【連載】早慶戦・全日本直前特集『不屈』第1回 太田麻友×品川大華

剣道

 まず登場するのは、昨年1年生ながら個人戦で全国ベスト8に入る鮮烈デビューを果たした太田麻友(社2=茨城・守谷)と、着実に力を付け今季めきめきと頭角を現した品川大華(スポ2=広島・広)のお二人。今季は個人戦、団体戦共に出場し、この後には早慶戦(早慶対抗女子試合)、新人戦(関東女子学生新人大会)での活躍も期待されている。今後の早大を担う2年生コンビにお話を伺った。

※この取材は10月7日に行われたものです。

「思い切った試合ができなかった」(品川)

関東では無念の初戦敗退となった品川

――まずは春の個人戦の振り返りから行わせていただきます。関東女子学生選手権(関東)、全日本女子学生選手権(全日本)を振り返ってそれぞれいかがでしょうか

品川 個人戦初めてですごい緊張してしまって、自分の思い切った試合ができなかったなと感じています。

太田 関東では割といい感じで試合できていたのかなと思ってます。全日本では1回戦の相手が中学、高校と結構何回も対戦してきた相手で、これまでその人に勝ったことなくて。その1回戦を意識し過ぎてしまって、勝ったことでほっとしてしまったというか一度(気持ちが)切れてしまって、2回戦で負けてしまいました。

――個人戦、団体戦でそれぞれ戦い方が違うと思いますが、個人戦の中で特に意識していたことはありますか

品川 相手に合わせないことですね。無駄に飛び出して隙をつくらないように、自分の打てるとことしか打たないということを意識していました。

太田 ほとんど一緒ですね。バンバン打っていくんじゃなくて、延長でもいいので自分のペースで試合できるのが理想です。

――個人戦のメンバーは部内大会などで決めたのですか

太田 何人か確定枠がいて、残りを試合して決める感じです。

品川 麻友(太田)が確定枠で、私は試合して決まりました。ことしは例年7人枠だったのが10人になって。私たちの学年が例年より人数が増えた関係で出場枠も増えました。ラッキーでしたね(笑)。

――品川選手は初めての個人戦出場ということでしたが、出場が決まった時の気持ちはどのようなものでしたか

品川 とりあえず選手になるということが自分の中で一個目標だったので、うれしかったです。

――改めて振り返って、自分の個人戦での結果をどのように捉えていますか

品川 2年生の時に負けておいて良かったなと思っています。

太田 関東では納得いく試合ができたんですが、全日本では去年ベスト8に入っててことし2回戦負けというのは悔しかったです。ベスト8以上は、と思っていたので。

――この個人戦を通して得た収穫や、見つかった課題点というものはありますか

品川 高校の時の試合の感覚というのを去年1年間個人戦に出なくて忘れてしまっていたというか、直近の団体戦、新人戦の感覚のまま個人戦に臨んでしまった感じです。個人戦と団体戦の戦い方ってやっぱり違うので、そこを意識した戦い方をしなきゃいけないなと思いました。

太田 気持ちの面で、試合前に「この人にだったら勝てるはず」「この人は難しそう」とか色々考え過ぎてしまって。どんな相手でも自分の剣道でぶつかっていけるようにしないとと思っています。

――この個人戦の結果を受けて、秋の団体戦シーズンに向けて取り組んだことはありますか

品川 団体戦で一番意識していたのが「負けて回さない」ということで。とにかく負けない試合をしなきゃいけないと思っていました。

太田 自分が団体戦で使われるなら前のほう(先鋒、次鋒)かなと思っていたので、団体戦は時間も限られているので自分が取りに行かなきゃいけないと思っていました。

――夏合宿はいかがでしたか

品川 最後の100本切り返しがきつかったです(笑)。

「この試合を経験したこの二人がこれからどうしていこう」(太田)

去年から団体戦のメンバー入りを果たしている太田

――続いて先日の団体戦についてお伺いします。結果としては2回戦敗退で全日本(全日本女子学生優勝大会)への出場を逃す結果となりました

品川 1試合目は出てないんですけど、2試合目は(先鋒の)私が初太刀で打たれてしまったのが良くなかったなと思ってて。結局一本にはならなかったんですけど、気持ちの面で流れを持っていかれてしまったのかなと感じています。気合負けっていうか。

