大学最高峰の舞台である全日本学生選手権(インカレ)が、従来の予定から1か月遅れ、長瀞射撃場で開催された。秋が深まり、木々が彩りを鮮やかに染める中で行われた今回大会。男子部は総合団体7位と昨年から順位を落とす結果に。一方で女子部は総合団体4位と順位を上げる結果となった。また、個人では各々が数字を伸ばし、来月に行われる伝統の一戦、早慶戦へとつながる結果となった。
女子部をけん引した前田
男子部はレギュラーメンバーに、江澤誠主将(文構4=東京・早稲田)、宮本裕喜(政経3=東京・早稲田)の実力者2名に、10m立射60発競技には椎野凌(文構4=東京・攻玉社)を、50m三姿勢60発競技には吉間民音(教育3=岡山・津山)を加えて大会に臨んだ。
狙いを定める椎野
各人、競技によって明暗が分かれる結果となった。10m立射60発競技において飛躍を遂げたのは江澤。「2年生のちょうどこの時期」以来の600点越えとなる、601.3点を記録。「2年間迷走し続けて、やっと600点というハードルを超えられた」と振り返った。一方で宮本は同競技において伸び悩み、590.7点となった。「不甲斐ないというか。自分でも納得がいかない結果になってしまった」と唇を噛む。ところが、50m三姿勢60発競技では、宮本は前回大会となる関東学生選手権秋季大会(秋関)から得点を維持。その一方で江澤は点数を落とし「秋関同様、思ったような結果が出せなかった」と悔やんだ。加えて吉間は「SB(スモールボアライフル)を持ち始めてから最悪ぐらいに悪い」とショッキングな結果に。早慶戦での雪辱が待たれる。
ARで久々の大台となった江澤
女子部では鈴木志佳(人4=東京・目黒星美学園)、前田留那(スポ4=埼玉・栄北)に、10m立射60発競技では初レギュラーとなる紙田梨華子(社2=茨城・清真学園)、50m三姿勢60発競技には杉山瑞季(スポ3=神奈川・横須賀学院)を加えて団体戦に臨んだ。
今回大会でチームをけん引したのは前田。10m立射60発競技では621.8点を、50m三姿勢60発競技では577点をそれぞれ撃った。秋関からどちらも点数を伸ばしたが、「少しずつ(点数は)伸びていますが、もっともっとできると思う。(早慶戦に向けて)今回できなかったことをリベンジするというか。改善していきたい」と前を見据えた。また、杉山も秋関から点数を伸ばし、成長をみせた。初レギュラーとなった紙田は「レギュラー発表されてから、ずっと緊張した感じで今日を迎えました」と語りながらも、10m立射60発競技で600点を超える上々の成績。「6シリーズ目は止まらなくなってしまった」と、97.1点に終わった第6シリーズを悔やんだが、未来への期待が膨らむ内容となった。一方、秋関において10m立射60発競技で個人優勝を成し遂げた鈴木は奮わず。早慶戦で必ずや挽回してくれることだろう。
初レギュラーとなった紙田
個人参加となる10mエアピストル立射60発競技。髙木薫(法4=茨城・竜ヶ崎第一)、佐藤琳(スポ1=東京・成立学園)の2名が出場した。佐藤は秋関から点数を下げる悔しい結果に。「練習で少し気になっていた、左下の集弾が拡大して試合に出てきてしまった」と語る。一方の高木は秋関から点数を上げた最後のインカレとなった。
得点を伸ばした髙木
「男子に関しては4年生に申し訳ない」と宮本。女子も、前田や杉山は点数を伸ばした一方、悔しい思いを抱いた選手もいた。インカレを通して、続く早慶戦へと各々が強い思いを抱いたことは確かだ。「4年生と笑顔で終えられればいい」(宮本)。「悔いのないよう頑張って、練習もきちんとして、笑って終われるように」(前田)。思いはひとつ、早慶戦での勝利である。
「絶対に勝ちます」と江澤は主将として高らかに宣言。シーズン最終戦となる伝統の一戦で3連覇を成し遂げ、有終の美を飾りたい。
(記事、写真 橋口遼太郎、写真 高橋優輔)
全出場選手結果
【男子10m立射60発競技】
▽団体 1783.5点(11位)
宮本 裕喜 590.7点
椎野 凌 591.5点
