大将戦までもつれこむも慶大に惜敗

剣道

 大正14年から続く、伝統ある早慶対抗試合(早慶戦)が帰ってきた。昨年は新型コロナウイルスにより中止された早慶戦は、今年は念願の有観客で開催された。2年前に慶大に優勝を譲った早大は、雪辱を果たすべく、気迫十分で大会に挑んだ。20人勝ち抜き戦の、両校の意地をかけた戦い。総試合数35試合、大将戦まで勝負が持ち越された末、軍配が上がったのは惜しくも慶大だった。

優秀選手に選出された三浦

 両校とも気合の入った円陣をしていざ出陣。早大と慶大、85回目の勝負が緊張ある雰囲気で幕を開けた。先陣を切ったのは先鋒の中村秀真(商1=京都・東山)。早慶戦の初戦という独特な緊張感の中、試合時間が長くなるにつれて、緊張がほぐれてきた様子だったが、決めきれず引き分けになる。両校決められない膠着状態からリードを掴んだのは、次鋒の松田圭司(社3=大阪・清風)。松田は出鼻メンで一本勝ちを収め1人のリードを獲得し、十八将の山本勇真(スポ2=大阪・明星)は巧みに足を使い、誘って返しドウを決め、十七将に一本勝ちを収める。また山本は次の十六将との試合も疲れを見せることなくしきりに攻め、相手の竹刀が浮いたところにコテメンを打ち込み、メンが決まり、2人抜きを収める。次に登場した十七将の嶋田陽樹(社3=栃木・佐野日大)はタイミングが掴めたところで間合いからメンを打ち込み一人抜き、3人にリードを広げる。十六将の斎藤智英(スポ4=千葉・安房)は十四将に近い間合いから引メンを決め、また落ち着いた様子で相手が打ち込んできたところにコテを打ち込み、華麗な二本勝ちを収める。斎藤と十三将との試合は4年生どうしの意地の戦いになったものの、引メンを決められ一本負けになり、早大が3人リードと2人リードを繰り返すシーソーゲームのような展開が続く。

4人抜きを成した大串

 続いて登場した十五将の宮原和雅(文構2=東京・城北)は相手がコテに打ち込んできたところに、メンを打ち込み一本勝ちを収めたものの、次の上段使いの十二将との試合では、狙おうと手元が少し浮いたところに打ち込まれたコテで二本負けになる。ここからこの慶大の十二将、小檜山琢仁による快進撃で、今まで保たれていたシーソーゲームの均衡が一気に崩れる。小檜山による怒涛の6人抜きにより、前半で獲得したリードが、一気に3人リードされる展開になる。そこで慶大の勢いを食い止めたのは七将の和田晃貴(社3=東福岡)。和田は相手の手元が上がったところにコテ、そしてメンに応じた抜きドウと、中堅に華麗なる二本勝ちを収め、流れを早稲田に引き寄せる。六将の三浦晃太朗(法4=東京・早稲田)は慶大の九将の手元が上がったところに綺麗にコテを打ち込み、また続く八将に対しても相手の気が抜けた少しの隙を逃さずメンで一本勝ちを収め、慶大リードを縮める。五将の門間光児 (社2=熊本・九州学院)は二本勝ちで一人抜きを収めるも、慶大リードを縮めることはできない。早大が慶大を追う展開を覆したのは、四将の大串快晴(スポ3=愛知・星城)。大串は慶大の六将に対してメンに出てきたところに出鼻コテを決めたのを皮切りに、4人抜きを成し、早大が2人リードする展開へ持ち直す。三将の野中翠(スポ4=千葉・安房)は、慶大の副将が見せた少しの隙をついた引メンで一本勝ちを収め、ついに慶大の大将を引きずり出す。しかし慶大の大将、馬場耀大は緊張感のある中、大将としての意地を見せ、野中にコテを打ち込み一本勝ちを収めただけでなく、早大の副将の藤本大地(スポ4=岡山・玉島)を巧みな技術で誘ったところで引メンを決め、両校のリードは無くなる。5時間ほど続いた長い勝負も、最終的には大将戦に委ねられるかたちになった。馬場に対峙するのは、早大の大将である鈴木涼也(社 4=佐賀・龍谷)。緊張感が最高潮に高まっている中、お互いの気迫がぶつかり合い、最後には間合いから綺麗な飛び込みメンを決められ、一本負けを喫した。早慶のプライドがぶつかり、勝負は大将戦まで持ち越される、伝統に相応しい白熱した試合展開の末、優勝したのは慶大。早大は2年前の大会に引き続き、優勝を逃すことになった。