太田 気負い過ぎていた部分がありましたね。自分が取らなきゃいけないと思ってしまって、自分の試合ができていなかったと思います。

――2回戦で当たった駒沢大の印象は

太田 トーナメント見て、あー駒沢か…という感じでした。試合前にビデオ見て対策を考えたりというのはみんなでしていました。

――2回戦に出場した5人のうち3人は4年生、残りが2年生のお二人でしたが、試合前後に先輩から言葉を掛けられたりはしましたか

太田 とにかく負けてこなかったらいいからって言ってもらいました。あとはどうにかするからって。だから私たちは気持ち的には楽に臨めたはずなんですけど…。

――試合後には、団体戦を振り返っての話し合いなどはされましたか

品川 全体ではしてないです。

太田 はい、でもこの二人ではめっちゃ話しました。

――どういうことを話したのですか

太田 試合の反省っていうよりは、これからのことを話した感じです。この試合を経験したこの二人がこれからどうしていこうかって。

品川 今回結果的には麻友の(取られた)一本で負けたんですけど、私たちが4年生になった時にもし前の方の後輩が負けて回してきても私たちでどうにかして1本取って勝ちに行けるようにしなきゃいけないし、そうできるようにこれからどうしていかなければいけないのかってのも考えなきゃいけないねって話し合いました。

――もうすぐ力のある4年生の代が引退して、お二人はじめ2年生も中堅の学年のしてチームを引っ張っていくことになると思います。それに向けて意識していることや取り組んでいることはありますか。

品川 3年生の先輩方がいらっしゃるので、自分はメンバーとして戦力として、1勝を挙げられる選手になりたいと思っています。

太田 私は去年と今年で団体戦では2敗してしまっていて。2戦2敗です。どっちも自分が勝たないといけないっていうすごい変な気負いがあってしまって、そこが良くないってやっとわかってきたので、私の場合「チームのため」とかごちゃごちゃ考えずに自分の試合に集中した方が結果的に勝ちにつながってチームのためにもなるんやなって思うようになりました。

――今季はお二人をはじめ今の2年生の代の活躍が目立っています

太田 この前の部内大会もベスト4のうち3人が2年生で「うちら頑張ってんじゃね?」みたいな(笑)。

品川 人数も多いですし刺激になっていますね。切磋琢磨(せっさたくま)ってよりも同期に負けたくないって気持ちが強いです。部内大会でも2位になったのがこれまで試合にずっと出てた2年生じゃない子で、いろんな選手がいろんなところで活躍してるので。選考とかで負けたくないなってすごい思います。

――部内大会の雰囲気ってやはりピリピリしたものなのですか

太田 全然そんなことないです(笑)。男子とかも見てるんで応援がすごくて。下剋上的なのがあると、その力のない方をめっちゃみんなで応援したりして盛り上がります。

――特に印象に残っている試合はありますか

品川 和田桃花(社1=鹿児島・錦江湾)と丸山紋加(法1=埼玉・早大本庄)の1年生対決ですね。和田は結構練習試合とかも出てて1年生から活躍してる子なんですけど、丸山はこれまでそんな感じじゃなくて。その丸山が和田から合いメン取ったのが印象的です。すごい盛り上がりました。

太田 男子なんですけど山本聖人さん(政経4=埼玉・早大本庄)と勇さん(大地、スポ4=東福岡)の試合がすごかったです。あと勇大地さんと中嶋(優樹、法2=東京・国学院久我山)の試合も。(勇選手が)一本取られてからすぐにツキで取り返したりして、本当にすごいなって、つっよって思いました。

――そういう雰囲気だと、逆に普段から試合で活躍しているお二人はやりづらかったりするのではないですか(笑)

太田 今回ほんとそれで(笑)。準決勝で中澤(結貴、人2=埼玉・伊奈学園)とやった時に初太刀を取られてしまって。そのあとの中澤への応援がすごくて、全然取り返せる雰囲気じゃなかったです。

品川 めちゃめちゃ盛り上がってました。見てる方からしたら「中澤頑張れー」みたいな感じで、麻友はやりづらかったと思います(笑)。

「昨日も女子で同期会をしました」(品川)