江澤 誠 601.3点
▽個人
岡本 健人 595.7点
小林 大輔 595.2点
松本 零 593.4点
岩脇 輝和 585.4点
廣島 温弓 583.2点
久保木智也 576.2点
吉間 民音 568.1点
島田明日嘉 567.2点
須田 智晴 566.5点
渡辺 泰央 564.5点
伊藤 雅峻 547.5点
柴 拓夢 509.7点
【女子10m立射60発競技】
▽団体 1844.4点(5位)
鈴木 志佳 619.8点
前田 留那 621.8点
紙田梨華子 602.8点
▽個人
杉山 瑞季 609.1点
岡部 藍 600.6点
小久保綾華 599.6点
陶山 絹香 588.6点
高橋 祐衣 588.1点
泉田 瞳 574.4点
【男子50m伏射60発競技】
▽個人
椎野 凌 606.8点
宮本 裕喜 601.3点
吉間 民音 594.7点
江澤 誠 590.1点
岩脇 輝和 585.6点
松本 零 579.8点
【女子50m伏射60発競技】
▽個人
前田 留那 605.6点
杉山 瑞季 603.5点
鈴木 志佳 603.4点
髙木 薫 593.0点
陶山 絹香 584.8点
高橋 祐衣 561.3点
【男子50m三姿勢60発競技】
▽団体 1615点(7位)
宮本 裕喜 555点
江澤 誠 519点
吉間 民音 519点
▽個人
椎野 凌 529点
岩脇 輝和 529点
松本 零 517点
渡辺 泰央 500点
【女子50m三姿勢60発競技】
▽団体 1697点(3位)
前田 留那 577点 個人3位
杉山 瑞季 563点
鈴木 志佳 555点
▽個人
髙木 薫 550点
高橋 祐衣 530点
陶山 絹香 525点
【女子エアピストル10m立射60発競技】
▽個人
佐藤 琳 545点
高木 薫 535点
男子総合団体 3398.5点(7位) 女子総合団体 3539.4点(4位)
コメント
江澤誠主将(文構4=東京・早稲田)
――個人として今回大会はいかがでしたか
明日P60(伏射60発競技)が残っているのですが、秋関で申し上げていたことの反省からいたしますと、AR(エアライフル 、10m立射60発競技)は自分の中でも、100%満足のいく結果ではないですが、レギュラーとして求められる及第点ギリギリ届かないくらいで、なんとか最後の試合を終えることができたと思っています。3×20(50m三姿勢60発競技)に関しては秋関同様思ったような結果が出せず、早慶戦では他の部員がレギュラーを務めてくれると思うので、望みのある種目に絞って、早慶戦まで走り抜けていきたいと思います。
――ARは600点を超えてきたというのは手応えもあるのではないでしょうか
600点を前に正式な大会で取ったのは、2年生のちょうどこの時期であったので。2年間迷走し続けて、やっと600点というハードルを超えられたと思っているので、よかったです。また競技としては続けるつもりですが、AR種目は大学生で引退しようと思っているので、終わってもいいかなと踏ん切りのつく点数だったと思っています。
――これ以降はどのようにして続けていく形になるのですか
来年は就職をしているので、土日に個人でという形です。現在活動を全然していないのですがクラブにも入っているので、そちらの方でも成績を出して行けたらと思っています。
――チームとしてはいかがでしたか
特に3年生以下の後輩が頑張ってくれた大会であったなと思っているので。来年以降、今年以上の結果が残せるよう頑張って欲しいと思います。
――最後、早慶戦に向けて一言お願いします
絶対に勝ちます。
前田留那(スポ4=埼玉・栄北)
――今回大会を振り返ってください
初日は3×20を撃ったのですが、前できていたことが今あまりできなくなっていて、少し迷走中というか。うまくできなかった部分が多くあるのですが、その中でも今のできることを出せたかなと思っています。今日はARを撃ったのですが、今日も自分の中ではあまりいい点数ではなくて。まだまだ点数を伸ばせたと思います。早慶戦では3×20を多分撃つことになると思うので、早慶戦でリベンジしたいと思っています。
