学生柔道団体戦の頂点を決める全日本学生優勝大会がことしも日本武道館で開催された。2日間にわたって熱戦が繰り広げられ、初日には女子戦と男子1回戦、2日目は男子2回戦から行われた。今大会に向け女子3人制では優勝、男子はベスト8を目標に掲げ大会に挑げていたワセダ。しかし、男女ともに3回敗退となり、女子3人制ではベスト8、男子はベスト16と目標には及ばなかった。
★まさかの敗戦に悔しさ残る結果に
悔しさをにじませる小林(右)山口(中央)渡邊(左)
先月開催された東京学生優勝大会で6年ぶりの優勝を果たし、勢いに乗る女子部。今大会では2回戦から登場し、別府大と対戦した。先鋒の渡邊聖未(スポ1=山梨・富士学苑)が開始直後に一本勝ちを収めると、中堅戦も引き分け。大将戦では滝澤美咲(社1=群馬・前橋育英)が粘り強さを見せ有効を奪う。相手校の有力選手に優勢勝ちし、内容差での勝利で2回戦を突破した。続く3回戦は芦屋大との一戦。昨年度の同大会で下した相手であったが、ここで思わぬ結末が待っていた。先鋒で出場した山口悠子女子主将(社4=佐賀商)が「相手に合わせすぎてしまって積極性がなかった」と、終盤に有効を奪われ優勢負け。川田一洋女子部監督(昭55卒)に「勝負してこい」と送り出された中堅の小林真実子(社3=埼玉・常盤)も不意を突かれ、小外刈を決められた。大将戦では渡邊が得意の寝技で白星を挙げたが、早大は1-2で3回戦敗退。「優勝を目指していたし、正直ここで終わると思っていなかったのでとても残念です」(山口)。あまりにも唐突な幕切れに、選手たちは悔しさをあらわにした。
(記事 山本葵、写真 笹澤桜)
★強豪のカベに阻まれベスト8進出ならず
ガッツポーズを見せた浅賀
男子は初戦で秋田大を6-0、2回戦は札幌大を5-2と圧倒し快勝した。迎えた3回戦の相手は強豪・天理大。先鋒の林孝樹(スポ3=富山・小杉)は抑込での一本をとられるが、続く次鋒の圓山泰雄(社3=岡山・作陽)が粘りを見せ、残り5秒での技ありで優勢勝ちを収める。五将の浅賀慎太郎(社3=静岡学園)も終盤に合技で一本勝ちとなり、ガッツポーズを見せた。しかし、中堅の熊田耕成(社3=神奈川・桐蔭学園)、三将の吉野拓馬(社4=石川県立工業)は果敢に攻めたものの、終盤で一本を取られ、惜しくも敗戦を喫してしまう。2勝3敗、後がない状況で迎えた副将戦。井上昴亮(社3=県立山形工業)はなかなか技を繰り出せず、指導回数差で天理大が優勢勝ち。早大の3回戦敗退が決定し、残る大将戦は引き分けに終わる。中盤に流れが来ていただけに悔しい結果となった。
(記事 熊木玲佳、写真 井口裕太)
結果
【女子3人制】
○二回戦 対別府大
先鋒 ○渡邊-佐藤 決まり技:腕ひしぎ十字固
中堅 △山口-△山本 引分
大将 滝澤-○吉原 優勢勝ち
●3回戦 対芦屋大
先鋒 山口-○大西 優勢勝ち
中堅 小林-○櫻井 決まり技:小外刈
大将 ○渡邊-杉本 決まり技:横四方固
【男子】
○1回戦 対秋田大
先鋒 ○吉野-松本 決まり技:小外刈
次鋒 ○林-菅原 決まり技:抑込
五将 △圓山-△近藤 引分
中堅 ○井上-成田 決まり技:送足払
三将 ○下田-柿崎 決まり技:抑込
副将 ○立浪-森田 決まり技:背負投
大将 ○浅賀-兵頭 決まり技:抑込
○2回戦 対札幌大
先鋒 ○井上-大内田 決まり技:払腰
次鋒 ○林-原田 優勢勝ち
五将 熊田-○相木 優勢勝ち
中堅 ○浅賀-加藤 決まり技:内股透かし
三将 ○圓山-今野 決まり技:抑込
副将 ○下田-相木 優勢勝ち
大将 立浪-○高橋 決まり技:腕ひしぎ十字固
●三回戦 対天理大
先鋒 林-○大岩 決まり技:抑込
次鋒 ○圓山-具志堅 優勢勝ち
五将 ○浅賀-正木 決まり技:合技
中堅 熊田-○山本 決まり技:抑込
三将 吉野-○吉田 決まり技:体落
副将 井上-北浦 優勢勝ち
大将 △下田-△長友 引分
コメント
川田一洋女子部監督(昭55卒)
――新入生が入部されて部の雰囲気は変わりましたか
そうですね。優秀な新入生が入ってきて、それに刺激され上級生もより積極的に、意欲的に稽古を積んでいました。非常にプラスになっていたと思います。
――東京学生大会から、今大会まではどのように練習を積んできましたか
東京学生は優勝しましたが、最終的な目標はこの全日本でした。慢心させないようにさせながらもう一度、東京大会直後は厳しい追い込んだ練習をさせていました。
