柔道の聖地・講道館にて今年も早慶対抗柔道戦が開催された。新型コロナウイルスの影響で、練習の制限や試合の中止が相次ぐ中、例年とは異なる大会方式で開催された今回の早慶戦。例年は講道館ルールが採用されているが、今年は国際ルールへと変更。また試合形式も伝統の勝ち抜き式ではなく、点取り式へと変更となった。女子は岡田蛍主将(スポ4=愛知・大成)を中心する4年生の活躍で去年に続き3連覇を達成。一方、男子は5勝7敗と惜敗し、去年の悔しさを晴らすことはできなかったが、大将戦にて空辰乃輔主将(スポ4=広島・崇徳)が慶大の伊藤(4年)を下し、早大の意地を見せつけた。
女子の部で先鋒を務めたのは藤原七海副将(文構4=福岡・修猷館)。「試合開始30秒くらいは緊張していた」という藤原だが、組手争いで優位に立ち、内股で一本を決める。続く尾崎美玲(スポ2=愛知・大成)が釣り込み腰で一本を収め、試合は早大のペースに。3人目の木村萌乃主務兼副将(社4=群馬・前橋育英)も抑え込みで技ありを決めると、その後も果敢に攻め込み一本勝ちを決める。その後は2つ引き分けを挟んで迎えるは大将・岡田蛍主将。慶大・平野(4年)のスピードのある攻めに苦戦する。しかし「最後勝って終わりたかった」と勝ちへの強い執念を見せ、残り時間1秒で見事大外刈りで一本。最後まで諦めない姿勢が最高の形へとつながった。
残り時間1秒で大外刈りを決めた岡田主将
続く男子の部。今年は勝ち抜き戦ではなく、点取り戦であるため、一人一人が確実に勝利を収めていくことが優勝へのカギになる。初めに先鋒を務めたのは佐藤虎太郎(スポ3=神奈川・桐蔭学園)。相手選手に指導を3つ取らせ、初戦は見事勝利を収めたが、その後早大は苦戦を強いられる。そのような中、6番手・伊藤史弥(スポ3=神奈川・桐蔭学園)が指導を2つもらいながらも慶大・ピーダーセン(2年)に対して技ありを決め、粘る柔道をみせる。伊藤が技ありを決めた際は両校からの今日一番の掛け声が道場を飛び交った。相手選手の体力が消耗していく中、なんとかもう一つ技ありを決めたい伊藤。しかし再度指導をもらい、惜しくも勝利をつかむことはできなかった。
その後、敗戦と引き分けが続き、なかなか勝利を収めることができない早大。14番手・布目王雅(社2=石川・津幡高)の時点で優勝の可能性は消滅していたが、慶大に一矢報いるため、ここから早大の反撃が始まる。布目、長嶋勇斗(スポ2=山梨・東海大甲府)が2者連続で勝利を収めると、続く仲島聖悟(スポ3=東京・修徳)が小内巻込で一本勝ち。自分よりも体格の大きい選手に対して終始攻め込み、この勝負を見事取り切った。そして最後、大将戦で迎えるのは今年一年間、早大柔道部をけん引してきた空。「楽しむこと、それしかなかった」とリラックスして試合に臨んだ。空は相手を投げて寝技に持ち込むなど積極的な柔道を行い、抑え込み技に入る。そのまま一本になると思われたが、ここは慶大の主将・後藤(4年)が執念を見せ、逃げられてしまう。しかしその後、2つ目の技ありをしっかりと決め、見事早稲田が主将対決を制した。
1つ目の技ありを決める空主将
「(この早慶戦が)人生で一番楽しい試合だった」。(空)「最後に今年のチームで、4年生もそろって、試合に出れたことが嬉しい」。(岡田)今年一年間、十分に試合を行うことができなかった選手たちにとって、この早慶戦は久しぶりで楽しい試合だったに違いない。コロナウイルスの早い収束を願いつつ、来年は今年の分を含めてさらなる早大柔道部の飛躍に期待したい。
(記事、写真 倉持七海)
コメント
空辰乃輔主将(スポ4=広島・崇徳)
――柔道人生最後の試合、振り返っていかがですか
めちゃくちゃ楽しかったです。人生で一番でした。
――チームとして早慶戦を振り返るとどうでしょうか
一年間主将としてチームを引っ張ってきて、今回負けたとなると、自分がもっとうまくできたことがあるんじゃないかと反省点みたいなところはあります。
――具体的にはどういった反省点でしょうか
全国大会に当たり前に出場するような選手がそろっているので、僕は基本的に自由な環境をつくってあげれば個々が勝手に考えて行動するという前提のもと(今年一年間)動いたんですね。実際にそういうチームをつくったのですが、全員が全員、考えて動けるというわけではないというのが今回の試合でわかって。やはり(コロナで)試合がなかった分、柔道への意識は薄れてしまいますし、動ける人との差は広がってしまいます。なので、普段試合への意識ができていない人にどんなアプローチをしたらよかったのだろうかと思っています。
