白熱の投手戦!惜敗するもエンジの意地を見せる

準硬式野球
決勝
法大

早大
(早)●福川、福島、池田-福本
♢(三塁打)塚脇 

 負け試合にも様々な種類があるが、この日の試合はいい試合だった。3日に行われた木村杯新人戦(木村杯)の決勝戦。東京六大学に所属する大学の2年生以下が出場するこの大会は、2年後、3年後を占う重要な大会として位置付けられている。ワセダは前日の準決勝を10点差で制した勢いそのままに、今季の東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)の優勝校・法大との決勝戦に臨んだが、白熱の投手戦の末に惜敗。しかし、初回の失策絡みの失点以外はこの日落とした点はなし。先発の福川千明(スポ2=兵庫・白陵)は得点圏に走者を背負ってもバックの助けも借り、無失点で6回までをつないだ。その後は走者を出すことなく、福島英之(教2=埼玉・早大本庄)と池田司(政経2=埼玉・早大本庄)が継投。敗れはしたものの、非常に内容の濃い試合だったのではないだろうか。

 初回、先頭打者が三塁方向へ飛ばした邪飛を、三塁手が取ることができず、福川はそのまま四球を出してしまう。するとその走者が盗塁に成功。いきなり無死二塁のピンチを背負うことになる。なんとか挽回したいところだったが、三塁方向に飛んだ犠打を三塁手が悪送球。最悪の形で先制を献上してしまう。悪い流れのまま、福川は次の打者にまたも四球を出し、無死一、二塁に。ここでどうにかアウトを取りたいワセダであったが、再度飛んできた犠打をまたも三塁手が悪送球し、走者が生還。あっけなく2点目を失った。続く打者に犠飛を打たれると、またも追加点を入れられ、この回福川は自責1点ながら3失点。試合前からロースコアの展開が予想されており、苦しい出だしとなってしまった。しかし、続く2回には牽制でアウトを取るなどし、無失点のままつないでいった。

初回のピンチでマウンドに集まった選手たち

 5回、1番打者に1死から中前打を打たれると、2番、3番に対して連続四球を与えてしまい、1死満塁の危機に。失点はやむを得ないか、という展開だったが、見事後続の打者を左飛と遊ゴロに打ち取り、無失点で切り抜けた。「ピンチで一つギアをチェンジしろ」と春季リーグ戦で組んでいた1学年上の捕手・吉田龍平(スポ3=東京・小山台)からよく言われていたという福川。ベンチで見守る吉田にも成長した姿を見せられたのではないだろうか。そんな福川の好投に応えたい打者陣であったが、この日先発した尾崎海晴(法大、2年)は春季リーグ戦でも主力として活躍した投手。徳島・鳴門高出身で夏の甲子園も経験している好投手を前に4回まで無安打と打線が沈黙していたが5回、1死から塚脇太陽(人2=千葉・市川)が右中間を破る三塁打を放つと、続く木村颯太(商2=埼玉・早大本庄)がスクイズを決め、ようやく点を入れた。このまま反撃をしていきたいワセダは6回に、内野安打、犠打、四球とつなぎ1死一、二塁とすると、相手の捕逸で二、三塁の好機が到来。一打同点のチャンスだったが、4番、5番が凡退してしまい、無失点に終わった。「(この回のチャンスを)モノにできなかったということがきょうのバッティング面での反省」(加藤大新人監督、人3=大分上野丘)。この日の試合はこの好機で得点できなかったことが大きいだろう。

好投を見せた福川

 この試合、ワセダは尾崎を相手に3安打。しかし、注目してほしいのは法大も4安打しか出せなかったという点だ。ワセダは7回に福川から福島にスイッチ。「先発の千明(福川)がとても踏ん張って、初回からゼロで持ってきてくれていたので、自分もその流れを崩さないように、1球1球を大事に投げていきました」と言う福島は、2回を打者6人で抑え、一人も塁に出さなかった。そして、最終回に登板したのは、「きのうから調子のいいストレートで推して」いったという池田。最後の打者を空振り三振に仕留め、見事無失点で試合を締めた。前日の試合後、格上であると話していた法大相手に果敢に攻めたヤングワセダ。惜しくも敗れたが、「投手は本当にいい意味でプラン通りにいってくれた」(加藤大新人監督)と言うように、投手陣の健闘で互角の試合ができたのではないだろうか。

 この日の試合は初回の三点が全てだった。うまくやれていれば無失点で切り抜けられたのかもしれない。しかし福川は、野球に失策は付き物だとした上で、「そのエラーをカバーできなかった自分にも責任があると思うので、これから勝てるピッチャーになるためにも、味方のエラーを帳消しにするようなピッチングができるようになれれば」と語る。前日とこの日の両日で光ったワセダ投手陣の良さ。その姿は頼もしいワセダ健児だった。惜しくも4連覇は逃してしまったが、いい大会だったのではないだろうか。もちろん野手陣の頑張りも含め、明るいワセダの今後が見えた春の終わりだった。

(記事、写真 金澤麻由)

コメント

加藤大新人監督(人3=大分上野丘)

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

そうですね、初回の守備ですね。あそこで、初回ということもあり、少し慌ててしまった部分もあったのですが、あの3点が結局、後後響いてしまったのかな、というのがゲームの印象です。

