11月16日、早慶対抗柔道戦が柔道の聖地・講道館で開催された。2回目の開催となる女子の部では早大が尾崎美玲(スポ1=愛知・大成)の活躍で連覇を達成。男子は終始慶大にリードを許す展開となったが、瀨川勇気副将(スポ4=北海道・東海大四)が2人抜きを達成するなど意地を見せた。結果としては6連覇を逃すことになったが、最後まで手に汗握る戦いが繰り広げられた。
女子の部では、先鋒戦、次鋒戦と引き分けが続いたが、副将の尾﨑が試合を動かした。試合開始早々に内股で技ありを決め、その後も一切相手に主導権を与えず、再び背負い投げで技ありを決めた。その後の大将戦も引き分けとなり、早大は1勝3分けで連覇を果たした。
技ありを決めた尾﨑
続く男子の部では、伝統の20人制勝ち抜き戦が開始された。「選手が直前でけがをして人数が19人になるなど、始めから不利な状況だった」(空辰乃輔、スポ3=広島・崇徳)という早大。さらに6年ぶりの勝利へ意気込む慶大のかべは高かった。先鋒戦は早大の一本負け。その後は1敗を挟み引き分けが続いた。しかしここまでは「ほぼ予定通りの試合運び。そのため、プレッシャーもなく試合に入っていけた」と7番手・仲島聖悟(スポ2=東京・修徳)。仲島は残り時間27秒で得意の背負い投げで技ありを決め、早大に初の勝利をもたらす。「2人目と対戦する時には釣り手である左手が張ってきて、激しい組み手争いができるような状態ではなかった」と疲れを抱えながらも粘り強く攻め、引き分けに持ち込んだ。
2人抜きをした瀨川
どうにか慶大に追いつきたい早大。中堅の百瀬敦也(社2=長野・松本第一)は序盤から攻め込み袈裟固で一本勝ちを収め、2人目とは激しい組手争いを繰り広げた。再び寝技に持ち込もうとするなど、積極的な柔道で相手に隙を与えず引き分けに持ち込んだ。しかしその後は慶大の優勢が続き、迎えるは15番手・高波勁佑副将(社4=富山・小杉)。1人目に一本勝ちを収めると続く2人目、杉村晃希(慶大)の猛攻を受ける。「自分のスタミナがなく、バテてしまって引き分けるので精一杯だった」と振り返った。このまま慶大に勝利を渡してしまうのか。そうした中、早大の意地を見せたのは18番手の瀨川だ。瀨川は2者連続で一本勝ちを決め、慶大のエース・蓜島剛と対戦。格上の蓜島の猛攻撃を受けながらも、なんとか持ちこたえる。激しい組手争いが繰り広げられる中、今日一番の声援が会場中を飛び交った。しかし瀨川は中盤から徐々に体力的に追い詰められ、一本を決められてしまう。続く空は「最低でも抜かれないようにして後ろに繋ごうと思っていた」と蓜島相手に粘り続け引き分けに持ち込んだ。早大は大将の佐藤竜主将(スポ4=東京・修徳)のみを残し、対する慶大は4人。そのような絶体絶命の状況でも「やってやろうと思って試合に入った」と佐藤。見事、一人目には寝技で一本勝ちを収めるが、2人目の渡邉大輝(慶大)に一本を取られ、悔しくも早大の6連覇とはならなかった。
集合写真
早慶戦は絶対に負けられない――。結果は敗北だった。しかし試合後、佐藤は「全力でみんなが取り組んだ結果。だからそれをちゃんと受け止めて引退できると思う」と前を向いていた。早慶戦の勝利は叶わなかったが、今年は半世紀ぶりに全日本学生優勝大会ではベスト8に入るなど、早大柔道部は確実に前進している。次年度のさらなる彼らの活躍が楽しみだ。
(記事 倉持七海 写真 瀧上恵利)
佐藤竜主将(スポ4=東京・修徳)
――最後の早慶戦となりましたが、きょうの試合を振り返っていかがですか
最初から厳しい戦いだなと思っていたのですが、その通りに試合が進んでいきましたね。その中でも選手がみんな食らいついているのを見て、団体戦っていいなと思いました。最後は僕が一本取られて負けてしまったのですが、心残りはないです。早大柔道部として絶対勝たなきゃいけない戦いではあったのですが、手を抜いた学生は一人もいなかったですし、全力でみんな取り組んだ結果なので、それをちゃんと受け止めて引退できると思います。
――劣勢な状況で大将に回ってきましたが、どのような気持ちで試合に入っていきましたか
最悪の想定で4人残ってくるだろうなと思ってました。やってやろうと思って試合に入りましたね。一人目を取って、いけるかなと思って二人目に臨んだら負けてしまったので、やっぱり柔道は甘くないなと思いました。