――自分の番が回ってきた時、どんな気持ちでしたか
負けも決まっていましたし、最後だったので、楽しもうと、それだけでした。
――合わせ技で一本を決められてどうでしたか
楽しむことで自分のパフォーマンスが上がるタイプなので、そういう風にしたら自分の得意な技が自然に出ましたね。二つとも本当に自分の得意な技でした。
――後輩へエールを送るとしたらどんな言葉をかけますか
先ほどの話しに通ずるのですが、管理することの限界を感じて僕は自由にしたのですが、それも自由にしすぎるのはよくないということがわかりました。なので、その二つをうまくどうやってバランスを取るのかを最上級生がみんなで頭を使って考えて欲しいですね。
――今までの柔道人生を振り返ってどうでしょうか
めちゃくちゃ楽しかったです。僕は田舎の出身なのですが、柔道をしていたおかげでこうやって東京の大学にこれたり、本当に貴重な体験をすることができました。高校の時は全国で優勝を目指してキツイ練習をして、大学に入ってからはいろんな勉強ができる人と関わりあったり、柔道で海外に行ったり。挙げたらきりがないのですが、いろんな経験をするきっかけをくれたのが柔道です。本当に大好きです。
清水祐希副将(スポ4=愛知・大成)
――最後の早慶戦、試合を振り返っていかがでしたか
やはり勝ちたかったですが、結果が引き分けという形になってしまって。僕自身、勝つことができなくて悔しいというのと、申し訳ないなというのでいっぱいなのですが、4年間やりきったなという爽快感も感じています。
――自分の番が回ってきたときはどんな気持ちでしたか
やってやる、という気持ちでした。膝のけがもあって、痛み止めを飲んだり、打ったりという状態ではあったのですが、そんなことを言っている場合でもなくて。4年生という意地で何としてでも勝ちをという気持ちだったのですが、結果に反映することができなくて悔しいです。
――今までの柔道人生、早稲田の4年間を振り返ってどんな気持ちですか
まずは自分よく頑張ったなと思いたいですね。6歳から始めて、まさかこんな長く続けるとは思ってなかったですし、大学に入ってから2回大きな膝のけがをして、いろんなことがありましたが、両親やトレーナーが支えてくれて、そういった人たちのおかげでここまで柔道を続けてくることができました。
――来年にむけて、後輩に一言お願いします
来年は今年の悔しさを忘れずに、また1年間頑張って欲しいです。
伊藤史弥(スポ3=神奈川・桐蔭学園)
――最後まで粘る展開になったと思うのですが、試合を振り返っていかがですか
最初相手の力が強いなと思って、やばいなと思っていました。また、指導が早くて、メンタル的によくなかったというのはありました。指導では勝てないとなって、投げるしかないと思って投げたのですが、その後、指導を取られてしまいました。
――回りから大きな声援がありましたが、どうでしたか
自分は試合に夢中で、後から周りに言われて気が付きましたね。
――指導を3つもらってしまったことについていかがですか
自分の組手が甘いせいで、相手に振り回されてしまいました。もっと大きい相手にも勝てるように練習していかなければと思います。
――技ありを決められたあと、ご自身の中では手ごたえはあったのでしょうか
そうですね、あと一個技ありを決められたらいけるという感じだったのですが、その間に指導を取られてしまいました。悔しいです。
――早慶戦で見つけた課題はありますか
組手の部分で、相手の流れにもっていかれてしまったので、これからは組手を徹底的に鍛えたいと思います。
――来年への抱負をお願いします
個人で全国ベスト4以内に入れるようにしたいです。団体戦だとなかなか活躍は厳しいので、自分の階級で勝てるようにやっていきたいと思います。
佐藤虎太郎(スポ3=神奈川・桐蔭学園)
――今日の試合を振り返っていかがでしたか
チーム全体としては負けましたが、最後主将がとってくれたので、負けた感じはしなくてよかったと思います。
――先鋒として畳に上がった時はどういう気持ちでしたか
どんな形でもいいから勝たなければならないなと思っていました。
――来年は4年生になられますが、どういったチームにしたいというのはありますか
