春季大会同様に緊急事態宣言の発令を受け一時は順延となった、関東学生選手権秋季大会が長瀞射撃場にて開催された。早大は、男子団体が春季大会より順位を1つ落とし、1部総合団体6位。一方女子団体は、春季大会より順位を1つ上げ、1部総合団体2位を受賞する結果となった。個人成績では、鈴木志佳(人4=東京・目黒星美学園)が10m立射60発競技で個人優勝を果たす快挙を成し遂げた。
個人優勝を成し遂げた鈴木
男子部は10m立射60発競技、50m三姿勢60発競技共に、江澤誠主将(文構4=東京・早稲田)、宮本裕喜(政経3=東京・早稲田)の2名に加え、松本零(社3=東京・早稲田)を新たに団体メンバーに選出し大会に臨んだ。
江澤は両競技で春季大会よりも成績を落とす悔しい結果に。「不甲斐ない結果となってしまった」と大会を振り返った。宮本は50m三姿勢60発競技において前回大会から5点を上乗せし、555点を撃った。「順調に点数が上がっていった」と宮本。一方の10m立射60発競技では春季大会から成績を落としたが、「良くないなりにこの点数で留まれたのは今後に活かせる」(宮本)と前向きだ。松本はSB(スモールボアライフル、50m三姿勢60発競技)において初のレギュラーとなった。両競技で点数が伸び悩み「悔いの残る試合となった」(松本)と口にしたが、実弾での練習不足が原因と冷静に分析。「早稲田を引っ張れるような射手になっていきたい」(松本)と意気込みを述べる。団体メンバー全体として思い描いた成績とはならなかったものの、次大会への期待が高まる内容となった。
レギュラーメンバーとなった松本
女子部では、お馴染みの鈴木、前田留那(スポ4=埼玉・栄北)の2名に加え、昨季より50m三姿勢60発競技でレギュラーを務める杉山瑞季(スポ3=神奈川・横須賀学院)を10m立射60発競技においても団体メンバーとして大会に臨んだ。
今回大会において抜群の成績を納めたのは鈴木だ。大会初日に迎えた10m立射60発競技において625.8点を記録。「今の実力としてはかなり満足のいく結果」と喜びを口にした。後日に行われた選手の結果を受け、鈴木は10m立射60発競技での個人優勝となった。早大射撃部としては2018年の千葉朔海(平31スポ卒)以来の快挙であり、大学から射撃を始める者に勇気をもたらす偉業となった。一方の前田も、50m三姿勢60発競技において、東京五輪に出場した平田しおり(明大4年)に続く572点を撃ち、2位の好成績を納めた。杉山においても個人参加となった女子50m伏射60発競技で春季大会より大きく成績を伸ばすなど、充実の一戦となった。
流石の実力を発揮した前田
個人参加となる10mエアピストル立射60発競技には髙木薫(法4=茨城・竜ヶ崎第一)、佐藤琳(スポ1=東京・成立学園)の2名が出場。佐藤は554点を撃ち、こちらも個人優勝を果たした。「試合中の技術的な面については問題が少なくなってきた」と佐藤。この先、一層の飛躍が見られることであろう。一方で「自分の力が全然出せなかった」と振り返るのは髙木。銃の不調などに見舞われ、悔いが残る結果に終わった。しかし、高い実力を誇るのは確か。学生射撃のラストスパートにおいて奮起が求められる。
照準を合わせる佐藤
新型コロナウィルス感染症の影響から、不規則な大会日程となっている本年度。間を置かず、11月には早くも大舞台・全日本学生選手権(インカレ)が控える。男子団体・女子団体、さらには個人としても、インカレでの目標達成に向け、良い試金石となる大会となった。
(記事 橋口遼太郎、写真 冷水睦実、橋口遼太郎)
全出場選手結果
【男子10m立射60発競技】
▽団体 1767.6点(7位)
江澤 誠 591.2点
松本 零 589.6点
宮本 裕喜 596.7点
▽個人
廣島 温弓 592.5点
椎野 凌 589.4点
小林 大輔 585.1点
岩脇 輝和 583.9点
吉間 民音 579.2点
岡本 健人 579.0点
久保木智也 576.1点
須田 智晴 574.0点
島田明日嘉 568.1点
柴 拓夢 541.4点
渡辺 泰央 529.3点
伊藤 雅峻 515.5点
【女子10m立射60発競技】
▽団体 1852.2点(3位)
鈴木 志佳 625.8点 個人優勝
杉山 瑞季 609.0点
前田 留那 617.4点
▽個人
紙田梨華子 607.9点
岡部 藍 605.1点
小久保綾華 597.9点
高橋 祐衣 589.3点
泉田 瞳 578.3点
【男子50m伏射60発競技】
▽個人