――これまでの早稲田での四年間を振り返っていかがですか
修徳高校で柔道をやっていた時は、ある意味偏った柔道観がありました。早稲田に入って、自分のこれは受け入れられないんだとかこれはこの場所では上手くいかないんだとかいろんな思いをして、この部のために何ができるんだろうとたくさん考えましたね。人間として成長できた部分が一番大きかったなと思います。だからこの部に来てすごく良かったです。
――全日本学生優勝大会ではベスト8に入りました。自分の代で目標を達成できたことは大きかったですか
先輩たちにノリで「いくら結果残しても早慶戦で負けたら、この代は失敗だから」と言われたりするのですが、この半世紀達成できなかったベスト8という目標を達成したのは、俺らの代だという思いはあります。そこは自信を持ちたいです。
――ここまで支えてくれた同学年の選手への思いを教えてください
本当にこの同期で良かったです。きょうの瀨川(勇気副将、スポ4=北海道・東海大四)が相手の齋藤(渉副将、慶大)を投げた時は、自分の試合前なのに、泣いちゃいそうになりました。あと、マサ(加藤眞也、社4=三重・四日市中央工)が懇親会で「竜と同じ代で良かった」と言ってくれました。自分は早稲田のキャプテンになった時に、自分の思いが伝わらないなと悩んだ時期もあったのですが、その思いが同期には伝わっていたんだなと思いました。
――来年以降も早稲田を背負っていく後輩に向けてメッセージをお願いします
空主将(辰乃輔、スポ3=広島・崇徳)、柳川副将(昂平、社3=三重・四日市中央工)、清水副将(祐希、スポ3=愛知・大成)、小谷トレーナー(亮輔、スポ3=東京・早大学院)は僕らのチームのベースとなってくれた4人です。その下の子たちも本当に力になってくれた選手たちなので、僕らが成し得なかった目標をどんどん達成してくれるのを祈っています。そして僕らの代も支援していきたいなと思います。
瀨川勇気副将(スポ4=北海道・東海大四)
――最後の早慶戦となりましたが、きょうの試合を振り返っていかがですか
勝ち負けは勝負の世界の付き物なので、きょうは負けてしまいました。でも全力を出した試合ができたというのはこれからの人生の糧になると思います。すごくいい思い出になりました。
――劣勢な状況で大将に回ってきましたが、どのような気持ちで試合に入っていきましたか
想定してた相手と想定したシチュエーションでやることはなかったのですが、それは勝負の世界の付き物だと思ってます。そこは自分なりに気持ちを切り替えて戦えました。チーム全体としてそれができていたので、良かったんじゃないかなと思います。
――きょうは優秀選手に選ばれました。ここまでなかなか思うような結果が出せなかった時もあったと思いますが、この1年間を振り返っていかがですか
試合の勝ち負けに関わらず、最上級生となってチームの運営の仕方に苦労しました。それを一緒に乗り越えてきた4年生には感謝の気持ちが強くなった1年だったと思います。
――これまでの早稲田での四年間を振り返っていかがですか
元々早稲田が好きだったのですが、最後の早慶戦でみんなが力を合わせて戦ってくれたので、もっと好きになりました。
――来年以降も早稲田を背負っていく後輩に向けてメッセージをお願いします
51年ぶりに全学(全日本学生優勝大会)でベスト8に入って、実力的に見たら相応の結果かもしれないし、もしかしたらまぐれかもしれないと思うのですが、次の代でもしっかり目標を設定してほしいです。空主将(辰乃輔、スポ3=広島・崇徳)の下、しっかりまとまっていってくれればうれしいです。空主将のまとめたチームを来年も見に来たいなと思うので、楽しみにしています。
高波勁佑副将(社4=富山・小杉)
――今日で最後の早慶戦でしたが、今日の試合を振り返ってどうでしたか
序盤は我慢だと思っていたのですが、慶応の層の厚さや気迫に押されて、前半はうまくいきませんでした。僕の試合自体も想定していたより前の相手と対戦することになり、なるべく追いつくことが目標だったのですが、そこであまり自分の力を発揮できなかったというのが悔しかったですね。
――1回戦目勝たれた時、自分の調子はどうでしたか