――今ご自身的には納得が言っていないというお話がありましたが、点数的には秋関から伸ばせてはいますよね
そうですね。少しずつ伸びていますが、もっともっとできると思うので、今後も頑張っていきたいと思います。
――この1か月くらいでどんなことがより改善したと感じていますか
試合が立て続けにあってあまり練習ができてないのですが、自信のつき方とか考え方が変わったかなと思っています。
――次回に向けてこんなことを練習していきたいと言ったことはありますか
早慶戦で今回できなかったことを改善していきたいと思っているのですが、3×20のK(膝射)が一番納得いっていなくて。銃を持つ前に体の感覚や重心、基礎から作り直していきたいと思っています。またP(伏射)で今回、満射ではなく99点というのが2回続いてしまったのですが、そういった緊張感のあるところできちんと満射できるように練習を繰り返したいと思っています。S(立射)ではもう少し構銃、構える回数を増やして、ARとSB(スモールボアライフル)のSは銃の重さやバランスも変わってくるので、Sの姿勢を取って、もっと銃のバランスをきちんと理解して、残りの2、3週間の期間で今回できなかったことをリベンジするというか。改善していきたいです。
――早慶戦に向けての意気込みを聞かせてください
1年生の頃からレギュラーをやらせていただいているのですが、4回目、最後となりますので、悔いのないよう頑張って、練習もきちんとして、笑って終われるようにしたいと思います。
宮本裕喜(政経3=東京・早稲田)、吉間民音(教育3=岡山・津山)
――競技を振り返ってください
宮本 3×20の、点数は秋関と一緒だったのですが、Kは秋関が終わってから見直して良くなって、結果としてもそこは良くなったのですが、Sが今までで最低の点数を撃ってしまって。その原因がまだつかみきれていないのですが、早慶戦に向けてそこを見直していかなければならないというのが3×20の率直な感想です。
吉間 合計点数から先に述べると、SBを持ち始めてから最悪ぐらいに悪くて。姿勢ごとの評価をしてみると、Kで寒さがあったのかトリガリングをミスしてしまったのか、詳しくはわかっていないですが、6.9という点数を撃ってしまったことで、一度立ったりして気持ちを切り替えようとはしてみましたが、最後まで切り替えが上手くいかず、いつもよりも10点以上低い点数を撃ってしまったということがKでまずあって。射座を出るなど自分なりに工夫をしてみましたが、気持ちの整理などができていない面があったのか、Pでも同じように点数を大きく落としてしまい、苦手としているSも普段と同じかそれより下の点数が出てしまって。KとかPで稼ぐのが自分の点数のいつもの感じなのですがそれができず、合計点数もそのように低くなってしまいました。
――なかなか立て直せなかったという感覚でしょうか
吉間 そうですね、前日練習や普段の練習では結構いい感じだという自信があったのですが、本番はダメでした
宮本 寒いというか。寒さに慣れていないという感じでした。
吉間 SBを持ち始めてから10度付近で実射をしたのが初めてだったので。カイロとかは持っていましたがあまり活用できませんでした。
――立て直すのは難しいものですか
吉間 メンタル弱いよね。
宮本 どうなんだろう。俺はわりと射座でたら立て直せるタイプで。ARの話になるのですが、ARは結果から言うと点数がかなり落ちて。こちらは不甲斐ないというか、自分でも納得がいかない結果になってしまいました。最初の1、2シリーズが全然ダメで。ここは一回気持ちを切り替えようと射座を出て。そしたら同期がいたので同期と話して。「気持ちを切り替えていったら」と言ってもらって、それを経て戻ったらいつもの点数に戻ったので。僕は気持ちの切り替えが、点数が悪いけどうまくいったかなというのがARの面でありました。それはSBではなかった?
