6年ぶりV! ヤングワセダが賜杯を手にする

準硬式野球
決勝戦
立大
早大 ×
(早)○古賀、菅野、杉山―吉田龍

♢(三塁打)今駒、高木(二塁打)諏訪、池上

 9回表、2死一塁。打球は大きな弧を描いて中堅手のグラブに収まる、早大の優勝が決まった瞬間だった。試合は打線が機能し、好機を逃すことなく序盤から点差を離していった。5回に2点を返されるなど、中盤以降は立大打線に苦しめられる。それでも古賀湧也(スポ2=佐賀西)を中心とした投手陣の粘り強い投球とバックの堅い守備で、反撃を振り切った。春季東京六大学リーグ戦(リーグ戦)では4位に落ち込んだチームが6年ぶりとなる栄光をつかみ取った。

 初回から試合が動いた。この日1番に据えられたのは今駒顕二郎(教2=東京・早大学院)。インコース高めの球を振り抜くと、打球は中堅手の頭を越える。俊足を飛ばし一気に三塁へ進むと、その後内野ゴロの間に生還。2回にも好機で打席に立った今駒が今度は逆方向へ鋭い当たりを飛ばし、2点目。序盤から試合の主導権を握る。0−3で迎えた5回に2点本塁打を浴びたものの、直後の攻撃でその回、好守を見せた池上倫平(政経2=東京・早実)が適時二塁打を放つなど、簡単に相手に流れを渡さなかった。好機をなかなか生かせない立大打線とは対照的に、着々とリードを広げていった。

上級生の推薦によって1番に座った今駒。チームに流れを呼び込んだ

 先発・古賀は走者を出しながらも4回までは無失点に抑える。しかし5回にこの試合初めてとなる四球で走者を出すと、2死目を取った後、左翼越え2点本塁打を浴びた。立ち上がりから飛ばしていた古賀は疲れから持ち味である細かな制球を欠き、2点リードの6回にもピンチを背負う。左越え二塁打で先頭打者を出すと、2つの四球でさらに傷口を広げる。しかし、ここからが古賀の真骨頂。「もうあの時点でスタミナが切れていて、吉田(龍平、スポ1=東京・小山台)のミットに投げることしか考えていなかった」。無我夢中の投球で後続を断ち、この絶体絶命のピンチをなんとか切り抜けた。7回からは古賀から勝利のたすきを受けた菅野太一(商1=東京・早実)、杉山周平(教1=神奈川・山手学院)が苦しみながらもリードを守りきり、ゲームセット。

6回の1死満塁を無失点に抑えた

 「個々の力の成長を感じました」と池田訓久監督(昭60教卒=静岡・浜松商)は目を細めた。飛び抜けた選手がいない中、チームの総合力で賜杯を手にした。その中でも3試合中2試合で勝利投手になり、最優秀新人賞に輝いた古賀などニューヒーローが誕生。この若き早大ナインの活躍はリーグ戦で4位に終わったチームに必ず刺激を与えることになるだろう。秋季リーグ戦ではそんな若武者たちから目が離せない。

(記事 加藤耀、写真 杉田陵也)

6年ぶりとなる新人戦優勝を果たした

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コメント

池田訓久監督(昭60教卒=静岡・浜松商)

――優勝おめでとうございます。感想を聞かせてください

そうですね。個々の力の成長を感じました。あとはもう本当に1、2年生がよくまとまってくれたと思いますね。その結果がこの決勝戦で出たな、という印象です。

――きょうの試合を振り返っていかがだったでしょうか

やっぱり野球というのはバッテリーでしっかりつくっていかないとゲームにならないです。そういう意味では古賀(湧也、スポ2=佐賀西)が6回まで試合をつくってくれて、その後を継いだ菅野(太一、商1=東京・早実)、杉山(周平、教1=神奈川・山手学院)ですね。杉山に関しては強いボールを投げていると練習の時に確認していましたので、彼がこれからどう成長していくかということが秋以降、チームの総合力を上げるためには必要だと思います。打つ方は私が想像していた以上によかった。2アウトからでもタイムリーが出たり、なかなかリーグ戦ではなかったような打撃を見せてくれたので、それは選手が努力してきた結果だと思っています。

――序盤からリードしました。特に初めて1番で起用された今駒選手(顕二郎、教2=東京・早大学院)が攻守にいい働きをしました

実はきょうは打順も起用する選手も迷ったんですよ。前の試合では今駒を9番で使っていたんですけど、きょうは1番で。そして9番に今まで守備固めで使っていた水野(将太、スポ2=愛知・小牧南)を初めて起用しました。彼が非常にラッキーボーイになってくれた。そして今駒も初回に先頭打者として三塁打で流れをつくってくれたという部分できょうの選手起用と打順はズバリ当たったな、という感じですね。

