ってくれていて、自分は何もしていないという感じでした。なのに最後ピッチャーが苦しい時にフォローしてあげることができなくて、自分のミスも出てしまったのでそこが反省です。

――ご自身のアピールポイントを教えてください

守備全般ですね。とにかくキャッチャーとして全部できるというか、穴がないキャッチャーになりたいと思います。

――今後への抱負をお願いします

キャッチャーというのはピッチャーを立ててなんぼなので、自分がアピールするのは難しいポジションなのですが、そういうところも含めて少しでもアピールして、Aチームのメンバーに入ってチームに貢献できるように頑張っていきたいと思います。

新井健太(商1=東京・早大学院)

――きょうはいい当たりが多かったですが、打撃の調子はいかがでしたか

あまり実践練習ができておらず、試合も初めてだったので変化球は見えていませんでした。なのでストレートを思い切り振ろうという意識でいって、その結果第1打席でいい当たりを打つことができました。そこでいいイメージをつかめたので、その後はいいかたちでバッティングができたと思います。

――ご自身のアピールポイントを教えてください

バッティングが高校時代から得意だったので、バッティングで貢献していきたいと思います。

――今後への抱負をお願いします

まだ入ったばかりで慣れない部分も多いのでこれから練習を積んでいって、夏を超えて秋のリーグ戦から試合に出てチームに貢献したいと思っています。

鷲田拓未(スポ1=神奈川・日大高)

――きょうの打撃を振り返っていかがでしたか

第1打席は代打だったので振っていこうという意識はありました。初球のスライダーが思った以上に曲がってきて、その後は2球続けてストレートが来ました。打ったのはその次のストレートで、本当はスライダー狙いだったのですがコース的に体の回転で打てるかなと思い、打った結果ああいう打球になりました。第2打席は相手投手が変化球が入っていなくてストレートも外一辺倒という感じだったのですが、1ストライク3ボールからの外のストレートを空振りしてしまいました。そこで勝負が決まってしまっだと思います。

――ご自身のアピールポイントを教えてください

遠くに飛ばす力というのは誰にでもあるわけではないと思うので、そこがアピールポイントです。また、足も速いほうだと思うので、そういったところでも貢献していきたいです。