――今日の試合を振り返っていかがですか
ちょっと物足りなさというか、動きが鈍いなという感じはしていました。ただ、今までやってきてくれていたのでそこそこの結果は残してくれるだろうと思っていました。
――今日の結果に対して率直な感想は
残念でならないです。目標は優勝であったので、最低でも決勝までにはたどり着きたかったなと思います。これは、私だけでなく学生もみんながそういう思いでやってきたので、ちょっと残念ですね。
――次の大会まで期間が空きますが、今後は強化していきたい点は
そうですね。学生には強い口調でも話しましたが、もう少し個々の能力を伸ばしてもらいたいという意味でもっと試合のような練習をお互いにしなければならないというような話はしました。そこをそれぞれで感じてくれて、やってくれれば秋の個人戦の大会もまた違った展開がみれるのではないかなと私は思っています。決して能力がないというわけではありません。あるのだけどまだ、うまいこと表に出てきてくれないという部分があるので、そこに期待をしています。
山口悠子女子主将(社4=佐賀商)
――全日本学生優勝大会(全日本)を迎えるにあたってのチームの雰囲気は
チームの雰囲気は悪くはなかったのです。ただ、東京学生(東京学生優勝大会)とは違った全日本独特の空気にのまれてしまった感じはありました。
――2回戦の別府大との対戦は内容差での勝利でした
全日本なので試合前に監督(川田一洋女子部監督、昭55卒)からも「簡単に勝てる試合はないからな。泥くさくいこう」と言われていて。2回戦は泥くさく戦って僅差(きんさ)で勝てたということで、こうした勝利をチームとしても大切にしていかなければならないなと思いました。
――戦略としては、先鋒戦と中堅戦で勝負を決める予定だったのでしょうか
そうですね。別府大のポイントゲッターは大将の選手だったので、私が中堅で勝てば後ろに負担をかけずに試合が決まるということでした。もう少し私が序盤でポイントを取ることができれば良かったんですけど、それができなかったのは責任を感じています。ただ、それでも滝澤(美咲、社1=群馬・前橋育英)が粘ってくれたので、彼女にはとても感謝しています。
――3回戦の芦屋大戦では先鋒として出場されましたが、ご自身の試合を振り返っていかがでしたか
絶対に取らなければならない試合だったのですが、自分の柔道が何一つできていなくて。ポイントも引き分けではなく(相手に)取られてしまったので、私の試合が一番の敗因になってしまったと思います。
――試合中に川田監督も「決め切れ」、「そこで引くな」と声掛けをしておられましたが、積極的な柔道ができなかったということでしょうか
そうですね。相手に合わせすぎてしまって積極性がなかったですし、自分のいいところが一つも出せませんでした。良くない試合をしてしまったと思います。
――中堅戦と大将戦はご覧になっていていかがでしたか
小林(真実子、社3=埼玉・常盤)は昨年戦って負けていた相手だったので借りを返すつもりで試合に臨んだと思いますが、取られても仕方がないポジションでした。私が先鋒戦を取るか引き分けるかによって後ろの2人の負担はかなり変わったと思うので、小林にも申し訳ないことをしてしまったと思います。渡邊(聖未、スポ1=山梨・富士学苑)は一本勝ちしてくれてその点は本当に良かったのですが、彼女の試合を見ていて私と小林が渡邊に頼りすぎていたのかなということを感じました。そこは先輩として情けないし、だめな部分だったと思います。
――今回のベスト8という結果をどのように受け止められていますか
優勝を目指していたし、正直ここで終わるとは思っていなかったのでとても残念です。自分たちにとっては最後の団体戦だったので、情けないという気持ちでいっぱいです。
――今後は夏休みを挟み個人戦のシーズンとなります。部全体としてはどのような練習をしていきたいですか
きょうの結果の反省をしながら練習することはもちろん、人数が少ない中での練習になるのでもっと一人一人が目的意識を持って練習しなければならないと思います。遠慮がちになっている部分をなくしていく練習がしたいです。
吉村拓郎監督(平3卒)
――天理大との一戦を振り返ってみていかがですか
一言で言ってしまえば、(勝利が)欲しかった試合でした。展開が少しでも変われば勝てた試合でしたね。
――中盤まではいい流れで進んでいましたね
