今年度で節目の80回目を迎えた早稲田大学・慶応義塾大学定期戦(早慶戦)。本大会を持って4年生は射撃部を引退となる、シーズンを締めくくる一戦だ。早大は、10m立射60発部門、50m伏射60発部門の2競技で慶大に勝利を収め、早慶戦3連覇を達成。4年生を笑顔で送り出した。
主将を務めた江澤
独特のレギュレーションで行われる早慶戦。男女混合で、10m立射60発部門、50m伏射60発部門、50m三姿勢60発部門の得点を競う形式だ。はじめに全ての団体メンバーがスタートしたのは10m立射60発競技。江澤誠主将(文構4=東京・早稲田)、紙田梨華子(社2=茨城・清真学園)、鈴木志佳(人4=東京・目黒星美学園)を起用した。
ポイントゲッターとなったのは鈴木。「部品の不具合であまりいい結果が出なかった。部内新記録を更新したかったので残念」と振り返ったが、616.6点の高得点を撃ち、3年連続の個人優勝となった。また紙田も、「後半なんとか持ちこたえて、600点に乗せられた」と、前半の不調を後半で挽回し、全日本学生選手権(インカレ)同様に600点を超える射撃を見せた。江澤は「成績はどちらもインカレよりも下がってしまって。成績に納得はいっていない」としつつも、「部員のみんなが今だせるかぎりのベストを尽くしてくれたことで、早慶戦に勝利することができた」と主将としてチームの勝利を喜んだ。
3年連続の個人優勝となった鈴木
50m伏射60発競技には髙木薫(法4=茨城=竜ヶ崎一)、椎野凌(文構4=東京・攻玉社)、吉間民音(教育3=岡山・津山)を団体メンバーに選出。髙木はピストル競技を主に行なっているが、在学中にライフル競技にも挑戦。初のレギュラーメンバーとなった。「最初で最後のレギュラーになれて。本当にうれしくて」と語る。得点も600.4点を撃ち、「部に直接的に貢献するというのが今までできなかったので。それができて本当によかった」と笑顔で大会を終えた。椎野も早慶戦では初のメンバー入り。598.5点となり「納得はできないですが、やり切った」と大会を振り返った。
レギュラーメンバーとなった髙木
50m三姿勢60発競技では宮本裕喜(政経3=東京・早稲田)、前田留那(スポ4=埼玉・栄北)、杉山瑞季(スポ3=神奈川・横須賀学院)を起用した。長年チームをけん引した前田は、伏射において点数を落とし、「いつもより(3姿勢通して)10点以上下がってしまって。納得のいく試合ではなかった」と語った。それでも膝射、立射では今回大会もチームのポイントゲッターであり、流石の実力を発揮した。また杉山は「ここ最近ずっとKで悩んでいて、今日も本当に納得のいかない結果。最近はSが自分の中で自信がついてきて。今日も寒い中では思い通りに撃てた」と競技を振り返る。来季以降、杉山や宮本にはチームをけん引する役割が求められるだけに、さらなる成長が期待される。
的を見据える前田
昨年同様に新型コロナウィルスが猛威を振るい、シーズン中の大会でも延期が発生。例年11月上旬に行われる早慶戦は、12月上旬での開催となった。寒さなどの影響も大いにあったと考えられるが、それでも2競技で慶大に勝利し、総合優勝、並びに3連覇を達成した。「3競技みんなが頑張ってくれて3連覇ができた」と前田。また、「早慶戦はみんなで戦っている感じがして。上級生の方々がすごく心強くて、優勝できて本当にうれしかった」と紙田。シーズン中の各大会以上に、チームが一体感を持ち戦った早慶戦となった。「後の世代に思いを託したい」(江澤)。「自分が引っ張っていけるような存在に」(杉山)。4年生は射撃部での、そして下級生は4年生からの学びを胸に、新たな一歩を踏み出す。
早大射撃部一同。最前列は4年生
(記事、写真 橋口遼太郎)
全出場選手結果
【10m立射60発競技】
▽団体 1814.0点(優勝)
江澤 誠 594.9点
紙田梨華子 602.5点(3位)
鈴木 志佳 616.6点(個人優勝)
▽個人
岡本 健人 608.7点(2位)
岡部 藍 600.9点(5位)
小久保綾華 599.6点(7位)
松本 零 597.9点
小林 大輔 595.5点
須田 智晴 591.7点
高橋 祐衣 591点
廣島 温弓 589.8点
泉田 瞳 572.1点
島田明日嘉 569.6点
【50m三姿勢60発競技】
▽団体 1660点
宮本 裕喜 543点
前田 留那 565点(2位)
杉山 瑞季 552点(5位)
▽個人
岩脇 輝和 546点(6位)
松本 零 545点(7位)
高橋 祐衣 525点
江澤 誠 523点
吉間 民音 523点
髙木 薫 520点
渡辺 泰央 486点
【50m伏射60発競技】
▽団体 1792.9点(優勝)
高木 薫 600.4点(2位)
椎野 凌 598.5点(3位)
吉間 民音 594.0点(5位)
▽個人
陶山 絹香 577点
岩脇 輝和 574.1点
渡辺 泰央 529.6点
【総合】
早稲田大学 5266.9点(優勝)
慶応義塾大学 5247.9点
コメント