調子自体はそんなに良くはなかったのですが、最後なので出し切ろうと思っていました。2回戦目は調子どうこうではなくて、意地ですね。</p>
――1回戦目勝った後の2回戦目の相手は手強かったですか
杉村選手は1年生ながら強い選手ですが対戦した感じ、自分が苦手だな、取れないなとは思いませんでした。でもやっぱり、自分のスタミナがなく、バテてしまって引き分けるので精一杯という感じでした。
――後輩へ一言お願いします
自分が4年生で、最後の早慶戦に勝てなかったということよりも後輩たちに辛い思いや悔しい思いをさせてしまったというのが悔しく、自分の中で心残りなことです。慶応も強いですが、来年は『早稲田』というチームとして一枚岩となって雪辱を果たして欲しいです。
間瀬勇希主務(スポ4=神奈川・相洋)
――最後の早慶戦となりましたが、きょうの試合を振り返っていかがですか
元々層の薄さというのは感じていて、当日になったら19vs20だったので、厳しい戦いになるなとは思っていました。チームとしては上手くいけば勝ち筋も見えていたのに、上手くいかなかったかなというところと個人的には引き分けなければいけないところで敗れてしまって、最後の早慶戦で勝てなかったことが悔しいです。
――劣勢な状況で順番が回ってきましたが、どのような気持ちで試合に入っていきましたか
元々予定してた相手よりも一つ前の相手と戦いました。僕が苦手なタイプの相手でした。本当は勝って次につなげるか、引き分けて次につなげなければいけないなと思って畳に上がりました。
――実際に戦ってみてどのように感じましたか
こちら側が5連覇してて、相手が全然勝てていないというところもあったと思うのですが、相手の圧がすごくありました。自分の心の面でも下がってしまった部分があったのかなと感じます。
――相手の応援もすごく迫力ありましたね
最初から慶應が1人抜いて、その後引き分けて、という試合が続いていたので、ずっと慶應がリードしてて、早稲田はペースをつかめませんでした。
――これまでの早稲田での四年間を振り返っていかがですか
僕は推薦ではなく、1年間浪人をして柔道部に入りました。柔道部に入らないという選択肢もありましたが、この四年間を振り返って柔道部に入って良かったなと感じています。体育会として縦のつながりと、横のつながりと色んな人たちと関わることができて、辛い面もありましたが、いろんな恩恵を受けたし、充実した四年間でした。
――ここまで支えてくれた同学年の選手への思いを教えてください
本当にこの同期で良かったです。佐藤竜主将(スポ4=東京・修徳)、瀨川副将(勇気、スポ4=北海道・東海大四)、高波副将(勁佑、社4=富山・小杉)がチームをまとめたり、言葉をかけたりしてここまでチームを引っ張ってきてくれました。伊藤会計(哲、スポ4=秋田)や増田副務(将也、法4=東京・海城)も主務の仕事をサポートしてくれました。広報も僕はこの一年間で広報活動に力を入れたいと思っていたので、加藤広報(眞也、社4=三重・四日市中央工)もすごく協力してくれました。今までの主務だと一人で抱え込んで仕事をしてたことが多くて練習もできなかったのですが、僕も選手でやりたいという思いを汲んでくれて仕事を分担してくれました。僕はこの1年すごくやりやすくて、四年間この同期で良かったなと思ってます。
――来年以降も早稲田を背負っていく後輩に向けてメッセージをお願いします
51年ぶりにベスト8に入れたことを足がかりとして、もっと上を目指してほしいです。また早慶戦でも勝ってほしいです。でも人数が少なくて厳しい面もあると思います。一人にやらせるのではなく、チーム一丸となって高め合っていってほしいです。チームとしてみんながうらやむような団体になってもらえたら、うれしいです。
――2年間主務を務めることになった川島主務(聡太、先理2=三重・四日市)へメッセージはありますか
2年間主務をすることはすごくきついと思います。僕の場合は同期に会計と副務がいて、その下に川島副務と木村会計(将輝、商2=奈良・東大寺学園)がいたし、女子もちゃんと女子主務がいたので、ちゃんと僕をカバーしてくれました。でも川島の場合は3年生で主務になるということと、同期の会計と一つ下の副務がいるだけなので、大変だと思います。またその副務も主務になるか分からない状況なので、人手不足ですね。下級生なので、一番上の学年に意見が通らないこともあると思うのですが、めげずに頑張ってほしいです。僕も相談には乗りたいと思います。
