初秋、じめじめとした空気が一気に抜けた山の上の射撃場は、早大勢の入賞ラッシュとなった。千葉朔海(スポ3=埼玉・栄北)が圧倒的な力をみせつけ、2冠を含む3種目で入賞。中里志穏主将(スポ4=埼玉・浦和一女)も50m伏射60発で7位入賞を果たした。男子では眞城永稔(教4=大阪・高槻)が初のメダル獲得。インカレ(全日本学生選手権)に向けて大きな弾みになった。
千葉は、10メートル立射40発と50メートル三姿勢60発でファイナルに進出。前者は、序盤から中心に集め、いきなり1位に躍り出る。しばらく安定した射撃を見せていたが、全24発中の17、18発目で9点台を連続してしまい、2位に転落。それでも19、20発目で、1位諏訪美月(山梨学院大)のミスに助けられ再逆転。コーチも「ハラハラした」と手に汗握る展開となったが、最後に追い込んだ千葉に軍配が上がった。50メートル三姿勢60発も、序盤から1位に立つ。迎えた第三シリーズ(全44発中の11発目から15発目)。1発多く撃ってしまうという痛恨のミスで減点を食らう。それでも、後ろで応援するチームメイトに向かって舌を出した千葉。焦りはなかった。第八シリーズまで(40発目まで)1位と2位が激しく入れ替わる激戦になったが、競っていた早川実沙(日大)の失速もあり、終わってみれば2位と4.1点差をつけての優勝となった。全て撃ち終わったあと、自分の順位が分からず、仲間に確認するほどの集中力。暫定順位を知らせるアナウンスの声など、全く耳に入っていなかった。千葉は、さらに50m伏射60発でも5位入賞。試合後のインタビューの終盤、自ら切り上げるように「(インカレの目標は)出場した全種目で優勝することです」と早口で返答したが、本当に現実味を帯びてきた。
試合後早スポのカメラを見つけるとピースサインを向けた千葉
眞城は、50m伏射60発でファイナルに進出。序盤、4位につけると中盤まで3位と4位を行き来する。なかなか上位に抜け出せないなか迎えた14発目。「伏射には自信があったので、いつも通りやれば当たると思った」と冷静さは忘れない。ベストショット(出場者内でのシリーズごとの最高得点)を叩き出し、4位を引き離す。16発目もベストショットで、2位まで順位を上げる。最後は少し得点を落としたが、なんとか3位でフィニッシュを決めた。初めてのメダルに「最高です」と、いつもはクールな表情が、この時ばかりは晴れやかだった。男子は他にも、松尾悠佑(文構4=埼玉・栄東)が各種目で高得点を出すなど、入賞こそしていないが、安定感が増してきている。
男子で唯一ファイナルに進出した眞城
女子は、一部校で総合団体3位となり、インカレに団体としての出場もありそうだ。最近は本調子でない末本佳那(スポ4=福岡・大宰府)や、注目の1年生加藤モナ(スポ1=埼玉・栄北)の状態が上がってくれば、日本一も夢ではない。部として大きな目標にしているインカレは、1か月後に迫っている。
(記事 吉岡篤史、写真 吉岡篤史、大庭開)
入賞を果たした3人。左から、眞城、千葉、中里主将
結果
【男子50m伏射60発部門】
▽団体 1817.5点(3位)
眞城 永稔 610.0点 ※ファイナル221.7点 3位
松尾 悠佑 607.2点
北嶋 亮太 600.3点
▽個人
尾花 駿輔 592.1点
波多 秀馬 585.5点
守田 慶亮 577.2点
【男子50m三姿勢120発部門】
▽団体 3300点(5位)
松尾 悠佑 1106点
眞城 永稔 1103点
北嶋 亮太 1091点
【男子10m立射60発部門】
▽団体 1745.2点(10位)
松尾 悠佑 592.2点
橋本龍太朗 579.4点
藤井 尭彬 573.6点
▽個人
北嶋 亮太 590.0点
田曽 雅也 584.4点
尾花 駿輔 580.2点
波多 秀馬 579.9点
眞城 永稔 577.2点
加藤 一 572.8点
守田 慶亮 562.5点
加藤 東 561.5点
池田 佳悟 560.6点
