全日本での雪辱を果たし、早慶戦3連勝!

剣道

 ことしも早慶対抗剣道試合(早慶戦)が慶大日吉記念館で開催された。両校20人ずつの剣士が対勝負でしのぎを削る伝統の一戦だ。今季、慶大との対戦結果は1勝1敗。関東学生優勝大会では4―0と圧勝したものの、全日本学生優勝大会では慶大に敗れベスト8入りを逃した苦い思い出がある。早大は開始から3連勝するなど前半大きなリードを見せるが中盤から追い付かれる展開に。それでも最後は、大将の小林直道主将(スポ4=東京・高輪)が慶大主将の廣田憲亮にメンを決め勝利。早慶戦3連勝を果たした。

 早大の先鋒は岡田悠貴彦(スポ1=福井・高志)。期待のルーキーがドウを決め4年生に勝利、流れを作る。優秀選手賞に選ばれた十五将・和田勇輝(社1=東福岡)や十三将・馬場健太(社2=東京・富士)の活躍でリードを広げたが、その後2連敗を喫した。続く中堅の安井奎祐(スポ2=茨城・水戸葵陵)が勝利したものの、その後またも2連敗。序盤には最大5勝あった差を7勝6敗と1勝差にまで迫られる。緊迫した状況の中で登場した七将の森本翼副将(社4=京都・龍谷大平安)は、「自分らしくいくことよりも、着実に勝つということを意識していた」と延長戦をドウで制した。しかしその後もピンチは続く。

絶体絶命のピンチを救った久田松

 苦しい状況が続き、五将の敗北でとうとう勝ち数で並ばれてしまう。四将・勇大地(スポ3=東福岡)の勝利でなんとか後続につないだものの、副将の久田松雄一郎(スポ3=佐賀・龍谷)に出番が回るまでに9勝9敗と再び追い付かれる。さらに本数では1本負けているため、早大の勝利のためにもう負けは許されない状況に。しかしそんな中でも「いつも通りやった」と久田松。延長の末にメンを奪い勝利し、大将戦に望みをつなげた。「きれいに勝つとか、かっこよく勝つとか考えずに、ただ相手を倒すということだけ考えてやった」(小林)。小学生時代からのライバルである廣田憲亮との戦いは一進一退。会場内は大歓声に包まれる。「気合を入れろ」「強気で行け」そんな仲間からの声援が小林の背中を押した。「コテに徹底的に気をつけてやっていた。練習していた技が出ました」と、最後は小林がコテに対する応じ技でメンを決め、早大の勝利となった。

小林主将の強烈なメンが、激戦に決着をつけた

 「勝ってすごく気持ちよく引退できるので、悔いはない」(小林)。4年生は今大会で引退だ。来年からは新体制で稽古に励むことになる。「例年よりも結果にこだわって勝ち抜いていけるようなチームを作っていきたい」(久田松)。「自分たちに試合全部任せていいから思い切りやってこい、と(後輩に)言えるくらい頑張ってチームを引っ張っていきたい」(勇)。新しい早大剣道部は動き始めた。「団結力をもっともっと高めれば全日本優勝はできると思う」(小林)。先輩から後輩へ、託された思いを背負った早大剣士たちのさらなる成長から目が離せない。

(記事 松本一葉、写真 佐藤諒、杉山睦美)

集合写真

結果

○早大11-9慶大

先鋒  岡田  ド―   篠田

次鋒  岩部  メ―   森田

十八将 藤澤  ド―   川井

十七将 船橋   ―コ  杉山

十六将 小松  メ―   近藤

十五将 和田  メ―   野地逸

十四将 後藤田  ―コ  岡部

十三将 馬場  メ―   北村

十二将 山本   ―コ  高田

十一将 森    ―メ  黒田

中堅  安井  メ―   加賀

九将  中嶋   ―ド  黒川

八将  矢ヶ﨑  ―ド  横溝

七将  森本  ド―   後藤

六将  松葉   ―メコ 伊藤

五将  秋山   ―コ  藤本

四将  勇   メ―   大竹

三将  菅原   ―メ  遠藤太

副将  久田松 メ―   河村

大将  小林  メ―   廣田

優秀選手 早大 小林、勇、和田

コメント

小林直道主将(スポ4=東京・高輪)

