【連載】『令和3年度卒業記念特集』第21回 鈴木涼也/剣道

剣道
重要視したのは、部員とのコミュニケーション

 前年度の早大剣道部を、全日本学生優勝大会ベスト16まで導いたのは主将の鈴木涼也(社=佐賀・龍谷)。前年度のコロナ禍の制約を経験した後、主将を引き継ぎ意識したのは、自分だけでなく部員全体を注視し、活発なコミュニケーションを通じてより部を結束させることだった。

 二郎系のラーメンが好きで、よく店を巡るという鈴木。振り返ってみると、彼の剣道人生の始まりは小学3年生の夏。3歳上の兄が剣道をしていたのが興味を持ったきっかけだった。小学生時代、毎日のように稽古があり、大変だと感じることもあったが、小学6年生の県大会個人戦で優勝したことが初めての大きな成果になる。さらに、中学校の剣道部では主将を務め、3年生では個人戦で全国大会に行くという目標を叶えることができた。しかし、それまで順風満帆に見えた剣道人生だったが、剣道の強豪校である龍谷高校に進学した鈴木は、壁にぶつかる。それまでチームの中心として活躍してきた鈴木だったが、高校ではレギュラーを確実に取る、ということはできなくなってしまったのだ。そうした状況でも挫けず、「日本一」という目標を高く持ち、それを達成するため日々精進を続けた。その努力が実り、高校生最後にはインターハイ出場という悲願を叶えることができた。

関東学生優勝大会、1、2回戦を制した鈴木

 進学先を早稲田にしたのは、自主性を重んじ、「自分たちで決める」というスタンスの早大剣道部に惹かれたためだ。早大剣道部には、全国大会に頻繁に出場するような部員からそうでないような部員まで幅広く在籍しており、やはりその中で部員たちが意識しているのは、「チームとして頑張る」ということであり、そこに深い感慨を受ける。1年生の頃から早大剣道部のレギュラーとして活躍し、順調な大学での剣道生活を送っていたのも束の間、コロナによる制約が大きな障壁として立ちはだかる。練習が満足にできないような状況が続き、やりきれない気持ちはあったものの、ここでも意識したのはミーティングなどを通して、意識的にコミュニケーションをとることだった。対話を通じて、お互いにモチベーションを高め、大変な状況を助け合って生き抜いた。

 先輩からの推薦に加え、自分の希望も合わさり就任した主将。今まで自分だけで頑張っていたが、主将になり部員全体に気を配り、チームとしての課題を特定し解決することに尽力した。そして、部を導く上で1番に意識したことは、やはり「コミュニケーションの活発化」だった。主将就任初期に、前の世代でコロナによりやりきれない気持ちを抱えた部員同士で頻繁に話し合い、「日本一」という目標を再設定し強く意識できるようにした。これによって、部員の中でのモチベーションが上がり、一致団結して目標に向かうことができた。しかし、部を導くのは決して簡単なものではない。鈴木は言葉の選び方も含め、「伝えるのは難しい」という課題に直面した。しかし、自分で完結せず同期などと相談しながら密にコミュニケーションをとることで、課題を克服し、部を目標により近づける努力をした。加えて、鈴木は個人としての努力も決して怠らない。彼の剣道では、特定の技に絞って磨くのではなく、全ての技を研究し極め、臨機応変に決められることを強みにしている。無念ながら日本一の目標には届かなかったものの、以上のような全ての努力が、チームの実力を伸ばし、全日本学生優勝大会ベスト16の成績を収めたのだ。

 このように、自分たち主体で考え、密なコミュニケーションを通じてチームの結束を高めることを意識した鈴木。インタビュー中に鈴木の口から多く出てきたのは、「同期」という言葉。いかに同期に支えられたかを伺うことができ、「自分が主将になってから大変だったが、同期に支えてもらった」と感謝をつづった。鈴木の剣道人生はこれでは終わらない。鈴木は社会人として実業団に所属し、実業団大会優勝、そして全日本選手権出場を目指す。これからの鈴木の活躍に全力で期待したい。

(記事 柴田真帆、写真 早大剣道部提供)