椎野 凌 605.6点
宮本 裕喜 600.3点
吉間 民音 597.6点
江澤 誠 580.7点
岩脇 輝和 562.7点
松本 零 562.5点
渡辺 泰央 535.4点
【女子50m伏射60発競技】
▽個人
前田 留那 613.5点
鈴木 志佳 602.2点
杉山 瑞季 597.5点
髙木 薫 590.6点
陶山 絹香 580.3点
高橋 祐衣 560.8点
【男子50m三姿勢60発競技】
▽団体 1617点(6位)
宮本 裕喜 555点
松本 零 518点
江澤 誠 544点
▽個人
吉間 民音 555点
椎野 凌 521点
岩脇 輝和 514点
渡辺 泰央 473点
【女子50m三姿勢60発競技】
▽団体 1697点(2位)
前田 留那 572点 個人2位
鈴木 志佳 565点 個人7位
杉山 瑞季 557点
▽個人
髙木 薫 542点
高橋 祐衣 518点
陶山 絹香 482点
【女子エアピストル10m立射60発競技】
▽個人
佐藤 琳 554点 個人優勝
高木 薫 526点
1部男子総合団体 3394.5点(6位) 1部女子総合団体 3549.2点(2位)
コメント
江澤誠(文構4=東京・早稲田)
――チーム全体として大会の振り返りをお願いします
まだ最終的な結果は把握していないのですが、特に女子が団体で春の大会以上の成績を収めることができ、着実に成果が出ているなと考えております。男子に関しては、これまで自分ともう1人の3年生が部活を引っ張っていっていたのですが、また新たな後輩がより高い点数を出してくれて。自分自身が不甲斐ない結果となってしまったので、次の大会に向けて自分自身が後輩を引っ張れるくらいの点数を出せるように、残り少ないですが頑張っていきたいと思います。
――AR(エアライフル、10m立射60発競技)を振り返ってください
春まではSBに専念していました。経験の差から後輩からレギュラーを勝ち取ることができていますが、まだまだ点数は低いと思うので、最後の1カ月、ARもSBも両方で部活を引っ張れるように頑張りたいです。
――少し点数が伸び悩んだ要因はどのあたりにありますか
競技に慣れたことで、元の正しい姿勢がどんどんと崩れていってしまって、逆にやりやすい姿勢になっていってしまったために、点数が落ちてしまったということがあります。そこを1番の課題として修正をすることで、自分のこれまでのベストを出せるように取り組みたいです。
――今日のSBはいかがでしたか
前日練習の時に銃機に不具合が見つかってしまって。それをなんとか対処しての試合でした。一番取らなくてはならない第一、第二シリーズのニーリングの姿勢で落としてしまったのが、その後の点数低下を引き起こしてしまったと思っています。それに関しては自分の練習不足が全て成すものなので、特にSBの試合形式の練習に力を入れて頑張っていきたいと思います。
――試合後には谷川コーチ(谷川諒、平28スポ卒)から声をかけられる場面がありました。どんなお話がありましたか
谷川さんからは今回の試合で特段まずい部分があったというよりも全体的に良くないと、厳しい評価をいただきました。実際に自分自身も思い当たる節がとても多く、逆に細かい点を直していけばこれまで以上の成績が出せると考えているので、冷静に自分の足りないものをひとつひとつ把握して、一歩ずつ解消していきたいと考えています。
――チームとして、また個人としても、次のインカレにどのように向かっていきたいですか
男子では、特に後輩の成長が今回の大会で見られました。そういった意味では、昨年以上、最終的には表彰台に向けての道が少し見えたと思っています。女子に関しては今回大会の成績で言うまでもなく、インカレでも上位の成績を残せると思っています。4年生の2人が中心となって引っ張ってくれているので、いい成果を獲得できるように、部活の運営面でサポートできるように頑張っていきます。
鈴木志佳(人4=東京・目黒星美学園)
――大会を通していかがでしたか
全体的にそれなりに満足のいく結果で良かったです。
――初日のARはいかがでしたか
ARに関しては、点数的には普段の練習より少し高いくらいの点数が出て、今の実力としてはかなり満足のいく結果になりました。将来的には630を撃ちたいので、もう少し細かい部分を、修正できる部分は修正して行きたいと思います。
――625点という数字はかなり素晴らしいものではないでしょうか