――守備では内外野ともにいいプレーが多くありましたね

リーグ戦を通じていつも言っていることなのですが、基本のプレーをしっかりやってそこから応用というのは出てくるわけです。その基本がしっかりできていたというのが守りのミスがなかった要因ですね。まあ最後に中村(大輔、商2=東京・早大学院)がやっちゃいました(9回表に三塁から悪送球)けど(笑)。あれもワセダに流れがあったので返ってきたボールでアウトになったので、結果オーライですね。

――基本という点で言えば、送りバントがいずれもうまく決まりました

バントに関しては、「精度を上げろ」と私の方から言っていますが、それを選手がしっかりと受け止めて練習してくれた成果だと思っています。

――新人戦のこの3試合の総評をしてください

若いチームなので思い切ってできた部分もあったでしょうし、たまたま流れに乗っかってそれがうちにいい形で跳ね返ったというのもあります。これが決して実力だとは思わないんですけれども、ただいいものを持っているというのは確認できたのでそれが収穫ですね。新人戦で活躍した選手は秋以降の試合でも力になる可能性を十分に秘めた選手なので、そういう意味ではチームにいい影響を与える優勝になったんじゃないかな、という風に思います。

古賀湧也(スポ2=佐賀西)

――優勝を果たしましたが、率直の感想を教えてください

ベンチの雰囲気もすごく良かったですし、まさか優勝するとは思っていなかったのですが、最後優勝という結果を残せて良かったです。

――勝てば優勝という試合での先発登板でしたが、試合にはどういった意気込みで臨みましたか

立大は本当に強いので、自分は一人一人を全力で抑えていかないと勝てないと思っていました。緊張はしましたが、一人のバッターを抑えることに集中して投げました。

――先週予定されていた決勝戦が天候不良のために延期されました。古賀選手にとってもいい休みになったと思います

そうですね、大きかったと思います。先週試合をしていたら自分は先発を回避していたので、雨が降ったことできょう先発することができました。

――立大打線の中で特に警戒した選手はいましたか

3番の福田くん(雅治、2年)ですね。すごくいいバッターだったのですが、その中でキャッチャーの吉田(龍平、スポ1=東京・小山台)がうまく変化球を使って(タイミングを)ずらしてくれました。強力な打線を抑えられたのは吉田のお陰かなと思います。

――6回には大きなピンチがありました

もうあの時点でスタミナが切れていて、吉田のミットに投げることしか考えていなかったです。その時に吉田がインコースに構えていて、気持ちで負けるなということが伝わってきて、自分も気持ちで負けないように頑張って投げました。

――きょうはその6回まで投げて交代となりました

本当は7回までいきたかったですが、自分はスタミナがないのでその分他のピッチャーには迷惑を掛けてしまったと思います。そこは今後の練習で取り組んでいきたいと思います。

――スタミナが切れる時はどのようなところに影響が出ますか

自分は投げ方が特徴的なので、他のピッチャーよりも下半身を使います。きょうに関しては腰がだいぶきていて、結果としてリリースポイントがずれたりしました。今後はそこを改善していきたいです。

――今大会MVPにも選ばれました

自分でもびっくりしました(笑)。先発の役割を果たそうとして3試合投げたことが、MVPにつながったのかなと思います。

――周りの選手たちからはMVPに関して何かありましたか

「おめでとう」と言ってもらえました。でも、自分も点を取られているので。点を取り返してくれた仲間がいなかったらこの賞も取れないですし、本当に援護してくれた打線に感謝したいと思います。

――1、2年生のエースとしてこの大会を投げてきましたが、このチームはいかがでしたか

本当にベンチの雰囲気が良くて、自分が抑えるとみんなで迎えてくれるので、勝てる雰囲気を持ったチームだったと思います。

――夏・秋に向けての課題は何ですか

スタミナと制球力、あときょうは盗塁を決められることが多かったので、ランナーに対する警戒も磨いていきたいなと思います。

――最後に今後の目標を教えてください

リーグ戦ではたぶんリリーフになると思うので、その中で自分の役割をしっかりとこなしていけるように頑張っていきたいと思います。

今駒顕二郎(教2=東京・早大学院)

――見事優勝を果たしましたが、率直な心境を教えてください

やはりうれしいですね。勝てると思っていなかったので、チャレンジャーという意識でこの立大戦には臨みました。それもあって、みんなのびのびとやれていて、こういう結果も出たと思うので、よかったです。

