今年度初の個人戦である関東学生選手権(関東)が、無観客の中、日本武道館で行われた。出場者436人のうち、上位60人が7月頭の全日本学生選手権(全日)への出場権を得る。早大からは6人の選手が出場するも、全日出場権を獲得する者は出なかった。大串快晴主将(スポ4=愛知・星城)、和田晃貴副将(社4=東福岡)は2回戦を突破し、出場権獲得をかけた3回戦で惜しくも敗北した。本記事では大串、和田、馬場恭大(スポ2=神奈川・東海大相模)の3人の試合を振り返る。
初戦に「もともとは苦手だった」という上段の構えの相手を迎えた馬場。試合2分ごろ、相手がコテに来たところで落ち着いて引きメンを決める。さらに相手がメンに来たところを、これも落ち着いて逆方向からメン。わずか2分ほどで決着となった。続く2戦目が動いたのは2分半ごろ。両者の激しい読み合いが繰り広げられた。相手のメンを受けようとするも、さらに引きドウを狙われたため馬場は下がって引きメンを打つ。両者とも決めきれず、互いに前での打突に切り替える。馬場はコテを狙ったが、空いた面を捉えた相手のメンが打ち勝つかたちとなった。攻めを見せるも一本勝ちを許した馬場。2回戦敗退となった。
引きメンを放つ馬場
大串は終始自分のペースを崩さず、2回戦まで順調に勝ち上がった。初戦は延長戦に入るも、その場でメンを踏み込み、相手が受け損ねた隙をついて反対からさらにメンを叩き込んだ。これが一本となり、延長30秒で試合を決めた。2戦目は3分半ごろ、相手がメンに飛び込んできたところで冷静に出ゴテを決め、一本勝ちとした。
全日への切符をかけ、迎えた3戦目。途中、相手の竹刀に引っかかったところを利用して引きメンを打ったが一本にはならず。そして3分を過ぎた頃、メンを打ちにいったところをさばかれ、引きメンを打たれる。副審1人は旗を上げなかったものの、一本を許した。さらにその直後、大串はメンにいこうとして手を引いたことで手元が上がってしまう。そこにコテを打たれ、負けを喫した。
お互いに構え合う大串
和田は今までに勝った経験がなく「非常に強い選手だというイメージ」があったという2選手を破り、3回戦まで進出した。初戦はこう着状態が続き、試合は延長戦へ。相メンとなりかけたところを途中で切り替え、その場で回るようにしてドウを決めて勝利した。2戦目、4分経過間近で間合いの外からぐっと飛び込んでメンを打った和田。打突部位を捉えたかに見えたが、腕を上げてこれを受けた相手に押され、後ろにひっくり返ってしまう。主審が旗を上げるも副審2人の旗は上がらず、一本とはならなかった。そしてこの試合も延長戦へ。延長8分ごろ、連続でコテを狙う相手に対して、前でメンを決めた。
2回の延長戦を制し、いよいよ全日出場権をかけた3回戦に臨む。しかし相手の素速い打突に、なかなか攻撃の糸口をつかめない。試合時間後半の3分が過ぎた頃、相手が竹刀を泳がせたところで和田はふっと引くように腕を上げ、メンを誘う。そこでかがみこむようにして引きゴテを打つも、前に出て打った相手のメンが一本となった。先制されたが、切り替えて速い攻撃を仕掛けていく和田。何本か良いメンも見られたが、一本とはならずここで試合終了。大串と同じく3回戦敗退となり、あと一歩というところで全日出場権を逃した。
コテを放つ和田
森下維友(法4=茨城・茗渓学園)、門間光児(社3=熊本・九州学園)は2回戦敗退、松田圭司(社4=大阪・清風)は初戦敗退と、早大から全日出場者は出なかった。しかし秋には、団体戦である関東学生優勝大会が控える。今回の悔しさを糧に、団体での「関東制覇」を目指す。
(記事 荒井結月、写真 早大剣道部提供)
結果
大串快晴主将(スポ4=愛知・星城)
1回戦〇 大串│メ(延長)-│小林・明星大
2回戦〇 大串│コ(一本勝ち)-│豊田・日本文化大
3回戦△ 東洋大・高沢│メ、コ-│大串
和田晃貴副将(社4=東福岡)
1回戦〇 和田│ド(延長)-│相馬・明大
2回戦〇 和田│メ(延長)-│牧枝・国際武道大
3回戦△ 日本文化大・高橋│メ(一本勝ち)-│和田
馬場恭大(スポ2=神奈川・東海大相模)
1回戦〇 横浜商大・佐藤│-メ、メ│馬場
2回戦△ 日体大・藤島剣│メ(一本勝ち)-│馬場
コメント
大串快晴主将(スポ4=愛知・星城)
――今日の試合を全体的に振り返っていかがですか