――全日本(全日本学生優勝大会)で慶大に敗北してからどのような稽古をしてきましたか

全日本で慶大に負けて、借りを返せるのは早慶戦(早慶対抗試合)しかなかったので、今まで以上にきつい練習をしました。追い込みました。

――そのかいもあり、優勝することができました

本当にうれしいです。

――前半に早大が大きくリードしましたね

前半はすごく流れが良かったので、大将までいかずに勝負がつくかと思ったんですけど、なかなか厳しかったです。

――慶大の印象はいかがでしたか。いい選手がそろっていると思いますが

特に四年生は数がそろっていて、ワセダの四年生と同じか上くらいの実力なので、すごく強いと思います。

――勝負の懸かった大将戦となりました

きれいに勝つとか、かっこよく勝つとか考えずに、ただ、相手を倒すということだけを考えてやりました。

――ひやっとする場面もありました

気を張っていたので、打たれても絶対に一本にならない、もしそこで一本を取られても動じないと思ってやっていました。

――対戦した廣田憲亮選手は応じ技を得意としていますが、気を付けたことは

応じ技もそうなんですけど、コテが非常に上手な選手です。小学生からずっとやっていて、コテのみ打たれていたので、そのコテに徹底的に気をつけてやっていました。また、逆にそのコテを狙ってやろうっていう気持ちでやっていました。

――それがうまくはまりましたが、思わず動いたといったところでしょうか

そうですね、思わずです。全日本が終わってからずっとその技を練習していたので、練習していた技が出ました。

――ご自身の手で優勝を決めましたが、お気持ちは

最高です。

――同期の試合をご覧になっていかがでしたか

チームのために必死でやっているということを感じて感動しました。

――後輩の試合をご覧になっていかがでしたか

四年生のために、チームのために一生懸命やっていて、非常に良い試合だったと思います。

――三年生以下がこれからの早大を担っていくことになりますが、頼もしい限りですね

そうですね。きょうの試合も見ていて、三年生が非常にたくましいので、来年は三年生に後輩がついていければ、良い結果がでると思います。

――来年、早大が全日本で優勝するために必要なことは何だと思いますか

私がこの早慶戦を終えて思ったのが、縦のつながりの大切さ、そういうものが力になると思いました。なので、縦のつながりや横のつながり、団結力をもっともっと高めれば全日本優勝はできると思います。

――そういったつながりが、きょうの応援のように生きてくるのでしょうか

はい。早慶戦に関しては応援が50%くらいだと思っています。試合50%、応援50%くらいかと。それを考えると、試合に出ている選手だけじゃなくて、見ている選手も同じ気持ちで早慶戦に臨むような、そういう気持ちでいかないと絶対勝てないと思うので、そこは大事だと思います。

――どのような声援が聞こえてきましたか

「直道、気合い入れろ」とか、「強気でいけ」とか。自分が技を打ったときに、おお!って声が聞こえて、とてもやりやすかったです。

――主将として過ごしたこの一年間を振り返って

四年間を通して一番つらい一年間だったんですけど、一番やりがいがあって、すごく楽しい一年でもありました。

――これで引退となります

勝ってすごく気持ちよく引退できるので、悔いはないです。

森本翼副将(社4=京都・龍谷大平安)

――ご自身の試合を振り返っていかがですか

内容は正直あまり良くなかったのですが、勝てたのでひとまず良かったと思います。

――森本選手がもし負けたら、早大が勝ち数で並ばれてしまうという場面での登場になりました

前の試合を見ていて思ったのが、(早大の)レギュラークラスが結構対策されているなってことだったのでおそらく自分も対策されていると思ったので、自分らしくいくことよりも着実に勝つということを意識していました。

――後半は勝ち数で慶大に迫られ手に汗握る展開となりました

すごいひやひやしながら見ていたのですが、大将戦になった時はもう勝つか負けるかというよりも、直道(小林主将)が頑張ってきたのを私もずっと見てきたのでそれを信じるだけでした。

――チームとしては本大会いかがでしたか

4年生は特に最後になるので、絶対悔いはないようにしようって話していてそれはひとまず達成できたかなと。まあ不完全燃焼のやつもなかにはいるかと思うのですが、結果として勝つことができました。そのことはみんな良かったと思っていると思います。

