1本が遠かった。試合終了とともに相手の勝利を示す赤旗が上がる。その瞬間早大の2回戦敗退が決まり、女子剣士達の目からは大粒の涙が溢れた。またも全日本女子学生優勝大会(全日本)進出を果たすことはできなかった。
無念の敗戦に肩を落とす太田
ことしも東京武道館で関東女子学生優勝大会が行われた。早大からは7人の女子剣士が出場。全日本出場を懸けた絶対に負けられない戦いに挑んだ。1回戦の相手は高崎経大。「自分らしい勢いのある剣道ができた」と先鋒・小波波瑠(スポ3=大分鶴崎)が相次いでメンを決め勝利、チームに流れをもたらす。続く沖田瑞希(社3=京都・日吉ヶ丘)は惜しくも引き分けに終わったがその後は2本勝ちで3連勝し快勝。次の2回戦へ駒を進めた。2回戦の相手は駒大。全日本出場の山場であり、早大はベストメンバーで挑んだ。先鋒は今大会初出場の品川大華(スポ2=広島・呉)。試合開始直後からコテを取られかけるなど危ない場面も。しかし何とか守り抜き引き分けで次の太田麻友(スポ2=茨城・守谷)につなぐ。次鋒戦は互いに1本を取れないもどかしい展開に。そんな中ついに相手がメンを仕掛ける。太田も対抗してメンを繰り出すが惜しくも相メンを制することはできず1本を取られてしまう。何とか取り返そうと積極的に攻めるが相手には届かず無念の1本負け。太田は肩を落とした。
思い出すのは去年のこの大会。同じように2回戦で強豪・明大とぶつかった。先鋒の杉村麻記(社4=茨城・守谷)、次鋒の太田が相次いで敗れると空気は一気に悪い方向へ。後続の川﨑茜主将(文4=京都・日吉ヶ丘)、河村奈穂(スポ4=大分鶴崎)、も思うようなプレーはできず、大将戦を前に勝敗が決まってしまった。緊張と焦りが早大を蝕んでいったあのときの悪夢が胸をよぎった。
1本ビハインドの状況で挑むのは関東王者・河村。「絶対負けない」と強気で挑むも思うように技が決まらない。そのまま勝負は決まらず副将の杉村へ。勝利のためには絶対に負けてはならないが1本を取らなければイーブンには持ち越せない、そんな苦しい試合が続く。やはり、慎重にならざるを得ない早大と守るだけの駒大との心の余裕の差は大きく、1本を取ることはできなかった。最後を託されたのは川﨑。「相手が守りに来る場面は練習のときから想定してやっていた」と後がない川﨑は猛攻し、積極的に逆ドウやツキを狙っていく。竹刀が音をたてる度に、早大応援席からは歓声があがる。しかし、1本にはあと少し足りなかった。無情にも試合終了のブザーが鳴り響く。駒大を意味する赤い旗が挙げられ、部員たちは一様にうなだれた。早大の日本一への挑戦はあっけなく幕を下ろした。
必死の応援も届かず
「やっぱり、悔しいという気持ちしかない」(杉村)。全日本で上位入賞経験もある川﨑、杉村、太田。そして関東女王の河村。実績も実力も申し分ない最高のメンバーで挑んだ。しかし、2年連続で全日本出場さえも逃してしまう結果となった。それでも「きょう負けてへこむのではなくて早慶戦という次の目標に向かってみんなで頑張っていきたい」(川﨑)と女子剣士たちはもう、前を見据え始めた。4年生にとっては今大会が最後の公式戦、そして早慶戦で引退だ。「ワセダに来てよかった」(川﨑・杉村)、その思いを伝統ある早慶戦でぶつける。悔し涙を流すのはこれで最後だ。最後は嬉し泣きで有終の美を飾る。
(記事 松本一葉、写真 久野映、村田華乃、
下長根沙羅)
結果
1回戦 ○早大4(8)―0(0)高崎経大
先鋒 小西 メメ― 木口
次鋒 沖田 × 金森
中堅 杉村 メメ― 田中
副将 河村 メメ― 明石
大将 川﨑 メメ― 塚田
2回戦 ●早大0(0)―1(1)駒大
先鋒 品川 × 大園
次鋒 太田 ―メ 五十嵐
中堅 河村 × 前波
副将 杉村 × 越田
大将 川﨑 × 岡崎
早大 2回戦敗退
コメント
川﨑茜女子主将(文4=京都・日吉ケ丘)
――今大会への意気込みはどのようなものでしたか
まずは去年全日本(全日本学生優勝大会)に出られなかったので、ことしは全日本出場ということを第一に考えてやってきました。
――個人戦の後、大きな大会のない期間がありましたが、その間どのようなことを強化してきましたか