2人の掛け合いからも仲の良さが伝わってきました

――続いてプライベートに関する質問に入らせていただきます。まず、2年生はどんな学年ですか

太田 みんな面白いです。言葉では表せられない。

品川 独特すぎて。

太田 普通の人がちょっと少ないかもしれない。

一同(笑)。

――2年生は仲が良いのですか

太田 いいよね。

品川 ちょうど昨日も女子で同期会をしました。

太田 楽しかったです。

――後輩ができて変わったことなどは何かありますか

品川 後輩に直接関係することではないんですけど、1年生の仕事がなくなったのでだいぶ楽にはなったかなと思います。

太田 1時間前集合がなくなったのが、結構大きいですね。

――太田選手と品川選手の出会いは大学ですか

品川 一応高校の時から知ってはいたんですけど、気軽にあいさつとかするような感じではなかったです。

太田 友達とかではなかったよね。

――お互いの第一印象について覚えている事があれば教えてください

品川 (太田は)守谷高出身で、守谷ってみんな髪をミディアムに切ってるんですけど、(太田)麻友だけ短くて1人だけ違うんだなっていう印象はありました(笑)。

太田 高校のときに、年に1回私の高校に広島国体のメンバーが練習試合に来るんですけど、(品川は)1年生の時から出てて。他にも全然強い人がいたんですけど、同じ学年っていうのを聞いて、私が苦手そうな剣道するなって感じました(笑)。

――今のお互いの印象は

品川 よくしゃべる。

一同 (笑)。

品川 なんか気分屋だって思ってて、しゃべる時としゃべらない時の差がすごいです。

太田 とりあえず私何でも話すんですけど、そうなんだーって聞いてくれて、なんかあったら言ってくれて。お姉ちゃんみたいな、なんかもう上の方って感じです。

一同 (笑)。

――地稽古などで対戦することがあると思うのですが、お互いの剣風についてどう思いますか

品川 すごいなって。真似しようと思ってやったりするんですけど、私の剣道では真似できないやわらかさ、というか攻め方があって。諦めました、もう目指すのは。麻友とは違う形で、違う1本の取り方でやっていかないと、って思ってるんけど、やっぱり迫力があって。1本を本当に取れるような剣道をするので、すごいなと思います。

太田 たぶん(品川は)大学入って、打てる技のバリエーションが増えてきたような。やってても前までは、メンだけっていうイメージがあったんですけど、今は割とそんなことなくて、他のどの技も打ててるなって。スッキリしますね、歯切れがいい。

――先ほど自分がやりづらい剣道をすると言われていましたが

太田 メンが半テンポくらい遅れてくる感じがして。タイミング合わないのが苦手なんで、ちょっと難しいなって。

――その点は品川選手としては意識して行っていることなのですか

品川 意識していないんですけど。打つ前に右足が浮いたまま、メンを突くので、他の人とタイミングが違うみたいで。

太田 だから相手としてはあれ、みたいな。

品川 普通のメン打ちは結構遅くて、ふわっとしたメン打ちなので、それが周りからするとやりにくいみたいです。

――男女問わず尊敬する先輩はいらっしゃいますか

品川 久田松(雄一郎、スポ4=佐賀・龍谷)キャプテンがすごいなと思います。練習後に集合がかかるんですけど、そういうときに「結果を残さないと意味ない」ってよくおっしゃられるんですよね。確かに部内で一番結果を残しているのは久田松さんで、プライベートがどうであれ、練習だったり自主練だったりを4年生では一番やってるし、そういうところが私にとってはすごい見本になってるかなと思います。

太田 剣道部としては久田松さん。集合とかで言っていることが本当にその通りだなって。周りに言っているようで、たぶん自分にも言い聞かせてるんだろうなって。言っている自分もそうじゃないといけないみたいな感じでやられているところが本当に見本です。

――特に印象に残っている言葉などはありますか

品川 結構心に響いたのは、最近言われるんですけど、「実際の試合で思うように体が動かないときがほとんどで、その試合をどう展開していくかが勝負の変わり目だ」ってことです。強い人でもそういうのを感じる時がたくさんあるんだなって思って。強い人はそういうの感じないとかじゃなくて、みんな感じるものなんだなって思いました。

太田 部内試合とかがあったときの後の集合とかで、後打ちができてない、って言ってらっしゃるんですけど、それは練習中に久田松さんがずっと言ってたことで。「何も考えてやってないから、(後打ちが)とっさに出てこない。毎回意識してやれば、試合でも自然に体が反応して打てるようなところがあるのに、意識してないから出てない」っておっしゃられて。やっぱりトップレベルでやっている人は常に何か考えてやってるんだなって、すごい大事なことだなって思いました。

