好敵手と熱戦!惜しくも4連覇逃す 

剣道

 まさに『死闘』と呼ぶにふさわしい試合だった。両校20人ずつの剣士がぶつかり合うのに要した時間は4時間半超、試合数にして39試合。「技量的にも層の厚さでも負けてなかったと思う」(秋山健太、スポ2=福岡大大濠)と、早大剣士たちは4連覇を懸けた早慶対抗試合(早慶戦)に自信を持って臨んだ。しかし、予想に反して試合は大将戦までもつれる大混戦に。大将の久田松雄一郎主将(スポ4=佐賀・龍谷)が強敵相手に白星を挙げ早大勝利へあと1勝のところにまで迫ったものの、最後は慶大主将に2本負けを喫し大会4連覇を逃す結果となった。

快進撃を続けた秋山

 1年生ながら先鋒に大抜てきされた藤田啓人(スポ1=東福岡)が敗れ、黒星スタートとなった早大。しかし、次鋒戦ですぐさま取り返して勝負を軌道に乗せる。最初の見せ場は勝ち数4-4で迎えた9試合目、山本聖人(政経4=埼玉・早大本庄)の勝利だった。早大本庄高出身で高校時代は早慶戦「三戦全敗」。出場した大学2、3年時も敗れており、6度目となった最後の早慶戦で初勝利を飾った。その後、本大会の優秀選手に選出された丸田大輝(法3=東京・早大学院)の2人抜きで2勝のリードを奪い、早大は完全に波に乗ったかに見えた。ところがその直後、慶大十三将・波多野匠吾が無双。あっという間に4連敗を喫し、一気に旗色が悪くなった。その悪い流れを断ち切ったのが大﨑泰拓(社4=奈良大付)だ。勢いに乗っている相手に対して自分のペースを崩さず、強気な攻めで相手を居つかせた瞬間を逃さずメンで1本。ほどなく鮮やかな抜きドウを奪い、2本勝ちで波多野を試合場から引きずり下ろした。続く見せ場をつくったのは、2敗のビハインドで迎えた19試合目に登場した中堅・秋山。安定した試合運びで2人を抜き勝負をイーブンに戻すと、その後も得意の引きメンを軸にした試合で勝利を重ね5人抜きの活躍を見せた。その後慶大六将・高田大輝に4連敗するピンチもあったが、その暴走を食い止めた松葉友暉(法3=岐阜北)らの活躍でビハインドを1にとどめ、副将・勇大地(スポ4=東福岡)にたすきをつなぐ。

 試合もいよいよ大詰め。勇は激しい打ち合いの中で的確にメンを決めると、その1本を巧みに守り切って勝ち数18-18に戻す貴重な白星を挙げた。続く副将対決でも勝利を収め早大優勢に持ち込みたいところだったが、実力者相手に苦戦し無念の2本負け。2人残しの状態で大将・久田松が登場した。早大勝利のためには、相手の副将、大将を連続して倒さなければならない。慶大副将・伊藤謙剛との試合は互いに有効打突が出ず延長戦へもつれ込んだが、最後は久田松の飛び込みメンがさく裂し勝負あり。いよいよ、大将同士の直接対決が実現した。会場の盛り上がりは最高潮に達し、全員総立ちの熱戦が開始。両者の一挙手一投足に歓声が湧いた。手堅く進んでいた試合が動いたのは中盤。一瞬の隙を突いて久田松が逆ドウに飛び込んだ。決まったに見えたが相手は動じずメンで対抗し、審判の判定は相手のメンに軍配が上がった。その動揺もあってか続けざまにコテを決められ、その瞬間に慶大の勝利が決まった。

無念の敗北に肩を落とした

 勝負はどちらに転んでもおかしくなかった。確かにビハインドを負う場面も幾度かあったがいずれもすぐに取り返しているし、流れとしても悪くはない。ただ、「最終的には審判の運とかそういったものも含めて、慶大側に持っていかれてしまった」(山本)と話す通り、それまでの小さなしわ寄せが最後の最後で敗北につながってしまう結果となった。だが、収穫もある。先日の関東学生優勝大会では出場選手に選ばれていない丸田、松葉ら3年生の活躍は来年への期待を膨らませる好材料。また、秋山、安井奎祐(スポ3=茨城・水戸葵陵)や最終学年の勇、久田松など3週間後に控える全日本学生優勝大会(全日本)で中心となるメンバーも確実に勝利を挙げて調子の良さをうかがわせた。あくまで見据えるのは全日本、そしてそこでの『日本一』。泣いても笑ってもあと3週間。現体制で臨む集大成、最高の状態で決戦の日を迎えるべく最後の調整期間に入る。

(記事 久野映、写真 松本一葉)

コメント

山本聖人(政経4=埼玉・早大本庄)

――早慶戦初勝利となりましたね

そうですね。ただ、自分のポジション的に1勝だけでなく勝つことができなかった先鋒戦からの悪い流れを食い止めるために何人か抜かなければならないと思っていたのですが、結果的に1勝で終わってしまったのは残念だったかなと思いますよ。

――慶大4年の波多野匠吾選手とは何か因縁があったのですか

そうですね(笑)。もともと先輩だったのですが今度から会社の同期になります。最後は勝負したかったんですけどね。

――今日の結果をチームとしてどのように受け止めていますか

全体的に流れとしては悪くなかったと思います。ですがまあ最終的には審判の運とかそういったものも含めて、慶大側に持っていかれてしまったのではないかなと感じました。

――最後に全日本に向けてお願いします

僕たちは結果的に良くも悪くも早慶戦で引退ではないので。全日本で引退することができるっていうことでこれから3週間、各々の反省点を改善しつつ、目標としていた日本一に向けてまたゼロから頑張っていこうと思います。

秋山健太(スポ2=福岡大大濠)

――5人抜きの快挙でしたがご自身の活躍を振り返っていかがでしょうか

正直わたしたちがリードの状態で回ってくるかなと思っていて。ビハインドで来るとは思ってなかったです。もっと抜いて強い後ろのほうと戦うところまでいきたかったですね。ちょうど私が当たったところは相手の中では強いところではなかったので、もっと勝てたはずだと思います。

――中堅というポジションについては

流れが変わる大事なポジションだと思っていました。とにかくいつも通り戦ってできるだけたくさん勝って後ろに回そうと思っていました。

――優秀選手にも選ばれ、見ていても負ける気がしないような戦いぶりでした

ぜんぜんそんな(笑)。力的にも負けはしないというか、何戦連続であろうと負けちゃいけないと思っていました。その油断が最後足が止まってしまって打たれるっていうのにつながってしまったのかなと思うので、そこがまだまだ甘かった部分です。

――早大全体として振り返ってみていかがでしょうか

技量的にも層の厚さでも負けてなかったと思うので、残念な部分はあります。まあでも、一番の目標は全日本(全日本学生優勝大会)なんで。

――普段の試合よりも応援の声が届きやすい試合でしたが、その点はいかがでしたか

早慶戦ならではでいいっちゃいいんですけど、私はもっと静かな環境で集中して試合したいタイプですね(笑)。

 

――全日本への意気込みをお願いします

久田松さん(雄一郎、佐賀=龍谷)がキャプテンで最後の試合になるので、私は今まで団体戦で一度も活躍できていないのでこの試合こそ勝って日本一に貢献したいと思っています。