江澤誠主将(文構4=東京・早稲田)・椎野凌(文構4=東京・攻玉社)
――競技を振り返ってください
江澤 自分の成績はどちらもインカレよりも下がってしまって。天候とか気候とかのコンディションの問題があったかとは思いますが、部員のみんなが今だせるかぎりのベストを尽くしてくれたことで、早慶戦に勝利することができました。自分の成績に納得はいっていませんが、無事に早慶戦を終えられて、尚且つインカレで絶対に早慶戦に勝つと言ったことを達成できて。うれしく思っています。
椎野 自分自身の今日の競技を振り返ると、納得はできていないです。納得のいく点数ではなかったのですが、撃っている間、他の人たちがカバーしてくれると思いながらレギュラーを撃っていました。その分の気持ちの軽さで、慶応に勝っていた部分があったのではないかと思います。納得はできないですが、やり切った気持ちはすごくありました。
江澤 個人的には、新人戦も一応出られるには出られるので、最後を飾るチャンスはまだあるからという、願望です。
椎野 チャンスがあれば(笑)。
――この試合に向かうまで、どんな思いでしたか
江澤 そもそも、自分も椎野も早慶戦のレギュラーが初めてでした。いつもの学連の試合よりもプレッシャーがやはり大きくて。それまでAR一本に絞っていたので成績の向上はあったのですが、やはり本番の緊張感と言いますか。なおかつ観客がいっぱいいるのも久しぶりであったので。いつも以上に緊張して。それでもなんとか、レギュラーとして元っめられる点数の及第点以下ではありますが、なんとか足を引っ張りすぎない程度に撃てたことはうれしく思っています。
椎野 去年の先輩たちが圧勝だったので、自分たちが同じ舞台で、同じように勝てるのかというのがすごく心配になってきて。やはり直前になったら手が震えたりする部分はありました。実際に撃っている間もそのことが頭を過ぎったりもしましたが、逆に緊張もいい感じに、武者震いに使えたというか。それが全部、いい結果につながったのかなと思います。
――射撃部の4年間を振り返っていかがでしたか
江澤 色々なことがありましたが、4年間の最高のポイントとして、部活に入ってよかったと今でも言えると思います。
椎野 一言で言えば、本当に入ってよかった。入部してよかった、という気持ちですね。何より自分自身は元々スポーツにいいイメージを持っていなくて。それを払拭したい思いもあって体育各部を選んだのですが、それが本当に、実力が数値化される射撃という競技でよかったなと心から思っています。
――同期の4年生はいかがでしたか
江澤 同期の4年生が色々な紆余曲折がありました。それでも、最後は一丸となってまとまれたのかなと思います。思い残すことはないです。今後も同期で定期的に会えるように、この縁を大切にしたいと思います。
椎野 一言でいいでしょうか。最高の同期でした。
――最後に、後輩に一言いただけますか
江澤 自分たちがコロナがあって、2年生から気がついたら4年生みたいな感じで。自分たちが先輩から教わったことを、そのまま後輩たちに教えられたのかな、という不安はありますが、この大会を通しても後輩たちがどんどんと成長しているのを見て、潔く引退して。後の世代に思いを託したいと思います。
椎野 コロナがあったので、少し大変な時期に入部した子だったり、大変な時期に部活をやっていた人たちが大半ですが、自分が後輩たちを見ていても、どんどんと今日の大会でもいい点数を出したりとか。成長をしている場面が見られたので、とにかく来年の早慶戦が楽しみです。是非見にきたいと思っています。
鈴木志佳(人4=東京・目黒星美学園)・髙木薫(法4=茨城=竜ヶ崎一)
――今日の試合を振り返ってください
鈴木 今日は部品の不具合であまりいい結果が出なかったので、残念でした。ただ、ここで射撃を引退するわけではないので、来年以降もいい結果が出せるように練習し続けたいと思います。
――結果としては良いものが出ていますが
鈴木 早慶戦の優勝ですかね、ただ自分の記録として部内新記録を更新したかったので、そこは残念です。満足はしていないです。
――髙木さんは今日いかがでしたか
髙木 最初で最後のレギュラーになれて。本当にうれしくて。今週はライフルに捧げて頑張った甲斐が、しっかりと身を結び、早慶戦優勝につなげることができたので。部に直接的に貢献するというのが今までできなかったので。それができて本当によかったです。
――鈴木さんはお菓子やお手紙を部員の皆さんに配る風景も見られました。どういった思いだったのですか
鈴木 今まで、高校まででやってきたことをやっただけなのですが、一応ここで4年生の、早稲田大学の学生としての試合は一区切りなので。後輩に今後頑張ってもらいたいなという思いで、ひとりひとりに手紙を用意させてもらいました。
――射撃部の4年間はいかがでしたか
鈴木 出会えてよかったです。射撃と、同期と。先輩、コーチ、OBOG。自分のおじいちゃんに当たるような歳であったり、お父さんの歳に当たるような人が、アドバイスをくれたり褒めてくれたりすると、家族が褒めてくれたような気持ちになってうれしかったし、同期とかは一生の友達ができて。本当によかったなと思います。