そうですね。ここからは0.1点の積み重ねです。630に乗るのはすごく難しいし、20から25にいくのもかなり大変ではありました。今回谷川さんのアドバイスがあり、無事に点数を出すことができて良かったです。
――この半年でも点数がかなり伸びた印象があります。どこに要因はありますか
完全に谷川さんのアドバイスです。去年の12月に姿勢を変えてみたらいいのではとアドバイスを貰ってから10点くらい上がって。去年1年は伸び悩んだのですが姿勢を変えてからかなり満足のいく結果が出始めて。点数も去年は結構安定しなかったのですが、今年は安定してきて、620を超えることが増えてきたので。このまま一般全日本も、クラブ対抗も、その先のインカレも同じような点数を継続的に出せればいいかなと思います。
――2日目のPはいかがでしたか
Pはノーコメントにしたいところです(笑)。どうやったら上手くいくのかが本当にわからない競技で。上手い人は凄いなという感じです。これからも頑張りたいです。
――ご自身がSが得意なんですかね
そうですね。SはずっとARでやってきたので、今回もSは全く練習していませんでしたがそれなりに当たったので良かったです。
――3×20はいかがですか
K(ニーリング)では少しハイサイトがガタついていて直らなくて、こけたというところもあり。それ以外の要因、バップレ(バットプレート)がハマらないことや姿勢が定まらないこともあり上手くいかなくて。インカレまでに修正できればいいなと思っています。P(プローン)は呼吸がちょっと深く出来たら良かったのですが、点数的にはそこまで足を引っ張るというものではなかったので。100を撃ちたい気持ちはありますが今回は実力通りというか。普段通りという感じでした。S(スタンディング)は練習ができていなかった割には。KとPに時間をかけていたので。Sは前日練習が夏合宿ぶりの練習だったんです。それの割には当たったし、前日練習は全然10点が出なかったけど今日はゆっくり落ち着いて呼吸をして、ARのイメージを持ってやったので。割と当たってよかったです。
――ARが良かったのでイメージも良かったですかね
そうですね。ARが良かったので。初日にARやってて良かったかもしれません。
――加えて、3×20はペースが早めと感じました
そうですね、びっくりしました。周り遅くない?と。後ろを振り返ったらみんなPを撃っているのに自分は終わったのでびっくりでした。ただいつもあんなもので。撃つのが早いからこそ、練習時間が同じでも撃てる数が多いので、練習量が必然的に増えて有利と考えています。大学から射撃を始めているので、その分早く追いつかなければならないですし。
――大学から始めて625に到達するのは凄いですよね
谷川さんが凄いんですよね。AR撃っているときに後ろで、谷川さんに対して、良いコーチがついているんだねと言っていた人がいて。それが聞こえて凄くうれしくて。自分が言われるより100倍うれしいと思いました。今回もARを20発くらい撃った時に、途中で射座を離れて話をしてもらって。そこから105撃てて。リズム良く撃てて。緊張もしなかったので、流石、谷川さんの言葉は強いと感じました。
――インカレに向けて意気込みを聞かせてください
インカレはかなり私にとって大きなものがかかった大会です。そこまで悔いのないように1カ月、他の大会でも経験を積みつつ、最高のパフォーマンスを発揮できるように頑張りたいです。
宮本裕喜(政経3=東京・早稲田)・松本零(社3=東京・早稲田)
――今回の大会を振り返ってください
宮本 次につながるような大会だったかなと思います。SBとかは順調に点数が上がっていっていましたし、P(伏射)もミスはあったのですが2シリーズ目、4シリーズ目はすごくしっくりくるPが撃てました。Pはこのまま行くといいと思います。Sは試射がボロボロだったのですが、たくさん撃つことで心を落ち着かせて、本射はしっかりと最低限の仕事ができたのではないかと思うので、次回につながる結果かなと感じています。ARの方も振り返ると、ARも点数はそんなに良くはなかったのですが、良くないなりにこの点数で、596点でギリギリ留まれたのは今後に活かせるのかなという感じです。
松本 悔いが残る試合になったと思います。SBの方は初めてレギュラーだったのですが、銃を変えてセッティングも変えて、色々と変えたのが裏目に出てうまくいかなかったのかなと思います。ARの方は点数自体は練習どおりの点数なので、あとは練習から底上げをしていって、早稲田を引っ張れるような射手になっていきたいと思います。