――試合前、優勝は厳しいと思っていたのでしょうか

自分たちのやるべきことができれば可能性はあるかなと思っていましたが、立大はリーグ戦に出ている人も多いので厳しい戦いになるだろうなと。でも、みんなで練習してきた成果が出てこの結果を出せたので、そこはよかったと思います。

――きょうの試合では1番打者として出場しましたが、その経緯を教えてください

後で聞いた話なのですが、練習を見て3、4年生の方が推してくれたみたいで。自分自身も練習には調子よく臨めていました。そういうのを見てくれていた先輩方のお陰で1番で出られて、結果を出すことができたので、その点はよかったです。

――1番打者は初めてですか

高校の時はずっと1番を打っていたので、特に緊張するとかはなく試合に入れました。

――第1打席の初球からバットを振っていきました。積極的にいくということは決めていたのでしょうか

相手のピッチャーがすごくよく、甘い球はほとんど来ないだろうと思っていました。追い込まれる前からどんどん振っていかないと打者が厳しい状況になってしまうので、初球からいこうと思っていました。最初も初球ストレートが来たら振ろうという気持ちを持って打席に立ちました。

――第1打席で三塁打を打った球は甘めに入ってきたのでしょうか

そこまで甘くはなかったですが、インコース高めでした。外角を狙って打っていたのですが、内角に来た球をとっさに体を回して打てたので、そこは良かったなと思います。

――第2打席目も適時打を放ちました

1打席目に大きい当たりを打てていたので、大振りになることなくいけました。守備位置を見たら三遊間が少し広く空いていたので、外角の球を転がすつもりでいったらうまく抜けてくれました。

――1打席目に打てたことで流れに乗れたところもあったと思います

そうですね。1打席目で内角のストレートを振り負けずに打てたので、いいイメージを持って次の打席にも臨めました。

――きょうの試合ではベンチからの声もよく聞こえました。プレーしている身としてはどう感じましたか

守備をしている時でもベンチからの声は助けになりますし、身が引き締まっていいプレーもできると思うので、試合に出ていなかった人たちにも感謝しています。

――秋に向けてご自身の課題は何ですか

守備面で先輩方に劣っている部分があるので、そこをしっかり安心して試合に使ってもらえるような選手になって、リーグ戦でも上級生を支えていければいいかな、と思いました。

――最後に今後の目標を教えてください

高校時代は軟式野球をやっていたので、1年生の時はボールに慣れることから始まりましたが、もうだいぶ慣れてきたので、これからはもっと実戦を意識した練習をして秋のリーグでは優勝を目指したいです。

池上倫平(政経2=東京・早実)

――優勝おめでとうございます。率直な感想は

正直に本当に嬉しいです。春(リーグ戦)も少し出ていたんですけどそのときに悔しい思いをした分、いい結果がやっと出て嬉しいです。大会のランクこそ違いますが、一つタイトルを取ることができたのは大きいかな、と思います。

――初回、1死三塁で打席が回ってきましたが

相手の森田(宗太郎、2年)というピッチャーがいいと聞いていて、監督さんからもその投手の対策をするように言われていた中で3番打者の自分にいい形で回ってきました。なんとしても1点取りたいと思っていたので、ヒットというよりもどんな形でも打点をあげることを意識していました。

――5回には本塁打で2点を返された後、そしてご自身の好守の後の攻撃で適時打を放ちましたが、それについて振り返ってください

それも高木がいい形(三塁打で無死三塁の好機)で回してくれて、自分が打ち取られても次がいると考えて楽な気持ちで打つことができました。守備でいいプレーがあった分、余裕をもって打席に入ることができました。

――打った感触は

相手投手が代わった直後で前の投手よりも球が速かったので、ストレートを張っていました。打ったのは内角のストレートです。当てたらうまくレフト前に落ちたという感じでした。がむしゃらに振りました。

――チームの雰囲気はいかがだったでしょうか

終始いい雰囲気でプレーできました。出ている人、出ていない人関係なくみんなベンチで盛り上がることができました。選手それぞれが役割をわかっていて、いい形にまとまることができたことがきょうの勝ちにつながったと思います。

――この新人戦を振り返って手応えなどは

自分自身、春のリーグ戦ではいい結果が出なくて、迎えた新人戦だったので打てるか不安な部分もありました。それでも試合を経験するにつれて、このチームでやる楽しさやこのチームでやっていける、という自信もつけていけました。楽しくできたと思います。

――夏の練習、秋季リーグ戦への抱負を聞かせてください

夏はいろいろな部分でまだまだ課題が残っているので、そこを突き詰めていきたいです。秋にはチームにとって欠かせない選手になれるように、夏の練習を気持ちを切らすことなく頑張っていけたらな、と思います。