髙木 早稲田に最初ピストル選手がいなくて。でも、射撃場がすごく綺麗だからという理由で選んだのですが、こうやって早稲田に入ってなかったらライフルも絶対やっていないですし。この同期とか後輩にも会えていないので。本当に幸せな4年間を過ごせて。よかったです。
――この場で琳さん(佐藤琳、スポ1=東京・成立学園)に伝えたいことなどありますか
髙木 今年の早慶戦一緒にピストル撃てなくてごめんね!(笑)。ごめんね本当に。体が足りればピストルも撃っていました。
前田留那(スポ4=埼玉・栄北)・杉山瑞季(スポ3=神奈川・横須賀学院)・紙田梨華子(社2=茨城・清真学園)
――今日の競技を振り返ってください
前田 結果的にはいつもより10点以上下がってしまって。納得のいく試合ではなかったのですが、3競技みんなが頑張ってくれて3連覇ができたと思うので。みんなにはありがとうと伝えたいです。
杉山 私も結果的には、普段やインカレよりも10点以上低い点数でした。ここ最近ずっとKで悩んでいて、今日も本当に納得のいかない結果でしたが、最近はSが自分の中で自信がついてきて。今日も寒い中では思い通りに撃てたかな、という結果をSでは撃てました。自分の結果としてもよかったかなと思いますし、総合優勝もちゃんとできたので、他のレギュラーの方にも感謝しますし、後ろについてくれた1年生とかにも、本当にありがたいなと思っています。
紙田 前半があまり調子が良くなかったのですが、後半なんとか持ちこたえて、600点に乗せられたことはよかったかなと思っています。早慶戦はみんなで戦っている感じがして。上級生の方々がすごく心強くて、優勝できて本当にうれしかったです。その一員になれてうれしいです。
――寒さはかなり影響があるものですか
前田 ARに関しては、指がかじかんでしまって引けなくなったり。
杉山 逆に、トリガーをガッと引いてしまうこともあります。SBは…Sが特にもう、足をガタガタガタガタさせながら、耐えろ!って感じです(笑)。
――杉山さんは最近Sの調子がいい点で、どのあたりに要因があったり、いつ頃から、というのを教えてください
杉山 秋関本戦で初めてARのレギュラーを務めさせていただいて。ARを重視して自分は練習していました。その時に、SBのSにも通ずる姿勢で。自分はこの姿勢で撃つというのがちゃんと分かったというか。定められたので、ARも結構点数が上がってきて。SBのSもそれで安定してできてきたのかなと思います。
――紙田さんは、前回のインカレで、後半に少し点数を落としてしまいましたが、今回は後半に点数が上がっていきました。どのような変化がありましたか
紙田 前半が本当に良くなかったので。切り替えようと思って後半頑張りました。
――前田さんは今日が早稲田での最後の試合となるかと思います。どのような思いでいらっしゃいましたか
前田 いつも通りやれば勝てると思ったので、みんなを信じて射座に入りました。撃ち終わった後は、いつもポイントゲッターとしてやっていたので、不安な気持ちはあったのですが、みんなが頑張ってくれていたので。優勝することができてうれしく思います。
――早稲田の射撃部はいかがでしたか
前田 結構自由にやらせてもらって。みんなで和気あいあいと楽しく、のびのびと射撃をすることができました。良い環境であったと思います。
――逆に、4年生の方々はどんな方々でしたか
杉山 射撃に対して、熱い思いを持っている方が多いなと、入部した時から思っていました。4年生に少しでも追いつけるように、なんなら追い越せるようにというのを目標にやっていました。
紙田 すごく射撃も上手くて。かつ、皆さん暖かくて。たくさんアドバイスとかもくださって、本当に卒部してしまうのが寂しくて。もっと一緒に射撃したいなというのが本音です。
――女子部では志佳さんや留那さんが卒業なさってしまうのはかなり大きいかと思います。何か後輩たちへの思いはありますか
前田 一生懸命な後輩がすごく多くて。4年生もさっき言ってくれていた通り、熱い、射撃を一生懸命やっている人が多いですが、それを見て下級生も頑張っている人が多いというのが見てわかるので。また早慶戦も勝てると思います。頑張ってね。(笑)。
紙田 頑張ります。
――下級生のお二人は、大学の公式戦はしばらくなくなります。どのように過ごしていきたいですか
紙田 オフが他の人と差をつけるチャンスだと思うので。このまま練習を継続して、3月の新人戦に点を伸ばせるように頑張りたいと思います。
杉山 志佳さんと留那さんが抜けてしまう穴はすごく大きいので。特に3×20では秋関からずっとレギュラーを務めさせていただいているというのがあるので、今後は留那さん志佳さんの代わりに引っ張っていける存在になれるといいなと思います。また、ARではまずレギュラーになることを目指し、ARも自分が引っ張っていけるような存在になれるといいなと思います。