勝負の行方は大将である鈴木に委ねられた

 前回大会に引き続き、またもリベンジが出来ず、悔しい思いを抱いた今大会。主将は「最後に勝利できなかったことは悔しいですが、やってきたことに後悔はありません」(鈴木)と剣道部4年間を振り返り、またその想いを後輩に託す。新主将大串は日本一、早慶戦リベンジを胸に刻み、早大剣道部はさらに飛躍していく。

(記事 柴田真帆)

結果

先鋒 中村   ✕   深野  先鋒

次鋒 松田  メ―   古賀  次鋒

        ✕   藤邨  十八

十八 山本  ド―   永江  十七

       メ―   佐土原 十六

        ―メメ 常山  十五

十七 嶋田  メ―         

       メ―メメ 吉田  十四

十六 齋藤 メコ―.

―メ  奈須川 十三

十五 宮原  メ―.

        ―ココ 小檜山 十二

十四 神谷   ―メ

十三 森下   ―メ

十二 平井   ―メメ

十一 大越   ―コ

中堅 渡邉   ―メメ

九  外山   ✕

八  馬場   ―メ  水越  十一

七  和田 コド―

        ✕   阿川 中堅

六  三浦  コ―   多田  九

       メ―   大塚  八

        ―メ  森川  七

五  門間 コメ―

         ―コ  清野  六

四  大串  コ―

       メ―   藤田  五

       ツ―   土田  四

       メ―   柏   三

        ―メ  宮城 副将

三  野中  メ―

        ―コ  馬場 大将

副将 藤本   ―メ

大将 鈴木   ―メ

優秀選手:

山本勇真 三浦晃太朗 大串快晴(早大)

       

小檜山琢仁 宮城歩実 馬場耀大(慶大)

コメント

鈴木涼也(社 4=佐賀・龍谷)

――本日の試合を振り返っていかがですか

結果的には負けてしまい非常に悔しいですが、剣道部員や応援してくれた方々全員が一体となり闘うことができて楽しかったです。

――勝負の行方は大将戦に委ねられた展開になりました。どのように捉えていましたか

皆が頑張って繋いでくれたので必ず勝つという気持ちで臨みました。

――剣道部4年間をどのように思えますか

多くのことを経験できた充実した4年間でした。

――剣道部4年間で一番印象深いことはありますか

3年生から引退するまでの期間は非常に印象深いです。試合も稽古もできない時期がありましたし、運営していく立場としても試行錯誤しながら力を合わせて頑張りました。

――剣道部4年間を振り返って後悔はありますか

最後に勝利できなかったことは悔しいですが、やってきたことに後悔はありません。

――剣道人生を振り返ってみて、印象深いことはありますか

人との繋がりの大切さです。これまで剣道を通して多くの方と知りあうことができました。その結果多くのことを学び、また経験したことで人間的な成長ができたと感じています。

――これから先、剣道とどのように関わっていくつもりでいますか

来年からは実業団で剣道を続けていくつもりです。

――後輩にメッセージをお願いします

私たち4年生についてきてくれてありがとう。来年こそは日本一・早慶戦優勝を達成してください。応援しています。

大串快晴(スポ3=愛知・星城)

――優秀選手おめでとうございます、本日の試合を振り返っていかがですか

ありがとうございます。普通の公式戦とは違う、独特の緊張感がありました。

――2人リードされている展開での試合でしたが、どのように捉えていましたか。また四将というポジションをどのように捉えていましたか

リードされてはいましたが、まずは目の前の相手にだけ集中しようという意気込みで、試合に挑みました。慶応も後ろの方をレギュラー選手で固めていたため、絶対に負けられないポジションだと捉えていました。

ーー今日の試合に当たって、作戦や意気込みなどはありましたか

4年生の先輩方への恩返しの気持ちを胸に、試合に挑みました。後ろに4年生の先輩が3人控えていましたが、自分で終わらせるぐらいの意気込みでした。

――引退される4年生との印象深い出来事などありますか

4年生が、部内で強化練習を企画してくださったことです。コロナの影響により、合宿はできなかったのですが、合宿と同じくらい、密度の濃い1週間を4年生とともに過ごすことができました。

――引退される4年生にメッセージをお願いします

今まで、私たちを引っ張ってくださり、ありがとうございました。残りの学生生活、楽しんでください!

――次の目標をお願いします

日本一、早慶戦リベンジに向けて頑張ります。まずは、関東新人に向けて、後輩が力を出し切れるようにサポートしていきます。