団体戦で「チームで勝つ」ということです。夏の合宿ではとにかく体力をつけて、暑い中でもどんな状況でも厳しい稽古をするようにしてきました。
――では、この大会に向けてはどのような準備で臨みましたか
練習試合をけっこうたくさんやって、その中で個人の戦いを5試合やるんじゃなくてチームでつながる試合をしようというのを繰り返し言ってきました。
――続いて本日の試合を振り返ってですが、初戦は大差をつけて勝つことができましたが、チームの雰囲気はいかがでしたか
結果としては良かったんですけれど、ちょっと元気というか勢いがなかったなと感じました。
――川﨑選手も2本勝ちのご活躍でしたが、調子はいかがでしたか
私は結構緊張しいなので、落ち着いて試合をやることを心掛けていました。いつもより、1試合目にしては落ち着いてできたかなと思います。
――2試合目の駒沢大戦を振り返って、1試合目からメンバーの変更がありましたが、オーダー変更の経緯はどのようなものでしたか
先鋒、次鋒は1試合目は見せないでいたのですが、駒沢大戦のメンバーがワセダとしてはベストメンバーでした。夏合宿とか練習試合を通してそう決めていました。
――前陣が思うように勝ち星を挙げられませんでしたが、どこかやりづらい部分などあったのですか
今思うと、相手は前半で勝ってそれをつなぐ作戦だったのかなと思っていて。そこにうまくはまってしまったと思います。
――自分の出番までずっとメンバーに声を掛け続けておられましたが、1敗がのしかかる中どのような気持ちで見ていましたか
取り返そうと焦ってしまうと向こうのペースになってしまうので、フラットの状態で考えてほしいなと。後ろ3人4年生が固まっていてここ3人は仲間を信じてやるしかないと思っていたので、落ち着いてじっくりいけば勝機を見いだせるんじゃないかと思っていました。
――早大勝利のためには、絶対に勝たなければならないという場面で回ってきた大将戦を振り返っていかがですか
ああいう風に相手が守りにくるという場面は、大将である以上練習のときから想定してやっていました。なので、守りに入った相手に対しての逆ドウやツキなども練習していたのですが、それが思うように決めきれなかったなと思います。もっと一本一本を確実に決められる練習をしておけばこんなことにならなかったかもしれないと、悔いがあります。
――早慶戦(早慶対抗試合)を残してこのメンバーで公式戦を戦うのは最後となってしまいましたが、改めてこの7人はどのようなチームでしたか
一人一人の実力があってチームワークもいいので、本当に日本一取るぞっていう気持ちが強かったです。きょうは運もなく向こうのペースにはまってしまって、そこが負けにつながってしまったのかなと思います。でも本当に最高のチームだし、きょうあらためて「ワセダに来てよかった」と感じました。
――早慶戦で引退ということになりますが、そこに向けての目標をお願いします
早慶戦はこのメンバー、この27人で戦える最後の試合なので、そこで絶対に悔いのないようにしたいです。きょう負けてへこむのではなくて、早慶戦という次の目標に向かってみんなで頑張っていきたいと思います。
杉村麻記(社4=茨城・守谷)
――きょうの試合を振り返っていかがでしたか
やっぱり悔しいという気持ちしかないです。でもやり切ったので。あとは後輩に託します。
――どのような意気込みで臨まれましたか
去年も全日本に出れていなくて、とりあえずは駒大と高崎経大に勝って全日本に出ようっていう気持ちがすごく強くて。いい感じに(士気が)高められて試合に臨めたと思います。
――調子はいかがでしたか
自分の試合ができたし、悪くはなかったです。結構いい調子でした。
――1回戦は2本勝ちで快勝しましたね
自分たちの方がレベルは上ですし、ここで2本勝ちで勝たないと次の試合には勝てないって思って積極的に狙って行きました。
――駒大戦では惜しくも1本を奪えませんでしたね
そうですね、1本ビハインドで回ってきて、副将の私が負けたら大将に回らないままチームも負けてしまうので。そこをどう(1本を)狙いにいってどう(後続に)つなげていくかっていうのがすごく難しかったです。