加藤眞也(社4=三重・四日市中央工)
――最後の早慶戦となりましたが、きょうの試合を振り返っていかがですか
1、2、3年生が全力でつないできてくれていたのに、4年生である自分がふがいない試合をしてしまいました。流れを全部ぶち壊してしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいです。それでも来年は戦力的にも充分戦えると思うので、チーム一丸となって勝ってほしいです。
――ここまで支えてくれた同学年の選手への思いを教えてください
本当に今の同期じゃなきゃつづけてこれていないと思います。今の同期が大好きで、最後に結果で感謝を表すことはできなかったのですが、心からのありがとうでいっぱいです。
――来年以降も早稲田を背負っていく後輩に向けてメッセージをお願いします
毎回の1分1秒を大切にして、自分みたいに悔いが残らないようにしてほしいです。本当に全力で頑張って、来年は笑って引退してほしいです。
空辰乃輔(スポ3=広島・崇徳)
――今日の早慶戦が四年生と一緒にやる最後の試合でしたが、試合を振り返って一言お願いします
川島が直前でけがをして人数が19人になったり、同期の清水がけがで出られなくなったり、始めから不利な状況でした。試合前はみんな、「今年は危ないかも」と言っていましたが、試合が始まると頑張ってくれて後ろの僕のところまで繋いでくれました。なので、早慶戦は成長できたいい試合だったかなと思います。
――自分の番が回ってきたときはどんな気持ちでしたか
チームの想定では、僕は今日やった蓜島の次の林からでした。相手の中で一番強いのが蓜島剛(4年)で、どうやって止めるのかというのがポイントだったんですね。副将の僕で止めてしまうと後ろが1対4になってしまうので、そこは無理にでも取りに行くべきなのかどうか話していました。実際に順番がまわってきたときは最低でも抜かれないようにして後ろに繋ごうという気持ちで臨みました。
――引退される4年生への思いはどうですか
入学する前からとてもお世話になっていて、見学に来た時もご飯に連れて行ってもらったり、部屋に泊めてもらったりしました。僕は4年生に可愛がってもらったり、仲良くしたりしていたので、そんな4年生がいなくなるのはとても寂しいです。今度は自分が後輩を引っ張る立場になるというのは難しい部分もあります。なので、そういうことを続けてきた先輩方はすごかったんだなと思います。
――来年、主将としてどんなチームをつくりたいと考えていますか
個人的には僕の下の代はにぎやかで、自分のやりたいことをやってやる、という人が多いと思います。そういうのを自分は押さえつけるタイプでもないので、彼らのいいところを伸ばしてあげて、締めるところは締める。ガミガミ怒るのではなく、自分を含めて柔道を伸び伸びできるような環境を作りたいですね。
仲島聖悟(スポ2=東京・修得)
――自分の番が回ってきたとき、どんな気持ちでしたか
ほぼ予定通りに試合が進んでいたのでプレッシャーも特になく、いつも通りやればいいと思って試合に入りました。
――出られた時のご自身の調子はどうでしたか
特に調子がよいということもありませんでしたが、いつも別段よいということもないので、いつも通りだったかなと思います。
――今日の早慶戦を戦い抜いて、見つけた課題などはありましたか
一人目と対戦している時から徐々に疲れがでてきたのですが、その時にこのまま引き分けでもいいかなという考えが出てきてしまいました。そういった弱気な考え方だと全国大会の上の方まで勝ち上がった時に負けてしまうのかなと思い、そういった部分は反省するところです。
――先程あげていただいた精神面以外でこれから強化していきたいところを教えてください
後半、釣り手である左手が張ってきてしまって、2人目と対戦する時には激しい組み手争いができるような状態ではありませんでした。もしそこでしっかりと組手争いができる状態、また体力がある状態であったら2人目との結果も変わってきたのかなと思います。心肺機能的な体力の部分と筋持久力的な体力が課題です。