チームカラーというよりは、個人個人が自分のために頑張った結果がチームのためになる、そんなチームがいいなと思っています。そういったチームができればもっと上に行けると思います。
――それはなぜでしょうか
今までチームのために頑張ろう、とやってきてここまでしかいけていないので。もっと個性的に、個人個人好きなようにやる方がいいのかなと思います。
――来年への抱負をお願いします
去年も今年も講道館杯で負けてしまっているので、個人的には講道館杯で優勝して、シニアの日本代表で戦える選手に成長できたらなと思います。
仲島聖悟(スポ3=東京・修徳)
――今日試合を振り返っていかがでしたか
自分の形で柔道ができて、終始攻めることができたのがよかったです。また、得意な背負い投げを決めきれなかった時に、足技でぱっと最後決めることができたのもよかったです。全体だと、予想していない失点が多く重なってしまいました。たらればになってしまいますが、あそこで取られていなければ流れも変わったのではと思う部分があって、そうすると自分の結果もまた変わってきたのかなというのはあります。実力、練習不足が露呈したと思います。
――思わぬ失点とは具体的にはどういったことでしょうか
後ろの5人目までで2点差で負けている状態くらいまでは想定していました。それくらいの点差なら後でも返せるという考えで、前の12人でどれくらいその2点差にもっていくのかを考えていましたが、2・3人取れると思っていたところで苦戦を強いられてしまいました。誰か1人でも取れていたら流れも変わってきたのかなと思うのですが、そこの部分で流れを変えられる選手がいなかったというのが敗因ですね。
――対談で肘の調子が良くないと仰っていたと思うのですが、今日のコンディションはどうでしたか
今週1週間くらいは肘がよくなってきていたのですが、半年間ほど背負い投げを出せないくらい肘の痛みがあって。それでいうと今日も万全とは言えなかったのですが、試合ということでアドレナリンが出て、そこまで肘を気にせずに戦えたと思います。
――万全ではない中でも勝つことができた要因は何だと思われますか
今回の相手とは相四つで、僕はどうしてもその相四つの選手と戦う時に得意技に頼ってしまうんですね。実際今日も頼ってしまいました。でも半年間得意技ができない期間で新しい技を試したり、大きい相手とも二つ組んで、体で力勝負したりしていて、そういった練習をしていたことで、あまり相手からのプレッシャー、圧力を苦に感じずにできたのでそれがよかったのではないかと思います。
――来年は4年生になられますが、どういったチームにしていきたいですか
柔道は投げて一本取る、抑え込んで一本取る、やはり一本を取ってしっかり勝つというのが、柔道の醍醐味で楽しいところだと思うので、そういう勝ちにいく、引き分け狙いではなくて、しっかり全員が勝ちにいって、点を取って、勝てるようなチームになったらいいなと思います。
――来年への意気込みをお願いします
今年一年間試合がなくて、すごく焦りというか、あんまりすっきりした気分で柔道をすることができなかったので、来年は今年一年間の分を含めてしっかり試合で結果を出していきたいと思います。
布目王雅(社2=石川・津幡高)
――なかなかチームに勝ちが付かない中、迎えた自分の番、どんな気持ちでしたか
元々の作戦として、自分から後ろの人は取らなければならないということだったので、僕も練習中から絶対に取らないといけないなと思っていました。流れをこっち(早稲田)にもっていければという思いでしたね。
――実際に自分の試合を振り返っていかがですか
練習は組んでやるように意識してきたのですが、試合となるとやはり焦ってしまって。でも寝技が上手く練習してきた部分が出てきたのでそれはよかったと思います。
――3年生となる来年への抱負をお願いします
<p>取れる人間になりたいですね。チームが悪い流れでも、自分が流れを引き寄せられるような、しっかり勝てる選手になりたいです。
岡田蛍主将(スポ4=愛知・大成)
――最後の早慶戦、試合を振り返っていかがでしたか
自分は大将だったのですが、今年一年ずっと試合もなくて、練習もあまりできなくて。そんな中でも早慶戦が開催されて、最後に今年のチームで、4年生もそろって、試合に出れたことが嬉しいです。大将として出た時、前のみんなが期待以上の仕事をしてくれて、いい流れで自分に回してくれて。自分は今まで主将としてやってきましたが、何も主将らしいことができていなかったので、ここで主将らしいかっこいいところを見せようと思って戦いました。最後ギリギリだったのですが、ポイントが取れて、みんなで優勝できてよかったなと思います。