相手(天理大)もさすがに地力がありました。勝負に出ないといけないところもありましたから、よくやったと思います。強豪の天理大にここまで追い詰めたというのは一つ自信になったのではないかと思います。
――どのような部分で力の差を感じましたか
地力はやはり違いますよね。ですが、うちと同様、天理大もベストメンバーではありませんでした。天理大の柔道はしっかり組んでやる柔道でうちも組んでやるです。その中で地力が違えば、結果として地力があるチームが勝つということでしょうね。
――1、2回戦は快勝しましたが、この結果はどのように捉えていますか
1回戦は6-0という結果で、多少アジャストしていないところもあったので、そこをうまく2回戦で修正して、力のある札幌大に快勝できたというのは成長したところでしょうね。
――手ごたえをつかんだ大会になりましたか
目標のベスト8に手が届かなかったのは非常に悔しいことですが、課題としていた足技、寝技といった部分を出せる選手も出てきたので、そこは一定の成果が出ているかなと思います。
――試合後、選手たちに何か声をかけましたか
選手に対しては、天理大をここまで追い詰めたということの評価をしました。あとは先ほど話した足技、寝技ができていることも評価しました。やはり、フィジカルの面は一朝一夕ではどうしようもならないところで、地道にやっていくしかないと、ただし悲観することもないし、慢心をしてもいけないし、そこは後期の試合に向けて粛々とやっていこうと話をしました。また、試合に出られなかった選手、けがであったり選ばれなかった選手もいるので、そういう選手にはまた後期に向けて頑張ってほしいと話をしました。
――フィジカルの強化が夏のテーマになりそうですか
そうですね。ただし、これは年間を通してやっていかないといけない話で夏場だけではできないのでそこは並行してやっていくしかないかなと思います。うちのチームの一番の課題ですからね。あと、これは当たり前のことですが、日々の練習からやはり試合を想定して意識を持ってやっていくことが大事かなと。今回の結果をもってどのように取り組んでいくのかは、1週間休みがあるので反省、ミーティングをして修正していきたいと思います。
――先月の東京学生優勝大会から今大会までどういった調整を行ってきましたか
調整としては変わりはなかったですが、主将の立浪(祐、社4=富山・県立小杉)が教育実習で3週間いなかったので、その中でのチーム作りが難しかったですね。
立浪祐主将(社4=富山・小杉)
――今日の結果について率直な感想をお願いします
東京学生優勝大会につづいて今回ベスト8を目指していたのですが、天理大に敗れて非常に悔しいです。
――まずきのうの1回戦、秋田大との試合は6-0と快勝しましたがいかがでしたか
先鋒から順調に流れをしっかり作ってきて、みんな持ち味を出して試合に臨めたと思います。途中で私が少しもたもたしてしまったのですが、みんなよく体も動いて試合に取り組めたのではないかと思います。
――出場されたきょうの札幌大との2回戦、5-2とチームとしては勝利しましたが、個人として戦った感想をお願いします
自分の前には勝負は決まっていたのですが、ああいう大きな相手に対しては自分も苦手なところがあって、チームに迷惑をかけてしまい申し訳ないなと思います。
――天理大との3回戦は振り返っていかがですか
次鋒の圓山、五将の浅賀、そのあとの熊田と、ワセダの見せ場を作ることができたのは非常に自信につながると思います。ワセダに流れが来ていたのですが、相手も強豪ですから、そこで取りきれないというのはやはり稽古の厳しさが足りないのだと思います。
――具体的な敗因は稽古の甘さということですか
そうですね。あとはフィジカルの部分で劣っていますし、ベスト8に上がるにはもっと厳しい練習をして、ウェイトトレーニング、ランニングトレーニングもしっかりやって身体を強くしないといけないと感じました。
――このあと次の大会まで間が空きますが、夏はどのようなことに取り組まれますか
個人戦までの2ヵ月ほどの間で、走り込みとウェイトトレーニングをしっかりやって身体を大きくすること。あとは、もっと足技を使ったり連絡変化の技を使ったりできるように、技術を向上させていけたらと思います。
――今後のご自身の具体的な目標は
もちろん個人戦で全日本学生に出場することが目標になってくると思います。後半には早慶戦もありますから、そこで絶対に勝利を収めたいと思います。