【連載】『平成29年度卒業記念特集』第52回 久田松雄一郎/男子剣道

剣道

結果を追い求めて戦い続ける

 「人として成長することができた社会勉強の場」。久田松雄一郎主将(スポ=佐賀・龍谷)は早大剣道部についてこう語った。1年時からレギュラーとして試合に出場し、チームを引っ張ってきた。決して楽な道のりではなかったこの4年間を振り返る。

 幼稚園の先生に勧められて始めた剣道。高校からは強豪・龍谷高校で寮生活を送り剣道漬けの毎日。元々は教員志望だった久田松は将来の選択肢を広げるために早大への進学を決意した。高校の頃とは違って指導してもらえる機会が少なく、自分で考えて練習に取り組むことに最初は戸惑いがあったという。

全日本学生選手権で冷静に戦う久田松

 2年の後半からは試合に勝てないつらい時期が続き、自分の剣道を1から見つめ直すことに。練習の取り組み方や考え方を180度変え、勝つために努力を積み重ねた。それが結果となって表れたのは3年時の関東学生選手権での個人戦。ベスト8に入ることができた。主将になっても結果を追い求めることは変わらず、今まで以上に練習に対して真摯(しんし)に取り組んだ。「人の上に立つ人は常に見られている。1番結果を残さなければいけない」と気を引き締め、大会だけでなく練習試合や部内戦でも勝利にこだわった。4年時は全日本学生選手権の直前に足をけがしてしまい、4回戦で無念の敗退。足を無意識にかばって思うような剣道ができなかった。団体最後の大会である全日本学生優勝大会では目の前の試合だけに集中しようとチーム内のモチベーションを上げて挑んだものの、まさかのベスト16敗退。ついに日本一の目標は大学では達成できなかった。

 早大剣道部には久田松のように幼少期から剣道一筋の部員もいれば、大学で剣道を始めた部員もいる。色々な考え方や価値観を持った人が集まる環境で、日本一になるという目標を立てて日々稽古に励んでいる。それ故、部内で剣道に対する温度差が生じてしまうこともあり、主将としてその温度差をどう解消しようか、どう伝えたら本気になってくれるか悩んだ。大学で剣道をやめてしまう部員と、今後も剣道を続ける部員のモチベーションが違ってくるのは仕方がないのかもしれない。しかし久田松は自分が意識を高く持ち続ければついてきてくれる人がいると考え、言葉で多くは語らずに背中で思いを伝えてきた。「今後、社会に出たときにこの経験が役に立つだろう」と、人として成長することができたことを語った。

 卒業後も日本一を目指し、地元・愛知県警察で剣道を続ける。この4年間以上に大好きな剣道に打ち込む日々が待っているだろう。「自分次第で結果は変えられる、まだまだ足りなかった」ともっと結果を残したいと語る。早大剣道部での経験を生かして今後も活躍し続けることに期待したい。

(記事 大山遼佳、写真 松本一葉)