――早大剣道部のどんなところが好きですか

品川 練習時間が2時間で週1でオフがあることです(笑)。

――高校の方が厳しかったですか

品川 いや、高校の方は練習1時間で週1オフで。練習メニューは大学の方がきついんですけど、週1休みが取れてるっていうのが高校の時から続いてて嬉しい。

太田 部内の上下関係がそこまで厳しくなくて、割とフレンドリーというか。先輩も面白い人ばかりで、堅苦しさなく近づきやすい人が多いのがいいなって。

――オフの日はどんなことをされているのですか

品川 遊びに行ったり、たまに1日寝てたりします。

太田 同じですね。買い物行ったり、寝たり。たまに温泉とか行ったり。

――部員の皆さんで一緒に行かれるんですか

太田 そうですね、昨日はこの2人で行きました。

――続いて早慶戦へ向けての質問に移らせていただきます。今のチームの雰囲気はいかがですか

品川 楽しんでやっていると思います。変にピリピリしすぎてなくて、楽しんで地稽古とかもできているので、そのまま早慶戦の雰囲気にのまれずにできればいいんじゃないかなって。

太田 関東で負けてから、いい意味で吹っ切れたじゃないけど。関東の時は楽しめてなかったり、ピリピリし過ぎていたような気がするので、早慶戦は4年生と出る最後の試合なので楽しんだ方がいいんじゃないかなって。

――4年生とは最後の試合になりますが、どんな思いで戦いたいですか

品川 4年生と最後だからって思いながら試合に出ると、また固くなっちゃうかなって思うので、前が勝ってきても負けてきても自分の剣道ができたらいいなって思います。

太田 4年生の皆さんのことが大好きなので、最後と思いたくないんですけど、最後にとりあえず勝って良い形で終わってもらいたいなって思ってます。

――新人戦も控えていますが、今の1・2年生の実力は

品川 強いと思います。元気な剣道をするので、新人戦の戦い方としてはすごくいいと思います。

――上級生として部を引っ張っていく立場になると思いますが

太田 たぶん後ろでやることになると思うんですけど、関東の時は自分たちが後輩で負けて終わってしまったので、どんな状況でも勝つ。新人戦の経験が4年生になったときに活かされると思うので、通過点じゃないですけど、いい経験になると思います(笑)。

品川 上の学年になるにつれて、やっぱり責任は大きくなってくると思ってて、今までの戦績とか剣道とかを考えると私たちの学年で戦力になるのが麻友1人みたいな感じになってたんですけど、それを覆すというか。そうならないように、1人じゃないんだぞっていうのをみんなで見せていきたいです。結果を出して2年生が頼りになるから、後輩が思い切った試合ができるっていう所まで持っていけたらいいなって思います。

――最後に今後の試合に向けて、意気込みをお願いします

品川 負けは今年の試合でたくさん経験して悔しい思いがたくさんあったので、やっぱり絶対勝ちたいです。

太田 早慶戦は去年勝って、だからといって今年勝てる保証はないので、一戦一戦やっていくことが大事だと思います。新人戦は去年決勝で負けて、優勝できるチャンスがあったのに逃したっていうのがあったので、今年は優勝して来年春の関東大会に向けて勢いづけていけたらいいなって思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 久野映、秦絵里香)

これからの早大を担う2人が選んだのは「必勝」でした

◆太田麻友(おおた・まゆ)(※写真右)

1997年(平9)10月25日生まれ。身長164センチ。A型。茨城・守谷高出身。スポーツ科学部2年。品川選手から「よくしゃべる」と評された太田選手。早大剣道部や部員について話すときの生き生きした語り口からは、強いワセダ愛が感じられました。持ち味である力強く正確な剣道で、早慶戦、新人戦では勝利に貢献する活躍を見せてくれるでしょう!

◆品川大華(しながわ・ひろか)(※写真右)

1997年(平9)5月25日生まれ。身長165センチ。B型。広島・広高出身。スポーツ科学部2年。太田選手から「お姉ちゃんのような存在」と評された品川選手。的確な受け答えと太田選手とのやり取りからは、普段から学年の中で皆に慕われている様子が伝わってきました。武器とする独特なタイミングで繰り出すメンで相手を翻弄(ほんろう)し、早大へ勝利を呼び込みます!