――同学年の藤原選手、木村選手が先に一本を決められて、やはりご自身も一本を取りたいという思いはありましたか
そうですね、めちゃくちゃ決めたいと思ってました。焦りもあったのですが、決めた瞬間、「ああ、よかったー!」と思いました。
――自分の番が回ってきた時はどんな気持ちでしたか
いいイメージはできていたのですが、いざやってみたらてこずってしまって。やばい、と思ったのですが、最後勝って終わりたいという気持ちが強くて結果、勝つことができました。
――柔道部での大学4年間を改めて振り返ってどうですか
下級生だった時は先輩方、そして今は同期や後輩、また監督も含めていろんな人に支えられた4年間だったなと改めて思います。
――これからも競技を続けられるということで、早稲田の柔道部で学んだことでこれからも活かしていきたいと思うことはありますか
トレーニングもしっかりやってきたし、練習もしっかりやってきました。今回の早慶戦で最後一本を取れたのも最後まで諦めなかったからで、諦めなかったら自分にチャンスが回ってくるということを学びました。大学では個人で良い成績を収めることができなかったので、卒業して柔道をするときはもっと良い成績を残せるように頑張りたいです。
――来年早稲田を背負う後輩達にエールをお願いします
またこれから大変なこともたくさんあると思うのですが、今までやってきたことは何も間違ってなかったよと言いたいです。早稲田には強い選手がそろっていて、まだまだ強くなれるし、チャンスもたくさんあると思います。今までの先輩の主務の方が日本一愛される柔道部になって欲しいというのを言っていて、それを私たちにも引き継いでくれていました。なのでこれからも日本一の柔道部で日本一愛される柔道部であってほしいなと思います。
藤原七海副将(文構4=福岡・修猷館)
――最後の早慶戦、試合を振り返っていかがでしたか
一本で勝つことができたので、自分の中では満足のいく試合でした。
――先鋒として畳に上がられた時、どんな気持ちでしたか
ウォーミングアップをしている時は全然緊張していなかったのですが、開始5分、開始線に並んだ時は心臓の音が大きくなって、緊張しているんだなと思いました。実際に試合が始まっても30秒くらいはがちがちに力が入っていました。
――今日のコンディションはどうでしたか
ばっちりでした。今までで一番よかったと思います。
――今までの柔道人生、早稲田での4年間を振り返っていかがでしたか
大学に入ってからの方が柔道が楽しくなりました。高校の時は勝ちにこだわりすぎて、柔道をやりたくないと思ったこともありましたが、逆に大学は「柔道やりたい」という気持ちが強くて。早稲田に来たことで、自分の中で新しい柔道が始まって、早稲田の柔道部がより柔道を好きになれるきっかけをくれました。
――来年チームを背負う後輩へエールをお願いします
来年は(今の)1年生が多いチームになって、上が3年生が1人しかいないというチームなので、1・2・3年生みんなで協力して一体感のあるチームにしてほしいなと思います。
木村萌乃主務兼副将(社4=群馬・前橋育英)
――柔道人生最後の試合を振り返っていかがですか
今年最初の試合でしたし、柔道人生最後の試合で、一本とって終えることができたというのは自分の中では大きいことでした。
――自分の番が回ってきたときはどんな気持ちでしたか
試合前、前の二人がとってくるからと話していて、私もその流れで後ろに回すね、と言っていたので、有言実行できてよかったと思います。
――来年早稲田を背負う後輩に向けて何か一言ありますか
早稲田の練習は着々と力がついていくものであるということが今回の練習で証明できたと思うので、来年も上り調子で全国で活躍できるように頑張ってほしいです。
――今までの柔道人生と早稲田での4年間を振り返っていかがですか
小学校の時から柔道をやっているのですが、一番楽しめた4年間だったと思います。心にも余裕ができて、勝たなきゃというよりも柔道を楽しもう、という感じで練習に取り組めました。自分で考えながら練習することができたので最後まで飽きずに頑張れました。