――ご自身の試合が直後に控えていても、チームメートを熱く応援する姿も印象的でした

そうですよね(笑)。自分としても早慶戦において応援はすごく大事だと思っていて、応援が占める重要な位置があると思っていたので死ぬ気で応援だけはやりました。

――慶大は、先日の関東大会(関東学生優勝大会)で勝ち、全日本で負けた相手ですが、特別な意識はありましたか

私自身はあまりなかったです。どこと当たっても自分のできるベストをやろうという意識だったので。

――本日が大学での剣道の試合として最後になりましたが、4年間を振り返っていかがでしょうか

振り返ってみれば半分以上は挫折ばっかりでしたね。1年生、2年生のときは本当にダメで、3年生の時からこの最後の一年に懸ける思いがすごく大きくなっていて。部の中でも、全国の大学生の中でもこの気持ちは誰にも負けないって気持ちでずっとやってきたので、最後の一年はそれが結果として表れたのかなと思います。

――同期に言いたいことは

これといって特にないのですが、とにかく「きょうは勝ってよかった、今夜は飲もう」って(笑)。あとは「これからもよろしく」と。

――小林主将には何かありますか

とにかく、きょうは最後においしいところ持っていきやがってというだけですね(笑)。

――後輩に向けてメッセージをお願いします

実力的に見ればきょうの早慶戦勝って当たり前だと私は思っているのですが、実際は最後の最後まで勝負が分からないっていう状況だったので、この(慶大の)ホームでやるこの独特な雰囲気には後輩たちにも気をつけてほしいです。あとは負けたケイオーを見ていると本当に悔しそうで。その気持ちとか涙とかを、勝った私たちが忘れてはいけないし、そういったことを後輩たちも忘れないでいてほしいです。

久田松雄一郎(スポ3=佐賀・龍谷)

――今日の試合を振り返っていかがでしたか

いつも通り、やれることをやりました。

――絶対に負けられない場面で回ってきましたね

そういうこともあまり考えずにやりました。

――相手の河村選手、気合が入っていらっしゃいましたがいかがでしたか

道場が一緒で、昔からずっと一緒にやってきたので。まあ負けないという気持ちで臨みました。

――全日本からどのような練習を行ってきましたか

いや、別にそんな特に変えたことはなくて。普段、今シーズン始まってから小さいことからそうやって意識して練習するっていうふうにやってきたので、ずっとそれでやってきました。

――小林主将の試合、ご覧になっていかがでしたか

そうですね、良かったです。ああいう風に最後キャプテンが勝ってくれてチームが勝ったっていうのはほんとに良かったと思います。

――応援の声は励みになりましたか

力になりました。

――来年は主将を務められるのですか

はい。

――どのようなチームを作っていかれますか

例年よりも結果にこだわって勝ち抜いていければいいなと思います。

――冬の間はどのような練習をなさいますか

まだ新人戦とかあるので、とりあえず今シーズンは小林主将がやってきてくれたことを引き継ごうと思います。

――今シーズンを振り返っていかがでしたか

ことしは試合にいい状態で、しっかり試合に準備して臨めたのがいい点だと思うのでそういう点に関しては良かったですね。

――来年に向けての意気込みをお願いします

そうですね、またしっかり一から作っていって、結果が出せればいいなと思います

勇大地(スポ3=東福岡)

――早慶戦に勝利しましたが今のお気持ちはいかがでしたか

とりあえず、安心しました。

――慶大は全日本で負けた相手ということで、早慶戦に向けての強い気持ちもあったかと思います

関東で勝ったのに、全日本で負けて、今回は絶対に勝たないといけないという思いがありました。

――全日本からはどのような練習をしてきましたか





練習メニューは少しキツくしたくらいです。あとは、一人一人の自覚を持たせるという感じでした。

――きょうのご自身の試合を振り返っていかがですか

普通ですね。

――やはり2本目を取りたかったという思いがあるのでしょうか

そうですね、でも結局大将戦になるかなとは思っていました。もし、2本目を取りに行って逆に取られてしまったらダメなので。難しかったです。取りたかったですけど、良ければ取れたくらいの感じでやりました。

――小林主将の試合はどのようにご覧になっていましたか

小林主将の試合はどのようにご覧になっていましたか





小林主将はずっと廣田(慶大)に勝てていなかったので、勝ってほしいということと、小林主将が勝って優勝したいと思っていました。今年度で一番鳥肌が立ちました。ことしで一番勝ってほしいという思いになりました。

――来年度は何か役職に就かれるのですか

副主将です。

――来年はどうチームを引っ張って行きたいですか

稽古もそうなのですが、最高学年の俺らに試合全部任せていいよ、思い切ってやってこい、くらいです。頑張ろうっていう感じです。

――冬の間に強化したい点はありますか

とりあえず体力をつけて、あとは一つ一つの技の技術をもう一段階上げたいです。