――各順番の役割などはありましたか
いや、特にはなくて。ただ負けなければいいと思ってました。負けないでずっとつないでいくっていう試合をチーム全体で心がけてきたので。誰かが取るって言うのではなくて誰かが取ったらそれを守り抜くっていうのをチームの試合としてました。
――川﨑茜主将(文4=京都・日吉ヶ丘)には試合前何か声を掛けられましたか
この大会も今年で最後なのでもう楽しんでやろう、思いっきりやってきてって言ってくれて、すごく心強い言葉で(背中を)押してくれました。
――今大会で最後の公式戦となってしまいましたね
結果がついてこなかったのはすごく悔しいんですけど、それ以上にこのチームでやってこれたことがすごく嬉しくて。まだまだもっといい試合もできたと思うんですけど、後は早慶戦に向けて頑張ります。ワセダに来て本当によかったなって思います。
――後輩たちに何かメッセージはありますか
2年連続で全日本に出れなくて、プレッシャーとかもあると思うんですけど、監督も2年出れなかっただけだからっておっしゃってて、私たちはチャレンジャーなので。その気持ちを忘れずに頑張ってほしいですね。
――最後に早慶戦に向けて意気込みをお願いします
絶対に勝ちます。公式戦ではないんですけど伝統のある早慶戦で戦えることを誇りに思って全力で戦います。
河村奈穂(スポ4=大分鶴崎)
――全日本から今大会に向けて練習してきたことは
全日本では気を抜いてしまったところをやられてしまったので、常に前に前に先をかけて下がらないようにっていうのを強化してきました。
――今回はそれを発揮できましたか
まだ詰めが足りなかった部分があると思います。
――きょうの意気込みをお願いします
きょねんは全日本に出られてないので、今年こそはまずは全日本に出られるようにして、強い気持ちで勝ち上がろう、上まで行こうっていうのを意気込んでました。
――1回戦目は2本勝ちでした
とても緊張したんですけど、しっかり自分らしい試合ができたと思います。
――2回戦目は思うように取れませんでしたが
まずは気持ちから「絶対負けない」と思って強気で臨んだんですけど、相手も下技がうまくて、それに慌てていったら拾われると思ったので、ここは無理せず慎重に戦おうと思いました。
――今大会で公式戦は最後となりましたが、お気持ちはいかがですか
1、2年生のときに全日本の愛知の方に行ったんですけど、きょねんは出られずに、今年こそは愛知の会場で試合したいって思ってたので、負けてしまってとても悔しいですが、早慶戦に向けて気持ちを切り替えて頑張りたいと思います。
――後輩に向けてメッセージをお願いします
関東を勝ち抜くためのカベは大きいと思いますが、後輩ならやってくれると信じてるので、来年はぜひ頑張って全日本出てほしいです。
小西波瑠(スポ3=大分鶴崎)
――今大会にはどのような意気込みで臨まれましたか
ギリギリまで(出場する)5人に入れるかわからなかったんですけど、選ばれたら絶対に勝とうという気持ちで臨みました。
――関東から練習してきたことは
一本を取る力がすごく重要だとこの大会でも実感したんですけど、出たら自分が必ず4分で一本を取るということを心がけて練習してきました。
――1回戦では先鋒として勢いをもたらしました
1試合目の先鋒ということですごく緊張したんですけど、自分らしい勢いのある剣道ができたので良かったと思います。
――2回戦はどのようなチーム編成でしたか
私は出ることができなかったんですけど、しっかり後輩が心強かったので頼もしかったです。
――きょうのご自身の調子はいかがでしたか
大事な場面で、大事な試合に出られていないので。出られなくて負けてすごく悔しい思いはあるんですけど、今回の敗戦を次に生かしたいと思います。
――きょうは4年生最後の公式戦でした
今は実感が湧かないんですけど、まだ早慶戦があるので、最後は絶対みんなで勝って終わりたいと思います。
――最後に早慶戦への意気込みをお願いします
どのポジションになっても、私は必ず勝って勝利に導きたいと思います。