岡村 祐生 556.7点
伊澤 昌平 554.0点
三鍋 亘 513.7点
濱本 和樹 375.9点(DNF)
新美 航平 DSQ
【女子50m伏射60発部門】
▽個人
千葉 朔海 609.9点(5位)
中里 志穏 607.6点(7位)
田中 美沙 594.4点
末本 佳那 586.3点
【女子50m三姿勢60発部門】
▽団体 1673点(3位)
千葉 朔海 569点 ※ファイナル447.2点 1位
中里 志穏 560点
田中 美沙 544点
▽個人
末本 佳那 555点
佐藤 史江 530点
【女子10m立射40発部門】
▽団体 1214.5点(4位)
千葉 朔海 411.1点 ※ファイナル244.6点 1位
加藤 モナ 402.6点
末本 佳那 400.8点
▽個人
中里 志穏 402.9点
田中 美沙 400.8点
平田 華 395.5点
佐藤 史江 390.4点
毛利 綾花 DSQ
◆総合団体順位
男子総合団体 6862.7点(四部校内1位)
女子総合団体 2887.5点(一部校内3位)
コメント
千葉朔海(スポ3=埼玉・栄北)
――S40(立射40発競技)と3×20(3姿勢60発競技)で優勝されましたが、今のお気持ちはいかがですか
優勝できて良かったなと思っています。
――それぞれのファイナルを振り返っていかがですか
どちらもあまり良くないところもあったので、今後は改善していきたいです。
――良くないところとは具体的にどういった点でしょうか
エアー(エアーライフル)は結構9点台が多くて、周りのレベルがそんなに高くなかったから勝てたのかなという部分もあると思うし、3×20もS(立射)が得意なんですけどそこであまり点数が伸びなかったのでそこも改善していきたいです。
――P60(伏射60発競技)では5位という結果でしたが、この結果はどのように受け止めていますか
がんばったと思います(笑)。
――今シーズンはAR(エアーライフル)に加えてSB(スモールボアライフル)でも好成績を収めていますが
他の大学と比べてARをメインにやっている分、SBはそんなに重点的にやっていないので、気楽に撃てているのがいいのかなと思います。
――インカレ(全日本学生選手権)が1カ月後に迫っていますが、現在の仕上がり具合などはどのように感じていますか
もうちょっとレベルを上げていきたいなと思っています
――インカレでの目標を教えて下さい
女子の総合団体優勝を狙っています。
――個人種目はいかがですか
出場する全ての種目で優勝したいです。
松尾悠佑(文構4=埼玉・栄東)
――調子が良かった原因は
装備の面で問題が起きていて、むしろ調子は落ちるんじゃないかと思っていたんですけど、割りと普段通りに撃てたので良かったんじゃないかと思います。
――装備に問題があっても普段通りにいこうと意識して普段通りに撃てましたか
いつもはいろいろ考えちゃうんですけど、今回は頭を空っぽにして、というかあまり深く考えないで撃てました。思い込まずに撃てたと思います。
――撃っている最中に、きょうはいけると思うんですか
それはありましたね(笑)。シリーズごとに調子が上がってきていたので、そこできょうはいい感じに撃ててるなと感じました。
眞城永稔(教4=大阪・高槻)
――初めてのメダルを持った感想は
最高です(笑)。もうちょっといけたかなというのはあるんですけど、まだインカレがあるので。
――ファイナルを振り返ると
1シリーズ目がちょっとダメだったんですけど、自分の伏射には自信を持ってたんで、いつも通り撃てば当たるということを再認識して撃つとバスバス真ん中に当たるようになりました。あと後ろの声援も励みになるというか、力になります。
――深い10点よりも、浅めでもいいから10点台を取る狙いでしたか
もちろん狙ってるのは、深いところなんですけど、緊張して結構(銃が)揺れてるんですよ。だから、時間オーバーになるよりは、とりあえず力を抜いて10点に入るようにという感じです。