落ち着いて試合に臨むことができたのは良かったです。反省点としては、一本を取りたいという欲が出たあまり、遠い間合いから簡単に技を出してしまったことが挙げられます。
――今日は何を目標に取り組みましたか
もちろん関東一ですが、最低限全日出場権を得ることは意識していました。
――1、2回戦は終始優位に試合を進めているように見受けられましたが、振り返ってみていかがですか
個人戦なので慎重に進めながら、自分の間合いだけで勝負することを心がけていました。
――3回戦では途中、引っかかった竹刀を外す反動をうまく利用した、惜しい引きメンも見られました。これについてはいかがですか
得意技なのですが、引き面は入りづらい傾向にあったので、旗は上がりませんでしたね。
――試合後、チームメートの皆さんと何か話したことはありますか
団体に向けての強化方針や、試合の反省点を話し合いました。
――全日出場へあと一勝というところでしたが、このことについてはいかがですか
あと一勝というところで勝ちきれない技術力、精神力の弱さを痛感しました。
――今大会を終えて、新たな目標を教えてください
残すは団体戦のみなので、悔いの残らないような試合ができたらなと思います。
和田晃貴副将(社4=東福岡)
――今日の試合を全体的に振り返っていかがですか
良かったところは、足を使って自分の間合いで勝負できたところです。いろいろな部員や先輩からのアドバイスもあって、自分のいい時の試合運びができたと思います。一方で反省点は、3回戦で全日がかかっていることを意識してしまい、慎重になりすぎて視野が狭くなってしまったことです。相手に打たれたくない気持ちが先行し、目で対応しようとしたところが自分の試合をできずに負けてしまった敗因だと思います。
――今日は何を目標に取り組みましたか
悔いの残らないように試合をすることを目標にしました。最後の個人戦ということで負けてもいいと思えるような試合をしようと。結果としては悔いの残るような試合を最後はしてしまいました。
――1、2試合目ともに延長戦となりました。振り返ってみていかがですか
集中力を切らさない、いい試合ができていたと思います。
――3試合目はメンを誘ってコテを狙ったところをメンで押し切られたように見えました。振り返ってみていかがですか。また、何本か惜しいメンも見られたように思いますが、それについてはいかがでしょうか
出てはいけないところでコテを打ってしまいました。目で見て反応していたため出遅れてしまいました。メンについては、私の決定力不足だと思います。まだまだ確実に当てた技を一本にする力強さがないため、今後の稽古で意識していこうと思いました。
――試合後、チームメートの皆さんと何か話したことはありますか
悔やんでいても仕方がないので、悔しさをばねに、今後どう取り組んでいくかについて話し合いました。より団体戦を意識した稽古をしようという話が中心でした。
――全日出場まであと一勝というところでした。今のお気持ちをお願いします
悔しいですが、この大会での敗北を今後の大会に生かしたいと思います。
――今大会を終えて、新たな目標を教えてください
関東団体(関東学生優勝大会)優勝です。
馬場恭大(スポ2=神奈川・東海大相模)
――今日の試合を全体的に振り返っていかがですか
1試合目の相手は上段(の構え)だったのですが、落ち着いて狙いどころを打つことができました。2試合目は少し慎重な試合展開になってしまい、持ち味である思い切りの良さを出すことができませんでした。
――今日は何を目標に取り組みましたか
悔いが残らないように、自分の剣道を出し切ろうと考えていました。
――上段の構えに対する印象はいかがですか
対上段はもともと苦手でしたが、稽古の中で上段の選手と何度も練習を重ねました。
――2試合目で一本取られた時の、激しい読み合いはいかがでしたか
相手が逆ドウに来たところをとっさに後打ちし、決まらないと感じたのですぐに相手の出鼻を捉えようとしたのですが、逆にメンに乗られてしまいました。
――試合後、チームメートの皆さんと何か話したことはありますか
各個人の反省点を共有しました。また、団体戦に向けて個々の能力を高めるためにはどのような稽古にすればいいのかを話し合いました。
――今大会を終えて、新たな目標を教えてください
団体戦では私が活躍してチームの上位進出に貢献します。