――投手陣は4安打に抑えました。いかがでしたか

きょう先発した福川も期待以上のピッチングをしてくれて。そこからつないだ福島と司(池田)がしっかりと抑えてくれたので、投手は本当にいい意味でプラン通りにいってくれたのかな、と。

――一方で打線は3安打に終わりました。いかがでしたか

そうですね、ピッチャーが尾崎で、Aチーム(リーグ戦等の硬式戦に出場する選手らが多く在籍する集団の総称。一軍と同意)でもバンバン投げているピッチャーだったので、ロースコアのゲームになるのかな、と思っていたのですが、やはりあの6回のワンアウト二、三塁<になった場面で、あそこをモノにできなかったということがきょうのバッティング面での反省かな、と。

――今大会は2試合とも投手が良かったも思います

そうですね、2試合とも両方、1試合目が大津(杜都、文構2=東京・宝仙学園)、2試合目が福川。A(チーム)で投げているピッチャーがちゃんとしっかり、6回ずつ投げてくれて、それでしっかりと試合を作ってくれたので、そこが良かったのかな、と。その後、きょうも福島と司(池田)がしっかりと投げてくれた事もあるのですが、先発がしっかりと抑えてくれたので、いい流れで次につなげられたのかな、と。

――チームとして、清瀬杯全日本選抜(清瀬杯)に向けてお願いします

リーグ戦(春季リーグ戦)も4位という結果に終わってしまったので、もう1回チームを見直すという意味でも、今回の大会は、いい選手も出てきたので収穫のある大会だと思ったので、清瀬(清瀬杯)まで時間があるので、強いチームを作って清瀬(清瀬杯)に臨めたな、と思います。

福川千明(スポ2=兵庫・白陵)

――きょうの投球を振り返っていかがでしたか

ストレートは走っていて、細かいコントロールを気にするよりも、どんどん一球一球推していこうと思っていたので、それができたので良かったと思います。

――初回は野手にミスが重なりましたが、いかがでしたか

野球はエラーがあるのが当たり前なので、特にサードの竹本(周平、人2=鳥取・米子東)は(この新人戦ではゲーム)キャプテンで、1番気合が入っていて、そのエラーをカバーできなかった自分にも責任があると思うので、これから勝てるピッチャーになるためにも、味方のエラーを帳消しにするようなピッチングができるようになれればいいと思います。

――5回は1死満塁のピンチを抑えられましたが、いかがでしたか

やはり、自分はリーグ戦(春季リーグ戦)にも出してもらっていて、キャッチャーの吉田さん(龍平、スポ3=東京・小山台)ともよく組ませてもらっているのですが、あのようなピンチで一つギアをチェンジしろ、とはいつも言われているので、それがきょうはできたので良かったと思います。

――関東大会からの春のシーズンを振り返っていかがでしたか

春からは変化球の精度を上げようと練習から取り組んでいて、最近の試合ではそれができているので、ピッチングスタイルも徐々に確立できているので、成長できているのかな、と思います。

――最後に清瀬杯に向けて一言お願いします

しっかりチームの戦力になれるように、勝てるピッチャーになれるように頑張りたいです。

福島英之(教2=埼玉・早大本庄)

――きょうの投球を振り返っていかがでしたか

2連投ということもあって、あまり本調子の球はいかなかったのですが、その中でも緩い球などを使い、自分なりにはいいピッチングができたのかな、と思っています。

――2回を走者なしで抑えられましたが

とにかく、先発の千明(福川)がとても踏ん張って、初回からゼロで持ってきてくれていたので、自分もその流れを崩さないように、1球1球を大事に投げていきました。

――きょうは4連覇が懸かっていましたが、いかがでしたか

あまりそんなに重くは思っていなくて、結果的に4連覇できればいいな、と思っていたのですが、結果的に負けてしまったので、秋は法政から優勝を取り返せるように頑張りたいと思います。

――今後に向けてひとことお願いします

この夏休みはじっくり練習できるので、もう1回個々の力を付け直して、また秋に向けて頑張っていきたいと思います。

池田司(政経2=埼玉・早大本庄)

――きょうの投球を振り返っていかがでしたか

きのうから調子のいいストレートで推していこう、とキャッチャーと話していたので、ストレートで推せたのが良かったのかな、と思います。

――1回を無失点に抑えられましたが

そうですね、最初のバッターが同じ中学のクラブチーム出身の選手だったので、自分も気合が入っていて、その気合が3人とも続いて、最初抑えられたので3つアウトにできたと思います。

――きょうは4連覇が懸かっていたと思いますが、いかがでしたか

自分はきょねんの12月頃に入部して、その秋までに優勝したという伝統を、まだ入っていなかったので生で見ておらず、知らなくて。まだ(入部してから)半年くらいなので。その中で投げさせてもらったことを、とても感謝しています。優勝はできませんでしたが、携われたことに感謝しています。

――今後に向けて一言お願いします

自分は人生生まれてからずっと硬式ボールで、ゴムのボールにまだ慣れていなくて、最近ちょうど慣れ始めてきたので、ここからA(チーム)の主戦でもどんどん投げていけるようにしっかり頑張っていきたいと思います。

――硬式ボールと準硬式ボールは全く違うのでしょうか

そうですね、自分は硬式でずっとバリバリやっていたので、(ゴムのボールは)手汗をかいた時にゴムなので滑るというか、そこの修正でここ半年くらい手こずっていて、タオルを使ったりして、だいぶ自分の中で修正方法をようやくつかめてきたと思うので、これから上げていきたいです。