――レギュラーメンバーに選ばれるのは気持ちも変わるものですか
宮本 緊張はしますね。
松本 僕はそんなに変わらないですね。実弾を撃ち始めてそんなに経ってはないのですが、やはり撃発に対して自分の心ができていないので、それに身構えてしまうところがあるので、そこをなくしていきたいなと思います。
――松本さんがSBでちょっとうまくいかなかったなと感じた要因はどこにあったと分析しますか
松本 実弾に慣れていないのですかね。練習で実弾を撃たない練習をしてしまっているので、撃つ時の反動を考えて、どうしても体が勝手に身構えちゃうというのがあるので。止まっていて、真ん中に入っていてこのまま引き金を引けば当たるという時でも、力が入ってズレてしまうというのが今回多かったので、もっと実射の経験を積んでいきたいなと思います。
――宮本さんはここのところレギュラーが続いていますが、思い詰めることなどはないですか
宮本 そうですね、緊張はするけど始まればあとは的を撃つだけなので。1発1発集中してやっていくだけという感じです。確かに慣れてきはしました。加えて、やはり後輩に良いところを見せたいという気持ちもあります。後ろで見てくれているので(笑)。
――インカレに向けてここからどんな準備をしていきたいですか
宮本 僕はまずSBのKを、練習でやった事が本番で出し切れていないので、本番に近い環境でちゃんと時間も測って、実射で実際に弾を出して、点数とかがはっきりと見える形でやっていって、練習でやる事をそのまま本番で出せるようにしたいです。そういった練習をしていきます。
松本 僕はPが苦手で。Pだけの種目もありますが、今1番の課題はPだと思うので練習をしっかりとして。まずはコンスタントに当たるように、毎回同じように撃てるように頑張りたいなと思います。
髙木薫(法4=茨城・竜ヶ崎一)・佐藤琳(スポ1=東京・成立学園)
――大会を振り返ってください
髙木 自分の力が全然出せなかったです。
――かなり時間をかけられている印象がありました
髙木 時間をかけるタイプの方です。そこに関してはいつも通りではあったのですが、やりたい事ができなかったです。
――少し詳しく教えていただけますか
髙木 銃が1週間前に壊れてしまって、それの調整とか色々をギリギリまでやっていたのですが、やりきれてはいない状態で今日を迎えてしまいました。その不安もあり、久しぶりの試合で試合のやり方がわからなくなっているというのもあり。色々が重なって点数に全然つながらなかったという感じです。
――佐藤さんはいかがでしたか
佐藤 全体的な、試合中の技術的な面については問題が少なくなってきた感じはしました。ただ、時間の使い方であったり、メンタル面に工夫が足りないかなと思いました。
――工夫とはどういったことになりますか
佐藤 例えば、試合の感覚がつかめていると、失敗をしたときでもちゃんと休んだりだとか、後ろ出たりとか自分でコントロールができるのですが、今日はカッとなってすぐに次を撃ったりして。連続の失点とかが多かったので、もう少し冷静に試合を運べたらなと思いました。
――カッとなるというのはミスが出てすぐに次を撃ちたくなるということですか
佐藤 そうです、例えば1発バンと飛ばしてしまったら、休憩してもう一度やり直せばいいのですが、その点数を消したいという作用が働きますよね。働いて、すぐに弾を入れて撃つみたいな感じ、焦っているみたいな感じなのですが、そうなると絶対に次も転んでしまいす。そこを抑制できなかったところがちょっとありました。
――かなり公式戦は久々でしたか
髙木 そうですね、3カ月ぶりとかですかね。
――新しいメガネはいかがでしたか
佐藤 そうです、新しいサングラスです。見え方はすごくよかったです。
――すごく雰囲気が変わったなと思いました
佐藤 本当ですか
髙木 前だって丸メガネだったじゃん(笑)。
――スナイパーみたいでした
佐藤 そうですね、12万かけただけありますね(笑)。
――この先どのように取り組んでいきたいかを聞かせてください
髙木 インカレもあと1カ月ほどですごく近いですし、最後のインカレです。全力で練習もいろいろ考えながら、ちゃんと分析をして問題解決をしていって、気持ちよく撃てる試合にできるように頑張ります。
佐藤 私は最近スキャットという動作分析する機械を使っていなかったので、それを1週間に1回は使うようにすることと、ゲーム形式の練習を最近できていなかったので、志佳(鈴木志佳)さんと薫さんとどんどんやって行こうかなと思います。