【連載】『令和2年度卒業記念特集』第10回 空辰乃輔/柔道

柔道

「一生学び続けたい」

 「柔道、本当に大好きです。」空辰乃輔(スポ=広島・崇徳)はそう語る。しかし、そう感じるようになったのは高校と比較して自主的に練習できる機会が増えた大学に入ってからだという。大学1年次からレギュラーとして部をけん引する傍ら、柔道以外にも様々な活動を積極的にしたことが柔道の楽しさを再発見するきっかけとなった。7歳から始めた柔道は大学で一区切りにする。「これからもいろんな挑戦をし続けたい」と語る空の柔道人生を振り返る。

 柔道を始めたきっかけは偶然のことだった。幼少期、とてもエネルギッシュな子供だったという空は、両親の勧めからいくつかのスポーツチームの見学へ。その中から「一番痛くなさそう」という理由で柔道を選んだ。しかし「柔道だけでなく勉強もしたかった」と、柔道を選んだものの、その後進学する際にやめようとしたこともあったという。そんな空だったが、「勉強は一人でできるが、部活は一人ではできない」と考え、柔道の強豪校・崇徳高校に入学する。高校では、『授業時間以外は柔道』という練習漬けの生活を送った。そこでの厳しい練習の成果が実り、空は3年次に総体で個人2位の成績を収めた。

大学での最後の大会となった早慶戦で技ありを決める空

  早稲田への入学を決めたのは「柔道以外にもやはり勉強をしたかったから」。空は1年次からレギュラーを取り、試合で活躍していたが、柔道以外のことにも精力的に取り組んだ。語学の勉強やロシアやチリへの試合遠征、またレギュラーの選手が参加するのは異例だというモンゴルでの柔道指導のボランティアに参加した。そして授業では栄養学やトレーニング科学を学び、学んだことを実生活や柔道に活かしていった。「柔道以外のことができる大学生活は新鮮だった」と空は大学4年間をそう振り返る。

 3年次には全日本学生優勝大会で早大が目標としていたベスト8達成に貢献する。早大柔道部にとってこのベスト8進出は実に51年ぶりのことだった。ベスト8を賭けた中央大学との3回戦。早大は流れにのることができず劣勢に立たされていた。そのような中、空の一本が流れを変えたのだ。空はこの試合を振り返って、「自分の強みを客観視できたことが要因」だと語る。得意の寝技を意識して強化していたことで、以前敵わなかった相手を打ち負かすことができた。柔道人生の集大成となる4年次。コロナウイルスの影響で悔しくも試合の中止が相次ぐ中、主将を務めた空は部のマネジメントに苦労した。部の運営方針を決める際にコーチと下級生の間に立って意見をすり合わせたり、コロナ禍での部員のモチベーション維持への対処を行った。チーム運営をしていく上で空は、「学んだことを実際にやってみることの大切さ」を実感したという。いくら本や授業で学んでも、実際に生活で使うことができなければ意味がない。空は部の運営をする中で試行錯誤しながら、学んだことを実践していった。

 「一生学び続けること」。これが空のモットーだ。卒業後は柔道に一区切りをつけ、一般就職の道に進む。柔軟に様々なことを学び、いずれは自分で事業を興したいとも語る。早大柔道部、大学4年間で培った多くのことを活かし、これからのステージで活躍してほしい。

(記事 倉持七海、写真 倉持七海)