吉間 普段射座とか出ないタイプなので。結構勇気を持って出たりしてみたのですが、射座を出て気持ちを切り替えるためにも姿勢を作り直して、毎回ちょっと姿勢は違ってくるとは思いますが、それでも自分の最低の実力はせめて出せるくらいの練習をしていかなければならないと感じました。
――団体メンバーではなかったですがARはいかがでしたか
吉間 ARも正直目標の点数には程遠い点数になってしまって。その挽回をSBでしたいと考えていたのが本音なので…。ARと3×20が終わりましたが、その2つ的にはショックです。
――早慶戦に向けて取り組むしかないという形でしょうか
吉間 早慶戦はSBでレギュラーに入って勝利に貢献できるように、今後も練習を頑張っていきたいと思います。
――宮本さんは今後に向けていかがでしょうか
宮本 インカレは男子に関しては4年生に申し訳ないなという思いがあったので
吉間 私も同感です
宮本 早慶戦は4年生の本当に最後の大会になるので、自分がまずレギュラーに選ばれるように頑張って。4年生と笑顔で終えられればいいなと思います。
――どんな練習をしていきたいですか
吉間 先ほども言ったように姿勢を頻繁に変えて、1回座ったら立つのってKとかでは結構嫌なのですが、頻繁に5発ごととかで立って、気持ちを1回一新するというか。完全にリセットした状態でまたしっかり本射の気持ちで臨む練習とかもしていきたいし。それこそ射座入りの練習をして、Kでうまく波に乗ることが個人的に重要だと思っているので、それができるようになればいいなと思います。
宮本 僕は今回、ARもSBも両方とも立射があまり良くなかったので、とりあえずKとPは最低限、現状維持をするとして、Sに関しては実射ではなくてそもそももう一度体づくりを見直すというか。構えて、本当に止まっているかなというのを、早慶戦まで時間はないですがやって、そこから実射をたくさんするという。2段階でやって行こうかなと思います。
紙田梨華子(社2=茨城・清真学園)
――今回、初のレギュラーとなりました。決まった際にはどのようなことを感じましたか
聞いたときは、正直自分がなるとは思っていなかったので、びっくりしたというのがあります。試合の経験も浅いので、大丈夫なのかなという不安がありました。レギュラー発表されてからずっと緊張した感じで、今日を迎えました。
――今日実際に撃ってみて、やはり緊張をしましたか
やはり緊張しました。反省点がたくさん見つかった、苦いレギュラーデビューだったかなと思います。ただ、次に生かせる試合になったかなと自分では思っています。
――今回の内容を振り返ってください
いつもに比べたらそんなに調子がいいというわけではなかったのですが、その中でも自分のできることをやって、5シリーズ目までは行けたのですが、6シリーズ目は止まらなくなってしまって。それで焦りや緊張がすごく出てしまって。最後すごく反省をする6シリーズ目であったかなと思います。
――そこは次回につなげて行けますかね
早慶戦があるので、そこが本当に最後の4年生との試合になるので、そこまで練習を頑張っていきたいと思っています。
――2年生にして600点を超えていらっしゃいます。どのように練習をしてきたのですか
ひとつ、夏合宿の時に初めてやった練習法があって。30秒15秒という練習なのですが、それをやったときに自分が今まで覗き込みが長かったということがわかって。それを直してからすごく点数が上がりました。その練習法を普段の練習にも取り入れるようにして練習しています。
――30秒15秒というのはどんな練習なのですか
30秒でチーク付けまで終わらせて、15秒の間に撃ち終えるという感じです。初めてそれをやった時に全然15秒で撃ち終わらなくて。もう15秒立っちゃったんだという感じで。そこで、今までの自分はすごく長かったんだ、というのがわかって。それを直すような練習をし始めてから、結構点数が伸びました。
――初めてのインタビューなのでお聞きしますが、どうして射撃部に入部なさったのですか
元々射撃に興味があって。小さい頃にオリンピックの競技として射撃があるのをみて、それをみてから射撃をやってみたいなというのがあって。でもなかなか日本で射撃や銃を扱えることはないことですし、やはり大学で射撃部があるところもそんなに多くはないと思うので、早稲田大学に入学が決まって、射撃部があるということで、せっかくならやってみようかなと見学に行ってみて。すごく部の雰囲気が良かったので入部を決めました。
――元々射撃に興味があったのですね
そうですね。
――中高時代は別の競技をやられていたのですか
中高では弓道をやっていました。
――少し近いものもありますか
そうですね。全く違うものという感じではなくて、似ているところもあるので、すごく競技に入りやすかったというのがあります。
――最後に、早慶戦に向けてどんな準備をしていきたいですか
今回の試合の経験を生かして、自分の自己ベストを出せるように調整していきたいと思います。